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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
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大熊町避難解除に思う(2019年 5月号)

 大熊町の避難指示解除準備区域(中屋敷地区)と居住制限区域(大川原地区)の避難指示が4月10日に解除され、同14日には大川原地区で整備が進められていた役場新庁舎の開庁式が行われた。

 同町は面積約79平方キロで今回の解除対象は30平方キロ。町域の40%弱が解除されたことになる。ただ、人口ベースでは、同町の全人口約1万人のうち、解除対象は約350人で4%程度にとどまる。

 昨年1月に復興庁・県・町が実施した意向調査によると、帰還意向を問う質問で「戻りたい(将来的な意向を含む)」が12・5%、「戻らない」が59・3%となっている(※この数字は今回解除された地区だけでなく全町対象)。

 ここで注意しなければならないのは、調査回答者は5218世帯のうち2623世帯(約50%)にとどまること。以前、避難指示区域の住民は「毎年似たような質問だし、自分は戻らないことを決めたから意向調査に回答しなかった」と話していた。おそらく、そういう人は多いと思われる。つまりは、未回答者の多くは実質「戻らない人」になり、そう考えると戻らない割合はさらに増える。

 大熊町の新年度一般会計当初予算は約263億円。震災前(2010年)は約73億円だから3倍以上になっている。復興関連費用が大きなウエイトを占め、帰還者向け災害公営住宅等整備事業(約39億円)のほか、福祉関連施設(約8億円)、商業施設(約7億円)、交流施設(約7億円)、宿泊温浴施設(約4億円)の各整備、町内の防犯対策事業(約3億円)、町道維持事業(約1億円)などが実施される。

 町民の中には「どうしても帰りたい」という人が一定数おり、その意思は尊重されるべきだ。その人たちは完全なる被害者であり、元の住環境に戻してほしいと願うのも道理がある。

 一方で、その人たちは「少数派」である。しかもその多くは高齢者だ。

 以前、避難指示区域のある住民は「復興とは世代交代できること」と言った。いまの解除済み区域は、高齢者だけが住み、その人が亡くなったらその家は誰もいなくなるという世帯が多い。以前のように「世代交代」できる状況にはなく、これでは復興とは言えない、というわけだ。

 解除済み区域の首長にそのことを話すと、答えに窮して、「住民が戻ってきたときに不安を感じないような環境を整える以外にない」と話した。だから、どこも大掛かりな環境整備を行っているわけだが、戻る人の割合と各種整備費用などを考えると、それが「進むべき正しい道」とはどうしても思えない。

(末永)

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