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原発事故の呪い(2014年 12月号)

 大学の研究者などを取材すると、震災・原発事故を機に研究テーマが変わってしまったという人が少なくない。それまで原発とは全く関係がなかったのに、たまたま平成23年3月11日に福島県に住んでいた、もしくは福島県出身だったというだけで、放射性物質や中間貯蔵施設に関わることになった、と。それがその人にとっての「運命」だったとも言えるが、多くの人生がねじ曲げられたという意味では、原発事故という「呪い」にかけられたとも言える。

 放射性物質が30年以上影響を及ぼし続けるように、原発事故の呪いは簡単には消えない気がする。避難生活を余儀なくされている人の苦労は続くし、いわゆる風評被害は県内のあらゆる産業に影響を与え続ける。県民は原発再稼働の是非や除染、放射能汚染の受け止め方など、どこまで行っても原発事故に関わり続けることになるだろう。一生忘れられない記憶を植え付けられたと考えると、あらためて原発事故の罪深さを実感する。

 もっとも、県民の多くはこうした呪いと向き合いながら、県内もしくは県外の避難先で「それでもここで生きていく」とある種の覚悟を持って暮らしているはずだ。だが、そうした感覚は県外の人に十分伝わっていないように感じるし、覚悟に対する評価も正当になされていないように見える。

 覚悟という意味では、原発事故で被害を受けた双葉郡や飯舘村の住民も、決して利便性が高いとは言えない場所で「何があってもここで暮らしていく」と決意し、地域コミュニティーをつくりながら生活していた。ところが、原発事故によってそうした思いは砕かれ、「帰還をあきらめて別な場所で暮らす」という真逆の価値観への切り替えを迫られている。高齢者の中には将来の帰還を望む人もいるが、それも無理からぬ話のように思える。

 精神的慰謝料や財物賠償の支払いは行われているが、地域で生きる人たちの覚悟を断絶させたということを国や東電はあらためて認識し、対策を講じる必要がある。そのうえで、現実的に帰還が難しい場所に関しては国が土地を買い取り、今度は「新たな場所で生きる」覚悟を後押しすべきだ。自由に立ち入る権利を与えれば墓参りする際も問題ないだろうし、子どもや孫の世代のことを考えれば早い段階で新天地のめどを付けた方がいいはずだ。

 12月14日、衆院選の投開票が行われる。原稿を執筆している時点ではまだ候補者は決まっていないが、県民が抱える複雑な思いにまで寄り添い、対策を講じられる政治家が求められる。

(志賀)

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