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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
続・事件屋 竹内陽一氏の仮面を剥ぐ
月刊政経東北
政経東北速報解説版
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汚染を生じさせた責任(2015年 9月号)

 震災・原発事故直後、県内の放射線量が上昇する様子を見て、県内の農畜産業・水産業は再生不可能と感じていた。だが、生産者や関係団体、研究者がさまざまな対策を講じた結果、当初予想されたほど壊滅的な状況ではないことが分かりつつある。

 例えば、農作物に関しては、土壌中の放射性物質の吸収率である「移行係数」が割り出されている。それを基にゼオライト・カリウム散布などの吸収抑制対策を実施したり、農地除染を行うことで、基準値を超えることが少なくなっている。

 水産物に関しては、水産庁や県などにより調査が行われており、27年4〜6月期に調べた1006検体中、基準値を超えたものは1つもなかった。海に流れた放射性物質は拡散・希釈されながら海底に移動したと考えられている。

 こうした現状が報道されているのに加え、県民がそれぞれ情報収集していることもあって、放射能汚染に対する警戒心は一時期より弱まっている。県外の避難先から県内に戻ってきたという話をよく耳にするし、屋外で子どもたちが遊ぶ姿も普通に見られる。「県外の人間が放射能汚染の不安を過剰に煽り続けることで風評被害が続く」、「もう危機的な状況は去り粛々と収束作業が進められているのだから、放っておいてほしい」という声も聞かれるほどだ。

 しかし、日常生活が戻りつつあっても、県土の広い範囲が放射性物質により汚染され、対策を余儀なくされたのは事実。事故前の環境に戻りつつあることに満足するだけでなく、「なぜわれわれが放射能汚染を気にして生活しなければならないのか」、「こうした状況を作ったのは誰か」と原因者である国や東京電力の責任を追及する必要があるのではないか。

 例えば飲食店に行ったとき、自分が座るテーブルの近くで他人がくしゃみをして、その飛沫が皿の中に入ったとする。くしゃみをした人がどれだけ「風邪はひいていないから安全」と説明しても、生理的に嫌悪感を覚えて食べられない人は多いだろうし、「手で口を抑えるなどの対策は講じられなかったのか」と抗議するはずだ。もちろん、危険性を煽ったりデマを流すのは論外だが、責任追及の立場を放棄するような考え方は国や東電の思うつぼだろう。

 原発事故後も東電は経営破綻することなく営業を継続しており、国は原発再稼働を推進している。誰も責任を取ることがないまま、8月11日には九州電力川内原発が再稼働した。再び悲劇が繰り返されないようにするためにも、「汚染を生じさせた責任」にもっと目を向けるべきだ。

(志賀)

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