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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
続・事件屋 竹内陽一氏の仮面を剥ぐ
月刊政経東北
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不安な国の対応(2012年 9月号)

 水俣病特別措置法に基づく被害者救済の申請が7月末で打ち切られた。対象は、熊本・鹿児島・新潟3県の関係住民。

 水俣病が公式確認されたのは1956年。国の認定基準は厳格で、認定患者は約3000人に過ぎない。認定から漏れた人々が救済を求め、相次いで訴訟を起こした。そこで、当時の村山内閣が考え出したのが1995年の「政治決着」だ。認定患者とは認めないが、被害者として一時金などを支給するというものである。ところが、2004年、1つだけ残った関西訴訟で、最高裁がより緩やかな認定基準を示したため、多くの患者が名乗りを上げた。そこで、政府は水俣病特別措置法を成立させた。このときも認定患者とは認めず、一時金などを支給して「第二の政治決着」を図ろうとしたのである。

 救済打ち切りを主導したのは、将来の首相候補とされる細野環境大臣。原発事故担当を兼ねるから、福島県民は不安な思いに駆られる。

 特措法は「救済を受けるべき人々があたう限りすべて救済されること」としている。ところが、生まれた場所や原因企業「チッソ」が排水を止めた1969年12月で線を引いた。汚染されたヘドロの浚渫が終了したのは90年代前半だから、線引きの根拠はないと断言できる。

 そもそも責任は企業と国にあるのに、広範な健康調査を実施しないのは不誠実だ。しかも、発症には個人差があるから、救済期限を設けるのは合理的でない。おそらく、政治家も官僚もそのようなことは分かっている。ただ、過去の不始末のためにカネをこれ以上使いたくないのだ。

 同じことは原爆被爆者にも言える。被爆者に該当するのは「原爆が投下された際、指定区域で直接被爆した人と、その人の胎児」とされ、指定区域外で黒い雨などによって被爆した人は除かれている。

 原発事故による被ばく者も、水俣病や原爆被爆者と同様、厳格な認定基準を強いられ、医療や補償を受けられない可能性がある。それを防ぐには、詳細な行動記録や第三者の証言などが欠かせないが、個人としてではなく、集落単位で行うのが望ましい。将来の紛争に今から備えるのだ。

 本格的な除染作業が進んでいない。「中間貯蔵施設が決まらないため」としているが、汚染地域を買い取って設置すればよいわけで、県・町村に相談するまでもない。本格的な除染作業はカネがかかるから、意図的に遅らせているのではないか。そうでないなら、早急に進めてもらいたい。

(奥平)

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