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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
月刊政経東北
政経東北速報解説版
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復興の明暗(2020年 3月号)

 震災・原発事故から9年が経過する。

 双葉町、大熊町、富岡町の避難指示が3月上旬に一部解除され、3月14日にはJR常磐線の不通区間だった富岡―浪江間(約20・8繊砲運行を再開する。さらに3月26日からは聖火リレーが本県のJヴィレッジからスタートする。7月には「復興五輪」をうたった東京オリンピック・パラリンピックが開催され、おそらく国全体が高揚感と祝祭ムードに包まれるだろう。

 一方で、原発被災地の現実は暗く、終わりが見えない。福島第一原発では使用済み核燃料の取り出しが行われており、2021(令和3)年から燃料デブリ取り出しが始まる予定だが、困難を極めることが予想される。仮置き場から中間貯蔵施設への除染廃棄物輸送は順調に進んでいるが、肝心の県外最終処分の候補地は全く決まっていない。

 避難指示が解除された原発被災地への帰還者数はまだまだ少なく、持続性のある地域再生が現実的に難しい地域もある。にもかかわらず、復興関連予算は国から潤沢に交付されるので、アンバランスな行政運営になっている。今後は自治体合併なども踏まえた議論も必要だろうが、本誌2月号で触れた通り、「平成の大合併は失敗だった」という指摘もあることを考えると、さらなる自治体存続の在り方を模索しなければならない。復興公営住宅は整備されたが入居者の多くは高齢者で、故郷と違いすぎる環境に戸惑い塞ぎ込みがちになる人も多い。

 ほかにも、自主避難者や小児甲状腺がん患者の救済、裁判や裁判外紛争解決手続き(ADR)などで無責任な対応を続ける東電への責任追及、産業復興の加速など、課題は山積している。

 こうした地味で分かりづらくて、すぐには解決しづらい課題がオリンピックに隠れて注目されなくなり、そのまま来年3月に丸10年の節目を迎えることになりそうでいまから怖くなる。

 そもそも新型コロナウイルス感染症(COVID―19)が猛威を振るう中、オリンピックの開催が危ぶまれる事態も十分考えられるが、いずれにしても、ある種の高揚感の中で原発被災地が厳しい環境に置かれていることが忘れられ、「順調に復興が進んでいる」、「課題は解決に向かっている」と錯覚されることは避けなければならない。

 世界中の注目が集まるタイミングなのだから、復興の明るい部分ばかりでなく、暗い部分に関しても発信していくべきであり、県と内堀雅雄知事にはそうした役割も期待したい。

(志賀)

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