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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
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オレとワタシ(2008年 6月号)

 5月12日に開かれた文化審議会国語分科会の漢字小委員会で、「俺(オレ)」を新たに常用漢字に入れるべきかどうか議論になった。

 甲斐睦朗・京都橘大教授は「法令や公用文書では普通、『俺』は使わないから入れなくてもよいと思う」、松村由紀子・東京都目黒区立第8中学校校長は「学校で子どもが私的に『俺』を使うのはかまわないが、公的には『私』や『僕』を使い分けてほしい。公の場での使用を目安とする以上、あえて入れる必要はない」と述べた。

 一方、翻訳家で演劇評論家の松岡和子さんは「『俺』は相手との距離をはかるうえで大事な言葉。また、男性が心の中で自分を呼ぶ場合もだいたい『俺』を使う。その『俺』だけ仮名で表記しなければならないのはおかしい」と語った。

 「俺」を常用漢字に入れるべきかどうかはともかく、1人称の使い方は難しい。

 小学生のころ、学校では「僕」を使っていたが、家では「オレ」を使っていた。中学校・高校では、ボクとワタシを使ったが、ワタクシは使ったことがない。生まれ育った二本松の片田舎では、女性も「オレ」を使っていた。

 俺の語源は「ワレ」で、そのルーツは「ワ」という1人称代名詞までさかのぼるという。「僕」は召し使いのシモベに通じるから「ボカア」と言ったこともある。高齢者が「ボクは」と話すのを聞くと、いまでも違和感を覚える。「自分」と称する人もいたが、映画に出てくる旧日本軍の兵士みたいで好きになれない。

 雑誌の仕事をするようになり、国会議員や市町村長、年長者と接するときは「ワタシ」を使った。「オレ」は無礼な感じがしたからだ。とはいえ、議論が白熱すると地が出て、思わず目上の人の前で「オレ」と言ったこともある。

 ワタシとオレを使い分けてきたわけだが、歳を重ねるにつれて年長者が少なくなり、オレを使うことが多くなった。それで失敗したこともある。四国の遍路道を歩いていたとき、大阪の遍路に「オレ」と言ったら驚かれた。関西弁の「ワシ」と違って乱暴に聞こえるらしい。郷に入ったら郷に従え、ということだろう。

 最近は、地域のちょっとした会合などでも「オレ」を使っている。それで浮いた感じになったことはない。誤解を与えるのはつまらないからワタシとオレを使い分けるのが賢明なのだろうが、「あの人はそういう個性」と思わせるのも悪くない。

(奥平)

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