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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
続・事件屋 竹内陽一氏の仮面を剥ぐ
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民主主義力の衰退(18年5月号)

 フランスのドビルパン首相は1月、23%に達する若年失業率を改善しようと、26歳未満を雇えば理由を示さず解雇できる新雇用制度(CPE)を導入した。それに労働者や学生が「小手先の改革はノー」と猛反発し、ドビルパン首相はCPEを撤回した。国の指導者が「よかれ」と考えて打ち出した施策を、民意を汲んで法律を一部削除するという。さすが、民主主義を育んだ国である。

 日本では、若者も壮年も年寄りも「デモや投票に行ったところで何も変わらない」と醒めている。首長選挙の投票率が40%を割ることもある。一方、目立った成果を上げていない小泉首相の支持率が50%を超すのだからよく分からない。

 西欧諸国の国民は権力の帰属をめぐり、絶対君主との熾烈な戦いの歴史を持っている。民主主義の礎となったイギリス名誉革命、それに続く権利宣言やフランス革命は歴史上の出来事ではなく、現在へとつながっている。国家の枠を超えるEUは、戦争を繰り返した歴史を克服しようという画期的な試みであることは言うまでもない。(ここでは西欧諸国の植民地主義の罪は問わない)

 その対極に位置しているのが日本である。長い間、行政は「お上の恩恵」だった。戦後の民主主義も、戦争に負けたことによって占領軍から与えられた意外な恩恵で、国民自身の希求と犠牲によって実現したものではない。だから、時間の経過とともに民主主義が社会の隅々に浸透するのではなく、むしろ形骸化していった。

 議会や多数決など民主主義のルールは同じでも、西欧のような犲足瓩ない。だから、「意思表示したところで何も変わらない。まして、デモなんてカッコ悪いし、疲れるだけ」と簡単に諦める。国民の意思表示によって社会を大きく変えた歴史がないから仕方ない面もあるが、それを政治家や役人は困った顔をしながら喜んでいる。

 鬱屈した気分は内向し、矛先が権力者ではなく、より弱い者に向かっている。川崎市のマンション投げ落とし事件や相次ぐ幼女殺害事件などがそれである。失業者やニートや低所得者による動機なき(あり?)犯罪を減らすには、国民の意思で社会を変えられることを証明して見せることで、それまで膨大なコストを払い続けなければならないだろう。

 民主主義力の衰退は生命力の衰退につながり、社会の活力を削ぐ。世界的な視野で見れば恵まれているのに、そのように感じない精神のありようは、病んでいるように見える。

(奥平)

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