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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
続・事件屋 竹内陽一氏の仮面を剥ぐ
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蔑ろにされる避難計画(2019年 7月号)

 スマホから鳴り響いた突然の警報音に驚いた人も多かったに違いない。6月18日夜、新潟・山形両県を襲った震度6クラスの地震。死者が出なかったのは不幸中の幸いだったが、津波注意報の発令に思わずドキッとしたのは私だけではなかったはずだ。

 思い起こされるのは、震災で巨大津波に襲われた東電福島第一原発の姿だ。新潟県には東電柏崎刈羽原発がある。東電から「異常なし」という情報が即座に伝えられたが、津波と原発を結び付てしまう思考はなかなか変えられそうもない。

 翻って、災害で原発が危機的状況に陥った際の避難計画はどうなっているのか。

 県では2014(平成26)年に原子力災害避難計画を策定。2016(平成28)年までに第4版が公表されている。しかし、福島第一・第二原発は廃炉が決まっていることもあり、住民が避難計画に強い関心を向けるシーンは見られない。もちろん、廃炉作業中に再び災害が起きる可能性はあるが、同避難計画をまじまじと見たことがある人は、おそらく避難者の中にも少ないのではないか。

 一方、原発が立地する地域にとっては深刻な問題だ。運転停止中の東海第二原発(茨城県東海村)は再稼働を目指す日本原電が4〜6月にかけて計20回の住民説明会を開催。同社は安全性をPRするため専門用語を避けた説明を心掛けたり、バーチャルリアリティーの技術を使って原発内部や防潮堤の規模を体感できる対応を行ったが、30膳内に約96万人が居住し、避難計画の対象となる市町村・住民の数も多いため、出席者からは「本当に避難できるのか」と疑問の声が相次いだ。そもそも茨城県は避難計画の基本方針を策定する立場にすぎず、実際の計画づくりは市町村が担うが、実効性の乏しさや住民からの異論で策定を終えた市町村はほとんどない。

 九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)は原子力規制委員会が出した設置変更許可をめぐり、巨大噴火の影響を審査する基準が不合理として住民が許可取り消しを求める訴訟を起こしたが、福岡地裁は先月、訴えを退ける判決を言い渡した。住民側は控訴する方針だが、これだって実効性のある避難計画になっているのか疑わしい。だいいち、巨大噴火が直撃したら計画云々の話ではない。

 事故が起きた際に最も被害を受ける住民の避難計画が蔑ろにされたまま、国や電力会社の都合で再稼働を推し進めることは許されない。新潟・山形を襲った地震とそれに伴う津波注意報は、その思いを一層強くさせる出来事だった。

(佐藤)

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