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国に従順過ぎる内堀知事(2022年 7月号)

 内堀雅雄知事(58、2期)が先月、10月30日投開票の知事選に立候補することを表明した。共産党が独自候補の擁立を目指しており、郡山市の会社役員も立候補の意思を示しているため選挙戦になるのは濃厚とみられるが、内堀氏に対しては自民・立憲民主・公明の各党をはじめ複数の団体が支援する方針。3選に向け盤石の体制と言っていい。

 内堀氏の支持率を見れば、それも納得だ。福島民報社が先月、福島テレビと共同で行った県民世論調査によると、内堀氏を「支持する」と答えた割合は79・5%。実に10人中8人が支持するという驚異的な数字だ。ただ、「支持する」と回答した人が挙げた理由を見ると少々違和感を覚える。最も割合が高かったのは「復興・地方創生」21・3%。次いで「福島第一原発の廃炉・処理水対策」15・3%、「風評・風化対策」11・8%と続く。

 「風評・風化対策」は内堀氏が先頭に立ち、県産品のPR活動に努めるなど一定の評価はできる。しかし「処理水対策」はどうか。政府が海洋放出の方針を決定した昨年4月、内堀氏は「県自身が容認する・しないという立場にあるとは考えていない」と発言し、県民を落胆させた。その後も国に対し、水産業の風評対策や県民への丁寧な説明を求めてはいるが、自身の考えを表明したことは一度もない。

 原発の廃炉をめぐっても、福島第一・第二原発の廃炉は強く求めたが、県外の原発は"我関せず"を決め込んだ。自身の原発事故の経験を、他の原発立地自治体に還元する気はないらしい。新潟県が独自に福島第一原発事故の検証を進めたのに、福島県はその素振りさえ見せなかったことも恥ずべきだ。

 6月17日には、原発事故をめぐる国の責任を追及した集団訴訟で、最高裁が国の賠償責任を認めない判決を言い渡した。定例会見でこの件を質問された内堀氏は「引き続き国に対し、中間指針の見直しも含めた賠償のあり方について速やかに検討するよう求めていく」と発言したが、ジャーナリストの牧内昇平氏が今号76頁からの記事に書いた通り、この裁判は金で解決すればいい話ではなく、国の不作為を明らかにし、それを教訓に二度と原発事故を起こさせないことが肝要だった。そうした原告の思いを汲み取ることなく、内堀氏は国の責任に言及せず、引き続き金での解決を目指すと言っているのだ。

 震災・原発事故をめぐっては国に一切盾突いてこなかった内堀氏。高過ぎる支持率は気味悪ささえ感じるが、国に従順な姿勢は「県民に寄り添っていない」裏返しであることを肝に銘じるべきだ。

(佐藤仁)

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