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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
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処理水海洋放出を容認できない理由(2021年 5月号)

 政府は4月13日、東京電力福島第一原子力発電所から排出される放射性物質を含む「処理済み汚染水」について、海洋放出の方針を決めた。

 この問題については18頁からの記事で詳細リポートしているので、そちらを読んでいただきたいが、ここでは賠償の問題に絞って述べていきたい。

 政府が発表した基本方針によると、「東電には風評影響発生を最大限回避する責任が生じる」とし、風評被害が発生した場合は「セーフティネットとして機能する賠償により機動的対応を求める」とされている。

 具体的には、「原賠審が定めた賠償指針ですでに示されている合理的かつ柔軟な対応の必要性を含めた風評被害賠償の基本的な考え方を踏まえ、期間や地域、業種を限定することなく、被害の実態に見合った賠償を迅速かつ適切に実施すること」、「客観的な統計データの分析等により、処理水による風評の影響を合理的かつ柔軟に推認するなど、損害に関する立証の負担を被害者に一方的に寄せることなく、被害者に寄り添って迅速に対応すること」と記されている。

 4月16日に福島県庁で東電の小早川智明社長と内堀雅雄知事が会談し、小早川社長は賠償について「国の指導を仰ぎながらしっかり検討していく」と話し、内堀知事は「損害がある限り、最後まで確実に実施してほしい」と述べたという。

 この間、本誌では原発賠償でADR申し立てなどを行った事業者を取材してきたが、東電は原賠審の指針を都合よく解釈し、自分たちに都合のいいデータばかりを示して「こういう状況だから、原発事故の影響はない。だから賠償支払い義務はない」といった主張を繰り返してきた。政府方針には「期間や地域、業種を限定することなく」、「被害の実態に見合った」、「被害立証を被害者に一方的に負担させることなく」、「被害者に寄り添って」といった文言が並ぶが、原発賠償での東電の対応を見ると、とてもそんな対応をするとは思えない。

 昨年2月号のこの稿で、「何十年と廃炉作業が続く間、海洋放出が行われるとなると、誤って基準値超の放射能濃度のものを放出したり、何らかの理由で流出したり、といったミスや事故が起きない保証はない」、「この間の東電の無責任な原発賠償対応を見ると、事故やミスが起きたとき、同様の賠償対応をされる」と指摘した。しかも、ミスや事故を隠すことも考えられる。

 「トリチウムの除去技術開発など、海洋放出の前にやれることはある」、「不祥事続きの東電に任せて大丈夫か」といった指摘があるが、筆者が考える海洋放出を容認できない最大の理由はそこにある。

(末永)

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