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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
続・事件屋 竹内陽一氏の仮面を剥ぐ
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風化の抑止に必要なこと(2015年 4月号)

 震災から丸4年を迎えた3月11日、各地で追悼式が開かれた。東京では安倍首相が式辞を述べ、福島では内堀知事がメッセージを読み上げたが、心に響かない。対する遺族たちのことばは重みが違う。

 政府主催の追悼式では岩手、宮城、福島の遺族代表が壇上に立った。中でも宮城県代表の女性(19)が述べた追悼のことばは衝撃的で、聞いていて目頭が熱くなった。

 家族とともに津波にのまれ、気が付くと、がれきの山の上にいたという女性。すると、がれきの中から声が聞こえてきた。母だった。母の体には釘や木が刺さり、足も折れていた。しかし、助けたくても女性一人の力では、がれきが大きく、重すぎて動かすこともできない。ここに留まれば流され、自分も死んでしまうと悟った女性は「行かないで」と言う母に「ありがとう、大好きだよ」と言い残し、近くの小学校に泳いで渡った――。

 震災後、風化が大きく懸念されている。追悼式翌日の新聞にも「風化させない」の文字が躍った。しかし、現実には風化を止めることはできない。

 自分自身を振り返ればよく分かる。阪神・淡路大震災や新潟県中越地震など、甚大な被害を受けた被災地に思いを寄せ続けることはしてこなかった。節目のタイミングで報じられるニュースに接し、被災地の現状を知る程度だった。

 風化の原因を全国紙やキー局が取り上げなくなったことに求める向きもあるが、さまざまな出来事が日々起こる中、被災地のことばかり連日報じるのは難しい。「震災から○年」のタイミングで特集が組まれているうちは、ずっと忘れていても、そのときだけは被災地や被災者に思いを馳せることができるのだから、まだマシと言える。

 しかし、被災地に根を張る地元メディアは違う。地元紙の1面は、ほぼ毎日のように震災・原発事故関連の話題だ。それでも、前述の女性のような壮絶体験はまだまだ知られていないものも多い。こういう話に「震災から○年」のタイミングにかかわらずスポットを当て続けることこそが、風化の抑止(※防止ではない)につながるのではないか。

 「風化させない」という肩肘張った言い回しは好きでない。それよりは、最初から「風化は避けられない」と認識した方が正直だ。県外の人たちに「忘れないで」と求めるのではなく、まず被災地の自分たちが忘れないこと。そのために、われわれ地元メディアが果たすべき役割を、5年目以降も考え続けていきたい。

(佐藤)

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