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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
続・事件屋 竹内陽一氏の仮面を剥ぐ
月刊政経東北
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復興は簡単ではない(2016年 12月号)

 三省堂新明解国語辞典によると、復旧とは「壊れた所・物が、元通りに直るようにすること」、復興とは「一度衰えたものをもう一度盛んにすること」という意味だ。

 震災・原発事故直後、被災地の自治体や本誌も含むマスコミでは「復旧ではなく復興を目指す」というフレーズを好んで使ってきた。被害個所をただ復旧させるだけではなく、この機会にさらに生活しやすい環境を目指すべきだと考えたからだ。

 だが、実際には復興どころか、復旧、すなわち原状回復すら難しい現状だ。震災で損壊したインフラは復旧したものの、例えば、原発事故により避難を余儀なくされた市町村は、避難指示が解除になったとしても、まだ"元通り"になったとは言えない。自然環境が汚染されたのに加え、地域コミュニティーも失われ、そこで過ごしてきた思い出や覚悟、価値観が同じ仲間ができた喜びや未来への希望は以前の形に戻すのが困難だ。そのうち環境は変化し、復興はどんどん遠くなっていく。

 本誌11月号「震災後の県内経済を支える『双璧』に陰り」という記事では、県内経済を支えてきた復興特需に陰りが見え始めており、原発賠償に関しても、いわゆる風評被害を受けた商工業者への営業損害賠償が事実上打ち切られたため、倒産も徐々に出始めていることを報じた。

 復興需要を背景に全国的高水準となっていた県内有効求人倍率(28年9月)は1・35倍となり、2カ月連続で全国平均を下回った。27年度に県内を訪れた観光入り込み数は5031万3000人で、22年度5717万9069人には及ばない。本県経済活性化の起爆剤として期待されている福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想はまだまだ見通しが立っていない。

 震災・原発事故から5年半以上経過してもなお、原状回復もままならないことが分かったいまこそ、「被害の深刻さ」と「復興は簡単ではない」ということを再認識して「復興」を進める必要があろう。

 11月2日、2020(平成32)年東京五輪・パラリンピックを盛り上げるための「フラッグツアーイベント」が福島県庁前で開催され、出席した小池百合子東京都知事は「復興五輪」を強調した。福島県でも東京五輪追加競技の野球・ソフトボールが一部の試合のみ開催される見通しだが、それによりどんな「復興」の姿を世界に発信するつもりなのか。何だか東京五輪に"消費"されて終わりそうで、テレビや新聞のように無邪気には喜べない。

(志賀)

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