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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
続・事件屋 竹内陽一氏の仮面を剥ぐ
月刊政経東北
政経東北速報解説版
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悪い予感(2009年 1月号)

 昨年11月に起きた元厚生省官僚連続殺傷事件は「国民受けを狙った極右・極左による年金(あるいは医療・福祉)テロに違いない」と思った。ところが、警視庁に出頭したのは無職の男性(46歳)で、動機が「三十数年前、保健所に処分された愛犬の仇討ち」と聞いてあぜんとした。

 旧厚生省は医療・保健・社会保障を管轄する国家の行政機関、保健所は地域保健法に基づいて設置されている都道府県(及び政令市・中核市)の行政機関。元官僚の住所を調べられる男性に、このようなことが分からないとは思えない。

 これまでになかった「奇妙な動機の犯罪」を演出し、犯罪史に名をとどめるのは確実で、それが狙いなら公判で多くを語らず、刑に服するだろう。一方で、スポンサー付きのテロ、あるいは十分すぎる証拠を前に捜査の不手際を嘲笑する可能性も捨て切れない。

 最近の政治テロを挙げると、87年5月の朝日新聞阪神支局銃撃事件(2人死傷、未解決)、90年1月の本島等長崎市長銃撃事件(重症、犯人は右翼団体構成員)、02年10月の石井絋基民主党衆院議員刺殺事件(犯人は右翼団体構成員)、07年4月の伊藤一長長崎市長射殺事件(犯人は暴力団幹部)。

 朝日新聞は右翼団体から「報道が反日的」と目の敵にされていた。本島市長は「昭和天皇に戦争責任がある」と発言して右翼団体から糾弾されていた。石井衆院議員は国会で「政・官・業」の癒着を追及していた(動機は犯人との金銭トラブルではなく何らかの口封じとみられる)。伊藤市長は公共事業をめぐり犯人から筋違いの圧力をかけられていた。一連の事件が、マスコミや政治家に恐怖心を植え付けたのは間違いない。

 思い出されるのは、1930年代に起きた青年将校によるクーデター事件、右翼団体構成員による前蔵相・財閥幹部の暗殺事件。彼らは、国を行き詰らせた元老・重臣・財閥・政党など支配層を打倒して軍中心の強力な内閣をつくり、内外政策の大転換を図ろうとした。その試みは失敗に終わったものの、良質の人々を黙らせ、軍部が権力を掌握し、無謀な対米戦争へと傾斜していった。

 当時と事情は異なるが、雇用、医療、年金、福祉など社会システムが崩壊しつつあるにもかかわらず政治が機能せず、国民の間に不安が広がっている。中には「こんな世の中、生きていてもしょうがない」と、自暴自棄的な犯罪に走るケースも。今後、何が起きても不思議ではない。

(奥平)

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