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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
続・事件屋 竹内陽一氏の仮面を剥ぐ
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「体験」で伝える災害教訓(2015年 3月号)

 震災・原発事故から間もなく4年が経過する。

 巨大地震とそれに伴う津波は沿岸部の風景を一変させ、約1800人もの死者・行方不明者を出した。原発事故はいまも収束しておらず、いまも約12万人が県内外での避難生活を余儀なくされている。

 ただ、こうした被害に関しては、時間が経過するにつれて話題になることも少なくなっており、確実に「風化」が進みつつある。震災・原発事故により大きな深刻な被害を受けた福島県だからこそ、当時の経験を教訓に防災意識を高めておく必要があるが、次世代に経験を伝えるのも簡単ではない。

 そうした中、岩手県釜石市では防災意識を次世代に伝えるための興味深い取り組みが行われた。津波発生時の避難を想定して同市市街地から高台に駆け上がる行事「韋駄天競走」が実施されたのだ。

 西宮神社(兵庫県西宮市)で毎年開催される「開門神事福男選び」にヒントを得て、釜石市の寺院・仙寿院が昨年から実施しているもので、1位には同神社ゆかりの「えびす像」が贈られる。

 2月1日の開催日には4〜84歳の男女59人が参加し、高台に続く長さ286メートル、高低差30メートルの坂道を全員が完走したという。

 同様の取り組みは宮城県女川町でも行われており、「津波が来たら高台へ逃げる」という避難時の基本を年中行事として続けていくことで、防災意識を高める狙いがあるという。

 県内の小中学校などでも防災教育が行われているが、教室の中で理論だけを教えられても、いざというときに実践するのは難しい。それよりも、釜石市や女川町のように地域行事の一環として坂道を駈け上がり、身体性が伴う「避難体験」を経験することで、緊急時にもスムーズに対応できるだろう。福島県においてもこうした取り組みを参考にして、震災・原発事故の際の教訓を伝えていくべきだ。

 県内では原発被災地を見学するモニターツアーがいくつか開催されているが、これに関しても、原発事故が起きた際にどのように情報を集めてどう行動するのか、どんなルートで避難するのか、実際に体験してみることで、当時の混乱ぶりや県民の心境が良く分かるのではないか。体験をうまく活用することで共感を得られやすくなることも多いはず。「風化」が進みつつあるいまこそ、こうした災害教訓をどのような方法で伝えるか、本気で考えるべきだ。

 そのためにも、まず震災・原発事故後の対応について、県、市町村があらためて検証作業を行い、伝えるべき教訓を洗い出す必要がある。

(志賀)

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