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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
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「見せかけの復興」では意味がない(2017年 3月号)

 震災・原発事故から丸6年が経過する。昨年からの大きな変化は、帰還困難区域以外の避難指示今春にもすべて解除され、飯舘村、川俣町山木屋地区、富岡町、浪江町が帰還可能になる見通しという点に尽きる。今月号で浪江町住民懇談会の様子をリポートしているが、この間本誌で取り上げてきた各地の住民懇談会では、住民から「時期尚早」との意見が相次いだ。結局は国や各自治体の判断で解除が決まってきたわけだが、敢えていま問いたいのは「そこまで解除を急ぐ必要があったのか」ということだ。

 1月から2月にかけて東京電力福島第一原発2号機で、原子炉内の燃料デブリ取り出しに向けたロボット調査が行われ、格納容器内の線量が1時間当たり推定530シーベルトに上ることが分かった。詳細は46頁からの記事に譲るが、この報道を受け、あらためて帰還断念を決意した避難者も少なくないようだ。

 原発周辺の空間線量は下がっているので周辺に漏れ出ているわけではないが、絶対安全と言われた原発で事故が起きたように、どんなトラブルが起きないとも限らない。小出裕章元京大助教など「燃料デブリ取り出しは技術的に不可能」という専門家も多く、帰還後は不安とともに生きていくことになる。

 解除条件として国が示す「空間線量20ミリシーベルト以下」という基準も原発事故前から考えると十分高い。本誌1月号で紹介した通り、ロシア政府のチェルノブイリ原発事故報告書によると、甲状腺がんが多発したのは事故から4、5年後以降で、低線量地域の子どもや事故時10代後半だった人の発症増加も目立ったという。放射性セシウムと甲状腺がんの関連性も指摘されており、「福島の子どもにも影響が出るのではないか」との不安は拭えない。

 仮に帰還しても、そこはかつての故郷ではない。生活インフラが概ね整備されていても、健康不安の解消や教育環境、利便性を求めて移住する人も多いだろうから、生活や人間関係まで元通りになるとは限らず、一から再構築していく覚悟が求められる。

 にもかかわらず、国が解除を急ぐのは、避難指示区域を縮小し実質的に国が負担している賠償額を減らしたいのと併せて、平成32年の東京五輪で世界に向けて復興をアピールしたいと考えているからだろう。ただ、こうした「見せかけの復興」では、心理的な面も含めた原発被災者の救済は進まないし、解除が各種支援打ち切りの口実にされる可能性もある。この機会に解除の在り方を検証し、解除後も被害が続く限り支援・賠償していく仕組みを国・東電が責任を持って作る必要がある。

(志賀)

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