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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
続・事件屋 竹内陽一氏の仮面を剥ぐ
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被災者に寄り添っていない(2013年 10月号)

 安倍首相が東京五輪招致のプレゼンテーションで語った「原発の状況はコントロールされている」との発言が物議を醸している。日本のトップがあそこまで断言すれば、実情を知らないIOC委員が納得するのは致し方ない。だが、日増しに深刻化する汚染水問題を見れば、コントロールされていないのは明白。多くの県民は安倍首相の妄言に怒り心頭だ。

 それでも、あの発言を国際公約と捉えれば国の本気度に期待したいところだが、問題は政府が重い腰を上げるまでに要した時間と過程である。

 この間、被災地の首長らは「東電に廃炉作業を任せるのではなく、国が前面に出るべきだ」と何度も指摘してきた。だが、安倍首相は野田前首相のいわゆる原発事故収束宣言は撤回したものの、国の積極関与には消極的だった。衆院選・参院選でも、県内向けには復興・廃炉が最重要課題と言いつつ、実際の関心は景気対策にあった。

 選挙前の世論調査では、県民も景気対策に最も期待を寄せていたから、それは構わない。だが、8月に入って汚染水問題が深刻化し、東京五輪招致が怪しくなると、それまで東電任せだった国が突然前面に出始めたから、県民は大きく失望した。「国がようやく本気になったのは、われわれのためではなく五輪のためなんだな」と。

 そこからの国の対応は素早かった。予備費から必要な予算付けをしたり、凍土遮水壁対策に乗り出したり、放射性物質除去装置・ALPSの増設を打ち出したり、国内外の知見を反映させた追加対策をまとめると言い出したり……。揚げ句には、風評被害払拭のため外務省などを通じて海外メディアに正しい情報を発信する仕組みまで整えるという。これまで、首長らが口を酸っぱくして言っても国は動かなかったのに、五輪招致がかかった途端、これだけの対策が矢継ぎ早に飛び出したのである。

 首相も知事も市町村長もそうだが、トップが絶対にやると強いリーダーシップを発揮すればかなりのことができる。それは安倍首相が五輪招致のため、もっと言うと海外から文句を言われないため次々と対策を打ち出したことでも分かるが、哀しいかな福島県民のためにはやる気がなかったことも同時に証明された。この間、安倍首相をはじめ閣僚たちが口にしてきた「被災者に寄り添う」が聞いて呆れる。

 もし国に、福島県民のためという考えが最初からあれば、廃炉作業が東電任せにされることもなく、今日の汚染水問題だってコントロールできていたかもしれない。

(佐藤)

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