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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
続・事件屋 竹内陽一氏の仮面を剥ぐ
月刊政経東北
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許されない開き直り(2018年 12月号)

 東京電力福島第一原発事故をめぐり、業務上過失致死傷罪で東電の旧経営陣である勝俣恒久元会長、武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長が強制起訴された公判が東京地裁で行われている。

 争点になっているのは、国の専門機関による地震予測「長期評価」で、「福島第一原発の敷地に最大で15・7メートルの津波が押し寄せる」という試算が出ていたのに、対策を先送りしたのではないか、ということだ。東電社員への証人尋問によると、経営幹部が出席する「御前会議」で、長期評価に基づく津波対策が一度は了承されていた。だが、具体的な津波予測が報告されると、武藤被告は津波対策をすぐ行わずに、土木学会に検討依頼するよう指示したという。当時、新潟県中越沖地震の影響で柏崎刈羽原発が運転停止中で、東電は赤字転落していた。津波対策で運転停止すればさらに収益が悪化することを懸念し、先送りして凌いだとみられている。

 だが、10月中旬から始まった被告人質問で、武藤被告は「津波対策に関する報告はなかった。関連資料も一切読んでいない」と繰り返し、「『長期評価は信頼性がない』と社員から説明されていたし、情報収集のため土木学会に検討を依頼した。それを先送りと言われるのは心外だ」と主張した。

 武黒被告も先送りの認識を否定し、勝俣被告に至っては、津波対策について「報告がなかったので特に関心がなかった」、「長期評価の存在を知ったのは3・11からだいぶ経った後」、「(経営畑出身なので原発について)説明を受けても理解できないことがあった」と述べた。東電社員の供述調書や証人尋問の内容をあらかた否定し、無罪を主張したわけ。

 法廷での発言なので事実なのだろうが、原発を稼働させていた企業の旧経営陣が「津波対策の資料は読んでいなかった」、「津波対策に関心がなかった」と平然と話す姿には怒りを超えて脱力してしまう。

 共通点を感じるのは、原発事故による損害賠償を求める集団ADRにおいて、東電が和解案を拒否する事例が最近連発している件だ。詳細は34頁からの記事を読んでほしいが、事故の風化が進み、拒否しても世間からのバッシングがそれほど無いのをいいことに開き直っているのだろう。震災・原発事故から7年半以上経過し"地"が出てきた感がある。

 県内には原発事故のせいでこれまでの生活が一変した人が大勢いるにもかかわらず、東電には加害企業として被害者救済に真摯に対応する姿勢が感じられない。公判は今後も続くが、東電の姿勢を含め、厳しい目で見ていく必要がある。

(志賀)

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