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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
続・事件屋 竹内陽一氏の仮面を剥ぐ
月刊政経東北
政経東北速報解説版
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「幕引き」ムードへの懸念(2016年 3月号)

 震災・原発事故から丸5年が経過する。

 5年間を振り返ると、立ち入り制限されていた避難指示区域が解除され、寸断されていた交通網が再開するなど、復旧・復興が進んでいると感じる点も多い。その半面、原発の収束作業や除染、放射能汚染による健康被害の不安、原発被災者への完全賠償、中間貯蔵施設建設などの課題はまだ解消されていない。

 国や東電には原発事故を起こした当事者として、今後もこうした根本的な課題にも責任を持って対応することが求められる。ただ、実際には商工業者への営業損害賠償に終期が定められたり、自主避難者に対する住宅の無償提供打ち切りが決定されたりと、原発被災者支援に「幕引き」を図る動きが加速している。

 月刊誌『世界』2月号で原発事故による避難をテーマとした座談会企画が行われていたが、毎日新聞の日野行介記者が興味深い指摘をしていた。

 《実は、この間の取材を通して、国が進めているのは「帰還政策」ではないのではないかと思うようになったんです。避難指示を解除したり、仮設住宅に入居している人がいなくなることをもって復興を遂げたことにしたい。「復興の加速化」とはたんなる避難終了政策ではないか》

 国にとっては「避難指示区域をなくすこと=復興」であり、支援打ち切りもそうした考えに基づき行われているのではないか、と。そうすると、住民がどれだけ帰還し、復興を果たしていくかという点に国はあまり関心を持っていないのかもしれない。

 伊達市霊山町の旧特定避難勧奨地点付近に住む男性はこんな風にも話していた。

 「勧奨地点解除後、市と住民が話し合って復興プランが策定されたが、山や農地が汚染され、若い世代が出ていったこの地域を、本当の意味で復興するのは不可能です。原発事故の加害者である国はこの責任をどう取るつもりなのでしょうか」

 インフラ復旧や施設整備、イノベーション・コースト構想など復興が強調されるが、原発事故により地域が崩壊したことや国の責任に目が向けられる機会は少なくなっており、そうした現状に疑問を唱えているわけ。

 「被災者はそろそろ自立すべきだ」という意見もあるが、被害が発生している限り、加害者に被害回復措置を求めるのは当然のこと。5年の節目が風化防止ではなく、被災者支援の「幕引き」に利用されないよう、県や市町村が中心となり、加害者としての責任を引き続き指摘していく必要があろう。

(志賀)

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