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最後まで釈然としなかった避難指示解除議論(2017年 5月号)

 原発事故に伴う避難指示区域は、帰還困難区域を除き、大部分が4月1日までに解除された。この間、筆者は避難指示解除に当たっての住民説明会などを何度も取材したが、「避難指示解除の進め方」については、釈然としないまま、実質的にすべての地域の避難指示解除が完了した。

 最も釈然としないのは、なぜ少数派を優先したのか、である。筆者が取材した限り、住民説明会で避難指示解除に賛成意見を述べた人は全体の1割にも満たなかった。大多数が「解除は時期尚早」といった意見だったのだ。住民意向調査結果などを見ても「帰還する」と答える人は少数派である。

 行政(国や地方自治体)が物事を決める際、少数派の意見を優先させたことがこれまでにあっただろうか。少なくとも、いまのこの国のルールでは、少数派の意見を採用するような仕組みにはなっていない。行政はこれまでずっと「多数決主義」の下で、少数意見を切り捨ててきたではないか。にもかかわらず、なぜか原発事故の避難指示解除だけはその原理原則が捻じ曲げられた。

 その理由は「その方が都合がいいから」だろう。要するに、住民の意向に関係なく、「いつまでに避難指示解除する」ということが、ある程度決まっていたのだと思わざるを得ない。

 であるならば、なぜ国はその気がないのに、住民に寄り添うような姿勢を見せたのか。そもそも、避難指示が出された時は、国による「命令」だったのだから、解除に当たっても「命令」すれば済んだのではないか。

 ただ、国は「住民の意向を聞いたうえで避難指示解除を進める」という方針を打ち出した。それならそれで結構と思った。ところが、実際は住民の意向(多数派の意見)を無視し、原理原則を捻じ曲げて避難指示解除が進められた。つまりは、「住民の意向を聞いたうえで避難指示解除を進める」というのは上辺だけだったのだ。住民に寄り添う気などサラサラないのに、なぜ表面上そういう姿勢を見せたのか。この点も大きな疑問である。

 こうした国によるチグハグな対応の結果、住民は不信感を募らせることになった。旧避難指示区域の住民は、以前、本誌取材に「私はいずれ帰る考えだったが、(避難指示解除は時期尚早といった)住民の意向を無視した国や自治体の進め方にはうんざりしています。国も自治体も信用できなくなり、逆に決心が付いた。新天地で生きていくことにしました」と明かした。この例からしても、避難指示解除の進め方は失敗だったとしか思えない。

(末永)

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