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教訓を伝え続けるしかない(2016年 9月号)

 8月12日、愛媛県伊方町の四国電力伊方原発3号機が再稼働した。新規制基準のもと再稼働した原発は、九州電力川内原発1号機(平成27年9月)、同2号機(27年11月)、関西電力高浜原発3号機(28年1月)、同4号機(28年2月)に続き5基目となる。ただし、高浜原発3、4号機は運転差し止めの仮処分を下されているため、現在は稼働していない。

 同町は東西に細長く伸びる佐田岬半島に位置し、同原発は半島の東側の付け根部分にある。約5000人が原発西側の「予防避難エリア」に住んでいるが、避難路になる国道は原発のそばを通っており、周りは海。事故発生時に道路が寸断された場合は、船舶で九州側に海路避難したり、屋内退避で凌ぐことになるが、地震で津波が発生したり住宅が壊れることもあり得るので、万全の対策とは言い難い。

 伊方原発の北側には「中央構造線断層帯」という日本列島を横断する巨大な活断層が走っており、東日本大震災以上とも予想される南海トラフ地震の影響も考えなければならない。そもそも同原発が再稼働しなくとも、四国の夏の電力需給は安定しており、四国電力の連結決算も黒字だったという。にもかかわらず、なぜ急いで再稼働を進める必要があるのか。

 原発の寿命はせいぜい40年なので、各電力会社としては一刻も早く再稼働して収益につなげたい。そうした中で国は昨年、2030(平成42)年の電源構成目標を策定し、全体の20〜22%の電力供給を原子力発電に担わせる方針を示した。電力会社は安心して再稼働を申請し、新規制基準をクリアするための安全対策に巨額の投資をしている。

 原発事故以降、住民による原発の運転停止を求める訴訟が各地で行われており、司法の判断に期待が集まっていた。ただ、2月号巻頭言でも述べた通り、高浜原発3、4号機の再稼働差し止めを認める仮処分決定を下した福井地裁の裁判長が、その後名古屋家裁に"左遷"された。伊方原発3号機にも住民により運転を止める仮処分が申請されているが、今度は国の意向を忖度した決定となる可能性も否定できない。7月に就任した三反園訓・鹿児島県知事は「脱原発」を掲げ、川内原発一時停止を要請する方針を打ち出しているが、"国"を相手にどこまで戦えるか。

 原発事故を実際に経験したわれわれにできるのは、事故の教訓を伝えていくことだ。原発事故により、ふるさとを失い、平穏な日常を失った人がいる。避難生活の影響で亡くなった人などを含む震災関連死は2078人に上る。これだけのリスクを負って原発を再稼働させる意味がどこにあるのか。

(志賀)

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