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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
続・事件屋 竹内陽一氏の仮面を剥ぐ
月刊政経東北
政経東北速報解説版
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言論の効用(2007年12月号)

 信濃毎日新聞主筆の桐生悠々は1933年(昭和8年)8月、首都圏で行われた防空演習に対して、『関東防空大演習を嗤う』という社説を書いた。 「空襲を受ければ、木造家屋が多い東京は大火災を起こし、関東大震災(1923年9月)規模の被害が出る。敵機を東京の空に迎え撃つということは、 わが軍の敗北そのものである」というもの。軍部が社説に激怒し、長野県の在郷軍人会が信濃毎日新聞の不買運動を展開したため、 桐生は退社を強いられた。

 衆院議員の斎藤隆夫は1940年(昭和15年)2月、「(支那)事変というけれど、実際は戦争であり、しかも大義名分がない戦争である」として、 早期終結を主張した(支那事変処理に関する質問演説=いわゆる反軍演説)。4年前の1936年(昭和11年)5月には、 「三月事件、一〇月事件、五・一五事件など過去のクーデター未遂事件を甘く処理したから二・二六事件が起きた」として、 軍首脳の対応を厳しく批判している(粛軍に関する質問演説)。斎藤は「反軍演説」で懲罰動議を可決され議席を失ったが、 1942年の衆院選(大政翼賛会非推薦)で返り咲いた。

 前記の社説・演説とは比べようもないが、本誌は1985年(昭和60年)2月号で初めて公務員厚遇問題を取り上げた。 見出しは「『県職員の給与の実態』が示す官民の所得格差―年間140万円以上の開き」。1988年(昭和63年)2月号でも「公務員給与の詐術」という見出しで、 人事院・人事委員会の大企業に準拠した給与調査を批判している。それから20年経ち、国も地方自治体も借金で首が回らないのに、公務員厚遇を是正しない。 一体、政治家は何を考えているのか。

 影響力がなかったとも言えるが、しかし、それは本誌の責任ではない。是正しなかったのは為政者で、「そうだ、そうだ」と囃子立てなかった国民にも責任がある。 桐生の社説や斎藤の演説も、同じことが言える。

 権力者は耳の痛い話を「事情を知らない素人の考え」と切って捨てがちだが、できないならその理由を説明しなければならない。 適当にごまかし続けていると、どうにもならなくなる。権力者はポストを去っても、歴史的な責任から免れられないことを肝に銘じるべきだ。

 結果を見れば、桐生・斎藤の主張が正論で、軍部が国を誤ったのは明らかである。結果論でないから価値があるとも言えるが、 それを生かせなかった権力者・国民の責任をもっと問うてもよい。

(奥平)

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