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07年の実質GDPは560兆円(世界第二位)。08年10〜12月期の実質GDP成長率が前期比マイナス3・2%(年率換算マイナス12・1%――第二次速報値)になったが、08年の実質GDP成長率はマイナス0・7%にとどまっている。仮に09年の実質GDP成長率がマイナス10%前後に落ち込んでも、91〜92年並みの実質GDPを確保できる。
日本は人口に比べ経済規模が大きいから、いつまでも成長し続けるのは難しい。また、所得、社会福祉、インフラが低水準のまま、GDPが増えても意味がない。
GDPに占める割合は、民間消費が50%以上で、輸出が20%以下にすぎない。日本より外需に依存している国が多数あり、ことさら悲観すべきでない。さらに、中国とインドが市場を開放し、巨大マーケットが出現したのも好材料である。
日本は戦後、官民一体となって物づくりに努め、世界に売り込んだ。尖兵となったのは日本貿易振興会(現・日本貿易振興機構)と商社マンだった。当初、「安物の粗悪品」と散々だったが、品質向上とともに広く受け入れられ、確固たる地位を築いた。当時、売り込みに苦労した話をよく聞いたものだ。
例えば、ホンダの創設者・本田宗一郎氏は、箱根の山を越えられる自動車をつくることに情熱を注いだ。いまでは笑い話になるが、日本車はすぐオーバーヒートして、長い坂道を登れなかったのだ。今日の自動車業界の隆盛を見るとき、隔世の感がある。
にもかかわらず、円高だとか世界不況だとか、売れない理由をいくつも挙げて悲観的な観測に終始している。言葉や習慣や気候など、現地で苦労したことを忘れたのか、と言いたくなる。インドや中国は経済格差が大きいから、ローテク商品の需要もまだまだ多いはずだ。
問題は、日本の政治。言うまでもなく政治は、経済、行政、外交・防衛の要で、これが安定しなければ企業活動や国民生活の軸足が定まらない。
日本国民の金融資産は1000兆円を超える。それを1割消費すれば前年度並みの実質GDPとなるのに、株や投信などで大損しているうえ、老後に不安があるから使おうとしない。これは明らかに政治の責任である。
ノーベル賞を受賞する日本人がいる中で、日本の政治のダメな理由をあれこれ解説してみせる評論家や学者はたくさんいるが、具体的にどうすべきか、分かりやすく教えてくれる「日本の英知」は見当たらない。
(奥平)
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