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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
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政経東北速報解説版
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「3・11から10年」を前に(2021年 2月号)

 間もなく、震災・原発事故から丸10年を迎える。そんな中で、例えば5年前と何が変わったのか、2つのポイントについて述べていきたい。

 まず、5年前は避難指示区域がまだかなり残っていたが、いまは帰還困難区域を除いてすべて解除された。一方で、県の集計によると、昨年12月時点で、県内避難者は約7000人、県外避難者は約2万9000人となっており、計約3万6000人が未だに避難生活を送っていることになる。

 以前、ある県外避難者に「未だに『避難者』という括りになっているのは、当事者としてはどんな心境なのか」と聞いたことがある。すると、こう述べた。

 「最初の1年くらいは、避難所、借り上げ住宅などを転々としていたが、いまの地に住んで8年くらいになる。だから、周囲の人(もともとの住民)からは、そんな目(避難者扱い)では見られていない。ただ、こちらとしては若干の負い目はある。一方で、国・東電に責任逃れさせないために、未だにそういう人(避難者)がいるということを示す意味でも、やむを得ないのかなとも思う」

 この人は「もう戻らない」と決めており、本来なら「転居者」というべきだが、住民票を移していないため「避難者」という扱いになる。この人たちは原発事故に伴い、自身の意思とは関係なく、強制的に避難を余儀なくされた。結果、「住民票がある自治体」と「実際に住んでいる自治体」が異なる事態になった。わずかな期間ならまだしも、10年もそんな状況が続いているのは異常だ。本来なら、国が原発避難区域の特殊事情を鑑みた特別立法などの措置を講じるべきだった。それを怠った国の責任は大きい。

 もう1つ、5年前から変わったことと言えば、全国各地で起こされた原発集団訴訟の判決が出始めていること。もっとも、そうした原発集団訴訟は多数あり、早いところでは二審判決が出されたものもあるが、判決確定に至った案件はまだない。それら原発集団訴訟の中には、被告は東電のみで、国の責任を問うていないもの、国を被告としたが判決で国の責任が認められなかったものもあり、国の責任認定についてはマチマチ。ただ、少なくとも、東電の追加的責任は認定され、賠償金額の多寡はあるにしても、そのすべてで中間指針の範疇を超える賠償が認められている。にもかかわらず、そうした動きは中間指針などには反映されていない。

 ここでは2つの事例について述べてきたが、総じていうと、情勢の変化に基づいた対応がなされていない部分が多い、ということだ。

(末永)

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