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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
続・事件屋 竹内陽一氏の仮面を剥ぐ
月刊政経東北
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「風評被害」と「いわゆる風評被害」(2014年 8月号)

 原発事故の目に見えない被害を表すフレーズとして「風評被害」という言葉がよく使われているが、違和感を覚える。

 大辞林によると、風評被害とは「事故や事件の後、根拠のない噂や憶測などで発生する経済的被害」とある。いまの福島県の状況を考えると、健康に影響を与えるほどに汚染された避難指示区域はもちろん、避難指示区域外で健康に影響を与えるレベルではないにしても、全域的に放射性物質で汚染された事実があるわけだから、「根拠のない噂や憶測」の類ではない。それに伴う消費者の買い控えなどは、風評被害ではなく「実害」である。

 筆者は、そうした考えから、「風評被害」というフレーズは極力使わないようにしている。その代わりに使っているのが「いわゆる風評被害」という言葉である。「風評被害」と「いわゆる風評被害」で何が違うのかと思われるかもしれないが、実はきちんと定義付けされている。

 原子力損害賠償紛争審査会が23年8月に公表した中間指針(賠償の基準をまとめたもの)には、「いわゆる風評被害」という賠償項目があり、その備考欄に次のように書かれている。

 いわゆる風評被害という表現は、人によって様々な意味に解釈されており、放射性物質等による危険が全くないのに消費者や取引先が危険性を心配して商品やサービスの購入・取引を回避する不安心理に起因する損害という意味で使われることもある。しかしながら、少なくとも本件事故のような原子力事故に関していえば、むしろ必ずしも科学的に明確でない放射性物質による汚染の危険を回避するための市場の拒絶反応によるものと考えるべきであり、 したがって、このような回避行動が合理的といえる場合には、賠償の対象となる。このような理解をするならば、そもそも風評被害という表現自体を避けることが本来望ましいが、現時点でこれに代わる適切な表現は、裁判実務上もいまだ示されていない。

 こうした考察のもと、原賠審(中間指針)では、賠償項目を「いわゆる風評被害」としているのだ。中間指針は数十ページにわたり、これはその備考欄のわずか数行であるため、見落とされているかもしれないが、こうしてきちんと定義付けされているわけ。

 いま県内で起きているのは「風評被害」ではなく「いわゆる風評被害」、つまりは「実害」であることをあらためて強調したい。

(末永)

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