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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
続・事件屋 竹内陽一氏の仮面を剥ぐ
月刊政経東北
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"人災"の責任を問う(2018年 6月号)

 東京電力福島第一原発での事故をめぐり、適切な賠償・被害者救済を求めて、全国の裁判所で民事訴訟が提起されている。これまでの判決については122頁からの記事で解説しているが、その一方で、東京地裁では東電旧経営陣の3人を業務上過失致死傷罪に問う刑事裁判が行われている。

 福島県の住民1万4716人が2012年6月、東電旧経営陣を東京地検に告訴・告発。2度にわたる不起訴処分と検察審査会への申し入れ・議決を経て、勝俣恒久元会長、武藤栄元副社長、武黒一郎元副社長が強制起訴された。昨年6月に初公判が行われ、今年1月から証人尋問が始まった。

 原告が追及しているのは、東電が08年6月の時点で、国の専門機関による地震予測「長期評価」に基づき、「福島第一原発の敷地に最大で15・7辰猟吐箸押し寄せる」という試算をまとめていた点だ。震災時に福島第一原発に押し寄せた津波の高さは海岸付近13叩建屋付近11・5〜15・5辰如∋郢擦鳳茲辰紳从を講じていれば、原発事故は防げた可能性が高い。そのため、なぜ津波対策は実施されなかったのか、旧経営陣は試算結果を共有していたのか、「長期評価」はどの程度重要視されていたのか――という点が争点になっている。

 4月に証人として出廷した東電社員は、「津波対策は不可避であると社内で共有されていたが、武藤元副社長が対策保留を指示した」と証言した。

 試算を踏まえて津波対策を講じるには原発を一時停止しなければならないが、当時、東電は旧原子力・安全保安院から地震対策の強化を求められており、有識者会議による審査を経なければならなかった。

 そうした中、武藤元副社長は「試算の妥当性についての検討を土木学会に委託し、その答えが出てから正式な対策を講じる」と指示して、有識者にも根回しして、「長期評価」が反映されていない地震対策を旧原子力・安全保安院に提出した。

 この時期は新潟県中越沖地震の影響で柏崎刈羽原発が停止し、東電が赤字転落していた。おそらく、そうした会社の事情を考慮し、対策を先送りしたと思われる。3被告は「事故を予測することはできなかった」と無罪を主張しているが、旧経営陣が事故を防ぐチャンスを自ら潰していたようなもので、原発事故が"人災"だったことにあらためて気付かされる。過去の東電の呆れた対応を見ているだけで怒りがこみ上げてくるが、同様の事故を二度と起こさないためにも、今後の公判を通して責任の所在が明確になることに期待したい。

(志賀)

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