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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
続・事件屋 竹内陽一氏の仮面を剥ぐ
月刊政経東北
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俯瞰する役割を放棄した佐藤知事(2014年 7月号)

 原子力規制委員会の島崎邦彦・大島賢三両委員が9月で任期切れとなるのを受け、政府は新委員に田中知氏(東大教授)と石渡明氏(東北大教授)を充てる人事案を提出、衆参本会議で可決された。

 島崎氏は地震学の見地から原発再稼働の審査に厳しい姿勢を貫き、電力会社から目の上のタンコブ扱いされてきた。自民党内からも公然と更迭を求める声が上がっていた。これに対し、後任の田中氏は有名な原発推進派で、2010年から日本原子力産業協会理事を歴任、東電関連団体や原発メーカーから報酬・研究費を受け取っていたことも判明した。

 原子力規制委は政府から独立した組織として民主党政権時につくられたが、委員を選ぶガイドラインには原子力ムラの住人が選ばれないよう欠格要件が定められた。これに当てはめると田中氏は不適格だが、石原伸晃環境大臣は「自民党政権は(ガイドラインを)つくらないのが政策」として、民主党政権が定めたルールを撤廃する方針を明らかにした。環境大臣として原発被災地を訪れ、避難者の苦労や除染の難しさを目の当たりにしてきた人物が平然とムラの住人を委員に据えようとしたことに驚いたが、その後、中間貯蔵施設をめぐる「金目」発言を聞いて「この人は義務的に福島県を訪れていただけで、何も見てこなかったんだな」と強く実感した次第。

 気掛かりなのは、そうした国の姿勢に佐藤雄平知事が物申さないことである。もちろん「金目」発言や、その前に話題となった「鼻血」描写の際は苦言を呈していたが、原子力規制委の人事については定例会見等を見る限り自らの考えを述べていない。

 佐藤知事はこれまでも、国策に関することは発言を控えてきた。廃炉も「第一・第二原発とも県内で再稼働はあり得ない」と強く主張する一方、他県の原発については記者から考えを問われても言及しようとしなかった。被災県の知事だからこそ、この間の経験から言えることがたくさんあるはずなのに、俯瞰する役割を放棄したのは嘆かわしい。

 田中氏の規制委員就任や石原大臣のルール撤廃発言に、佐藤知事が一言でも釘を刺していれば、原発再稼働を進める政府への牽制になったに違いない。

 「国策に一知事が口を挟むべきでない」と考えているとしたら大間違いだ。福島県だけが脱原発なんて綺麗事で、隣県で事故が起きれば放射能は再び県内に降り注ぐのである。

 今秋行われる知事選の候補者に注目が集まるが、次の知事は国の原発政策に対するスタンスを明確にすべきでないか。

(佐藤)

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