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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
月刊政経東北
政経東北速報解説版
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汚染水「海洋放出」を容認できない理由(2020年 2月号)

 福島第一原発で増え続ける処理水(汚染水)の処分方法を検討してきた経産省の「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」は昨年末に会合を開き、「海洋放出」を含む3つの案を示した。今後は、その3案を叩き台に関係者の意見を聞き、最終判断をするという。

 ただ、海洋放出となれば、安全面の問題、さらには県内産業への影響が懸念されるため反発が出るのは必至。そうしたことから、本誌ではこの間、「保管を続け、国を挙げて除染技術を開発しながら、放射線量の低減を待つのが現実的な対策だ」と指摘してきた。このほか、有識者でつくる「原子力市民委員会」が提唱する「モルタル固化案」など、技術的な事例も紹介してきた。

 加えて、今回はまた違った視点から、汚染水の海洋放出を容認できない理由を述べたい。

 廃炉作業はこれから何十年と続き、その過程で汚染水が発生し続ける。つまり、海洋放出をするとなると、それが何十年も続くことになるが、その間、誤って基準値超の放射能濃度のものを放出したり、何らかの理由で流出したり、といった事故やミスが起きない保証はない。むしろ、そうした事故やミスは起こり得るものと考えておかなければならない。

 一方、今回の原発事故では東京電力の無責任な対応をいくつも見聞きしてきた。象徴的なものを挙げると、ある裁判・仮処分申請で、東電が「原発から飛び散った放射性物質は東電の所有物ではない。したがって、東電には除染責任がない」との主張を展開したこと、裁判外紛争解決手続き(ADR)で、「和解仲介案を尊重する」と宣言しておきながら、実際は和解拒否を連発していること、原発賠償に関して「被害が続く限りは賠償する」と言いながら、身勝手な判断で打ち切ったこと――等々、挙げればキリがない。ほかにも、今回の原発事故対応で「東電は信用に値しない」と思わせるようなエピソードはいくつもある。

 その東電が、汚染水の海洋放出に当たり、前述したような事故やミスが起きたとき、同様に無責任な対応をすることは目に見えている。原発事故の対応がそうだったのに、汚染水の問題に関しては誠実に対応するとは到底思えないからだ。

 そんな未来が見える以上、汚染水の海洋放出は絶対に容認できない。それでも、海洋放出しかないというのであれば、地元自治体(県や関係市町村)に対して相応の金額(数兆円程度?)を供託させ、何か問題が起こったら、その供託金で地元主導で対応できるようにすることを条件にすべきだ。

(末永)

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