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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
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子どもをだしに使うな(2019年 12月号)

 大熊町では避難指示が解除された同町大河原地区に、0歳から15歳までの一貫教育を行う「幼保・小中一貫校」を整備するという。2022(令和4)年4月開校で、共働き世代の帰還促進につなげる狙いがある。最先端の教育も導入する予定だ。

 原発被災地の復興を進める際にまず学校を整備するのは、子どもの受け皿を作るというより子育て世帯の帰還を促進したいからで、各市町村が国の補助金を活用して校舎を整備し、手厚いサポートを無料で施している実態がある。

 例えば飯舘村では、飯舘中学校の敷地内に村内3小学校を統合した新小学校と認定こども園を約40億円かけて整備。教材費や給食費、制服・学用品購入費などをすべて無料化し、避難先までスクールバスを無料運行している。スクールバスの運行費は年間約1億1000万円。来年4月には義務教育学校「いいたて希望の里学園」として開校する予定で、菅野典雄村長は「少人数の学校の長所を生かした教育を行う」と話している。

 もっとも、思惑通り子育て世帯の帰還促進につながるとは限らない。川俣町山木屋地区に開校した山木屋小中一貫教育校は約11億円かけて整備されたが、新入生がいなかったため、開校からわずか1年で小学校が休校することになった。結局、人が戻ってこない場所に学校を整備しても意味がないわけで、順序が逆と言える。

 こうした学校に通う児童・生徒は役場職員や復興事業などに携わる企業関係者の子どもが主で、各校10〜30人規模だ。原発被災地は空間線量の高いところがまだまだ多く、廃炉作業や中間貯蔵施設の見通しも立っておらず、生活環境も十分整備されているとは言い難い。そうした中で、避難先で何年も生活している子育て世代が戻ってくるとは思えない。主な原発被災地の町内居住者は大熊町119人(住民登録が無い居住者を含めると721人)、富岡町約870人、浪江町約800人、飯舘村1361人。いずれもかつての人口の3割にも達していない。しかも、帰還者の大半は高齢者だ。

 原発被災地が完全に以前の姿に復興するまでには50〜100年かかると考えるべきで、多額の公費を投入して学校を整備するのは税金の無駄。それより避難者を避難先の住民として認め、手厚い生活支援をしていくべきだ。国は来年に控えた東京五輪・パラリンピックを機会に、世界に向けて復興をアピールしたいのだろうが、子どもをだしに使って「見せかけの復興」を進めるのは間違っている。

(志賀)

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