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今年は首長選が多い。市長選は田村、郡山、いわき、福島、二本松、相馬の6市、町村長選は双葉、川俣、小野、会津坂下、西会津、富岡、大玉、下郷、泉崎、会津美里、広野の11町村で行われる。
本誌としても選挙関連の取材に行く機会が自ずと増えるわけだが、そうした中で感じるのが、役場職員や議員の経験を持つ候補者の多さだ。副町村長などの特別職、部課長、議長などから転身するケースが大半を占めている。
仕事を通して現職と身近に接し、さまざまな場面に出くわす中で「自分ならこうする」、「自分ならこういう判断はしない」と考えるようになり、いつしか「この人には任せておけない」、「自分がやるしかない」と立候補を決断するのだろう。
地方公共団体における首長は政治家であると同時に、行政の最高責任者でもある。それだけに、ある程度の知識がないとどのように行政運営を進めればいいか分からず、混乱してしまうという事情もあるのかもしれない。実際、この間「民間出身のため、首長らしからぬ軽率な言動が目立つ」、「中小企業の社長だったせいかワンマンさが目に余る」といった不満の声を議員や住民から聞く機会も多かった。
一方で、行政運営に長けているとされる人が当選しても、少子高齢化や地域活性化、公務員給与のあり方などの大きな課題はなかなか改善されないことにもどかしさを感じてしまう。
震災・原発事故からの復興途上にある本県においては、人口減少対策や企業誘致、産業振興など先進的な取り組みを打ち出す市町村があってもいいと思うが、そういう動きもあまり見られない。
行政は当初に策定された計画や予算を守り、公平性・平等性を意識する傾向が強い。それ故に大胆なチャレンジに消極的だったり、スピードに欠ける面が多くなりがちだ。本来は住民から選ばれた首長が率先してそうした"行政体質"を変えていくべきなのだが、首長自身がすでにそういう体質に染まっていたとしたら、改善するのは容易ではない。
そういう意味では、民間の感覚を取り入れていくべきだし、首長選に経済人など民間出身の人がもっと立候補し、県内市町村を住民・企業の視点から活性化してくれることに期待したい。原発被災地の企業経営者として政治に関心を寄せる余裕がないのかもしれないし、責任を問われることのない政治家は生ぬるくて転身する気が起きないのかもしれないが、「政治家の黒幕」としてばかり経済人の名前が聞かれる状況は何とも寂しい。
(志賀)
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