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復興の根底にあるもの(2016年 6月号)

 熊本・大分両県に深刻な被害をもたらした熊本地震。4月14日以降、震度7や6強の大地震が続発し、5月27日現在、死者・行方不明者の数は50人、被害を受けた住宅は10万7923棟に上る。

 地震直後の混乱に加え、電気やガスの復旧、高速道路の通行再開、学校の授業スタートなど、着々と復興が進む様子を見ていると、つい東日本大震災直後のことを思い出してしまう。

 水や電気が使えず、食料品やガソリンなども不足していたため、仕事以外の時間は給水所やガソリンスタンド、スーパーマーケットなどを効率良く回ることに神経を向けていた。当時は「日常を取り戻したい」、「家族や仲間を日常通りに生活させてあげたい」という一心で行動していた。日常に近い生活を過ごし、いつものペースを取り戻すことで、復興に向けた態勢を整えられるのではないか、と思ったのだ。こう考えたのは私だけではないだろう。

 震災・原発事故から5年以上経過し、こうした感覚は忘れがちだが、被災者の思いを理解するうえで案外重要な考え方だと思う。例えば、生活環境や放射線対策が十分に整っていない避難指示区域への帰還を望む声が聞かれるのは、「かつて住んでいた場所に戻ることで、日常を取り戻したい」という思いを抱いているからだろうし、低線量被曝を懸念されながら県外避難に踏み切らない県民が多かったのも、知識不足や経済的事情ばかりが理由でなく、「日常を過ごしながら落ち着いて対応していくべきだ」という人が多いからだろう。そういう意味で、今後の復興の鍵を握るのは「日常の再構築」だと思う。

 「復興の教科書」というウェブサイトがある。阪神・淡路大震災の後に実施された兵庫県生活復興調査の結果を分かりやすまとめたものだ。同サイトによると、被災者や支援者が挙げた「生活再建に必要なもの」の中で、圧倒的支持を占めたのが「すまいの再建」と「人と人とのつながり」だった。

 一生付き合っていくはずの住宅や大切な人を失った悲しみから立ち直るためには、それに代わる住宅や人間関係が必要となる。だが仮設住宅、災害公営住宅と移り住めば、そのたび人間関係はリセットされる。要は、腰を据えて暮らせる「新たな日常」を作ることが生活再建を進めるうえで必要だ、と。

 復興と言えば新しい制度・施設を設けることを想像しがちだが、根底にあるのは「日常を取り戻したい」というシンプルな考え方だ。政府や行政はこうした点も十分考慮したうえで被災者支援を講じていくべきではないか。

(志賀)

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