ホーム
バックナンバー
ウェブ連載「巻頭言」
ウェブアーカイブ New
政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
続・事件屋 竹内陽一氏の仮面を剥ぐ
月刊政経東北
政経東北速報解説版
ご挨拶/会社概要
株式会社東邦出版
福島県福島市南矢野目鼓原1-2
TEL:024-554-6101(代表)
FAX:024-554-6103
Email:info@seikeitohoku.com

古市滝之助さんのこと(18年2月号)

 矢祭町に出掛けた折、棚倉町近津にあった東駒酒造の本社・工場に立ち寄った。朽ちた工場がいまも3棟残り、中に入ると錆びたタンクや機械などが当時のままになっていた。古市滝之助元社長の住まいは取り壊され、更地になっていた。近所の人によると、栃木県の酒造会社の名義になっているという。

 東駒酒造との付き合いは三十数年前にさかのぼる。「清酒革命」を標榜し、出荷石数が全国10位にランキングされたこともある。キャッチコピーは「10本買ったら9本おまけ」。午前7時から開く会議を取材するため、早起きして棚倉に何度も通った。

 太田薫・元総評議長など応援団は多士済々、どちらかというと犧固畢瓩多かった。古市さんは週刊誌やテレビに出ずっぱりで、オールドパーのボトルを使った米のウイスキー「ライスキー」、米のビール「リビエル」などを開発した。発酵が終わらないもの(「リビエル」だったかもしれない)を売り出そうとしたが、当局の許可が下りずタンク内で腐敗させた。私は「坊主にお経を読んでもらって供養したらどうか」とアドバイスし、マスコミに大きく取り上げられたこともある。果ては廃棄物を利用してミミズの養殖を始め、「スパゲティのように食べると健康によい」などと言って周囲を煙に巻いた。

 東駒酒造は国税当局や酒造・酒販業界に挑戦的だったことから税金滞納を理由に過大な差押を受け、ダメージを受けた。東駒酒造(古市さん)は国賠訴訟を起こし、1審で数億円の損害賠償が認められたものの、2・3審で敗訴し、会社再建の道を断たれた。酒類の無免許販売を問われた別の裁判では「小売酒販免許制度は職業選択の自由を侵害し、憲法に違反する」と主張し、今日の半自由化のさきがけとなった。裁判と並行して都内で出版社を経営し、銀行と国税を告発し続けた。一方、米の値段が安いアメリカで清酒をつくって輸入する話や、小規模酒造会社の買収に乗り出したが、成功しなかった。

詳しい事情は分からないが、犠牲者も出ている。こうしたことから、古市さんを「遠心分離機」とあだ名し、なるべく中心部には近寄らないようにした。もっとも力がなかったから、古市さんから何か頼まれても役に立たなかった。 惜しいのは、古市さんに行政をやらせてみたかったことで、おそらくユニークな事業をやらかしたに違いない。ただ、目前の障壁を乗り越えても、新たな障壁を次々につくる人だから、その下で働くのはしんどい。とはいえ、こういう人物がいないと世の中が面白くない。

(奥平)

巻頭言一覧に戻る