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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
月刊政経東北
政経東北速報解説版
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 「地元で話題になった記事をもう一度読みたいが、図書館に行ってバックナンバーを探すのが億劫」、「書店で売り切れていて買えなかった」という声に応え、昨年反響のあった記事をWEB上で公開することにしました。カテゴリー別に分かれており、下記のカテゴリーから選択して、興味のある記事をクリックすると全文が表示されます。

社会

異常な運営が横行する東北福祉大学
 松山英樹の「恩師」阿部監督の"私利私欲"

 東北福祉大学(仙台市青葉区国見一丁目8―1)と言えば東日本有数の福祉系大学として知られるが、もう一つ、スポーツ強豪校の側面も併せ持つ。とりわけゴルフ部と硬式野球部は有名で、卒業生には一流プロ選手も多いが、そんな華やかさとは裏腹に大学運営は信じ難いデタラメが横行しているという。その中心に居座るのが、いま話題の超有名選手を育てた恩師というから驚きだ。学内の良識派が眉をひそめる、恩師の"私利私欲"をあぶり出す。

東北福祉大学のキャンパス

 東北福祉大学の前身は明治8年に開校した曹洞宗専門支校。その後、改称や学校新設などを繰り返し、昭和24年に学校法人栴檀(せんだん)学園を設立。37年に同学園が運営母体となって東北福祉大学を開校した。

 開校当初は社会福祉学部のみだったが、それから50年以上経った現在は総合福祉学部、総合マネジメント学部、教育学部、健康科学部の4学部で構成される。このほか大学院、通信教育学部、東北福祉看護学校があり、さらに医学部・歯学部を持たない大学としては珍しい大学附属病院の東北福祉大学せんだんホスピタルも運営する。

 いまでこそ福祉系学部は全国的に数が増えたが、国家資格である社会福祉士や精神保健福祉士の合格者数では全国上位に位置するなど、福祉系大学の老舗的存在。学生総数は通信教育学部を合わせると9800人に上り、東北地方を代表する私立大学と言っていい。

 一方で、東北福祉大学はスポーツ強豪校の側面も併せ持つ。とりわけゴルフ部と硬式野球部は大学スポーツ界で輝かしい成績を収め、卒業後はプロに転向する選手が少なくない。

 別表は両部の主な卒業生だ。ゴルフと野球に詳しい人なら彼らの実績は当然知っているだろうし、詳しくない人でも名前くらいは聞いたことがあるという有名選手がズラリと並んでいる。

 中でも、いま最も熱い注目を集めるのがプロゴルファーの松山英樹選手だろう。6月に行われた今季メジャー第2戦の全米オープンでは日本男子過去最高に並ぶ2位に入り、世界ランキングも2位に浮上。次の全英オープンでは日本男子初のメジャー大会制覇が期待される。

 そんな松山選手をはじめ有名な卒業生たちが、成績をすべて偽って卒業していた――としたら、読者の皆さんはどう思うだろう。

 「松山君は大学在学中の平成25年にプロに転向し、その年の日本ツアー賞金王になったこともあり、翌年3月の卒業式には大勢のマスコミが押し寄せたが、事情を知っている人は『なぜ君が卒業できるの?』と冷ややかな視線を送っていました」

 こう話すのは、東北福祉大学の現役教授A氏だ。A氏が松山選手の卒業に疑問を投げ掛けるのは、次のような事情がある。

 「松山選手だけでなくゴルフ部と野球部に所属する学生は4年間全くと言っていいほど授業に出席せず、他の部活動とは比べものにならない充実した施設でひたすら練習している。にもかかわらず、両部の学生は授業に出席したことになっていて、揚げ句には成績表を改ざんして卒業している」(同)

 言うまでもなく、所定の出席日数を満たさなければ定期試験は受けられず、単位は取得できない。当然授業を担当する教授も"万年欠席"のゴルフ部と硬式野球部の学生は「不可」とせざるを得ない。ところが、年度末になると「不可」だった成績がすべて「可」以上に変更され、単位を取得したことにすり替えられてしまうというのだ。

 「私も両部の学生を『不可』としたのに、いつの間にか『可』に変更されていた経験がある」(同)

 両部の一部学生をめぐっては、授業料が免除されている一方で、合宿費や遠征費、ユニフォーム代なども大学から別枠で支給され、大学内の良識派の間で問題視されている。その額は一人当たり年間300~500万円という話もある。

 学生の本分は勉強だ。真面目に授業に出席し、テストを受けて単位を取得し、授業料をきちんと収めている学生からすると、このような不公平は到底納得いくまい。

 なぜ両部の学生はこれほど優遇されているのか。背景には、スポーツで活躍することで大学の知名度を上げる"広告塔"の役目から、勉強より部活動を優先することが大学から黙認されている事情があるが、だからと言って成績改ざんによる卒業が許されるはずがない。

 カギを握るのが、ゴルフ部監督を務める阿部靖彦氏(55)の振る舞いである。

 ここで阿部氏の経歴に触れておこう。秋田県立大曲農業高校、東北福祉大学社会福祉学部社会福祉学科を卒業後、昭和60年4月から同大学職員として勤務。自身も野球部だった経緯から平成元年に軟式野球部監督に就くと、同じ年には同好会としてスタートしたゴルフ部の初代監督に就任した。ゴルフ選手としての経験はゼロだが、そこからゴルフ部を大学ゴルフ界屈指の強豪に育て上げ、松山選手らを輩出、いまでは名将の地位を得ている。平成24年からは硬式野球部の総監督も兼務する。

成績改ざんのカラクリ

阿部靖彦監督



 再び現役教授A氏が解説する。

 「要するに、成績改ざんは阿部氏の指示です。それを知った教職員の中にはかつて強硬に反対した人もいたが、軒並み阿部氏から恫喝されて、いまでは(成績改ざんが)常態化しているのが実態です」

 もちろん、成績改ざんは阿部氏単独では不可能である。東北福祉大学の現役職員B氏が、そのカラクリを明かしてくれた。

 「学内には阿部氏の息のかかった教職員が大勢いる。彼らに共通するのはゴルフ部と野球部のOBであること。つまり、両部の監督など要職を務める阿部氏の意向にOBたちは逆らえないのです。そこには、部活動で世話になっただけでなく、大学職員になる際に(阿部氏の)強力な後押しがあったという事情もある」

 同じ構図は大学入試でも見られるという。

 「ゴルフ部も野球部も有望な高校生をスカウトして集めているが、入試の時期になると阿部氏から入試担当者に『○○くん、××くん、△△くんらが受験するから、よろしく頼むよ』と連絡が入るようになっている。その時点で名前が挙がった高校生は合格確定です。ウワサでは、そうやって合格した高校生の保護者から阿部氏が"謝金"をもらっているという話も囁かれていて、多くの教職員が裏口入学の斡旋と陰口を叩いている」(同)

 B氏によると、成績改ざんは教務部事務部長の鈴木智彦氏が深く関与しているという。

 「鈴木氏は阿部氏の野球部時代の先輩で、本心では阿部氏のことを良く思っていないが、学内で阿部氏がどんどん力を付けていく状況を目の当たりにして、協力せざるを得ないのだと思う」(同)

 阿部氏が力を付けている――とはどういう意味か。一般的には、全国で好成績を挙げるゴルフ部の監督を務め、それが学内での発言力を強めているという見方ができるが、東北福祉大学を退職した元教員が絶対匿名を条件に「阿部氏の狡猾な手法が今日の地位を築いた」と口を開いてくれた。

 「阿部氏の大学職員としての出発点は単なる運転手です。それが、いまでは総務部長を務め、2年前からは学校法人栴檀学園の理事に就いているが、実は同学園においてプロパー職員が理事に就くことは異例中の異例なのです」

 東北福祉大学は曹洞宗宗立の大学で、同宗は全国に約1万5000の寺院と約1200万人の檀信徒がいる。大本山は二つあり、一つは釈迦の教えを日本に伝えた道元禅師が1244年に開いた永平寺(福井県永平寺町)、もう一つが同宗の教えを全国に広めた瑩山禅師が1321年に開いた總持寺(神奈川県横浜市=もともとは石川県にあったが、1898年に焼失し、1911年に横浜市に移った)。

 「栴檀学園の理事には、これまで永平寺と總持寺から選ばれた計13人の僧侶が就き、理事長も学長も僧侶が務めてきた」(同)

 そんな東北福祉大学を長く取り仕切ってきたのが、やはり僧侶で済善寺(島根県)の元住職だった萩野浩基氏である。

 萩野氏は昭和52年に東北福祉大学助教授、54年に教授となり、平成6年に学長就任。「学部を増やし、キャンパスを広げ、(高齢者施設を運営するための)関連法人をつくるなど今日の大学の礎を築いた人物」(前出の元教員)と称される萩野氏にはもう一つ、政治家の顔があり、平成4年からは参院議員を1期、8年からは衆院議員を3期務めた。萩野氏の政治力が大学の勢力拡大につながっていたのは間違いないが、萩野氏のもとで実働していたのは前副学長の渡辺信英氏で、実際には渡辺氏が学長職のほとんどを担っていたとも言われている。

 「平成17年に政界を引退後は学長業に専念していたが、萩野氏も阿部氏の振る舞いは薄々分かっていた。ただ、いまより酷い状況ではなく、大学を円滑に運営するための必要悪と見過ごしていた」(同)

単なる運転手から法人理事に

 ところが、萩野氏が病気を患い、平成27年10月に亡くなると、阿部氏の振る舞いはタガが外れたように酷さを増していったという。

 最たる出来事が、自身が理事に就任するための画策である。

 「理事は全部で13人いるが、本職は永平寺と總持寺の僧侶なので、大学運営に関しては全くの素人。しかも大学に常駐しておらず、年4回開かれる理事会に出席するだけなので現状すらよく把握していない。そうした何も知らない僧侶たちに阿部氏は上手く取り入って信頼を勝ち取り、理事就任の道筋を切り拓いた」(同)

 就職時はいち運転手に過ぎなかった阿部氏が、ゴルフ部と硬式野球部という源泉を得たことで力を蓄え、とうとう理事にまで上り詰めたのだから、一種のサクセスストーリーと言っていい。

 「加えて、最近は教え子の松山選手が目覚ましい活躍を遂げ、恩師としてマスコミに登場するなどしており、学内での発言力は一層強まっている」(同)

 不思議なのは、理事長や学長がいて、理事も複数いるのに、なぜ同じ理事である阿部氏のやりたい放題が許されるのか、である。

 「理事長も学長も理事も本業(僧侶)の片手間としか考えていないため、大学の内情に全く無関心。だから学内を隅々まで知る阿部氏が、ほとんど留守の理事長、学長、理事に代わって実質的に大学を取り仕切ることができる、と」(同)

 もっとも、高を括ると手痛いしっぺ返しに遭うことを、阿部氏は身を持って経験することになる。

 今年2月、阿部氏は関東学生ゴルフ連盟の専任理事を任期半ばで辞任し、同連盟の中島敬夫会長も阿部氏と一緒に辞めているが『週刊新潮』は両氏の親密な関係に迫りながら、辞任は事実上のクビだったと報じているのだ。

 以下、同誌3月16日号「『松山英樹』絶好調の陰で恩師が連盟要職をクビになっていた」という記事から抜粋する。

    ×     ×     ×     ×

 スポーツジャーナリストの小川朗氏が言う。

 「要職にあった2人の辞任は、連盟所属の他大監督たちの反発があってのことです。最終的には、理事たちの報告を聞いた松本富夫名誉会長が、中島会長に対してケジメをつけた方がいいのではないかと厳しく告げたことで、辞めざるをえなくなったのです」

 事の発端は、昨年8月に開催された第64回関東学生ゴルフ選手権だった。

 「優勝したのは阿部監督率いる東北福祉大の小西健太という選手ですが、大会に無資格で出場していたことが発覚したのです」(同)

 通常、この大会には前年度の文部科学大臣杯、会長杯の優勝者や、他の指定された大会で上位の成績を残した学生のみが参加できる。

 ところが、小西はいずれの資格も有していない上に、優勝してしまったことで上位3位以内の入賞者に授与される他試合の出場権も獲得していた。結果、小西が出場していなければ、6名の選手が幾つかの試合に出られていたかもしれないことが問題視されたのだ。

耳を疑う数々の醜聞

松山英樹選手(『東北福祉大学通信』より=29年3月17日発行)

 いったいなぜこのようなウルトラCが起きたのか。

 「小西は、"ポスト松山"との呼び声も高く、一昨年にアマ世界最高峰である全米アマチュア選手権で、日本勢初となる準決勝進出を果たした実力の持ち主。昨年も全米を目指し、国内大会には目もくれず練習に励んでいました。ところが、手続きミスでエントリーの締切を逃して出場が不可能になった。せめて国内大会に出させてあげようと、阿部監督が中島会長に依頼し"会長特別推薦枠"として出場が決まったのです」(連盟関係者)

 前代未聞の措置に、他大の監督は納得できないと声をあげたというワケだ。

 「穿った見方をすれば、中島会長は狭山ゴルフ・クラブの理事長でもある。昨年10月に狭山GCで開催された日本オープンで、松山は4年ぶりに出場して優勝しました。米ツアー戦を休んで来日したこともあって、ゴルフ場にとっては話題性の面でも最高の結果になった。このことで、2人の間に利害関係があるのではないかと見る人もいたんです」(同)

 実際、今なお松山は日本に戻れば阿部監督へ報告に上がる。加えて、監督の息子は松山に帯同するマネージャーという密な関係が続いているのである。

 そこで、海外に渡航中の阿部監督に電話で聞くと、

 「いろんなやっかみがあるかもしれないけど、僕の本分は学生を守ること。それに尽きます。自分の学生を守るためにも、何を辞めただの一切発言はしません。試合が終わって数カ月後にこんな話を出されたところで、いちいち反論もしません」

    ×     ×     ×     ×

 「学生を守るため」などと綺麗事を言っているが、要は会長と結託してルール違反を犯したに過ぎない。

 学生ゴルフ連盟と東北福祉大学をめぐっては、某ゴルフジャーナリストが数年前にその関係性を揶揄し、金銭授受を匂わす記事を書いたことがある。個人名は出てこないが、週刊新潮の記事と照らし合わせると中島会長と阿部氏の繋がりを示唆していたのかもしれない。

 翻って、理事に就任した阿部氏の学内での振る舞いはどのようなものなのか。本誌が複数の学内関係者に取材したところ、次のような話が聞かれた。

 ①阿部氏の最近の口癖は「人事はオレが決める」。自分の意見に反対する教職員は容赦なく左遷し、言うことを聞く職員にはそれなりのポストを与える。そうやって新しいポストを次々とつくるから、例えば「教務部長」と「教務事務部長」という具合に、どっちが偉いのかよく分からないポストが混在している。

 ②教授も阿部氏に"忠誠"を誓った人は定年延長や再任が認められる。昇給も阿部氏のサジ加減で決まり、中には年間1000円、すなわち月に換算すると八十数円しか昇級していない教職員もいるほど。とにかく厚・冷遇の差が激しい。

 ③教授の中には阿部氏から報復されると分かっていても、ゴルフ部と硬式野球部の学生が一度も授業に出席していないことを理由に「不可」を与える人がいる。ただ、1年目は不問にされても2年続けて「不可」を与えると、その教授は翌年から授業の担当を外されてしまう。

 ④自身や取り巻きを特任准教授や特任講師として任用している。教授や准教授など正規の教員と違い、特任准教授や特任講師は大学独自に期間限定で任用できるので、学内の良識派からは「単に肩書きが欲しいだけ」と揶揄されている。

 ⑤笑えるのは出欠確認システム。多くの教授が電子化を求めているのに、阿部氏らは頑なに拒み、未だに紙に書く方法に固執している。なぜか。東北福祉大学の授業は国家資格に絡んでくるので、厚生労働省や文部科学省から授業への出席を厳密に求められている。そうした中で出欠確認を電子化したら、ゴルフ部と硬式野球部の学生の多くが欠席していることが国にバレるので、いくらでもゴマカシが効く紙の出欠確認をやめるわけにいかないわけ。おかげで教授は授業のたびに面倒な手作業の集計を強いられている。

 ⑥最近の阿部氏は、自分で決裁することもあって大学の業務とは無関係な領収書も何食わぬ顔で出すようになった。数カ月前には「理事長と飲んだ」などと言って高額の領収書を出してきたが、理事長はその日、別の部長と所用で出掛けていた。

 ⑦銀座の高級飲食店から、阿部氏が頻繁に通っているという話が漏れ伝わっている。銀座界隈から個人名が聞かれるのは、単に著名人ということではなく相当な来店回数と支払い金額になっている証しで、銀座ならではのステータスとされるが、そんなに行きたければ大学のお金ではなく、自腹で行けば済む話。

 ⑦大学の公用車を自家用車代わりに使っていた。公用車はレクサスなど高級車ばかりで、阿部氏は自らハンドルを握り、時には東北福祉大学に在学中の娘を同乗させて一緒に通勤・通学していたこともあった。

 ⑧松山選手が四大大会に出場すると、決まって阿部氏も現地に出掛けていた。テレビのインタビューを受ける松山選手の裏に阿部氏の姿が映ることもしばしば。今回の全米オープンはテレビ観戦で我慢(?)したようだが、渡航費や宿泊費なども出処は大学と疑われている。

大竹副学長との対立が表面化

喜美候部謙史前理事長

大谷哲夫学長

 そんなやりたい放題の阿部氏に対し、昨年から今年にかけて釘を刺す動きが起こり、学内はちょっとした緊迫状態にある。

 学内の事情に詳しい人物がこう解説する。

 「阿部氏は同年齢ということもあり以前から親しかった喜美候部謙史氏が27年5月に理事長に就くと、自身も理事に就くことに成功し、以降は喜美候部理事長を後ろ盾にやりたい放題を繰り返した。それを見兼ねたのが副学長で理事の大竹栄氏(73)で、大竹氏の牽制により両氏の関係は険悪になっている。大竹氏と阿部氏は上司と部下の間柄で、大竹氏も硬式野球部部長を長く務めるなど、両氏の関係は良好だった。おそらく大竹氏は、阿部氏が学内でメキメキ力を付けていく状況を面白く思わなかったのでしょう。いつしか両氏は反目し合うようになり、互いに自分の息のかかった教職員を増やそうと競い合った」(同)

 大竹氏の最終学歴は東洋大学大学院法学研究科博士課程満期退学。昭和45年に東北福祉大学に勤務し、57年から教授。硬式野球部の部長歴は40年以上で、学内では阿部氏と一心同体という見方をされていた。

 「阿部氏が喜美候部理事長に擦り寄ると、大竹氏はそれに対抗し、27年12月に就任した大谷哲夫学長に近付いた。そうやって互いに後ろ盾を得ながら牽制し合う状況が続いたのです」(同)

 もっとも、両氏の拮抗は思わぬ形で崩れることになる。

 ㈱トップ・マネジメントという建築会社がある。役員は代表取締役・白木昭雄、取締役・重山雅樹、白木佐智子、監査役・大友里絵の各氏。8年10月に資本金2000万円で設立されたが、その所在地は「東北福祉大学営繕事務室」になっている。

 学内の一室に建築会社が常駐するのは信じ難いが、民間信用調査会社によると、東北福祉大学の関連法人や病院、福祉施設の工事を一手に引き受けていることが財務内容の安定と無借金経営につながっているとされ、28年6月期決算では売上高5億5900万円、当期純利益2100万円を計上している。

 「教職員からすると、奇妙なモニュメントを設置したり、修繕しなくてもいいような個所を頻繁に修繕したり、無駄な工事をやっているようにしか見えない。学生からも疑念や不満の声が聞かれる始末だが、ことごとく無視されている。そんなことをするなら、手狭な教室を拡張して学生の学習環境改善に努めたり、学費を抑えたりすべきではないか」(前出の現役教授A氏)

 実は、トップ・マネジメントによる無駄な工事は大竹氏と同社の白木社長が結託して行っているとされるが、阿部氏と喜美候部氏がそれにブレーキをかける狙いで「杜撰な工事内容」と「裏金づくり」の実態を暴こうとしたところ、不安を覚えた大竹氏が阿部氏と喜美候部の行き過ぎた交際費の使途(※年間数千万円に上るという)を見つけ、曹洞宗・宗務庁に報告して二人の追い落としにかかったという。

 これにより喜美候部氏は理事長職を追われ、阿部氏は後ろ盾を失ったのだ。

 「大竹氏は喜美候部理事長を追放することで、阿部氏に『状況が改まらなければ次はお前の番だ』と圧力をかける作戦に出たのではないかとされています」(前出・学内の事情に詳しい人物)

 もちろん、一番手っ取り早いのは阿部氏本人を追放することだが、大竹氏には「それができない理由」があるのだろう。

 栴檀学園の法人登記簿を確認すると、喜美候部氏は今年2月に理事長を辞任しているが、実質的には「解任」されたという。

阿部氏に学歴詐称疑惑

 理事、総務部長、特任准教授、ゴルフ部監督、硬式野球部総監督など数々の肩書きをひけらかす阿部氏だが、それとは反対に積極的に公表したがらない経歴がある。

 阿部氏は平成18年度に東北福祉大学大学院修士課程を修了したとされるが、必要な単位を取得できておらず、修士論文も全く書いていないことが本誌の取材で判明している。つまり教え子だけでなく、自身の成績も改ざんしていたのだ。

 「以前、阿部氏が『夢を語り実現しようとするなら、それなりの学歴も必要』などと偉そうに話していたが、自ら最終学歴を偽っておいてよく言うよ」(前出の現役教授A氏)

 大学の運営に携わる人物が、よりによって学歴詐称をしていたとなれば、所管する文部科学省はどう思うか興味深い。

 言うまでもなく、大学には国から毎年補助金が支出されている。東北福祉大学の平成27年度資金収支計算書(決算)の収入を見ると、授業料、入学金、入学検定料、寄付金、医療収入など計142億2600万円のうち国庫補助金は6億8900万円で、収入全体の5%を占める。

 東北福祉大学の教務事務をめぐっては、他にも問題がある。教職員免許法などで規定されている単位が一部不足していたにもかかわらず、教員免許を出してしまっていたのではないかという疑惑だ。該当する卒業生は相当数に上り、教員としてすでに現場に立っている人もいるというから呆れるが、成績改ざんが日常茶飯事となっている中では、この程度のことが起きても不思議ではないのかもしれない。

 本誌は、この稿で名前が挙がった阿部、鈴木、渡辺、大竹の4氏に取材を申し込んだが、6月27日現在、何の返答も寄せられていない。

 取材を通して印象的だったのは、現状を憂い、大学への危機感から積極的に話してくれる教職員がいる一方で、口を閉ざす教職員も少なくなかったことだ。背景には、取材に応じたことがバレたら阿部氏や大竹氏から酷い仕打ちを受けるという恐怖心があったと思われる。

 ただ、中にはこのように話してくれた教授もいた。

 「自分なりに思うことはいろいろある。でも、外部の方に話すべきではないのかな、と。もし可能なら内部から現状を変えていきたいし、その努力もしたいが、多数決で決まれば民主主義の原則に則って従うしかないと考えている」

 話したいけど話せない、でも明らかに不満を鬱積させている様子が見て取れる。

問われる曹洞宗の責任

 果たして、異常と言うほかない大学の運営を軌道修正することはできるのか。前出・学内の事情に詳しい人物は次のように指摘する。

 「もちろん、元凶が阿部氏と大竹氏であることは疑う余地がないが、今日の状況を招いた要因は曹洞宗の無関心にある。理事を務める僧侶たちが大学運営にもっと関心を寄せ、注意力を働かせていれば、阿部氏と大竹氏の好き放題がまかり通ることもなかった。このような実態が監督官庁の文科省に知れたらどうなるか、永平寺も總持寺も危機感を強く持つべきだ」

 さらにこうも言う。

 「阿部氏と大竹氏の言動は以前から学内で問題視され、教職員の中からは度々訴えも上がっていたが、両氏を庇い続けてきた前副学長の渡辺氏にも責任があるのではないか」

 そのうえで、この人物は僧侶中心の理事編成ではなく、まともなプロパーや外部の人間も招いてチェック機能が働く理事会運営を提案し、本誌に具体策やそれを託す人物名まで披露してくれたが、それを明かせば阿部氏や大竹氏に正常化の芽を摘まれる恐れがあるため、活字にするのは控えたい。

 「学生の中には奨学金やアルバイトで安くない授業料を収めている人もいる。部活動と勉強の両立も当たり前。そういう真面目な学生たちを横目に阿部氏と大竹氏は"私利私欲"に走り、ゴルフ部と野球部の学生は成績改ざんで卒業している。これでは学生たちが気の毒すぎる」(前出の現役職員B氏)

 対外的には好印象を持たれているゴルフ部と硬式野球部だが、今回の取材で学内の良識派からは非常に疎まれていることが分かった。もはや阿部氏と大竹氏という"病巣"を取り除かなければ、東北福祉大学が正常化に向かうことはなさそうだ。