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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
続・事件屋 竹内陽一氏の仮面を剥ぐ
月刊政経東北
政経東北速報解説版
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狂気の時代(2008年 7月号)

 1968年(昭和43年)10月から11月にかけて、東京のガードマン(27歳)、京都のガードマン(69歳)、函館のタクシー運転手(31歳)、名古屋のタクシー運転手(22歳)が相次いでピストルで殺される事件が起きた。翌年4月、東京の予備校に侵入してガードマンに見つかり、発砲して逃げたが、間もなく逮捕された。犯人は19歳の少年で、いずれも金銭目的の犯行だった。いわゆる永山則夫連続射殺事件である。

 永山は両親から育児と教育を放棄され、読み書きが不十分だった。判決は、地裁が死刑、高裁が情状を酌量して無期懲役、最高裁が「他の兄弟姉妹7人が犯罪者になっていないことから、劣悪な生育環境が連続殺人の決定的な原因とは認定できない」として死刑。死刑執行は1997年8月。

 高裁が4人殺した被告の生育環境に同情し、減刑したのは意外でない。当時はまだ貧しく、それゆえの犯罪に同情的な雰囲気があったからだ。動機の分からない犯罪が少ない時代だったとも言える。

 40年後、東京の秋葉原で連続殺傷事件が起きた。犯人は青森県出身の25歳の派遣社員。「人を殺すため秋葉原にやってきた。世の中が嫌になった。生活に疲れてやった。だれでもよかった」と供述しているという。テレビで事件を知り、呆然自失となった。

 動機は何だ。

 世の中が嫌になることや生活に疲れることはよくあるが、青年のせりふとは思えない。百歩譲って、大量無差別殺傷がどうしても結びつかない。

 一人ひとりを見ると普通の人なのに、平然と大量無差別殺人をやってのける。例の宗教団体のメンバーのことだ。この事件を契機に、社会のタガが外れた感じがする。今回の事件は、大量無差別殺人が集団の犯罪から個人の犯罪に拡散したことを示す。いずれ類似の事件が起きるだろう。

 宗教団体のメンバーも25歳の青年も、永山と違って高等教育を受けている。にもかかわらず、短絡的な行動に出たのはどこかに大きな欠落があるからだ。凶悪・異常のハードルが年々低くなっている原因を突き止めるには、専門家による被告・受刑者の精神分析が欠かせない。

 ただ言えることがある。将来に希望を見いだせない若者の存在は、人間関係、教育制度、社会のありようなどを映す鏡だということである。一つや二つの施策で是正できるようなものではなく、息の長い取り組みが求められる。それには膨大なコストがかかるのは言うまでもない。

(奥平)

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