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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
続・事件屋 竹内陽一氏の仮面を剥ぐ
月刊政経東北
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区切りを迎えた2つの原発賠償(2018年 5月号)

 今春、原発賠償のうち2項目が区切りを迎えた。

 1つは避難指示区域(解除済み区域を含む)の精神的損害賠償。国は、27年6月に閣議決定した改定・福島復興指針で、帰還困難区域を除き、29年3月末までに避難指示を解除することに加え、精神的損害賠償はそれから1年後、すなわち30年3月末までとする方針を示した。これは、それ以前に解除された地域も対象になり、この3月で全避難指示区域の住民に対する精神的損害賠償が終了した。

 もう1つは家賃賠償。原発被災者の中には、災害救助法に基づく手続きをせずに県内外の民間アパートなどに入居した人(世帯)もおり、その場合は東電から家賃賠償が出ていたが、これも改定・福島復興指針に基づき、今年3月までとされた(※27年8月26日付の東電リリースより)。

 ただ、富岡町や浪江町などでは、仮設・借り上げ住宅が31年3月まで延長されたことから、仮設・借り上げ住宅の入居者との格差是正のため、県が家賃支援制度を創設し、仮設・借り上げ住宅の供与期間と同期間、対象者に助成金を支給することになった。これにより、事実上、家賃賠償を受けていたときと同等の支援を受けられる。なお、その費用は50億円超になるとみられているが、事務費等を含めた全額が東電からの寄付でまかなわれる。

 こうして、この3月末で原発賠償2項目が1つの区切りを迎えたわけだが、気になることが2つある。

 1つは家賃賠償について。以前は、東電から被災者への「賠償」だったが、4月以降は東電から県に関連費用が寄付され、県から対象者への「補助」に変わった。この構図を見ると、どうせ東電がカネを出すなら、賠償を継続すればよかったのではないかと思える。そうすれば、対象者は新たな申請をせずとも従前通りの請求で済んだし、県の事務処理の手間も省けた。

 もう1つはこれら賠償の終了について、妥当かどうかの議論がなされた形跡がないこと。前述したように、これら賠償の打ち切りは、27年6月に閣議決定された改定・福島復興指針に基づく。当時、「3年後(30年3月末)には復興がこのくらい進んでいるだろう」といった予測のもと、精神的損害賠償や家賃賠償の30年3月末終了が決められたものと思われるが、実際にその時期になり、27年6月に決めたことが妥当だったかどうかの検証が必要だった。ところが、それをした形跡がないのは、国にとって原発事故はもう終わったことになっているということか。いずれにしても、被災者に寄り添った対応とは言えない。

(末永)

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