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政経東北速報解説版 毎月2回(1・15日)発行
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民意との乖離(2021年 7月号)

 東京オリンピック・パラリンピックの開幕が近付いている。コロナ禍での開催をめぐり国民の声は反対が大勢だった が、中止・延期とはならなかった。本番に向け努力してきた選手や関係者を思うと、百歩譲って開催は良しとしよう。 問題はその後だ。

 専門家が「無観客が望ましい」と提言しても上限1万人の有観客とすることを決定したり、開会式は一般観客1万人の ほかIOCやスポンサーなど別枠の1万人を加えた計2万人で調整したり、スポンサーを念頭に会場でのアルコール提供 を検討したり......。アルコール提供は厳しい世論を受けて即撤回されたが、民意とあまりにかけ離れた決定・調整・検 討の連続には、怒りを通り越して呆れるばかりだ。

 国民には3密を避けろと言い、イベントや祭りは軒並み中止され、飲食店はアルコール提供の制限や営業自粛を迫ら れている。にもかかわらず、オリンピックは中止されず、会場は3密が確実で、一時はアルコール提供の可能性もあっ た。これまで行政のダブルスタンダードは数々見てきたが、ここまで酷いダブルスタンダードは初めてだ。

 これらを決定・調整・検討しているのは、いわゆる優秀とされる人たちのはずだが、事前に「この内容では国民の批 判を招く」との想像に至らないことが不思議でならない。

 同じく優秀で、県民の支持率も高い本県の内堀雅雄知事も、政府が放射性物質トリチウムなどを含んだ処理水を海洋 放出すると決定した際には民意を見誤った。政府の決定に隣県の知事らは即座に慎重論を述べたが、内堀知事はダンマ リを決め込んだ。2日後になって「県は海洋放出を容認する、しないという立場にない」と語ったが"当事者中の当事 者"である本県トップがこのような"他人事の発言"をするとは情けない。県民は容認するか、しないかを聞いている のではない。本県トップとして海洋放出に賛成か、反対かを聞きたいのだ。

 こうした姿勢は県民の反発を招き、高かった支持率も落ち込んだが、それを意識してか内堀知事は最近、政府に対し 「風評被害対策を早急に示せ」と厳しい注文を付けている。ただ、各市町村議会やJAなどが海洋放出に反対する決議 を行う中、内堀知事は相変わらず賛否を明言していない。

 ポピュリズムは問題だが、民意を見誤ってはいけない。コロナ禍のオリンピックも海洋放出も難しい問題だが、為政 者は民意から乖離しないよう、ベストとは言えなくてもベターな決定をすることが求められるのではない か。

(佐藤仁)

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