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せっかく政権交代したのに、崩壊の危機にある。その原因は「政治とカネ」などではなく、鳩山首相はじめ閣僚の資質にある。要するに、与党を追及する能力はあったものの、統治能力はなかったということだ。いまさら何の役にも立たないが、民主党政権の「失敗」をおさらいしたい。
次期衆院選までに実現すべき大目標を絞り込むとともに、各省庁が直面している問題については「こういう方針でやろう」と決めなかったこと。だから、閣僚が勝手なことを言い出す。
例えば、郵政民営化の見直し。鳩山内閣は「大きな郵貯」か「小さな郵貯」か。「小さな郵貯」を目指すなら、預金限度額を増やし、全国一律サービスを強制し、多数の非正規社員を正社員にするのは明らかに逆行している。亀井大臣が内閣(首相)の方針に従わないなら、罷免すべきだった(結局、鳩山首相はどうでもよかった)。
普天間基地移設も成算があったわけではなく、単なる思い付き。官僚は鳩山首相が窮地に陥ることを知っていたが、「政治主導(官僚排除)のお手並み拝見」ということで座視していた。官僚のノウハウを吸収してから政治主導を実践すればよいのに、内に敵をつくってしまったのである。似たケースは他省庁にもある。
民主党は「国の総予算207兆円を組み替え、税金のムダ遣いをなくし、マニフェスト実現の財源とする」と主張して衆院選に勝利した。選挙に勝つため多少のアメは許されるが、多くの国民が期待した施策を、財源難を理由に反故にするのは認められない。例えば、国家公務員の総人件費2割削減、年額31万2000円の子ども手当(一部実施)、高速道路の原則無料化、自動車関連諸税の暫定税率廃止など。国家戦略担当大臣から財務大臣に横滑りした菅直人氏はやるべきことをやらないで消費税アップを言い出し、財務官僚を喜ばせている。
このような政府に地方自治体が不安に思うのも無理はない。しかし、「その日暮らし」ならぬ「その年暮らし」の財政運営を通り続けてよいことにはならない。地方自治体の中には「バランスシート」を公表し、「これだけ資産がある」と吹聴するが、とんでもない。道路や公園や庁舎など売れないものを資産に計上したところで何の意味もないからだ。
地方自治体の首長は権限・税源の移譲を歓迎しているが、もっと大事なのは予算や重要案件について住民投票を義務付けるなど、住民の直接的な政治参加を保障することである。
(奥平)
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