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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
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「ずさん除染」の責任(2021年 6月号)

 会計検査院の調査で、東京電力福島第一原発事故に伴う放射性物質の除染が行われた県内11市町村(帰還困難区域を除く除染特別地域=旧警戒区域・計画的避難区域の市町村)の56万1232カ所のうち、約2%に当たる1万2894カ所で、除染効果が確認できなかったことが分かった。

 除染前に行われる「事前測定」から除染直後の「事後測定」までの測定間隔が90日未満から730日以上とばらつきがあった。測定間隔も平均245日と長く、自然減衰や降雨などによるウェザリング効果で空間線量が低減したとも考えられるため、どれだけ効果があったか確認できなかったという。このほか、「事後測定」の数値より、半年から1年後に実施される「事後モニタリング」の数値の方が高くなっていた個所も4万9749カ所あった。

 除染には約3兆円が投じられ、業務を担った建設業界は活況を呈した。だが、原発被災地の住民からは「除染はずさんそのもので、空間線量が下がっていない個所も多い」と不満の声が聞かれていた。

 例えば、飯舘村の伊藤延由さんが2019年ごろ、村内8カ所の除染対象区域の空間線量(高さ1メートル)を測ったところ、いずれも1マイクロシーベルト毎時を超えていた。

 浪江町の桑原豊さんは除染後の自宅敷地内の土壌を公的機関に測定してもらったところ、1キロ当たり16万7300ベクレルの放射性物質が検出された。

 業者による除染はもとより、それをチェックする国の体制もずさんだったことが証明された格好だ。

 除染について定めた放射性物質汚染対処特措法では《国、地方公共団体、関係原子力事業者等が講ずべき措置について定めること等により、事故由来放射性物質による環境の汚染が人の健康又は生活環境に及ぼす影響を速やかに低減すること》を目的としている。だが、実際には国がやるべきことをやらず、業者の「ずさん除染」を看過し、金だけが流れていったことになる。

 帰還困難区域内では、避難指示を解除し居住可能とする「特定復興再生拠点区域」設定に向けて、各地で除染が行われている。また、中間貯蔵施設で管理されている除染廃棄物を県外最終処分するという事業も控えているが、それらの事業を進める環境省への信頼が一気に崩壊した。まずは自ら除染個所を再測定し、除染の進め方を徹底検証する必要がある。もし線量が下がりきっていない個所があれば、立ち入り禁止の表示を行うなど注意喚起を徹底し、場合によっては再除染も実施すべきだ。

(志賀)

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