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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
続・事件屋 竹内陽一氏の仮面を剥ぐ
月刊政経東北
政経東北速報解説版
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主導権を取り戻せ(2014年 9月号)

 8月11日、東京電力は福島第一原発の汚染水対策として、建屋周辺に掘られている井戸「サブドレン」から汚染された地s下水を汲み上げ、浄化して海に放出する方針を打ち出した。7月に県漁連に方針が伝えられ、8月下旬には県漁連の組合長会で浄化試験の結果が示されたが、漁業関係者の多くは風評拡大を懸念して、反対意見を表明している。

 同原発の敷地はもともと地下水が多く、サブドレンで1日約850トン汲み上げられていたが、震災・原発事故後はポンプの破損などで見送られていた。だが、25年9月に政府が発表した汚染水対策に、今後1〜2年のうちに行う抜本対策の1つとして「サブドレンによる地下水汲み上げ」と明記され、東電も新たに15本掘削して稼働準備を進めていた。

 ただ、同原発では汚染されていない地下水を汲み上げ海に放出する「地下水バイパス」計画が、地元漁業者との交渉を経て5月に始まったばかり。その影響がようやく公表されたタイミングで、続けざまに汚染地下水の海洋放出計画を打ち出すのは「スケジュールありき」の印象を受ける。もちろん、汚染水問題への抜本的対策は必要だし、時間をかければいいわけではないが、それなら県や漁業関係者には今後の見通しをあらかじめ説明しておくべきではなかったか。

 本誌昨年10月号記事では「地中にセメントを投入して原発周辺を固めれば地下水汚染拡散を抑えられる」という専門家の声を取り上げ、「解決策はあるのだからすぐに取り組むべきだ」と指摘した。だが、1年経過しても汚染水問題は何も改善しておらず、これまで切り札とされてきた凍土遮水壁も雲行きが怪しい。

 行き詰まった状態になってから、犖綵个轡献礇鵐吋鶚瓩里茲Δ房分たちにとって都合のいい解決策を提案し、決断を迫るやり口は非常にいやらしい。「時間が経てば地元関係者も『しょうがない』と協力してくれるだろう」という政府や東電の考えが透けて見えるようだ。

 県民がどんなに経済復興に努めても、原発事故や汚染水への不安が完全に払拭されなければ地域振興は進まない。政府・東電は早急に汚染水対策を見直し、関係者に今後の見通しを示す必要がある。

 政府・東電の対応に期待が持てないのであれば、いっそ県が複数の専門家を雇用して独自の対策を提言・実行していくのも手だろう。原発事故を起こした側に委ねるのではなく、県が主導権を握り、県民の立場に立って対策を打ち出していく――次の県知事にはそうした采配を振るうことを期待したい。

(志賀)

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