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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
続・事件屋 竹内陽一氏の仮面を剥ぐ
月刊政経東北
政経東北速報解説版
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 「地元で話題になった記事をもう一度読みたいが、図書館に行ってバックナンバーを探すのが億劫」、「書店で売り切れていて買えなかった」という声に応え、昨年反響のあった記事をWEB上で公開することにしました。カテゴリー別に分かれており、下記のカテゴリーから選択して、興味のある記事をクリックすると全文が表示されます。

行政

不満くすぶる本宮市高木公民館移転計画
 食い違う市教委と地元住民の認識

 本宮市高木地区では道路整備に伴う公民館の移転計画が検討されている。ただ、移転予定地に選ばれたのは昔から水害に見舞われている場所で、住民の希望に反していたのに加え、高松義行市長の後援会幹部が経営する会社の敷地だったため、便宜供与を疑う声が出ている。平成27年1月の市長選でも争点となった話題だが、その後どうなっているのか。現状をリポートする。

高木地区公民館

 11月上旬、本誌編集部に匿名の投書が寄せられた。内容は、現在本宮市の高木地区公民館を移転する計画が進められているが、移転候補地に選ばれたのは住民の希望と異なるし、経費も余計にかかる場所なので理解に苦しむ。なぜ住民の意見を聞かず一方的に進めるのか――というもの。11月3日の消印で、本宮郵便局管内から投函されていた。

 実はこの問題に関しては、本誌平成26年11月号「『見えない争点』歪む本宮市長選」という記事で少し触れている。記事は27年1月の同市長選を前に立候補予定者の動向をリポートしたもので、高松市長に対し、市民から「高木地区公民館の移転が決まったが、移転先は高松氏の後援会幹部が所有する土地だ」と不満が出ていたことを紹介した。

 当時、高松氏の支持者である市内の経営者は「公民館は、地元住民の利便性を踏まえると地区の外れに建てるわけにはいかない。そうした中で、見つかった移転先がたまたま後援会幹部の土地だっただけ」と擁護していた。だが、投書内容を同地区の住民に確認したところ、同公民館移転に関する疑念の声はいまも少なからずあるようだ。

 そこで、あらためてこの間の経緯、当事者の見解を取材し、同公民館移転をめぐる問題点を探った。

 高木地区は同市中心部を流れる阿武隈川沿いに位置する。地区内には多くの住宅が立ち並び、リオン・ドール・ガーデン本宮や県立本宮高校、本宮運動公園がある。

 そんな同地区の公民館に移転計画が浮上したのは26年のこと。同地区内を走る県道28号本宮・三春線は、旧本宮町から旧白沢村、郡山市を通り三春町へと至るが、狭隘な坂道となっている個所があった。そのため、合併支援道路として、安達橋から本宮運動公園までをつなぐ全長約1・5㌔の区間に、バイパス道路を整備することになった。合併支援道路とは合併市町村の一体化を促進するため、優先採択・重点投資する道路のこと。震災の影響で予定が遅れ、現在は32年完成を目標に用地買収が進められているところだが、その事業用地に引っかかったのが同公民館だった。

 同公民館は小学校跡地に建てられたもので、敷地面積約3300平方㍍(グラウンドを含めて約4200平方㍍)。グラウンドは高木若連による魚つかみ大会などのイベント会場や駐車場として使われており、災害時の避難所にも指定されている。ただ、移転しようにも、同公民館周辺は埋蔵文化財包蔵地に指定されており、まとまった面積の土地を確保するのは困難だった。

 そうした中で市教委は、安達橋近くの笠原木材(高木字船場、笠原宏男社長)が自社の敷地約3200平方㍍を譲る意思があることを知り、諸条件を満たしていることから同社敷地を移転候補地に決定。26年7月の市教委定例会で各教育委員に報告し、市議会9月定例会で不動産鑑定手数料、基本設計委託費などの予算が議決された。

 だが、地元住民に計画を示したところ、「決め方が一方的すぎる」、「地域住民の意見も聞き、みんなが納得する場所に建てた方がいい」という意見が出た。同地区の男性住民によると、反対意見はかなり多かったという。

 「本宮は昔から水害が多い地域なのですが、笠原木材が建つ場所は阿武隈川に近く、かさ上げもしていないので川の氾濫や大雨で何度も水浸しになったイメージが強い。公民館は災害時に避難所となる場所なので、その点を不安視する人が多かったのです。また、敷地が狭くてグラウンドが確保できそうもないこと、企業の移転費用や営業補償を負担しなければならないことを理由に挙げる人もいました」

 対応に困った市教委は昨年9月ごろ、高木地区振興会(同地区内の町内会長や公民館長、各種団体の長など約20人による組織)に相談し、適当な候補地の選出を依頼した。同振興会は整備検討委員会を立ち上げ、4度の会議を経て3つの候補地案を出した。

予定地は市長後援者所有地

 A案は当初案である高木字船場の笠原木材敷地(3200平方㍍)、B案は同公民館付近で県道の西側の土地(6400平方㍍)、C案は同じく同公民館付近で県道の東側の土地(4900平方㍍)。前述の通り、現公民館周辺は埋蔵文化財包蔵地に指定されているが、昨年8月に試掘を実施したところ文化財は出てこなかったため、候補地案に含まれた。

 同検討委員会では面積や利便性などに◎、○、△といった印を付けた比較表を作成。3案の概要と併せて同振興会役員が内容を確認した後、今年3月、市に提出した。

 「一応3案を提示しましたが、同振興会としては最も面積が広いB案を推しており、メンバー間でも意識共有していました。A案はこの間、再検討してきた経緯から、選ばれる可能性は無いものだと思っていました」(ある町内会長)

 ところが、市教委内部での検討や市教委定例会での協議の結果、A案が移転予定地に選定され、10月6日に開かれた同振興会で市教委が正式に説明した。

 同日に同振興会メンバーらに配布された資料によると、市教委が挙げた候補地選定理由は①A案は高木地区の人口集積地であり、公民館を利用する際に利便性が高い、②B案やC案と比べ、公民館が使えない空白期間が短い、③建設費総額は3候補地とも4億円程度で大差がなかった、④懸念事項である災害(水害)の可能性は水路改修による排水対策を講じる――の4点だったという。

 3案の中から結局当初案であるA案を採用した理由について、後藤章教育部長は次のように説明する。

 「B案、C案は農地なので地価はA案のおよそ半分で済むが、造成費用や水路の付け替え工事費用がかかる分、建設費総額に差がありませんでした。確かにB案は現在の公民館より広い面積が確保できますが、地権者は十数人いますし、道路造成工事との調整が必要になる分、公民館を使えない期間が長くなってしまいます。水害への懸念は側溝整備などの対策で十分対応可能と考え、A案を選定したのです」

 なお、26年7月の市教委定例会会議録によると、A案の面積ではグラウンドを併設するのが難しいため、イベント時は本宮運動公園も活用する方針のようだ。

 市教委では市議会全員協議会でA案に決定したことを報告しており、今後設計に着手していく見通しだ。冒頭に紹介した投書の差出人はおそらくB案かC案を支持しており、このままA案に決まってしまうことに危機感を覚え、このタイミングで投函してきたのだろう。

 なお現在、市内では同公民館移転について書かれた長文の怪文書が出回っており、某所で確認させてもらったところ、本誌に届いた投書と主張や言い回しが似ていた。おそらく差出人は同一人物と思われる。

 これだけなら一地区の公民館移転をめぐる意見の相違に過ぎないが、問題を複雑にしているのが、A案の土地を所有する「笠原木材」の笠原社長は、高松義行市長と親密な関係にあるということだ。

 笠原社長は高松市長が住職を務める日輪寺の総代の取りまとめ役を務めるほか、高松市長後援会の幹部に名を連ねている。そのため「同社の敷地を市が移転候補地として買い上げるのは、高松市長の〝身内〟に対する便宜供与に当たるのではないか」と見る向きが出ているのだ。冒頭で紹介した26年11月号記事の「移転先は高松氏の後援会幹部が所有する土地だ」という不満の声は、このことを指している。

落胆する笠原木材社長

笠原本材

 高松市長は昭和29年生まれ。大正大佛教学部卒。旧本宮町議3期、本宮市議2期を経て平成23年1月の市長選で初当選。27年1月の市長選で再選を果たした。笠原社長は昭和22年生まれ。明治大卒。民間信用調査機関によると、同社は17年創業。資本金1000万円。売上高は平成28年4月期4300万円(利益65万円)で、2期連続で落ち込んでいる。

 また、同社敷地の不動産登記簿を確認すると、東邦銀行が極度額9600万円の根抵当権を設定している。そのため、「業績不振で借金を抱える市長支持者の企業を救うため、市教委がA案を採用したのではないか」と疑問を抱く人も出ている。

 本誌に寄せられた投書もこうした事実を伝えるためか、民間信用調査機関による同社の売上データと、インターネットの登記情報提供サービスによる不動産登記簿が同封されていた。こうした情報サービスを個人契約しているとは考えづらいから、差出人は企業などでこうしたサービスが自由に使える環境にある人物なのだろう。

 前出の男性住民は「住民はB案を推しているのに、市教委はA案にこだわっているように見える。そのA案の所有者が高松市長とつながりが深い笠原社長となれば、誰だって『何か裏事情がありそうだ』と勘ぐってしまいますよ」と語った。

 ここでこの間の流れをまとめると、以下のようになる。

 ①高木地区公民館の移転先として、市教委は笠原木材敷地を候補に挙げたが、住民から反対を受けた。

 ②市教委の依頼を受け、高木地区振興会が住民の希望を反映させた移転候補地を含む3案を提示したが、市教委は結局笠原木材敷地を選んだ。

 ③笠原木材の社長は高松市長とつながりが深いため、市が便宜供与を図ったのではないかと疑われている。

 果たして真相はどうなのか。

 笠原木材の笠原社長を直撃したところ、この間の経緯を次のように説明した。

 「当初、県道整備により同公民館と隣接する本宮第二保育所も新築移転する可能性があり、私の娘が通っていた保育所だったこともあって、市に『もし移転先がなければここの敷地を使ってください』と話しました。その後、市の担当者が来て『保育所には狭いので公民館にしたい』と言われて了承しました。それから2年近く音沙汰がありませんでしたが、10月に入ってから市職員が『この間、時間が空いて申し訳なかった。移転候補地に決定したら、正式に土地を譲ってほしい』と頼まれたので再度了承しました」

 便宜供与が疑われていることについて単刀直入に尋ねると、複雑な表情を浮かべてこう答えた。

 「高松市長とはつながりが深い分、疑われるようなことはやらないよう心掛けてきたし、便宜供与なんて持ちかけたら多大な迷惑をかけてしまうのでやるわけがありません。佐藤嘉重前市長の後援会事務局長を務める中で何事にも真面目に取り組む姿勢を学び、この地で70年以上にわたり経営を続け地域振興に協力してきた自負がありましたが、それでも疑惑の目で見られてしまうのは私の不徳の致すところなのでしょう。そうしたウワサが流れていることを知り『自分はそれほど安い人間に見られていたのか』とショックでした」

 気になるのは「同公民館移転が実現したら同社はどこに移り、その際は市が移転費用まで負担しなければならないのか」という点だが、笠原社長は「正直対応を迷っている」と話した。

 「私は来年70歳を迎え、現在社員は1人しかいない。息子は東京で働いているので、『地域のためになるならこの辺で会社を畳むのもいいか』と考えていたのです。とは言え、いまも信頼して取引を続けてくれる取引先があるし、私自身生きがいを失いそうな気がして、どこかに倉庫を探して自己負担で再開しようとも思い直していました。土地には根抵当権が設定されていますが、実際に借りている額は1000万円以下で、いつでも返済できます。ただ、『経営資金が必要なときのために完済しない方がいい』と銀行の担当者からアドバイスされ、借りたままにしています。『疑惑を晴らすため、土地をどこかに売ればいい』と言う人もいましたが、市教委が困るだろうからそうもいかない。高松市長に迷惑をかけ申し訳なく思いますし、最終的にはみんなが納得できる場所に公民館が移転することを願っています」

高松市長を直撃

高松義行市長

 一方、高松市長は同公民館移転についてどう受け止めているのか。11月21日、市役所で話を聞いた。

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 ――便宜供与を疑う声が出ているが、どう受け止めているか。

 「そうした事実は一切ありません。便宜供与なんて決してあってはならない話です。27年1月の市長選前にもこの問題が話題となり、選挙の争点ともなりましたが、本市では公明正大に事業を進めてきました。この間、高木地区振興会の方々と意見交換してきましたが、反対の声も一部あったようです。ただ、大半の方は『(同振興会が提案した)3案から市が選んだ結果だから不満はない。ただ、設計に入る際はあらためて住民と話し合いをしてほしい。水害のイメージが強いので対策をきちんとしてほしい』という反応だったため、了承を得たと判断したと聞いています。おそらく投書の差出人は今回の決定に反対しているのだと思いますが、事業を進めるうえですべての方に賛成していただくのは非常に難しい。そういう意味では批判をいただくのも行政の務めの1つですし、批判は甘んじて受け入れます。ただ、匿名の投書で一方的に批判されることには違和感を覚えます」

 ――最初に笠原木材敷地を移転候補地として考えたきっかけは。

 「合併支援道路整備により移転を余儀なくされる住宅への対応を考えていたとき、笠原さんに『市の役に立つのであれば協力してもいい』という話をされたことがありました。そのときは関係部署に一応伝えて終わったのですが、その後、同公民館が移転することになり、候補地探しに苦慮する中で、『笠原木材敷地なら条件を満たしている』と市教委が判断したのです。私は余計な疑惑を招かないよう、普段から用地買収などに一切かかわらず、担当職員に対応を任せていますが、今回の場合、私と笠原さんが個人的なつながりがあることは多くの市民が知っているので、『誤解を招かないよう公明正大に進めてください』と担当職員に伝えました」

 ――住民は笠原木材敷地では条件が悪いと感じているようだが。

 「水害に関してはもともと排水ポンプを増やす予定だったのに加え、移転に合わせて側溝整備など十分な対策を講じます。同振興会に説明した選定理由に加え、①B案とC案は埋蔵文化財の包蔵地であり、試掘では何も出てこなかったもののリスクは極力避けたいと考えたこと、②安達太良山の火山ハザードマップでは火山噴火後、土石流がJR本宮駅前に最速で1時間半から2時間で到達するとされており、万が一の際に中心市街地の住民も避難できる拠点を阿武隈川東岸につくりたいと考えていたこと――などが決め手となりました。もちろん、こうした話もすべて同振興会には伝えており、ご理解いただいていると思います」

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 こうして笠原社長と高松市長の話を聞くと、互いに変な疑いを持たれないよう距離感に気を使っていたことが分かるし、仮に便宜供与するとしても、会社所在地を直接買収するというあからさまなやり方はしないだろうから、疑惑は事実とは言い難い印象を抱く。

 市内の事情通は投書について次のように解説する。

 「投書内容は市長選前に配布された怪文書ともよく似ているので、同じ人物が書いたものと思われます。市長選では6649票を獲得し、佐藤政隆氏(元県議)、作田博氏(現市議)を破って再選された高松氏ですが、いまもそのときのしこりが根深く残っているということでしょう」

 本誌26年11月号記事では、市長選を控える高松市長について、独断専行の面がみられるという声や、支持者が市内の至るところで存在感を強め反感を買っているという意見を載せた。ただ、いずれも裏付ける材料に欠けており、一概には判断できないため、中立的な立場で意見を紹介するのに留めた。選挙では高松市長が勝利を収めたわけだが、それらの不満の声はいまも燻り続けているのかもしれない。

 一方、高松市長の支持者である経営者は苦笑しながらこう擁護する。

 「高松市長は寺の住職でもあり、元もとみや青年会議所理事長でもあり、自身の後援会もあるのでとにかく顔が広い。市長の知人の土地というだけで問題視されるのであれば、用地買収を伴う事業ができなくなってしまいますよ」

 確かに高松市長とつながりのある人物の土地買収を問題視していたらきりがないが、かと言って、全く気を使わなければより住民の疑惑は深まる一方だろうから、市職員や市長と関係がある人も含め、よりクリーンな姿勢で誤解を招かないよう心掛ける必要があるということだろう。

気になる事実認識の違い

 市に対する住民の不信感は根深い。

 前出の町内会長は「同振興会内の整備検討委員会が候補地を3案考える際、市教委から『A案(笠原木材敷地)は必ず入れてほしい』と言われていた。やはり最初からA案ありきで進められていたのではないか」といぶかしむ。

 別の同振興会メンバーもこう証言する。

 「A案決定が報告された10月6日の同振興会では、B案決定を期待していたわれわれに対し、市教委が『市教委の決定事項なので、ここで意見を聞いて変更することはない』、『そのときの市教委定例会の会議録開示は考えていない』と高圧的な態度で伝えてきました。そのため、メンバー全員が反発し、『こんなのは説明会じゃなくて報告会じゃないか!』と声を荒げる人もいたほどです。ただ、われわれには決定権がないので『あとは市が直接住民に説明してほしい』と怒りをこらえて了承しました。高松市長が、一部の人だけが反発して大半の人が『不満はない』と話していたって?私にはそう見えなかったけどなぁ」

 今後は市教委と住民が話し合いを行いながら設計を進めていくことになるが、高松市長が同公民館移転をめぐる疑惑を晴らすためには、まずこうした認識の食い違いから解消していく必要がありそうだ。