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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
続・事件屋 竹内陽一氏の仮面を剥ぐ
月刊政経東北
政経東北速報解説版
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「内輪化」がもたらしたもの(2017年 6月号)

 ネットで目にするようになった言葉に「クラスタ」がある。房や塊、集団を意味する英語で、コンピューター業界で使われる専門用語だったが、転じて「同じ思考・属性を持った人たちの集まり」という意味で使われるようになった。

 広まるきっかけはツイッターやフェイスブックなどのSNSだ。SNSでは自分の知り合いや面白そうな人を登録すると、その人たちの情報が画面に流れる仕組みになっている。多くの人を登録することでどんどん情報収集できるようになるし、互いに情報を発信すれば知識や議論を深められる。こうして出来上がる関係を指して「○○クラスタ」と呼ぶ。

 周りに同じ趣味を持つ人がいなくても、ネットを立ち上げれば同じクラスタの人がいて、共通の話題で盛り上がることができる。何とも便利な世の中になったものだが、最近ではSNSが普及したこともあってか、クラスタ的な考えが広まり、深刻な社会問題が起きたときまでそれぞれが"内輪"で盛り上がり、一体感が欠けつつあるように感じる。

 県民にとって一番分かりやすいのは原発事故で放出された放射性物質への対応だろう。「放射性物質は健康に影響を与えるほどの量ではない」と考え通常の生活を心掛ける人たちと、「放射性物質の健康被害は深刻だ」と考え自主避難や保養を訴える人たちの意見の相違は激しく、それぞれが内輪で論文や科学的証拠を示し合って議論を深め合い、相手を批判するようになった。

 たとえば、原発構内でトラブルが発生すると、それぞれが「安全だ」、「危険だ」と主張し、批判し合う。しかし、「どちらがいいか決めかねるから、情報をチェックしながら考えたい」という中間層は置き去りにされがちだし、「再発防止策はあるのか」、「被害者はいないのか」という根本的な話まで議論が辿りつかないことも多い。従来世論を形成してきた、本誌も含む既存マスコミの影響力と信頼が低下しているからこそ、こうした現象が進んでいるのだろう。

 賛否両論で意見がまとまらないのをいいことに、為政者は自分にとって都合のいい策を次々と講じていく。原発事故に伴う避難指示区域は帰還困難区域を除く大部分が4月1日までに解除され、5月18日には関西電力高浜原発4号機が再稼働を始めた。昨年12月には特定秘密保護法が施行され、5月23日には「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織的犯罪処罰法改正案が衆議院で可決された。こんな時こそ立ち止まり「大局的にいま何が問題なのか」と考えることが必要だ。

(志賀)

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