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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
続・事件屋 竹内陽一氏の仮面を剥ぐ
月刊政経東北
政経東北速報解説版
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費用対効果(2019年 4月号)

 福島第一原発が立地する大熊・双葉両町では、先月開かれた3月定例会に過去最大となる一般会計当初予算案を提出し、可決された。大熊町は前年度比0・6%増の約263億5000万円、双葉町は同106・1%増の約305億円。震災が起きた2011年度の当初予算は大熊町が約77億8000万円、双葉町が約48億円なので、それぞれ3・4倍、6・4倍。その中身は"復興マネー"だ。国から多額の復興予算が下りてくる中、両町では住民の帰還を促進するため、さまざまな施設の整備に巨費が投じられている。

 住民の言い分は「帰りたくても病院、スーパー、働く場所がなければ帰れない」。行政が住民の声を施策に反映させるのは当然なので、帰還できる環境を整えること自体を否定するつもりは毛頭ない。しかし、費用対効果を考えると首を傾げてしまう。

 高齢者しか帰還しないことが予想される中、若者や子どものいない自治体に持続的発展の可能性はない。加速する人口減少も追い打ちとなる。高齢者が亡くなった時、後に続く住民がいない自治体に残されるのはそれら数々の施設だ。将来、施設を利用する住民がいなくなっても維持管理だけは続けていかなければならない状況は、素人が考えても分かる。このまま人口が減り、税収がさらに落ち込めば、早晩維持管理費を負担できなくなる。行き着く先は財政破綻するしかない。

 こうした懸念が浮上するのは、市町村ごとに復興事業に取り組んでいるからだ。住民からの要望を受け、被災した市町村は病院を再開させ、スーパーをオープンさせ、企業誘致を行った。被災した市町村が10あれば、そうした施設も10個ずつできた。しかし、病院は「かかりたい診療科がない」、スーパーは「品揃えが不十分」、誘致した企業は「就きたい職種じゃない」――等々、不満ばかりが先立つ中途半端な規模・内容となっている。

 だったら、10の市町村が将来合併することも見越し、例えばA町には病院、B村にはスーパー、C町には工業団地、D村には文化施設、そして各所を結ぶ新しい交通体系の構築、という具合に必要な施設を適宜配置すべきではなかったか。

 縮小するのが確実な自治体が、個別に復興事業に取り組むのは限界がある。従来の地域づくりの手法ではなく、広域的な視点に基づく地域づくりをしないと、近い将来、被災自治体は次々と行き詰まり、最後は使われなくなった真新しいハコモノだけが残されることになる。

(佐藤)

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