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7月17日付の地元紙に、賽銭泥棒の記事が2つ載った。伊達市月舘町の神社の被害額は2158円、逮捕されたのは無職A(39歳)と、妻の無職B(40歳)。
会津若松市河東町の神社の被害額は約1300円、逮捕されたのは住所不定、無職C(32歳)と、住所不定、無職少女(19歳)。少女を除いた3人は実名だった。
警察が捜査するのは当然としても、マスコミに容疑者の実名を伝え、それをマスコミが報道すべき事件だろうか。両者の人情味を欠いた、
あまりに事務的な対応に唖然とする。
4人が金に窮していたことは容易に想像できる。そんなに入っていると思えない田舎の神社の賽銭を狙ったところに、気の弱さが見て取れる。
大胆な性格なら、万引きや強盗を働いていた。宗教施設内での事件だから、もっと鷹揚でよい。こういうとき、昔の人は「定職に就き、
二度とこういうことをするな」と諭し、小金を渡したものだ。
4人に同情的な理由は、もうひとつある。憲法第25条を持ち出し、生活保護を受けられるにもかかわらず、不安定な生活を続けていたことである。
7月10日、北九州市の一人暮らしの男性(52歳)が自宅で餓死していたのが見つかった。男性は肝臓を害し、昨年12月から生活保護を受けていたが、
今年4月、福祉事務所から「そろそろ働いてはどうか」と言われ、受給の辞退届を出したという。
一方、男性が残した日記には、「働けないのに、働けと言われた」「おにぎりを食べたい」などのメモが綴られていたという。
事件発覚後、福祉事務所は「こちらに落ち度はない」とコメントしたが、保身がミエミエで怒鳴りつけたくなる。生活保護は困った家庭の最後の砦。
ハローワークと協力して自立を目指し、柔軟に対応する。打ち切る際は、仕事に就いたかどうかを確認し、賃金が支払われるまで支援する。
ところが、担当職員はデスクに座ったままで、現場に出ようとしない。財政難のため、自治体が生活保護のハードルを高くしている面もある。
自分たちの厚遇を維持しながら、援助が必要な人々への支出をけちるなんてどうかしている。
無職者・低所得者が増え、不安定な社会になっている。自暴自棄の犯罪を防ぐためにも、生活保護制度は維持しなければならない。
中には不正に受給している人もいるかもしれないが、それは担当職員の調査不足の問題で、制度の問題でない。
アメリカのような殺伐とした社会を望まないなら、応分の負担を覚悟すべきだ。
(奥平)
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