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インタビュー

  • 【新地町】大堀武町長インタビュー

    【新地町】大堀武町長インタビュー

    おおほり・たけし 1951年生まれ。東北学院大学卒。陸上自衛隊で勤務後、新地町役場に入庁し、総務課長などを歴任。2018年の町長選で初当選。現在2期目。 町民の安全・安心に直結する事業を優先していく。  ――8月24日から福島第一原発に溜まるALPS処理水の海洋放出が始まりました。  「海洋放出についてはまだまだ課題も多く、我々は政府や専門家のような知見を持ち合わせていないので、互いに納得のいく形で進めていくことは困難を伴うと見ています。  8月21日、岸田文雄首相が全国漁業協同組合連合会の坂本雅信会長らと面会した際、『今後数十年の長期に渡ろうとも、全責任を持って対応することをお約束する』と話していました。国としても重い判断のもと海洋放出を実施したと思うので、本町としては県や関係自治体と連携しながら、安全かつ確実に実施されることを願い、推移を見守っていく所存です。放出によって生じる風評被害対策の実施と情報発信を行っていただき、国民だけでなく海外の方への理解醸成を図っていただきたいと考えています」  ――町第6次振興計画の進捗状況は。  「策定後の令和3年2月、翌4年3月に発生した福島県沖地震の対応もあって当初の予定より遅れているのは否めません。3年間の行動計画で、できるだけ軌道修正を図りながら実施していこうと考えています」  ――地域の魅力向上への取り組みとして「アートの町『新地』創造・アートの魅力発信事業」が展開されています。  「画家・志賀一男さんをはじめ、本町出身のアーティストが目覚ましい活躍を見せています。本町出身の画家・坂元郁夫さんからご提案いただいたこともあり、JR新地駅前に整備された町文化交流センターにおいて、絵画に焦点を当てたアートイベントを実施していく考えです。できるだけ多くの皆さまに見ていただき、心を豊かにしていただければと考えています。来年の町村合併70周年に合わせたプレイベントの意味合いもあり、反響次第では来年、より規模を大きくして実施する考えです」  ――今後の重点事業について。  「頻発する自然災害への対応は非常に重要な課題です。町民の安全・安心に直結する事業を優先していきます。今年度は高齢者の見守り事業を開始し、各地区に予算を出して、地域の団体の方々と協力して取り組んでいます。県には砂子田川と谷地田川の水害対策、駒ケ嶺地区の浸水対策を要望しており、老朽化が進む海抜0㍍地区の湛水防除施設に関しても、調整しながら年次計画で更新を進めています。  商業用地への食品スーパー誘致も課題であり、買い物環境の整備も進めていきます。併せて県立相馬総合高校新地校舎の利活用の協議も進めていきます」

  • 【福島県ビルメンテナンス協会】佐藤日出一会長インタビュー2023.11

    【福島県ビルメンテナンス協会】佐藤日出一会長インタビュー

    さとう・ひでいち 1955年4月生まれ。㈱東日取締役会長。2017年5月から福島県ビルメンテナンス協会会長を務める。  ――新型コロナウイルスの5類移行が実施されました。  「もともと人手不足が深刻な課題で、コロナ前はベトナムやミャンマーから外国人技能実習生を募り、資格を取ってもらうことで在留期間が3年から5年に延びるので、それを活用して人員確保に繋げようとしていました。その矢先にコロナの感染拡大だったので、この間完全に頓挫していました。とはいえ、外国人の方を呼び込んでも基本的には都市部の方に行く場合が多く、地方ではまだまだ外国人の方を迎え入れる動きが少ないというのも現状です。ビルメンテナンス業界でも機械化による業務効率化の動きはあるにせよ、まだまだマンパワーで動かなければならない場面が多いので、やはり人員の確保は大きな課題と言えます」  ――全国ビルメンテナンス協会では「パートナーシップ構築宣言」の取り組みを推奨しています。  「昨年10月頃からパートナーシップ構築宣言が出され、業務内容に見合った適正な金額で契約を結べるようにパートナーシップを締結し、発注者も請負業者も健全な関係を築こうというのが主な狙いです。県ビルメンテナンス協会としての本格的な取り組みとしてはこれからですが、労働環境や待遇改善といった部分に大きく関わってくるので、今後腰を据えて取り組んでいく考えです」  ――人材不足が叫ばれる中で、業務品質の維持は大きな課題とも言えます。  「コロナ禍では通常業務に加え除菌業務も併せて実施し、その意味ではコロナ禍以前よりも高い品質で業務を実施できたのではないかと見ています。しかし、それを踏まえた契約の仕様変更がなかなかうまくいかず、業務量が増えているのに対価は以前と同じという状況が発生しており、こうした部分も先述した待遇改善の話に絡んできます。特に官公庁関連では入札という形式を採っているので、価格競争が起きて安い方へと流れてしまう傾向があります。競争が起こるのは仕方ないにしても、『これより下がってはいけないライン』をもっと上げていただく必要があり、10月には最低賃金の更新があるので、それを見込んだ予算の増額を官公庁に要望しています。また、品確法の基本理念の1つとして、完成後の公共施設の適切な維持管理の重要性が明記され、関連する指針やガイドラインにより契約金額の変更が認められており、そうした部分からも働きかけたいと考えています」  ――今後の重点事業について。  「建物清掃管理評価資格者、通称インスペクターの資格を会員企業の中で最低1名ずつ取っていただき、維持管理業務の品質向上に努めるほか、エコチューニングの推進による建物の設備機器の運用改善、そして県内支援学校での技術指導の実施により、支援学校の生徒が卒業後にビルメンテナンス業界に入り、社会へと参画できるような道筋を作っていきたいと考えています」

  • 【福島県空調衛生工事業協会】大内弘之会長インタビュー

    【福島県空調衛生工事業協会】大内弘之会長インタビュー

    おおうち・ひろゆき 1956年8月生まれ。高崎経済大卒。第一温調工業㈱社長。一般社団法人福島県空調衛生工事業協会副会長を経て、2020年5月から現職。 持続可能な社会・業界を目指す  ――福島県空調衛生工事業協会の概要についてうかがいます。  「当協会は、1983年10月28日、高度化する近代設備に対応できる技術・技能の研鑽と経営体質の強化を図り、管工事業界の社会的経済的地位の向上と公共の福祉の増進を図ることを目的として設立されました。現在の会員事業所数は49社で、建物の空調設備工事、給排水衛生設備工事を行っている県内業者で構成されています。  事業内容は、建築設備工事にかかる業務遂行上の諸問題を研究するとともに、技術力水準・生産性向上を目的とした特別技術講習会をはじめ、会員事業所における経営体質の強化を図るため、経営改善研修会をそれぞれ年1回実施しています。  また、会員事業所の労働安全衛生と技術力の向上を図るため、当協会、福島県電設業協会、福島県設備設計事務所協会で構成される『総合設備協会』の会員事業所が参加し安全大会、技術研修会を年1回実施しています。そのほか、国・県・県議会への要望活動や県との意見交換会等も行っています」  ――業界を取り巻く環境と今後の課題についてうかがいます。  「2024年4月から建設業でも『働き方改革』がスタートします。主な改革は法規制による労働時間の制限ですが、建築設備工事の工程は、建築工事、電気設備工事と連携しながら進めるため、自社のみで働き方改革ができないのが実態であり、施主、他工種の理解・協力を得ながら、実施していく必要があります」  ――今年度の重点事業についてうかがいます。  「若手技術者の技術力向上のため、重点目標事業の1つとして『空調衛生等設備工事の技術力向上に関する事業』があります。今年度は、特別技術講習会において建設現場における火災防止のための新工法について実機を使用した研修、地球温暖化防止対策としてのカーボンニュートラルに関連した取り組みや今後の動向を踏まえた研修を実施しました。  また、持続可能な開発目標『SDGs』の達成に向けた取り組みが社会的に求められる中、当協会でも社会的使命の観点から『ふくしまSDGsプラットフォーム』の会員として参画しています。今年度の経営改善研修会では、『持続可能な世界を築くために』と題して本県関係者による講義や、同プラットフォームの会員となっている当協会会員事業所の取り組みや現況を紹介しながらSDGsの理解を深めています」    ――今後の抱負について。  「国や県では『2050カーボンニュートラル宣言』を打ち出すなど、地球温暖化防止は喫緊の課題と認識しています。われわれは、空調設備、給排水衛生設備において、より効率性の高い機器や供給方式の提案に努めていきます。  また、少子高齢化に伴い担い手の確保が厳しい状況となっていますが、若年層の入職促進・定着、従業員の雇用維持に向けて、安心して働き続けることができる魅力ある空調給排水衛生工事業界にすることが重要と考えています」

  • 【いわき建設事務所】吉田伸明所長インタビュー

    【いわき建設事務所】吉田伸明所長インタビュー

    よしだ・のぶあき いわき市出身。秋田大学卒。1990年に県庁入庁。県土木部道路管理課長、道路計画課長を経て、2022年度から現職。 災害復旧、防災、道路整備に全力  ――台風13号による「線状降水帯」の影響で、いわき市内の至る所で浸水するなど甚大な被害が発生しました。管内の被害状況について。  「市内全域の河川流域で緊急安全確保(警戒レベル5)が発令され、人的被害や多数の床上・床下浸水が発生しました。当事務所管内では、10の河川で越水が確認され、一部の河川施設では護岸が崩落するなどの被害が発生しました。10月19日時点で公共土木施設の被害数及び被害額はいわき市を含め、河川69件、砂防設備11件、道路26件、橋梁1件 合計107件27億8200万円となっています」  ――今後の復旧の見通しについて。  「まず越水した河川では、河床に堆積した土砂等を速やかに除去し、治水機能の回復を図ります。被災した道路・河川等の土木施設については、速やかに調査・設計を実施しており、早期の工事着手により復旧に努めます。河川からの越水等により浸水被害が発生した地域については、線状降水帯の大雨による被災メカニズムを解析し、再度の災害を防止する対策について検討していきます」  ――防災対策事業に注力してきましたが、進捗状況は。  「頻発化・激甚化する自然災害から、住民の生命、暮らし、財産を守るため、防災・減災、国土強靱化5か年加速化対策に計画的に取り組んでおり、今回の大雨でも一定の効果が確認できました。今年度は水災害対策として、河川の治水安全度の向上を図るための河道掘削や伐木、堤防強化、土砂災害防止対策のための砂防・急傾斜事業、道路の安全度を高める落石対策等を実施しており、引き続き防災対策事業を加速していきます。また、流域全体で水害を軽減させる『流域治水』についても、あらゆる関係者と連携・協力しながら効率的な対策を実施し、中小河川も含め災害に強い安全・安心な基盤づくりを推進していきます」  ――小名浜道路をはじめとする道路事業の進捗状況について。  「いわき市泉町から同市山田町に至る全長8・3㌔、4箇所のインターチェンジ(以下、IC)を有する無料の自動車専用道路で、『ふくしま復興再生道路』に位置付けられています。『小名浜港』と『常磐自動車道』を結び、小名浜港や周辺地域の産業・観光の拠点化を支援するために整備されます。常磐道から小名浜港までのアクセス時間が約15分短縮され、速達性の向上や定時性の確保等が期待されています。  現在9地区すべてで工事が進められており、高度な技術を要す区間は、本県から東日本高速道路㈱(以下、NEXCO東日本)へ委託し、工事を実施しています。8月には、NEXCO東日本により常磐道の上を跨ぐ本線部橋梁上部工が架設されるなど、着実に事業が進展しています。また、中通りへのアクセス機能向上を図るため、主要地方道いわき上三坂小野線の(仮称)山田IC(=小名浜道路の終点)から遠野町方面に至る約3・5㌔区間についても、道路改良工事を計画的に実施しており、引き続き信頼性の高い広域ネットワークの確保に取り組んでいきます」

  • 【二本松信用金庫】朝倉津右エ門理事長インタビュー

    【二本松信用金庫】朝倉津右エ門理事長インタビュー

     あさくら・つうえもん 1975年に二本松信用金庫に入庫。常務理事、専務理事を経て、今年6月から同信金初のプロパー理事長に。  ――6月に開催された総代会・理事会で理事長に選出されました。  「歴代理事長は地元有力者や監督官庁といった外部から選出され、私が初めての生え抜き理事長になります。また、今年で創立75周年という記念すべき年に8代目理事長に就任しました。常務や専務などを経験し、前理事長の下で仕事をしてきましたが、理事長はいままでの立場とは全く違うものだと実感しています。  当信金は14期連続で黒字決算を続けており、前会長や現会長が健全な経営を継続してきた成果だと思います。これをしっかりと継続していくことが私に課せられた経営課題であり、地域の皆様や利用されるお客様の信用・信頼につながると思っています」  ――新型コロナウイルスが5類に移行され、経済活動も正常化しつつある一方で、原材料費・燃料費高騰や人材不足の影響が続いています。  「5類移行により、飲食店等も回復しつつありますが、コロナ前の水準にはあと1歩というところだと思います。また、原材料費・燃料費高騰により、製造業や建設業で大きな影響を受けているところは少ないものの、今後については原材料高騰分を製品に価格転嫁しなければならないなど、不安視する事業所が多いのが現状です。当金庫では3カ月に1度、景気動向調査を行っていますが、今後を見据えると物価がさらに上がることは間違いありません。消費者がそれを理解するには時間がかかると思います。  人材不足については、将来的な展望がもう少し開けなければ人件費を上げるのも簡単ではありません。ただ、賃上げについて調査したところ半数ほどの企業が何らかの形で賃上げを行いたいと回答しています。  様々な課題はありますが、暗い話ばかりではなく明るい話題もあります。地域の企業が良くなれば、我々もおのずと良くなると思います。そういった好循環を生み出すきっかけづくりを様々な形で行っていきたいと思います」  ――「まつしんビジネスサポートクラブ」の活動状況について。  「『まつしんビジネスサポートクラブ』は1998年に設立し、管内の若手経営者や事業継承者を対象に勉強会や講演会を行っています。最近ではIT導入や事業後継問題、人材育成、異業種交流も活発に行われています。以前はISO取得を目指す事業所が多かったですが、最近はSDGsが重要になってきましたから、そのためのサポートも行っていきたいと思っています。  また、サポート事業とは別に、商工会議所からの依頼で、海外進出に向けての勉強会も行っていきたいと考えています。そういった支援活動を行うことで、地域企業の底上げにつなげていきたいと思います」  ――10月にはインボイス制度がスタートします。  「4月に取引企業を対象に行った調査では、85%が対応を終えており大きな心配はしていません。今後は帳票関係書類の電子化が課題になりますが、そういったサポートも行い、本業に集中して取り組んでいただけるよう支援していきたいですね」  ――今後の抱負。  「当信金では『お客様』『地域社会』『信用金庫』の三位一体の経営というのが創業当時から経営方針ですが、これらが皆良くならないと全体的な底上げにはなりません。そういった考えのもと、そのためのお手伝いをしていきたいと思います。  また、狭い管内で営業をしていますので、不採算店舗があったとしても、大手金融機関のように閉鎖するのではなく、地域の方が不便を感じないように店舗を維持していきたい。加えて、地域の行事等に積極的に参加するため、ボランティア休暇を設けるなど、地域とのつながりを大事にしていきたいと思います」

  • 【福島県私立幼稚園・認定こども園連合会】細谷實理事長インタビュー

    【福島県私立幼稚園・認定こども園連合会】細谷實理事長インタビュー

     ほそや・みのる 1953年生まれ。独協大学経済学部卒。㈱日本ビューホテル成田ビューホテル勤務後、父が開園したみその幼稚園(福島市)の事務長を経て理事長・園長を務める。今年6月から現職。  ――今年6月12日に開催された福島県私立幼稚園・認定こども園連合会の総会で理事長に選任されました。この間を振り返っての率直な感想をお聞かせください。  「重責を担う立場だと痛感していますが、就任したからには平栗裕治前理事長の実績をしっかり継承しつつ、さらなる福島県の幼児教育振興のため職責を全うしていきたいと思います」  ――少子化が急速に進んでおり、幼児教育を担う私立幼稚園・認定こども園連合会の会員にとっては大きな課題だと思います。現状をどのように捉えていますか。また、連合会として取り組むべきことはどんなことだと考えていますか。  「少子化対策と、幼児教育の質の維持向上は一心同体で考えるべきだと思っています。少子化だからこそ、質の高い人間づくりが求められます。特に幼稚園や認定こども園は人格形成の基礎である最も大切な根っこの教育の場であり、ある意味で善き日本人のDNAづくりの最後の砦であると考えます。  そして、到来する不透明な時代を生き抜く力を子ども達に備えさせるという意味では、大学教育に勝る教育と言えます。これらのことを踏まえながら、連合会としては実現可能な少子化対策と幼児教育支援充実を県に対し要望していきたいと思います」  ――幼稚園の教員不足も深刻な課題になっています。  「教員不足対策はもちろん重大な課題ですが、幼児教育に限らず、教育の質を向上させるためには教員の質を高めなければなりません。官民連携で、どうしたら質の高い人材を育成できるのか、そこをもう一度考え直してみなければなりません」  ――連合会として、今後どのような取り組みを進めていきますか。  「10月に東北6県の幼稚園・認定こども園の教職員約800人が集まり、郡山市で教員研修大会が開催されます。教員の質の向上に寄与する研修会にするため、郡山地区の園が中心となり準備を進めており、充実した内容にしたいと思っています。 また、県内には本連合会に加盟していない園もあるため、加盟拡大にも力を注ぎ組織力を強化することで要望等の実現に繋げたいと思っています。さらには各園の後継者育成にも取り組んでいきたいと思います」  ――今後の抱負。  「名称の通り、本連合会には幼稚園と認定こども園が加盟しているため、振興対策も別々に立案しなければなりません。そのため本会は各窓口との情報収集・交換をはじめ、積極的に県内でのアンケート調査等を実施し、そのエビデンスに基づく振興対策を国・県に求めていきます」

  • 【鮫川村】宗田雅之村長インタビュー

    【鮫川村】宗田雅之村長インタビュー

     そうだ・まさゆき 1951生まれ。日本大学工学部卒。2007年に鮫川村議会議員になり、2015年4月から2023年3月まで副議長、同年4月から8月まで議長を務めた。8月27日投票の村長選で初当選を果たす。  ――8月に行われた村長選で初当選を果たしました。  「村の課題は山積しています。全国的に人口減少が叫ばれていますが、特に当村の場合は多くの若者が村外に流出している状況にあります。人口減少によって農業の後継者不足や中心地域の空洞化も進んでいる状態です。これらに対する対応・対策を考えた際に的確な判断の難しさや責任の重さを十分感じています。だからこそ、村民目線で住民の気持ちを優先的に考えて対応策を検討していきたいと思っています」  ――選挙では給食費無償化等の子育て支援策を打ち出していました。  「給食費無償化は、国が今年3月に少子化対策として実態調査を行うことを打ち出しましたが、本村は令和元年度から2分の1の支援を行ってきました。さらなる子育て世代の財政支援の拡充を図るため、まず給食費の無償化を進めていきたいと思っています。また、今は核家族や共働きが進み、放課後児童クラブに預ける家庭が多いのが実情で、クラブの改善は重要だと思っています。現在は預ける際は有料となっていますが、これも無料化にすることで子育て支援の拡充を図っていきたいと思います。本村は近隣町村と比較しても利便性が低い現状にあります。給食費に限らず、例えば通学の際の交通費補助等の再検討を含めて教育費に係る財政的な支援は重要だと思います。今は村外に通学する高校生に対して、1万円の交通費の補助を行っていますが、燃料費等の高騰が進んでおり、子育て世代では困窮している家庭も多いのが実情だと思います。それに対しても、もう少し何らかの支援を検討していきたいと考えています。  また、学力を上げることで将来の職業の選択肢も広がるなど、学力向上は将来の村の未来像を見据える上でも重要です。秋田県は学力向上に力を入れており、特に東成瀬村は『学力日本一の村』として全国に先駆けて学校教育に力を入れてきました。東成瀬村は当村より規模も小さく、学力支援は自治体の規模に関係ないことが証明されており、本村でも力を入れて進めていきたいと思います。本村には学習塾がなく時間をかけて村外の学習塾に通う児童・生徒も少なくありません。そこで小・中学生、とりわけ中学生向けの学習支援も進めていきたいと思います。教員の指導能力向上はもちろん、専門の教員を呼び、村で学習支援を行うことで学習塾に通う必要がなくなると思います。学習塾と提携している自治体もあり、そういった政策をどんどん取り入れていきたいと思っています。 こうした支援を進めることによって教育に関心のある若者が村内に留まったり、他町村からもそういった政策に惹かれて移住する子育て世代の需要もあると考えています」 日本一の村づくりを目指す  ――産業振興も重要です。  「新たな企業誘致は難しいのが現状です。そこで私は村の宝物だと思っている自然景観を産業振興につなげていきたいと思います。例えば、村内にある湯ノ田温泉は以前は東京都の上野駅に看板が掲げられるなど全国的に有名な温泉です。温泉だけでなく近隣にある強滝は岩と水の造形美も素晴らしく、川沿いの遊歩道は『ふくしま遊歩道50選』にも選ばれています。特に紅葉シーズンは毎年多くの観光客とカメラマンが訪れます。こういった景勝地をさらに増やしPRしていきたい。どんな遠いところでも美味しいものと、自然景観の豊かなところがあれば人は集まります。そういった政策を行うことで交流人口拡充を図りたい。それが村の活性化につながると思います。  村では以前から『まめで達者な村づくり』を進めてきました。これは60歳以上の高齢者などに大豆等の栽培をお願いすることで特産品開発を行うものです。高齢者が一生懸命に汗を流してつくった農産物が循環すれば、生産者である高齢者の健康づくりにつながりますから、あらためて仕掛けづくりを進めていきたいと思っています。商品も納豆や豆腐だけでなく、新たな開発を進めていきたいと思います。村内だけでなく東京農業大学といった外部の意見も頂戴しながら検討していきたいと思っています」  ――手まめ館は今後どういった施設にしていきたいでしょうか。  「私自身、村長就任前は村議を務めながらガソリンスタンドや整備工場を経営してきました。そういった意味で商売の経験は少しあると思っています。もっとも、私自身は工学部の土木学科を卒業しましたので、全く違う業界に入りました。勉強のため最初に行った研修は仙台駅の多くの人が通る一画で『おはようございます』『こんにちは』『ありがとうございます』といった挨拶を繰り返し行いました。最初は嫌でしたが、そういった経験を通して自分自身の自信につながりました。  それを踏まえ、まずは人づくりを進めていきたい。他企業に依頼するなどして人材指導のスペシャリストを招き、勉強会などを通したスキルアップも進めていきたいと思います。今年行われたWBCで監督を務めた栗山英樹さんの著書『育てる力』を読むと、資本主義の父と言われる渋沢栄一さんの講演をまとめた『論語と算盤』を参考に人づくりを進めたそうです。『論語』は道徳であり『算盤』は商売を指しています。渋沢栄一は論語と算盤を通じて道義を伴った商売の追求を説いています。どのような商売であっても結局は『人』が重要です。そういった意味でひとづくりの重要性をあらためて実感しました。人が良くなれば自然と同じ方向を向くと思います。皆『良くしたい』という思いは同じだと思いますから、それぞれの思いをしっかり受け止めていくことが重要だと思っています。そういう意識が全体として高まれば自然とすべてが向上していくと考えています」  ――議長や村議の経験をどう生かしていきますか。  「商売をしていた経験上、自分として大事にしてきたことは村民とのキャッチボールです。村民の声を聞いて『できないことはできない』『できることはできる』という即対応を心がけてきました。また、村民目線で村民の気持ちに立って行動することは議員でも行政の長でも同じです。今後もそういった気持ちを忘れずに行政運営に当たっていきたいと思います」  ――今後の抱負。  「『大義なきところに人を集まらず』というスローガンを掲げながら『日本一の村つくり』『日本一の里山つくり』を目指すこと念頭に置いて村長選に立候補しました。村民の誰もが方向性は同じだと思います。自分の住んできた村に愛着を持ちながら最高の村づくりを進めていきたいと思います」

  • 【平田村】澤村和明村長インタビュー

    【平田村】澤村和明村長インタビュー

     1947年生まれ。小野高校、立正大経済学部卒。96年から平田村議3期。2007年7月、平田村長選で初当選。23年7月の村長選で5選を果たした。  ――7月の村長選で5度目の当選を果たしました。率直な感想を。  「相手候補は、政策論争ではなく『5期は長すぎる』という主張を柱としてきました。それに対し、私は4期16年間の実績についてどのように評価していただいたか、住民の皆さんの声に耳を傾け、今後4年間、どのような取り組みをしていきたいか、自分の考えを訴えました。今回の結果は『16年間の経験を、これからの対応に生かすことが大切だ』と受け取っていただいたのだと捉えています。村議12人中8人から支援をいただき、今後の事業進捗にも心強さを感じています」  ――公約に掲げた「高齢者がいきいきと暮らせる地域社会の実現」と「観光・交流事業の更なる強化」について。  「高齢化というと、少子化と並べられ『高齢者が増えることは問題』のように受け取られがちですが、大切なのは高齢者が『元気で毎日過ごせる』ことだと思います。そのために必要なことは、適切な運動や音楽などの趣味を楽しみ、健康でいることです。4月にオープンした複合施設『ハレスコ』では、まさに健康づくりのメニューを取りそろえており、趣味活動ができるスペースもあります。今後はもっと大勢の皆さんに参加していただけるように支援していきます。高齢者からの長年の要望だった入浴施設については、コロナ禍などで延びておりましたが、ようやく来年度に設計予算を組めるところまで目途が立ちました。若者も利用できるようサウナも併設したいと考えています。  観光については、ジュピアランドにイベント利用の促進のため、『野外ステージ』を設けます。また、あじさい園側に『天の川プロジェクト』として、2㌶規模のあじさいエリアづくりをスタートします。展望デッキや遊歩道の設置も検討しています」  ――その他、今年度の重点事業は。  「造成中のパークゴルフ場について、今夏の猛暑で芝生の生育に遅れが出ていましたが、手入れをし直し、秋には仮オープンにこぎつけたいと考えています」  ――5期目は集大成となるのでしょうか。今後の抱負を。  「集大成というと仕上げや終わりをイメージしますが、村長や役場の仕事は将来のために種をまく事業や取り組みが多く、終わりはありません。時限立法である『過疎指定』の恩恵をチャンスと捉え、積極的に『元気で長生きし、人生を楽しめる笑顔あふれる村づくり』に取り組みます。日進月歩のこの社会で『今やらなくてはいけないことをしっかり全力で尽くすだけ』と考えています」

  • 【古殿町】岡部光徳町長インタビュー(2023.10)

    【古殿町】岡部光徳町長インタビュー(2023.10)

     おかべ・みつのり 1959年生まれ。学校法人中央工学校卒。株式会社トーホク・オカベ取締役を経て、2003年4月の町長選で初当選。現在6期目。  ――4月の町長選で6選を果たしました。  「自分なりの選挙を展開でき、それに町民の皆様が応えてくださったのは非常に身に余る思いです。当選させていただいた以上は新たな気持ちで行政運営に当たっていきます」  ――6月には4年ぶりに流鏑馬大会が開催され、秋の例大祭も開催されます。  「町内に流鏑馬保存会という組織があり、これは射手の育成を目的としていますが、その成果発表として例年、春と秋に流鏑馬大会を実施しています。春の陣が4年ぶりに開催され、この間、練習の成果を披露する場に恵まれなかったので、そうした意味でも開催できたことには大きな意義があり、秋の例大祭の前段としても弾みがついたと考えています。ただ、5類に移行したとはいえ、新型コロナウイルスの影響はまだまだ考慮しなければなりませんし、この4年間様々な事情で中止してきた経緯もあるので、再開というよりは新たなスタートを切る気持ちで取り組むべきだと考えています。その一環として例大祭の行列のスタート地点を郵便局から公民館に変更し、今後も様々な変更点やポイントを見直し、次年度の開催に向けて関係各所との協議・検討を進めていきます」  ――林業活性化に向け、町内業者と協力して持続可能な林業を目指す取り組みが進められています。  「まだ具体的な内容は完全に定まっていませんが、国・県の制度を踏まえた中で、間伐を中心に森林整備を実施しているところです。また、県と町と地元事業体で団体を組織し、経営収支をプラスに転換させる経営モデル構築の実証事業を行っています。この取り組みは林業事業体のレベル向上にもつながり、現在、町の森林経営計画は森林組合が森林所有者の代理で構築していますが、ゆくゆくは事業体自身で経営計画を構築することも可能になると考えています」  ――今後の重点事業について。  「以前から道の駅拡張について取り組んでおり、地権者の皆様のご理解が得られそうなところまで来ましたので、これを重点事業の一つに据えて取り組んでいきたいと考えています」  ――6期目の抱負について。  「基礎自治体は厳しい状況にありますが、町民の皆様が、笑顔で住んで良かった、ふるどので良かったと思えるようなまちづくりに邁進していかなければなりません。そのためには町民の皆様のご理解とご協力が不可欠です。『今後ともよろしくお願いいたします』という思いで町政運営に取り組んでいきたいと思います」

  • 【会津若松市】室井照平市長インタビュー

    【会津若松市】室井照平市長インタビュー

     むろい・しょうへい 1955年生まれ。東北大卒。会津若松市議2期。県議1期を経て2011年8月の会津若松市長選で初当選。今年7月に4選を果たす。  ――7月に行われた市長選で4選を果たしました。  「厳しい選挙戦の中、4選を果たすことができたのは市民の皆様のご支援があってこそで、あらためて御礼申し上げます。  4期目の抱負は、市民の皆様それぞれに夢を持っていただくことです。東洋経済新報社が全国812市区を対象に実施している『住みよさランキング』によると、2022年は全国66位で県内自治体では1位、2023年版では全国119位で県内自治体では3位の結果となりました。こうした結果の要因として、子育て支援をはじめとした施策が評価されたものと受け止めています。今後も子育て支援をはじめとしたさまざまな施策に注力し、市民の皆様に住みやすい町に住んでいるという実感を持っていただけるように取り組まなければなりません。住み続けたい、訪れたい、選ばれるまちの実現に向けて今後も全力で取り組みます。  1期目から掲げている『子どもたちには夢と希望を、若者には仕事・雇用を、お年寄りや障がいのある方には安心できるまちづくりを』というテーマを変わらず根幹に据えて、市民の皆様一人ひとりの思いを受け止めながら、市政運営にあたっていきます。また、様々な施策を通して、市民の皆様が郷土に愛着を持ち、地域に対する誇り『シビックプライド』を醸成し、誰もがこのまちで暮らし続けられるように、市民の皆様と共にまちづくりを着実に進めていきます」  ――新型コロナウイルスの5類移行が実施されましたが、観光業をはじめ市内経済への影響はいかがでしょうか。  「観光入込は、コロナ禍前の2019年度には及ばないものの、回復傾向にあります。具体的には、コロナ禍前が300万人だったのがコロナ禍では83万人にまで落ち込み、昨年は146万人にまで回復しました。5類移行後の5月以降はコロナ禍前の水準にさらに近づき、お盆時期を中心に家族旅行での来訪が目立っており、今年は250万人を越える入込が見込まれます。当面はコロナ禍以前の300万人に戻すことが目標です。また、インバウンドはコロナ禍前が2・5万人、コロナ禍には800人にまで減少しましたが、順調に回復しています。今後はコロナ禍前の10倍の25万人まで増加させることを目標としています。教育旅行については、コロナ禍でも好調を維持しており、5類移行後においても平日の観光需要を底上げしています。観光業以外でも、市内の経済状況は回復基調となっており、飲食業界や酒造業界への聞き取りでも、観光客の増加によって売り上げも堅調となっています。一方、原材料や電気代等の高騰は市内事業者に広く影響が出ており、今後も景況感は注視していく必要があります」  ――市役所新庁舎整備事業の進捗状況についてうかがいます。  「昨年10月に設計が完了し、今年3月に建設工事が始まりました。9月上旬時点で基礎工事が行われています。来年には庁舎周辺の道路拡幅工事や駐車場・駐輪場の工事を予定しており、順調に進めば2025年3月に新庁舎が完成し、同年度からの供用開始を予定しています。  新庁舎は、1937年から市の歴史を見続けてきた旧館を引き続き庁舎として保存・活用し、その隣に旧館のデザインを取り入れた地上7階建て、高さ30㍍の庁舎となります。全体の面積は約1万3700平方㍍で、免震構造を採用しているほか、高い省エネ性能を持ち、環境にも配慮しています。また、多くの部局が新庁舎に集約され、窓口利用が多い部局を低階層に配置するなど、市民の皆様の利便性の向上を図っています。この新庁舎が市民の皆様の安全・安心な暮らしを支え、災害時には被災対応の活動拠点となり、さらにはまちの要として、人が集い賑わいを作り出す会津のランドマークとなるよう、引き続き整備を進めていきます」  ――「スマートシティ会津若松」の取り組みが加速しています。  「スマートシティとは、〝便利で住みやすいまち〟を意味しており、本市では2013年3月より『スマートシティ会津若松』を掲げ、生活を取り巻く様々な分野でICTを活用することで、将来に向けて持続力と回復力のある力強い地域社会、安心して快適に暮らすことのできるまちづくりを目指してきました。  昨年度、本市は『国のデジタル田園都市国家構想推進交付金デジタル実装タイプ タイプ3』に東北地方で唯一採択され、食・農業、決済、観光、ヘルスケア、防災、行政という6つのデジタルサービスを実装しました。この間、市、会津大学、AiCTコンソーシアムの三者で『スマートシティ会津若松』に関する基本協定を締結したほか、市民の皆様を対象とするスマートシティサポーター制度や、地域の業界団体の方々を構成員とするスマートシティ会津若松共創会議を創設するなど、地域が一体となった推進体制を構築し、取り組みのさらなる深化・発展を目指してきました。  次なる取り組みとして、今秋以降、デジタル地域通貨『会津コイン』を使ったプレミアムポイント事業を開始するほか、今後は国の支援策等も活用しながら、引き続き会津大学およびAiCTコンソーシアムとの連携のもと、市民の皆様や企業の方々が『スマートシティ会津若松』の取り組みの成果を実感していただけるようなサービスを実装し、市民の皆様が生き甲斐と幸せを感じ、〝住み続けたい〟と思えるまちづくり、進学等で本市を離れる若者が、〝いずれ戻ってきたい〟と思えるまちづくりを目指し取り組んでいきます」  ――今後の重点事業について。  「少子化・人口減少対策は市の最重要課題であり、想定以上に出生数が減り、死亡者が増えているのが現状です。こうした現状を打破するためにも、Uターンや県外のお孫さんが祖父母の住む本市に移住する孫ターンの給付金制度、住宅取得支援や賃貸家賃補助、移住婚祝い金といった形で移住・定住支援に注力していきます。また、昨年実施した『ベビーファースト宣言』のもと、安心して子どもを産み育てる環境づくり、子どもたちがふるさとに誇りを持ちながら多様な学力を身に着ける環境づくりを進めていきます。  ほかにも新規就農者支援、新たな雇用に繋がる工業団地の整備も重要ですので、今後4年間でさらに内容を深化させていきたいと考えています。また、観光庁の『国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業』において、本市と磐梯町、北塩原村でのスキーと観光を軸にする計画が県内で唯一採択されました。今後は他自治体や関係団体との連携を図りながら、冬季間のインバウンド強化に向けて取り組んでいきます」

  • 【福島県浄化槽協会】紺野正雄会長インタビュー

    【福島県浄化槽協会】紺野正雄会長インタビュー

     こんの・まさお 1951年生まれ。福島商業高卒。㈱A水技研代表取締役。今年6月、県浄化槽協会会長に就任した。  ――新会長に就任しました。  「就任にあたり3つの目標を掲げました。  1つは合併浄化槽の普及促進です。県内は単独浄化槽とくみ取り式トイレが多く存在しており、汚水処理未普及の解消を図るうえでも、合併浄化槽の普及は必要不可欠です。国や県・市町村と連携し普及を促進していきたいと思っています。  2つはデジタル化の推進です。他業界と比べ協会内のデジタル化は極めて遅れています。IT技術で業務効率化を図り、人手不足などの諸問題を解決できるように意識改革を促したいと思います。  3つは後継者育成と浄化槽のイメージアップです。残念ながら『きれいな仕事ではない』というイメージがあるようで、会員企業からは『求人を出しても応募がない』などの声を多く耳にします。また、各企業が世代交代の時期を迎えている中で、『施工・保守点検・清掃の3業種の相互理解の醸成』の必要性も感じています。3業種の連携強化と次世代を見据えた取り組みを進めます」  ――県内の現状について。  「県内には約28万基の浄化槽が設置されており、そのうちトイレの汚水だけを処理する単独処理浄化槽が約15万基あります。単独処理浄化槽を合併処理浄化槽に転換することは全国的な課題となっています。転換する場合の各種補助制度は拡充しており、個人負担は軽減されます」  ――国・県に望むことは。  「当協会は浄化槽ユーザーである一般住民の負担軽減を最優先にしています。残念ながら県内では毎年のように大きな災害に見舞われていますが、浄化槽はインフラ設備でありながらその復旧費用は個人負担となっています。被災浄化槽へのフォロー対策やスピード感のある復旧対応の在り方を明確に示し、対応する市町村担当局や一般住民が困ることのないよう、リードしてほしいと思います。また、合併処理浄化槽が老朽化したり、度重なる地震などで破損するケースも増えています。最新型の浄化槽はコンパクト化・省エネ化が進み、ランニングコストの低減効果があります。更新に対する助成制度の創設、下水道と比較してやや高額となる維持管理費用の助成制度創設など、住民負担の軽減対策を積極的に進めてほしいです」  ――今後の抱負を。  「恒久的で重要な汚水処理インフラである『浄化槽』への認知度が極めて低いことに強い危機意識を持っています。まずは業界体質の変革が必要です。現代社会の変化スピードに対応できているとは言えず、相当遅れていると感じます。人手不足解消策としてIT技術の導入はもとより、施工から維持管理まで浄化槽に関わる関係者の人材育成や待遇の在り方も抜本的な見直しが急務です。これからの時代に即した企業体系にシフトできるよう意識改革を行いながら永続性を確保し、安定的な業界となるよう進化していきます」 福島県浄化槽協会のホームページ

  • 【福島県産業資源循環協会】佐藤俊彦会長インタビュー

    【福島県産業資源循環協会】佐藤俊彦会長インタビュー

     さとう・としひこ 1951年2月生まれ。佐藤産業㈱代表取締役。2007年5月から県産業廃棄物協会長を務め、2019年4月から現職。  ――燃料費・光熱費の高騰が続いています。  「高騰分は処理費用の中に反映させますが、なかなか排出事業所に認めていただけないのが実情で、理解をいただくのに時間もかかり、現段階では会員企業の多くが経営的に非常に厳しい状況が続いています。今年8月に全国産業資源循環協会が景況動向調査を行ったところ、全国的にも大変厳しい状況が続いています」  ――労働安全衛生運動に取り組んでいます。  「我々の業界は労働災害が他産業に比べて非常に高い水準にあります。一時期は建設業の4倍だった時期もあり、2010年度に労働災害防止計画を策定しましたが、昨年は残念ながら休業4日以上の死傷者数は22名でした。特に墜落・転落事故や挟まれたり巻き込まれたりと転倒事故が多いのが実情です。そこで5月に全国産業資源循環連合会との連携のもと第3次労働災害防止計画を策定しました。次の事項について重点事項をまとめて会員の皆様と実施しました。まずは経営者の意識改革。経営者のリーダーシップの下で労使が一体となって労働安全衛生対策に取り組みました。二つ目が労働災害防止活動の推進です。安全衛生規程を作成し、それに基づき労働安全衛生活動に従業員として的確に対処できるようにしていきたい。今年は会員企業の代表者を対象としたトップセミナーをビッグパレットふくしまで開催しましましたが、100名ほどが集まり関心の高さを実感しました。9月からは各方部に分かれて労働安全衛生についての講習会も行っていますが、会員企業のみならず非会員企業にも意識を高めてもらいたいと思っています。ただ残念ながら5月の段階で11名の死傷者数が確認されているのが現状です。もう一度協会全体で真摯に取り組み労働災害発生の減少に向けて会員企業はもちろん非会員企業にも安全衛生の意識を高めてもらいたいと考えています」  ――今年度の重点事業について。  「1つは先ほど言った労働安全衛生活動の推進です。2つはカーボンニュートラルの推進。2050年に向けて取り組んでいきたいと思います。3つは会員の処理技術の向上です。処理技術向上のための講習会に対する補助等を行い、技術向上と人材育成を図っていきます。4つは県内では自然災害が頻発しており、協会と県で大規模災害時における災害廃棄物処理等の協定を結んでいます。それに基づき、災害が発生した際は、できるだけ早く対処したいと思っています」  ――今後の抱負。  「昨今、我々の業界は求められることが多く、カーボンニュートラルはもちろん、サーキュラーエコノミー社会の関心も高まっています。サーキュラーエコノミーは日本語に訳すと循環経済ということですが、協会一丸となって取り組んでいきたいと思っています」

  • 【福島県保健福祉部】國分守部長インタビュー

    【福島県保健福祉部】國分守部長インタビュー

     こくぶん・まもる 1966年9月生まれ。郡山市出身。東北学院大卒。89年に福島県庁入庁。総務部政策監、観光交流局長などを経て、昨年4月から現職。  新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5月8日から季節性インフルエンザなどと同じ5類に移行された。とはいえ、コロナがなくなったわけではなく、まだまだ注意が必要だ。そんな中、県ではどのような対応をしているのか。健康・福祉などのその他の課題と合わせ、県保健福祉部の國分守部長に話を聞いた。(取材日9月12日) 県民が健康で幸福を実感できる県づくり  ――5月から新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に引き下げられました。  「5類移行により、法律に基づき行政が様々な要請や関与をしていく仕組みから、個人の選択を尊重し、県民の皆様の自主的な取り組みを基本とする対応に変わりました。  県では5類移行後も迅速な対応を図るため、知事をトップとした福島県新型コロナウイルス感染症対策連絡調整会議を設置し、関係課長による会議を毎月開催するなど、感染状況の把握と情報共有に努め、基本的な感染対策について注意喚起を図ってきました。また、医療提供体制については、法律に基づく入院措置による行政の関与を前提とした限られた医療機関による特別な対応から、幅広い医療機関による自律的な対応への移行を段階的に進めています。  新型コロナウイルス感染症の波は、今後も繰り返されることが予想されています。感染が拡大すると医療機関への負荷が高まるとともに、高齢者や基礎疾患のある方などの重症化も懸念されます。県では、引き続き、感染状況や医療負荷の状況に注視しながら、感染拡大防止のための情報発信や医療提供体制の確保に努めていく考えです」  ――8月20日までの1週間に県内82の定点医療機関で確認された感染者は増加傾向にあります。  「新型コロナウイルス感染症の新規患者数の定点あたりの報告数は、6月中旬以降増加しています。特に、8月14日から20日までの1週間は、25・27人と前週から2倍近い増加となり、全国平均の17・84人を大きく上回りました。その後は緩やかになったものの増加傾向は続いており、8月28日から9月3日までの1週間では27・62人となっています。昨年夏もお盆期間の前後にかけて新規陽性者が増加していたことから、夏休みやお盆期間中に人の流れが活発化したことが影響しているものと考えています。  県民の皆様には、換気や場面に応じたマスクの着用、手洗い・手指消毒などの基本的な感染症対策を徹底いただくとともに、発熱やのどの痛みがあるなど普段の体調と異なる場合には外出に留意し、検査キットによる自主検査を行うなど『うつさない』行動を心掛けていただくようお願いします」健康長寿県を目指す  ――県では2035年度までを期間とする「第三次健康ふくしま21計画」の策定を進めています。  「県では、総合計画で『全国に誇れる健康長寿県へ』を重要な施策に位置付け、県民の健康づくりに力を入れています。本年3月に『第二次健康ふくしま21計画』の最終評価を公表しましたが、健康寿命の延伸や要介護高齢者の抑制等は目標を達成した一方で、メタボリックシンドロームの該当者やがん検診の受診者など、健康指標の多くは依然として低迷していることが明らかとなりました。特に本県はメタボリックシンドローム該当者の割合が全国ワースト4位、食塩摂取量がワースト2位など、震災以降の生活習慣の変化等により全国の中でも下位にあり、その改善のためには、県民一人ひとりが自身の健康の大切さに気づき、自分に合った健康づくりを実践していただくことが重要です。そのため、幅広い年代に楽しみながら健康づくりに取り組んでもらえるよう、健民アプリを活用して日々の体重を記録し適正体重を目指す『ふくしま測って体重チャレンジ』の実施、野菜から食べ始めるベジ・ファーストの推進、惣菜を段階的に減塩しスーパーで販売する食環境づくり事業などに取り組んでいます」  ――介護・障害福祉施設では人材不足が顕著です。  「県では、県内各地で開催する合同就職説明会をはじめ、優秀な介護職員や労働環境・処遇改善等に優れた施設を表彰する『キラリふくしま介護賞』、新たに職員となった方を知事が激励する『福祉・介護職員のつどい』、県立高校の生徒に介護の専門性や意義を伝える出前講座、介護福祉士養成施設の入学生を対象とした修学資金の貸与のほか、介護職員の負担を軽減する介護助手の配置やワーク・ライフ・バランスの推進につながる週休3日制を導入する施設に対する支援など様々な事業に取り組んでいます。  また、若い世代の介護への関心を高め、理解を促す取り組みとして、今年度は新たに、親子を対象に介護の魅力とやりがいを伝える参加型イベントを開催するとともに、若手介護職員や全国で介護の魅力発信を行っている方を高校に派遣し交流会等を開催するなど、イメージアップを強化しています」  ――今年度の重点事業について。  「今年度は重点事業として、避難地域の医療機関等の再開を支援し、医療提供体制の再構築を推進する『避難地域等医療復興事業』、県民の健康指標を改善するため健康行動の実践を促す『ふくしまメタボ改善チャレンジ事業』、介護支援ロボットやICTを導入することで介護職員の離職防止と定着促進を図るとともに人材不足を補う『ICT等を活用した介護現場生産性向上支援事業』などに取り組んでいます。  震災・原子力災害からの復興・再生を成し遂げ、急激な人口減少や社会情勢の変化に対応できるよう、職員一丸となって効果的な施策を展開していきます」  ――地方の立場から国に要望したいことはありますか。  「新型コロナウイルスは5類感染症に移行しましたが、新たな感染症等の発生にも留意しながら、持続可能な医療提供体制の確保に向け、平時から準備を整えておくことが必要です。このため、国には感染症対策や災害時医療を提供する医療機関の平時からの人的・財政的負担について支援いただくとともに、地域偏在や診療科偏在の解消等も含めた医療人材の確保に向けた対応を要望しています。 また、コロナ禍において健康づくりの重要性が再認識されたことから、国民の健康を守る取り組みを一層強化していく必要があります。健康づくりの推進に向け、社会全体での意識醸成に国が率先して取り組むとともに、自治体や医療関係者等の連携強化、市町村による格差を防止するための財政的な支援等の拡充を要望しているところです」  ――今後の抱負。  「県保健福祉部の基本理念である『全ての県民が心身ともに健康で、幸福を実感できる県づくり』に向けて、関係する全ての方々と連携しながら、全力で取り組んでいきます」

  • 【学校法人昌平黌】緑川明美常務理事インタビュー

    【学校法人昌平黌】緑川明美常務理事インタビュー

     みどりかわ・あけみ 東日本国際大学卒。東日本国際大学・いわき短期大学キャリアセンター勤務を経て現職。東日本国際大学・いわき短期大学東京事務所長、キャリアセンター顧問も兼務している。  今年創立120周年の節目を迎えた学校法人昌平黌(いわき市、緑川浩司理事長)。いわき市で、いわき短期大学附属幼稚園、東日本国際大学附属中学・高校、いわき短期大学、東日本国際大学を運営しており、各施設で「人間力」を重視した教育を展開している。具体的な教育内容や今後の展望について、緑川明美常務理事に話を聞いた。 「人間力」重視の教育を展開し、地域とともに歩んでいく。  ――学校法人昌平黌では、東日本国際大学をはじめ、さまざまな教育機関を運営しています。教育の特色を教えてください。  「当法人の教育理念の根幹に位置づけられるのが、建学の精神である孔子哲学(論語)です。孔子哲学を土台にした〝人間教育〟を一貫して大事にしており、幼児教育・学問との融合・融和を図り、『人間力』の育成に努めています。  一例を挙げますと、同短大幼児教育科では未来を担う子どもたちを教育する人財を育てています。孔子の論語を踏まえ、思いやりの心である『仁』、人間社会の規範に立って礼儀を重んずる『礼』を体現できる、自分は元より相手を思いやれる人間教育に傾注しています。また、人間尊重の精神はすべての学校に共通している点を付言したいと思います」  ――「人間力」を重視した教育について具体的に教えてください。  「当法人が打ち出す『人間力』は、開学からの『義を以て行い其の道に達す』、創立120周年を機に森田実名誉学長より贈られた『克己復礼為仁(己に克ちて礼に復するを、仁と為す)』に集約され、教育方針の確固たる軸となっています。『義』とは自分自身と真剣に向き合い、内面の部分から成長を促すことです。自信が持てない、引っ込み思案な生徒・学生でも、己と向き合い長所や素晴らしい個性に気づくことで、自信に満ちた朗らかな性格に変化していく姿を数多く見てきました。  また、最初から目的意識を持っている生徒・学生でも、実習やボランティアなど他人とのかかわり合いや異なる環境に身を置くことで、あらためて自分自身を見つめ直しながら成長していきます。  『克己復礼為仁』とは、究極の人間性である『仁』の実践について、孔子が説いた言葉です。ここでの『礼』とは単に儀礼作法にとどまるものではなく、人と人とのつながりの尊さを説く『和を以て尊しとなす』の精神そのものです。これも人間力の育成にとても重要な教えであり、社会活動では、目標に向かって知恵を絞り一緒に頑張れるかどうかが問われる局面があります。『和』を重んずる団結力こそが社会を前進させる原動力と認識しています」  ――今年で創立120周年を迎え、6月22日に記念式典が執り行われました。率直なご感想と今後の抱負についてうかがいます。  「創立120周年のスローガンは『夢をはじめよう』としました。10年前の創立110周年を迎えた際のスローガンは『踏み出す 次代への挑戦』でした。その2年前に東日本大震災が発生したのを受けて、〝ピンチ=チャンス〟という強い思いが込められています。非常事態の中、教職員とともに園児、生徒、学生のために何ができるのか、皆で知恵を絞って、さまざまな苦難を乗り越えることができました。あらためて振り返ると、他者への思いやり、つまりは『建学の精神』が息づいていたからこそ実現できたと痛感しています。創立120周年を迎えるに当たり、これまでの困難を克服したうえで、夢に向かって歩んでいこうとの強い思いを込めて新スローガンを決定しました。  創立120周年記念事業の一環として、8月に竣工したいわき短大附属幼稚園新園舎の整備が挙げられます。旧園舎の老朽化が課題となっていましたが、さらなる幼児教育の充実を図るべく、節目の年に新園舎建設に踏み切りました。開放感があり、木の温もりや自然との共生を肌で感じられる素晴らしい園舎です。  当法人には小学校がありませんが、幼稚園から始まる人間教育を中学・高校への架け橋とすべく、同幼稚園の卒園生を対象とした『昌平塾』の開設に向け鋭意整備を進めています。  また、創立120周年を迎えるにあたり盤石な未来を拓く『三つのビジョン』として、①『人間教育』こそ教育の原点、②地域貢献の人材を輩出、③地域に開かれた大学――の3点を掲げ、地域とともに歩み、地域に根差した揺るぎない発展を目指したいと考えます」  ――大学・短大の学生の自己実現について、どのようにサポートしていますか。  「自己実現の根源は夢や目標です。当法人では学生の目的意識の醸成と主体性を尊重したサポートに注力するとともに、学問や就活を問わず一人ひとりに真摯に向き合ったきめ細やかな指導ができる点が大きな強みと考えます。アットホームな環境も魅力の一つですし、教職員も学生一人ひとりに真剣に寄り添う意識がとても高いと実感します。  中・高、短大、大学を問わず、生徒・学生に共通しているのは、人間として『素直な心』を備えていることです。素直な人ほど社会人となってから明らかに成長する、また、『和』を重視する協調性も豊かだと言います。あらためて『素直な心』は人間力・成長力の源泉だと思います。今後も一人ひとりの『素直な心』を大切にする人間教育に一層注力していきます」 台風被災地区で支援活動  ――地域社会への貢献にも尽力していますが、今後の展開について。  「当法人が運営する学校の規模は決して大きくはありません。しかし、福島復興創世研究所をはじめとする11の研究所・研究センターを擁しており、所轄分野は多岐にわたります。  その多くは地域との深い関わりを持っています。少子高齢化など切実な課題を抱える地域社会の中で、無関係でいるということはあり得ません。むしろ地域の活性化と発展を担うという重要な使命を持つのが教育機関だと考えます。  地域貢献と言えば、去る9月8日の台風13号では、東日本大震災と令和元年東日本台風で被災・支援活動の両方を経験している職員が、本学ボランティアセンターを率いて連日に渡り支援活動を行っています。ボランティア隊メンバーは本学強化指定部の柔道部と野球部の学生で、本学バスから大きな体格の若者たちが現れたことで、地域の方々から『姿を見てとても心強く安心した』『いわきに東日本国際大学があって良かった』等々、たくさんの感謝とともに励ましの言葉もいただきました。  地域の未来をどう創造し、開いていくか、が問われている社会情勢です。当法人は時代の最先端を走る教育・研究の『知の拠点』としての責任を自覚し、地域社会の抱えるさまざまな問題を解決するため力を尽くしていきます」

  • 【福島県建設業協会】長谷川浩一会長インタビュー【2023年9月号】

    【福島県建設業協会】長谷川浩一会長インタビュー【2023年9月号】

    はせがわ・こういち 1962年生まれ。法政大卒。堀江工業(いわき市)社長。2019年5月に県建設業協会会長に就き、現在3期目。  一般社団法人・福島県建設業協会は5月に総会を開き、長谷川浩一会長(堀江工業社長)を再任した。新たな任期に入った長谷川会長に、大規模化・頻発化する災害復旧などへの対応や、働き方改革・担い手不足への対応、公共工事の入札で不祥事が相次いでいる問題への対策、業界の課題などについてインタビューした。 県土発展に貢献できるように課題克服に取り組む。  ――役員改選を経て会長職続投となりました。この間を振り返って。  「会長就任時の令和元年から新型コロナウイルスの感染が拡大し、まさにコロナに翻弄された2期4年間でした。また、この間は、東日本大震災の復旧・復興事業が総仕上げを迎える一方で、史上最大級の台風被害となった令和元年東日本台風や、2年連続で発生した福島県沖地震などの大規模自然災害も頻発しました。建設業協会は地域の守り手として、昼夜を問わない応急業務対策への従事により、県民の安全・安心を確保しながら、復旧・復興工事の着実な進捗を担うなど、地域建設業の役割を全うできたと考えています」  ――来年4月から建設業でも時間外労働時間の罰則付上限規制が適用となり、働き方改革の重要性がより高まっています。  「働き方改革については、ICT活用や現場技術者に対する支援などにより、時間外労働時間の短縮を図った具体的かつ先駆的な事例を紹介するとともに、当協会の働き方改革等検討ワーキンググループで作成したQ&A集を活用した会員への助言など、本会の『働き方改革行動指針』に基づき、会員企業の労働環境の改善を支援していきます。また、公的発注機関に対して、実態に見合った現場経費の積算、熱中症対策や書類作成に要する時間を加味した適正な工期設定、週休2日に対応した設計労務単価の引き上げなど、働き方改革を進めるために不可欠な対応を引き続き求めていきます。  一方、民間工事では依然として厳しい工期設定による工事契約が散見され、働き方改革が進まない一因となっています。今後は労働局の協力を得て、経済団体や大手企業に対し長時間労働削減への協力要請を行うなど、民間発注者に対しても建設業の働き方改革に対する理解と協力を求めていく考えです」 入札絡みの不祥事に遺憾  ――昨年、「第二次ふくしま建設業振興プラン」が策定されました。  「このプランでは①『経営力の強化、生産性の向上』、②『担い手の確保・育成』、③『地域の守り手としての役割を持続的に担うことのできる環境づくり』の3つを根幹に据え、その達成に向けた取り組みを進めていきます。  具体的には①『経営力の強化、生産性の向上』の実現に向け、国や県と連携し、ICT技術の活用や建設DXの推進に向けた研修会の実施、各種情報提供を行うとともに、関係機関に対しては会員企業のICT機器の導入促進に向けた補助制度の充実などの支援を求めていきます。  ②『担い手の確保・育成』に向けては、これまで高校生を対象とした現場実習やインターンシップの開催、小・中学生を対象とした職業体験や現場見学会の開催、SNSを活用した建設業の魅力発信など、若年層を対象としたさまざまな広報活動を実施してきました。今年度は協会ホームページの全面リニューアルや道の駅での建設業のPRといった新たな取り組みを通じて、より広い年齢層に建設業の役割や魅力を発信していきます。技術者育成については、令和3年から開講した『土木初任者研修(前期)』に加え、令和4年からは後期講習も開講し、経験が浅い若手技術者の育成に注力しています。また、産学官連携による技術者育成である『ふくしまМE(メンテナンスエキスパート)』は、昨年度までの育成講座開催による認定者が700人を超えており、今後とも地域インフラの維持管理を担う技術者育成制度の充実に努めていきます。  ③『地域の守り手としての役割を持続的に担うことのできる環境づくり』の実現に向けては、大規模化・頻発化する災害に加え、昨年発生した鳥インフルエンザの対応などを踏まえ、協会としての防災対応力を高め、『地域の守り手』としての社会的役割を果たしていきたいと考えています。現在はラインワークスを活用した災害時の連絡網の強化や、大規模災害時の広域的支援に備えた資材備蓄の充実など、災害対応への強化を進めています。今年5月には、県より災害対策基本法に基づく『指定地方公共機関』の指定を受け、当協会が災害支援を担う公的な団体に位置付けられました。災害時の我々の役割が一層高まっているので、今後も大規模災害に備えた組織強化に努めます」  ――最近は公共工事の入札における設計金額の情報漏洩や贈収賄などの不祥事が相次いでいます。  「県内建設業界は、平成18年の公共工事に絡む不祥事によって社会的信用が大きく失墜した経緯から、猛省して不断に法令順守の徹底に努めてきました。その後、東日本大震災や豪雨災害等での初動対応やインフラの復旧・復興への貢献、様々な社会貢献活動を通じ、徐々に県民の信頼回復への手応えを感じていたところです。しかし残念ながら、近年公共工事に絡む不祥事が続いております。これは公正で透明性の高いものであるべき入札制度を貶め、建設業に対する県民の信頼を著しく失墜させる重大な犯罪行為であり、誠に遺憾なことと受け止めています。これらの事件を一会員企業の問題ではなく、協会全体の問題と捉え、会員に対してさらなる法令順守の徹底と、企業倫理の確立についてあらためて要請しました。今年度も引き続き、関係法令への理解を深め、コンプライアンス順守の機運を醸成する研修などを継続的に実施し、再発防止に努めていきます」  ――今年度の重点事業について。  「少子高齢化の進展に伴う就業人口の減少は、全産業共通の課題ですが、県内建設業界はより深刻な状況で、この中で若年者の入職・定着を促進するためには、建設業に将来を託すことができ、安心して働き続けられる新4K(給料・休日・希望・かっこいい)の魅力ある業界にすることが不可欠です。そのために協会として、働き方改革と担い手確保という相互に関連する2大課題について重点的に対応していく考えです」  ――今後の抱負。  「建設業界では、今後も担い手不足や事業継承問題などが懸念される中、建設DXを活用した生産性の向上や、SDGs・カーボンニュートラルへの対応といった新たな課題も山積しています。協会としては、建設業が地域の基幹産業として引き続き県土の発展に貢献していけるよう、『協会として何ができるか』を常に自問自答しながら、会員各社の知恵や経験を結集し、組織力を発揮することで課題の克服に取り組んでいきます」

  • 【JA福島五連】管野啓二会長インタビュー【2023年9月号】

    【JA福島五連】管野啓二会長インタビュー【2023年9月号】

    かんの・けいじ 1952年生まれ。福島県農業短期大学校卒。JAたむら代表理事組合長、JA福島さくら代表理事専務、代表理事組合長を務め、昨年6月の総会でJA福島五連会長に選任された。 原発事故に伴う風評被害や、自然災害、コロナ禍での米価下落、さらには燃料高騰など、農業を取り巻く環境は厳しさを増している。昨年6月にJA福島五連会長に就任した管野啓二会長に、それら課題への対応や、「第41回JA福島大会」で決議された3カ年基本方針の進捗状況などについて話を聞いた。 生産者の所得が確保される形を早期に実現したい。  ――昨年6月の総会で会長に選任されてから1年超が経過しました。この間を振り返っての感想をお聞かせください。  「昨年2月にロシアによるウクライナ侵攻が始まり、県内では2021年2月、2022年3月に2年連続で福島県沖地震が発生し、新型コロナ感染症の拡大等、課題が山積する中、昨年6月に会長に就任しました。  肥料や燃料・飼料等、様々なものが高騰し農家経営は厳しさを増していきました。国や県へ要請活動を行ったことにより、飼料購入助成等が認められたことは、農家の窮状が理解されたとともに我々の活動が認知されたのかなと思っていますが、その一方で廃業に追い込まれた酪農家・畜産農家の方もいます。そのすべてが飼料高騰に起因するものとは言い切れませんが、もっとできることがあったのではないか、との思いも抱いています」  ――2021年11月に開かれた「第41回JA福島大会」では、2022年から2024年までの中期計画が策定されました。そのうち、農業産出額を震災・原発事故前の水準である2330億円まで回復させる目標を設定しましたが、その見通しについて。  「2330億円の早期実現を目標に取り組んできましたが、2021年度の農業産出額は1913億円となりました。大きな要因の1つに、復興すべき地域の復興が遅れている現実があります。もう1つは、想定していた以上に米価が下落してしまったことがあり、厳しい状況にあると思っています。  そうした中、水田(コメ)から国内需要の多い野菜等に作物転換していただく取り組みをスタートして2年目に入っています。そういった意味では新しい動きが出てきた年になったと思います」  ――「第41回JA福島大会」では、米の生産過剰基調により、生産品目の見直しが必要なことから、国産需要が見込まれる園芸品目への生産シフトを進めるため、「ふくしま園芸ギガ団地構想」を進める、ということも決議されました。その内容と進捗状況について。  「『ふくしま園芸ギガ団地構想』は既存産地のさらなる生産振興を図るとともに、基盤整備地区における高収益作物の大規模振興、園芸振興の取り組みを加速化させていくことを目的としています。  各JAが、これまで栽培した品目等を検討しながら、地域に合ったもの、あるいは新規で需要がありそうなものを検討してもらっています。5JA12地区で、きゅうり、ピーマン、アスパラガス、ねぎ、いちご、トマト、カスミソウなどの栽培に取り組んでいます」  ――中期計画では「組織基盤強化戦略」も大きな目標の1つに設定され、その中で組合員の維持・拡大、とりわけ、「女性組合員拡大」が目標に設定されましたが、その狙いと見通しはいかがでしょう。  「『第41回JA福島大会』で決議された中期計画の柱の1つに『組織基盤の強化』があります。いままで中心となって活動をしてきた人が高齢になり、新規就農者が定着しない中、組合員の維持・拡大は容易でない状況です。そんな中、正組合員の拡大と意思反映の強化のため、女性組合員の拡大、女性の経営への参画を進めています。2022年度末で、正組合員における女性の比率は20・4%で、前年度より増えていますが、さらなる拡大を目指します。  やはり、女性部ではどういうことをしているのか等々を理解していただくことが仲間を増やす第一歩になると思います。女性部の中には『フレッシュミズ』という組織があり、それが定着できずにいる地区もありますから、県内全体でフレッシュミズが構成されるように進めていきたいと思っています。女性部組織が楽しく、自らの経営や暮らしに役立つ組織であるということをいかにしてPRできるかが重要になると思います」 就農支援センターの実績  ――今年4月に、県、JAグループ福島、福島県農業会議、福島県農業振興公社がワンフロアに常駐する総合相談窓口「福島県農業経営・就農支援センター」が開所しました。同センターの意義、これまでの実績等について。  「県に対し『新しく農業を始めたい人や規模拡大などを考えている生産者からの相談にワンストップ・ワンフロアで対応できるような仕組みづくりをしてほしい』と要請し続け、念願叶い、今年4月に、県、JAグループ、農業会議、農業振興公社が集う支援センターが自治会館の1階に開所しました。このような体制は福島県が最初だったこともあり、他県からの視察などもあります。中身については、電話相談、支援センターへの来訪、あるいはこちらから出向くなどの方法で対応しています。相談者も親から受け継いでの就農、全くの新規就農者、あるいは県外からの移住者など多種多様で、法人の新規参入相談もあります。  相談件数は4月から6月の3カ月間で298件に上り、内訳は就農相談が186件、経営相談が103件、企業等の参入相談が9件となっており、昨年同期と比較すると約2倍になっています」  ――東日本大震災・原発事故から12年超が経過しました。この間、福島県農畜産物は、いわゆる風評被害に苦しめられ、品目によっては未だに影響が出ているものもあると聞きますが、今後予定されているALPS処理水の海洋放出に伴うさらなる影響・懸念等について。  「処理水の問題は、農業分野においては、風評が懸念され、それらが最小限度で収まってほしいと思っています。我々が求めるのは、科学的な知見による安心感の伝達と、もし風評が発生した場合は、この12年間で賠償フレームができていますから、それらに基づいて対応をしてもらうことです。協議会員、生産者の方々が不安に思うことがないよう、対応していきたいと思います」  ――今後の抱負。  「毎年のように自然災害が発生し、しかも大規模化していくような気象環境になっていますので、まずは災害に強い生産基盤づくりを進め、従事する人々が生産意欲を持って取り組むことができ、所得が確保されるような姿を早く実現したいと思っています。そのためにも、先ほどお話しした『ふくしま園芸ギガ団地構想』の早期実現や就農支援センターが担う役割は大きいと思います」

  • 【玉川村】須釡泰一村長インタビュー

    【玉川村】須釡泰一村長インタビュー

    すがま・やすいち 1959年生まれ。福島大中退。福島県総務部政策監、福島県観光物産交流協会常務理事、玉川村副村長などを歴任し、今年4月の玉川村長選で初当選。    ――玉川村長選では新人3人による三つどもえの激戦を制して初当選を果たしました。  「副村長を3年間務めていたものの知名度不足は否めず、苦戦を覚悟していました。ただ、支持者の皆さまに『顔と名前』の浸透に注力していただいた結果、日を追うごとに村長選への関心が高まり、村民の皆さまの政策への理解が深まっていくのを実感しました。あらためて村民の皆さま方に当選させていただいたと痛感するとともに、身が引き締まる思いです。選挙戦で寄せられた期待に応えるためにも、公約を着実に実現していかなければならないとの思いを強くしております」  ――1期目の重点施策について。  「『生まれて良かった、住んで良かった、選んで良かった玉川村』を基本コンセプトに掲げています。時代や社会の変化とともに進化しながら、村民の皆さまが安心・安全を実感し快適に暮らせる生活環境、質の高い行政サービスを提供していくことが何より肝要です。  喫緊の課題としては、人口減少対策が挙げられます。人口流出を阻止し、移住者等を増やす政策が必要となります。仕事・住居・教育・医療・子育て支援の充実と生活インフラの整備に加え、移住支援金をはじめ、移住者への手厚い支援など『総合政策』として取り組む必要があります。関係人口の創出と都市部からの移住・定住や二地域居住などを積極的に推進し、地域の活性化、振興策を講じていきます。  次いで、阿武隈川遊水地群整備計画です。村内で収穫量が最も多い優良な農地が買収されるなど、今後の村づくりに大きな影響を及ぼしかねない国家プロジェクトです。住居などの移転を迫られる方々が、これまでの生活の質を確保しながら安心・安全に暮らしていける環境を整えるのが本村の重要な役割と認識しています。対象者一人ひとりに寄り添った対策の実現に向け、国としっかり協議調整していきます。  そのほか、①複合型水辺施設を中心とした『かわまちづくり事業』、②旧須釜中学校校庭を活用した宅地造成事業、③泉郷駅前の活性化などのプロジェクトの推進、④基幹産業である農林業や商工業の振興、⑤いわゆる交通弱者対策としての『高齢者等QOL向上サービス実証事業』の展開と来年度以降の事業化、⑥地域のデジタル化推進を踏まえたプレミアム率30%の『デジタル商品券』の発行〝手ぶらキャッシュレス〟事業、⑦高齢の方々が末永く幸せに暮らしていけるための健康寿命の延伸事業――など、多様なニーズを把握しながら、地域に合ったきめ細かなサービスを提供できる仕組みづくりに鋭意努めます」  ――今後の抱負を。  「4月30日の就任から約4カ月が経過しました。この間、村民の皆さまをはじめ、職員、議会のご理解とご協力に深く感謝致します。『だれもが誇りを持てる魅力ある活力ある元気で豊かな玉川村』の実現に向け、皆さまのご意見やご要望に真摯に向き合いながら、本村における課題解決にしっかりコミットする『玉川モデル』としての施策の展開に邁進していく考えです」

  • 【西会津町】薄友喜町長インタビュー

    【西会津町】薄友喜町長インタビュー

    うすき・ともき 1948年4月生まれ。喜多方商業高(現・喜多方桐桜高)卒。西会津町総務課長、副町長などを歴任。2017年7月の町長選で初当選。現在2期目。  ――昨年8月の大雨被害の復旧状況は。  「本町は未曾有の大雨による被害を受けました。発災後は、現地調査、測量設計を迅速に進め、施工可能箇所のうち、農地・農業用施設を含めたすべての被災箇所の工事を昨年度中に発注し、早期完成を図ってきたところです。特に水田については、今年の作付けに間に合うように工事を進めてきました。残る町道久良谷線については、難易度の関係から2024(令和6)年度の再開通を目指しています」  ――新型コロナウイルス感染症が5月8日から感染症法上5類に引き下げられました。  「この間、『なつかしcarショー』をはじめ、祭礼、各種総会、盆踊り、ビアガーデンが通常開催となりました。また、飲食を伴う会合なども再開され、飲食店も活気が戻りつつあります。今後もこれまで中止・規模縮小を余儀なくされた各種スポーツ大会などの行事が従来通り再開する運びとなります。一方、『Withコロナ』の観点から、引き続き感染防止対策にも努めていく考えです」  ――物価高の地域経済への影響について。  「ガソリン代、電気代、生活必需品に至るまで値上げとなり、町民生活に影響が及んでいます。冬季の暖房費の負担増を懸念しています。本町では、家計負担の軽減を図るべく、給食費の一部補助を実施しているほか、9月には商品券第6弾として、町民一人当たり5000円の消費再生商品券の発行を予定しています。また、町内事業所も収益が圧迫されている現状もあることから、100万円を上限に『中小企業等エネルギー価格高騰対策支援補助金』を創設し、支援策を講じています。そのほか、公共サービス事業者や町内商店向けの支援にも努めています」  ――その他の重点事業について。  「移住・定住の促進、空き家対策、結婚・出産祝い金の継続といった人口減少対策・子育て支援策の推進はもちろん、『西会津町デジタル戦略』に基づきDXをさらに加速させていきます。基幹産業である農業の振興を図るため、町農業公社を設立するほか、最新デジタル技術を駆使して生産者と消費者との〝絆〟を結び、西会津産米の販路開拓や農業所得向上につなげる『石高プロジェクト』を展開します。このほか、人手不足解消を図る仕組みづくりとしての『特定地域づくり協同組合』設立、人生100年時代を見据えた健康長寿・健康寿命延伸事業、西会津診療所の医療体制の強化、『日本の田舎、西会津町。』による町のブランド力強化、ふるさと応援寄付金の取り組み強化による自主財源のさらなる増額などにスピード感をもって取り組みます」

  • 【白河市】鈴木和夫市長インタビュー

    【白河市】鈴木和夫市長インタビュー

    すずき・かずお 1949年生まれ。早稲田大法学部卒。県相双地方振興局長、県企業局長などを経て、2007年の白河市長選で初当選。今年7月に5選を果たす。  ――7月に行われた市長選挙で5選を果たしました。  「多くの市民の皆様の信任を賜り、5期目となる市政の舵取りを担わせていただくこととなりました。その重責に、あらためて身の引き締まる思いです。市民の声に耳を傾け、対話を重ね、信頼関係を築き、市政運営を進めるという初心を忘れず、子どもたちの明るい未来を築くため、直面する課題に一つひとつ丁寧に取り組んでいく考えです。  特に、想定をはるかに上回るスピードで進む人口減少への対応はまったなしの状況です。『少子化』が最大の要因であり、この状況を反転させるには、子育て環境の充実、経済的負担の軽減、さらには急増する未婚の解消など、様々な政策を組み合わせ、総合的に進めていかなければなりません。  中でも、未婚者の増加は大きな課題と考えています。わが国の婚姻の件数は、令和3年は50万組と約50年前の半分となり、戦後最少を更新しました。また、50歳時の未婚割合を示す『生涯未婚率』も令和2年には男性が28・3%、女性が17・8%と、女性より男性の方が高い傾向が続いており、40年で10倍に急上昇しています。こうした中、個人の価値観を尊重しつつ、結婚を希望する人には縁談のお世話をするような機運を社会全体で醸成していく必要があると考えています。市では、新たに『良縁めぐりあわせ応援窓口』を設置し、サポーターが悩み相談や相手の紹介など、かつての仲人のように婚活を支援する事業をスタートしました。  将来を担う若者の流出も、地方都市共通の悩みです。それを解決するには、安定した収入が見込め、将来の生活設計を描ける雇用の場が必要です。このため、地域に根を張る企業を支援することに加え、成長が見込める企業の誘致にも取り組み、地域の産業力を高めていく考えです。また、若者の中でも、特に女性の転出が多いことが大きな課題です。福島県は、昨年の転出超過が約6700人と全国ワースト3位でしたが、そのうち女性が約3900人でワースト2位でした。  県南地域は、県内の他地域と比較して製造業が非常に強い地域ですが、IT関連や研究開発型の成長産業の企業誘致を図るなど、進学等で一度白河を離れた若者が戻ってこられるような多彩な職場環境を整えることが重要になってくると考えています。加えて、女性が働きやすい環境づくりも大切です。日本はジェンダーギャップ指数が146カ国中125位と大変低く、特に地方では、『男は働き、女性は家を守る』という暗黙の役割分担が未だに根強く残っているように感じます。これが『女性の目に見えない障壁』として、女性の社会活躍を妨げる要因となっていると考えられるため、男女雇用機会均等法をはじめ諸制度を社会全体が理解し、機運を高め、その障壁を取り払っていくことが求められています。  そのためには、男女共同参画社会に対する認識を深め、定着させていく必要があり、市では、子育て時期の男性などを対象としたセミナーを実施するなど、ジェンダーギャップの解消に向けた取り組みを推進する考えです」観光ステーションの効果  ――国道294号白河バイパスが2月に全線開通しました。  「本市を南北に縦断する国道294号白河バイパスの開通により、白河中央スマートインターチェンジ、国道4号、国道289号が一直線に結ばれました。多くの市民の皆様から通勤・通学時間が短くなった、スーパーへ行きやすくなったなど、バイパス開通を喜ぶ声が寄せられており、市民生活の利便性は格段に向上したと感じています。  また、物流や救急医療、観光誘客など各方面にわたり大きな効果が生まれており、白河のみならず県南地域の広域的な社会経済活動を支えています。特に、本市のシンボルである小峰城、南湖公園へのアクセスが良くなったことで、今後より一層多くの観光客が訪れるものと期待しています。このため、小峰城、南湖公園の持つ歴史的価値やポテンシャルをより一層引き出し、賑わいを創出していきたいと考えています」  ――観光面では4月、JR白河駅近くにしらかわ観光ステーションがオープンしました。  「本市には、南湖公園、白河関跡、関山や権太倉山、里山のすそ野に広がる田園風景など、四季折々の情緒漂う豊かな自然、さらには美肌の湯として有名なきつねうち温泉など、魅力あふれる観光資源が数多くあります。また、JR白河駅の周辺には、小峰城、旧城下町の街並みを残す中心市街地、明治天皇が宿泊された旧脇本陣柳家旅館蔵座敷など、歴史を感じさせる観光スポットが点在しています。こうした白河の魅力を伝え、リピーターになっていただけるよう、新たな観光拠点として、JR白河駅隣に『しらかわ観光ステーション』をゴールデンウイークの初めに開所しました。オープン以来、多くの観光客の皆様にお越しいただいていますが、白河ならではのおもてなしを提供できるよう日々努めています。  中でも、味や麺の種類など自分好みの白河ラーメンの店舗とその道筋にある観光資源を組み合わせた周遊プランを提案する『ラーメンデータベース』は、テレビなどでも取り上げられ、大変好評です。また、市内の事業者や店舗と連携し、様々な地元産品や地酒などを展示・販売しており、来場者にお買い求めいただいています。  今後は、『旅の始まりは観光ステーションから』をキーワードに、白河市から県南地域、さらには県境を越えて栃木県北地域の観光スポットを広域的に訪れていただけるよう、近隣の自治体などと連携を図りながら新たな仕掛けを講じていく考えです」  ――今後の抱負。  「少子高齢化・人口減少が急速に進む中、激動する世界情勢、食料の安全保障、エネルギー問題、情報通信技術の発達など、目まぐるしく時代は変化しています。さらに、コロナ禍により、首都圏に集中する人や企業の地方分散に向けた機運が生まれ、政府は『デジタル田園都市構想』を推進するなど、従来の東京一極集中から地方が主役となる時代への大きな転換期でもあります。だからこそ、首都圏からの近接性や交通の利便性、豊かな歴史や文化、自然環境など、足元にある恵まれた条件を生かし、さらには、DXやGXも推進しながら、産業、教育、子育て、医療に加え、文化芸術・スポーツなどバランスのとれた『誰もが身近な幸せ(Well-being)を実感し、〝自分らしく、いきいきと〟暮らしていけるまちづくり』を着実に進め、市民の皆様とともに、確かな未来を築いていきたいと考えています」

  • 【塙町】宮田秀利町長インタビュー

    【塙町】宮田秀利町長インタビュー

    みやた・ひでとし 1950年2月生まれ。東北工業大工学部卒。2000年から塙町議3期。2016年の町長選で初当選し、現在2期目。  ――役場新庁舎の工事が進んでいます。 「建築費高騰を心配していましたが、影響は少なく、現在の進捗状況は30%弱で、順調に進んでいます。来年4月には完成し、5月中の開庁を目指しています。その後、現庁舎を解体し、駐車場と書類等を保管する書庫棟を建設する予定となっています」 ――「子ども第3の居場所b&gはなわ はなまるはうす」が開所しました。 「はなまるはうすは、日本財団とB&G財団が連携する『子ども第3の居場所』プロジェクトの一環として、家庭や学校だけではなく、子どもたちがのびのびと過ごせる第3の居場所を提供しています。 5月に開所し、まだ数カ月ですが、おかげ様で23名が利用登録をしています。利用する子どもたちも楽しそうで、教育施設ではありませんが、個別学習室もあって宿題をしたり本を読んだりして自由に過ごしています。また、同施設では地域の食材を使用したバランスの良い食事を提供しており、子どもたちが美味しそうに食べていました。町内の方々からお米や野菜の寄付をいただき、大変助かっています。最近は兄弟姉妹のいない家庭も多く、学校ではない場所で様々な世代の子ども同士がコミュニケーションをとるのは、とても良い機会だと思います。夜8時まで預けることができ、保護者の評判も上々です。 今後は、子どもだけでなく高齢者が子どもたちと料理をつくったり、高齢者が子どもたちに習字や将棋を教えたり、さらには子どもたちが学校の時間は高齢者の集会施設としての利用や一人暮らしの高齢者が食事をするといった、高齢者にとっても『第3の居場所』になるような施設のモデルを目指していきたいと考えています」 ――自転車での地域振興を進めています。 「東白川郡4町村で組織する『東白川地方自転車活用推進協議会』を中心に、自転車を活用した地域活性化を目指しています。それが県にも認められ、県で自転車道の整備を積極的に進めていただいています。また、自転車をそのまま列車に持ち込める水郡線サイクルトレインは、JR東日本管内では水郡線だけで、これまでは有人駅だけ利用可能でした。そこで協議会で要望活動を行い、無人駅である磐城塙駅と棚倉駅でも利用可能となりました。利用者からの評判も良く、今後も4町村が連携して進めていきたいと思っています」 ――今後の抱負。 「この町を次の世代にしっかり繋いでいき、持続させていくという使命があります。そのためにも今後も様々な施策を行っていきたいと思います」

  • 【新地町】大堀武町長インタビュー

    おおほり・たけし 1951年生まれ。東北学院大学卒。陸上自衛隊で勤務後、新地町役場に入庁し、総務課長などを歴任。2018年の町長選で初当選。現在2期目。 町民の安全・安心に直結する事業を優先していく。  ――8月24日から福島第一原発に溜まるALPS処理水の海洋放出が始まりました。  「海洋放出についてはまだまだ課題も多く、我々は政府や専門家のような知見を持ち合わせていないので、互いに納得のいく形で進めていくことは困難を伴うと見ています。  8月21日、岸田文雄首相が全国漁業協同組合連合会の坂本雅信会長らと面会した際、『今後数十年の長期に渡ろうとも、全責任を持って対応することをお約束する』と話していました。国としても重い判断のもと海洋放出を実施したと思うので、本町としては県や関係自治体と連携しながら、安全かつ確実に実施されることを願い、推移を見守っていく所存です。放出によって生じる風評被害対策の実施と情報発信を行っていただき、国民だけでなく海外の方への理解醸成を図っていただきたいと考えています」  ――町第6次振興計画の進捗状況は。  「策定後の令和3年2月、翌4年3月に発生した福島県沖地震の対応もあって当初の予定より遅れているのは否めません。3年間の行動計画で、できるだけ軌道修正を図りながら実施していこうと考えています」  ――地域の魅力向上への取り組みとして「アートの町『新地』創造・アートの魅力発信事業」が展開されています。  「画家・志賀一男さんをはじめ、本町出身のアーティストが目覚ましい活躍を見せています。本町出身の画家・坂元郁夫さんからご提案いただいたこともあり、JR新地駅前に整備された町文化交流センターにおいて、絵画に焦点を当てたアートイベントを実施していく考えです。できるだけ多くの皆さまに見ていただき、心を豊かにしていただければと考えています。来年の町村合併70周年に合わせたプレイベントの意味合いもあり、反響次第では来年、より規模を大きくして実施する考えです」  ――今後の重点事業について。  「頻発する自然災害への対応は非常に重要な課題です。町民の安全・安心に直結する事業を優先していきます。今年度は高齢者の見守り事業を開始し、各地区に予算を出して、地域の団体の方々と協力して取り組んでいます。県には砂子田川と谷地田川の水害対策、駒ケ嶺地区の浸水対策を要望しており、老朽化が進む海抜0㍍地区の湛水防除施設に関しても、調整しながら年次計画で更新を進めています。  商業用地への食品スーパー誘致も課題であり、買い物環境の整備も進めていきます。併せて県立相馬総合高校新地校舎の利活用の協議も進めていきます」

  • 【福島県ビルメンテナンス協会】佐藤日出一会長インタビュー

    さとう・ひでいち 1955年4月生まれ。㈱東日取締役会長。2017年5月から福島県ビルメンテナンス協会会長を務める。  ――新型コロナウイルスの5類移行が実施されました。  「もともと人手不足が深刻な課題で、コロナ前はベトナムやミャンマーから外国人技能実習生を募り、資格を取ってもらうことで在留期間が3年から5年に延びるので、それを活用して人員確保に繋げようとしていました。その矢先にコロナの感染拡大だったので、この間完全に頓挫していました。とはいえ、外国人の方を呼び込んでも基本的には都市部の方に行く場合が多く、地方ではまだまだ外国人の方を迎え入れる動きが少ないというのも現状です。ビルメンテナンス業界でも機械化による業務効率化の動きはあるにせよ、まだまだマンパワーで動かなければならない場面が多いので、やはり人員の確保は大きな課題と言えます」  ――全国ビルメンテナンス協会では「パートナーシップ構築宣言」の取り組みを推奨しています。  「昨年10月頃からパートナーシップ構築宣言が出され、業務内容に見合った適正な金額で契約を結べるようにパートナーシップを締結し、発注者も請負業者も健全な関係を築こうというのが主な狙いです。県ビルメンテナンス協会としての本格的な取り組みとしてはこれからですが、労働環境や待遇改善といった部分に大きく関わってくるので、今後腰を据えて取り組んでいく考えです」  ――人材不足が叫ばれる中で、業務品質の維持は大きな課題とも言えます。  「コロナ禍では通常業務に加え除菌業務も併せて実施し、その意味ではコロナ禍以前よりも高い品質で業務を実施できたのではないかと見ています。しかし、それを踏まえた契約の仕様変更がなかなかうまくいかず、業務量が増えているのに対価は以前と同じという状況が発生しており、こうした部分も先述した待遇改善の話に絡んできます。特に官公庁関連では入札という形式を採っているので、価格競争が起きて安い方へと流れてしまう傾向があります。競争が起こるのは仕方ないにしても、『これより下がってはいけないライン』をもっと上げていただく必要があり、10月には最低賃金の更新があるので、それを見込んだ予算の増額を官公庁に要望しています。また、品確法の基本理念の1つとして、完成後の公共施設の適切な維持管理の重要性が明記され、関連する指針やガイドラインにより契約金額の変更が認められており、そうした部分からも働きかけたいと考えています」  ――今後の重点事業について。  「建物清掃管理評価資格者、通称インスペクターの資格を会員企業の中で最低1名ずつ取っていただき、維持管理業務の品質向上に努めるほか、エコチューニングの推進による建物の設備機器の運用改善、そして県内支援学校での技術指導の実施により、支援学校の生徒が卒業後にビルメンテナンス業界に入り、社会へと参画できるような道筋を作っていきたいと考えています」

  • 【福島県空調衛生工事業協会】大内弘之会長インタビュー

    おおうち・ひろゆき 1956年8月生まれ。高崎経済大卒。第一温調工業㈱社長。一般社団法人福島県空調衛生工事業協会副会長を経て、2020年5月から現職。 持続可能な社会・業界を目指す  ――福島県空調衛生工事業協会の概要についてうかがいます。  「当協会は、1983年10月28日、高度化する近代設備に対応できる技術・技能の研鑽と経営体質の強化を図り、管工事業界の社会的経済的地位の向上と公共の福祉の増進を図ることを目的として設立されました。現在の会員事業所数は49社で、建物の空調設備工事、給排水衛生設備工事を行っている県内業者で構成されています。  事業内容は、建築設備工事にかかる業務遂行上の諸問題を研究するとともに、技術力水準・生産性向上を目的とした特別技術講習会をはじめ、会員事業所における経営体質の強化を図るため、経営改善研修会をそれぞれ年1回実施しています。  また、会員事業所の労働安全衛生と技術力の向上を図るため、当協会、福島県電設業協会、福島県設備設計事務所協会で構成される『総合設備協会』の会員事業所が参加し安全大会、技術研修会を年1回実施しています。そのほか、国・県・県議会への要望活動や県との意見交換会等も行っています」  ――業界を取り巻く環境と今後の課題についてうかがいます。  「2024年4月から建設業でも『働き方改革』がスタートします。主な改革は法規制による労働時間の制限ですが、建築設備工事の工程は、建築工事、電気設備工事と連携しながら進めるため、自社のみで働き方改革ができないのが実態であり、施主、他工種の理解・協力を得ながら、実施していく必要があります」  ――今年度の重点事業についてうかがいます。  「若手技術者の技術力向上のため、重点目標事業の1つとして『空調衛生等設備工事の技術力向上に関する事業』があります。今年度は、特別技術講習会において建設現場における火災防止のための新工法について実機を使用した研修、地球温暖化防止対策としてのカーボンニュートラルに関連した取り組みや今後の動向を踏まえた研修を実施しました。  また、持続可能な開発目標『SDGs』の達成に向けた取り組みが社会的に求められる中、当協会でも社会的使命の観点から『ふくしまSDGsプラットフォーム』の会員として参画しています。今年度の経営改善研修会では、『持続可能な世界を築くために』と題して本県関係者による講義や、同プラットフォームの会員となっている当協会会員事業所の取り組みや現況を紹介しながらSDGsの理解を深めています」    ――今後の抱負について。  「国や県では『2050カーボンニュートラル宣言』を打ち出すなど、地球温暖化防止は喫緊の課題と認識しています。われわれは、空調設備、給排水衛生設備において、より効率性の高い機器や供給方式の提案に努めていきます。  また、少子高齢化に伴い担い手の確保が厳しい状況となっていますが、若年層の入職促進・定着、従業員の雇用維持に向けて、安心して働き続けることができる魅力ある空調給排水衛生工事業界にすることが重要と考えています」

  • 【いわき建設事務所】吉田伸明所長インタビュー

    よしだ・のぶあき いわき市出身。秋田大学卒。1990年に県庁入庁。県土木部道路管理課長、道路計画課長を経て、2022年度から現職。 災害復旧、防災、道路整備に全力  ――台風13号による「線状降水帯」の影響で、いわき市内の至る所で浸水するなど甚大な被害が発生しました。管内の被害状況について。  「市内全域の河川流域で緊急安全確保(警戒レベル5)が発令され、人的被害や多数の床上・床下浸水が発生しました。当事務所管内では、10の河川で越水が確認され、一部の河川施設では護岸が崩落するなどの被害が発生しました。10月19日時点で公共土木施設の被害数及び被害額はいわき市を含め、河川69件、砂防設備11件、道路26件、橋梁1件 合計107件27億8200万円となっています」  ――今後の復旧の見通しについて。  「まず越水した河川では、河床に堆積した土砂等を速やかに除去し、治水機能の回復を図ります。被災した道路・河川等の土木施設については、速やかに調査・設計を実施しており、早期の工事着手により復旧に努めます。河川からの越水等により浸水被害が発生した地域については、線状降水帯の大雨による被災メカニズムを解析し、再度の災害を防止する対策について検討していきます」  ――防災対策事業に注力してきましたが、進捗状況は。  「頻発化・激甚化する自然災害から、住民の生命、暮らし、財産を守るため、防災・減災、国土強靱化5か年加速化対策に計画的に取り組んでおり、今回の大雨でも一定の効果が確認できました。今年度は水災害対策として、河川の治水安全度の向上を図るための河道掘削や伐木、堤防強化、土砂災害防止対策のための砂防・急傾斜事業、道路の安全度を高める落石対策等を実施しており、引き続き防災対策事業を加速していきます。また、流域全体で水害を軽減させる『流域治水』についても、あらゆる関係者と連携・協力しながら効率的な対策を実施し、中小河川も含め災害に強い安全・安心な基盤づくりを推進していきます」  ――小名浜道路をはじめとする道路事業の進捗状況について。  「いわき市泉町から同市山田町に至る全長8・3㌔、4箇所のインターチェンジ(以下、IC)を有する無料の自動車専用道路で、『ふくしま復興再生道路』に位置付けられています。『小名浜港』と『常磐自動車道』を結び、小名浜港や周辺地域の産業・観光の拠点化を支援するために整備されます。常磐道から小名浜港までのアクセス時間が約15分短縮され、速達性の向上や定時性の確保等が期待されています。  現在9地区すべてで工事が進められており、高度な技術を要す区間は、本県から東日本高速道路㈱(以下、NEXCO東日本)へ委託し、工事を実施しています。8月には、NEXCO東日本により常磐道の上を跨ぐ本線部橋梁上部工が架設されるなど、着実に事業が進展しています。また、中通りへのアクセス機能向上を図るため、主要地方道いわき上三坂小野線の(仮称)山田IC(=小名浜道路の終点)から遠野町方面に至る約3・5㌔区間についても、道路改良工事を計画的に実施しており、引き続き信頼性の高い広域ネットワークの確保に取り組んでいきます」

  • 【二本松信用金庫】朝倉津右エ門理事長インタビュー

     あさくら・つうえもん 1975年に二本松信用金庫に入庫。常務理事、専務理事を経て、今年6月から同信金初のプロパー理事長に。  ――6月に開催された総代会・理事会で理事長に選出されました。  「歴代理事長は地元有力者や監督官庁といった外部から選出され、私が初めての生え抜き理事長になります。また、今年で創立75周年という記念すべき年に8代目理事長に就任しました。常務や専務などを経験し、前理事長の下で仕事をしてきましたが、理事長はいままでの立場とは全く違うものだと実感しています。  当信金は14期連続で黒字決算を続けており、前会長や現会長が健全な経営を継続してきた成果だと思います。これをしっかりと継続していくことが私に課せられた経営課題であり、地域の皆様や利用されるお客様の信用・信頼につながると思っています」  ――新型コロナウイルスが5類に移行され、経済活動も正常化しつつある一方で、原材料費・燃料費高騰や人材不足の影響が続いています。  「5類移行により、飲食店等も回復しつつありますが、コロナ前の水準にはあと1歩というところだと思います。また、原材料費・燃料費高騰により、製造業や建設業で大きな影響を受けているところは少ないものの、今後については原材料高騰分を製品に価格転嫁しなければならないなど、不安視する事業所が多いのが現状です。当金庫では3カ月に1度、景気動向調査を行っていますが、今後を見据えると物価がさらに上がることは間違いありません。消費者がそれを理解するには時間がかかると思います。  人材不足については、将来的な展望がもう少し開けなければ人件費を上げるのも簡単ではありません。ただ、賃上げについて調査したところ半数ほどの企業が何らかの形で賃上げを行いたいと回答しています。  様々な課題はありますが、暗い話ばかりではなく明るい話題もあります。地域の企業が良くなれば、我々もおのずと良くなると思います。そういった好循環を生み出すきっかけづくりを様々な形で行っていきたいと思います」  ――「まつしんビジネスサポートクラブ」の活動状況について。  「『まつしんビジネスサポートクラブ』は1998年に設立し、管内の若手経営者や事業継承者を対象に勉強会や講演会を行っています。最近ではIT導入や事業後継問題、人材育成、異業種交流も活発に行われています。以前はISO取得を目指す事業所が多かったですが、最近はSDGsが重要になってきましたから、そのためのサポートも行っていきたいと思っています。  また、サポート事業とは別に、商工会議所からの依頼で、海外進出に向けての勉強会も行っていきたいと考えています。そういった支援活動を行うことで、地域企業の底上げにつなげていきたいと思います」  ――10月にはインボイス制度がスタートします。  「4月に取引企業を対象に行った調査では、85%が対応を終えており大きな心配はしていません。今後は帳票関係書類の電子化が課題になりますが、そういったサポートも行い、本業に集中して取り組んでいただけるよう支援していきたいですね」  ――今後の抱負。  「当信金では『お客様』『地域社会』『信用金庫』の三位一体の経営というのが創業当時から経営方針ですが、これらが皆良くならないと全体的な底上げにはなりません。そういった考えのもと、そのためのお手伝いをしていきたいと思います。  また、狭い管内で営業をしていますので、不採算店舗があったとしても、大手金融機関のように閉鎖するのではなく、地域の方が不便を感じないように店舗を維持していきたい。加えて、地域の行事等に積極的に参加するため、ボランティア休暇を設けるなど、地域とのつながりを大事にしていきたいと思います」

  • 【福島県私立幼稚園・認定こども園連合会】細谷實理事長インタビュー

     ほそや・みのる 1953年生まれ。独協大学経済学部卒。㈱日本ビューホテル成田ビューホテル勤務後、父が開園したみその幼稚園(福島市)の事務長を経て理事長・園長を務める。今年6月から現職。  ――今年6月12日に開催された福島県私立幼稚園・認定こども園連合会の総会で理事長に選任されました。この間を振り返っての率直な感想をお聞かせください。  「重責を担う立場だと痛感していますが、就任したからには平栗裕治前理事長の実績をしっかり継承しつつ、さらなる福島県の幼児教育振興のため職責を全うしていきたいと思います」  ――少子化が急速に進んでおり、幼児教育を担う私立幼稚園・認定こども園連合会の会員にとっては大きな課題だと思います。現状をどのように捉えていますか。また、連合会として取り組むべきことはどんなことだと考えていますか。  「少子化対策と、幼児教育の質の維持向上は一心同体で考えるべきだと思っています。少子化だからこそ、質の高い人間づくりが求められます。特に幼稚園や認定こども園は人格形成の基礎である最も大切な根っこの教育の場であり、ある意味で善き日本人のDNAづくりの最後の砦であると考えます。  そして、到来する不透明な時代を生き抜く力を子ども達に備えさせるという意味では、大学教育に勝る教育と言えます。これらのことを踏まえながら、連合会としては実現可能な少子化対策と幼児教育支援充実を県に対し要望していきたいと思います」  ――幼稚園の教員不足も深刻な課題になっています。  「教員不足対策はもちろん重大な課題ですが、幼児教育に限らず、教育の質を向上させるためには教員の質を高めなければなりません。官民連携で、どうしたら質の高い人材を育成できるのか、そこをもう一度考え直してみなければなりません」  ――連合会として、今後どのような取り組みを進めていきますか。  「10月に東北6県の幼稚園・認定こども園の教職員約800人が集まり、郡山市で教員研修大会が開催されます。教員の質の向上に寄与する研修会にするため、郡山地区の園が中心となり準備を進めており、充実した内容にしたいと思っています。 また、県内には本連合会に加盟していない園もあるため、加盟拡大にも力を注ぎ組織力を強化することで要望等の実現に繋げたいと思っています。さらには各園の後継者育成にも取り組んでいきたいと思います」  ――今後の抱負。  「名称の通り、本連合会には幼稚園と認定こども園が加盟しているため、振興対策も別々に立案しなければなりません。そのため本会は各窓口との情報収集・交換をはじめ、積極的に県内でのアンケート調査等を実施し、そのエビデンスに基づく振興対策を国・県に求めていきます」

  • 【鮫川村】宗田雅之村長インタビュー

     そうだ・まさゆき 1951生まれ。日本大学工学部卒。2007年に鮫川村議会議員になり、2015年4月から2023年3月まで副議長、同年4月から8月まで議長を務めた。8月27日投票の村長選で初当選を果たす。  ――8月に行われた村長選で初当選を果たしました。  「村の課題は山積しています。全国的に人口減少が叫ばれていますが、特に当村の場合は多くの若者が村外に流出している状況にあります。人口減少によって農業の後継者不足や中心地域の空洞化も進んでいる状態です。これらに対する対応・対策を考えた際に的確な判断の難しさや責任の重さを十分感じています。だからこそ、村民目線で住民の気持ちを優先的に考えて対応策を検討していきたいと思っています」  ――選挙では給食費無償化等の子育て支援策を打ち出していました。  「給食費無償化は、国が今年3月に少子化対策として実態調査を行うことを打ち出しましたが、本村は令和元年度から2分の1の支援を行ってきました。さらなる子育て世代の財政支援の拡充を図るため、まず給食費の無償化を進めていきたいと思っています。また、今は核家族や共働きが進み、放課後児童クラブに預ける家庭が多いのが実情で、クラブの改善は重要だと思っています。現在は預ける際は有料となっていますが、これも無料化にすることで子育て支援の拡充を図っていきたいと思います。本村は近隣町村と比較しても利便性が低い現状にあります。給食費に限らず、例えば通学の際の交通費補助等の再検討を含めて教育費に係る財政的な支援は重要だと思います。今は村外に通学する高校生に対して、1万円の交通費の補助を行っていますが、燃料費等の高騰が進んでおり、子育て世代では困窮している家庭も多いのが実情だと思います。それに対しても、もう少し何らかの支援を検討していきたいと考えています。  また、学力を上げることで将来の職業の選択肢も広がるなど、学力向上は将来の村の未来像を見据える上でも重要です。秋田県は学力向上に力を入れており、特に東成瀬村は『学力日本一の村』として全国に先駆けて学校教育に力を入れてきました。東成瀬村は当村より規模も小さく、学力支援は自治体の規模に関係ないことが証明されており、本村でも力を入れて進めていきたいと思います。本村には学習塾がなく時間をかけて村外の学習塾に通う児童・生徒も少なくありません。そこで小・中学生、とりわけ中学生向けの学習支援も進めていきたいと思います。教員の指導能力向上はもちろん、専門の教員を呼び、村で学習支援を行うことで学習塾に通う必要がなくなると思います。学習塾と提携している自治体もあり、そういった政策をどんどん取り入れていきたいと思っています。 こうした支援を進めることによって教育に関心のある若者が村内に留まったり、他町村からもそういった政策に惹かれて移住する子育て世代の需要もあると考えています」 日本一の村づくりを目指す  ――産業振興も重要です。  「新たな企業誘致は難しいのが現状です。そこで私は村の宝物だと思っている自然景観を産業振興につなげていきたいと思います。例えば、村内にある湯ノ田温泉は以前は東京都の上野駅に看板が掲げられるなど全国的に有名な温泉です。温泉だけでなく近隣にある強滝は岩と水の造形美も素晴らしく、川沿いの遊歩道は『ふくしま遊歩道50選』にも選ばれています。特に紅葉シーズンは毎年多くの観光客とカメラマンが訪れます。こういった景勝地をさらに増やしPRしていきたい。どんな遠いところでも美味しいものと、自然景観の豊かなところがあれば人は集まります。そういった政策を行うことで交流人口拡充を図りたい。それが村の活性化につながると思います。  村では以前から『まめで達者な村づくり』を進めてきました。これは60歳以上の高齢者などに大豆等の栽培をお願いすることで特産品開発を行うものです。高齢者が一生懸命に汗を流してつくった農産物が循環すれば、生産者である高齢者の健康づくりにつながりますから、あらためて仕掛けづくりを進めていきたいと思っています。商品も納豆や豆腐だけでなく、新たな開発を進めていきたいと思います。村内だけでなく東京農業大学といった外部の意見も頂戴しながら検討していきたいと思っています」  ――手まめ館は今後どういった施設にしていきたいでしょうか。  「私自身、村長就任前は村議を務めながらガソリンスタンドや整備工場を経営してきました。そういった意味で商売の経験は少しあると思っています。もっとも、私自身は工学部の土木学科を卒業しましたので、全く違う業界に入りました。勉強のため最初に行った研修は仙台駅の多くの人が通る一画で『おはようございます』『こんにちは』『ありがとうございます』といった挨拶を繰り返し行いました。最初は嫌でしたが、そういった経験を通して自分自身の自信につながりました。  それを踏まえ、まずは人づくりを進めていきたい。他企業に依頼するなどして人材指導のスペシャリストを招き、勉強会などを通したスキルアップも進めていきたいと思います。今年行われたWBCで監督を務めた栗山英樹さんの著書『育てる力』を読むと、資本主義の父と言われる渋沢栄一さんの講演をまとめた『論語と算盤』を参考に人づくりを進めたそうです。『論語』は道徳であり『算盤』は商売を指しています。渋沢栄一は論語と算盤を通じて道義を伴った商売の追求を説いています。どのような商売であっても結局は『人』が重要です。そういった意味でひとづくりの重要性をあらためて実感しました。人が良くなれば自然と同じ方向を向くと思います。皆『良くしたい』という思いは同じだと思いますから、それぞれの思いをしっかり受け止めていくことが重要だと思っています。そういう意識が全体として高まれば自然とすべてが向上していくと考えています」  ――議長や村議の経験をどう生かしていきますか。  「商売をしていた経験上、自分として大事にしてきたことは村民とのキャッチボールです。村民の声を聞いて『できないことはできない』『できることはできる』という即対応を心がけてきました。また、村民目線で村民の気持ちに立って行動することは議員でも行政の長でも同じです。今後もそういった気持ちを忘れずに行政運営に当たっていきたいと思います」  ――今後の抱負。  「『大義なきところに人を集まらず』というスローガンを掲げながら『日本一の村つくり』『日本一の里山つくり』を目指すこと念頭に置いて村長選に立候補しました。村民の誰もが方向性は同じだと思います。自分の住んできた村に愛着を持ちながら最高の村づくりを進めていきたいと思います」

  • 【平田村】澤村和明村長インタビュー

     1947年生まれ。小野高校、立正大経済学部卒。96年から平田村議3期。2007年7月、平田村長選で初当選。23年7月の村長選で5選を果たした。  ――7月の村長選で5度目の当選を果たしました。率直な感想を。  「相手候補は、政策論争ではなく『5期は長すぎる』という主張を柱としてきました。それに対し、私は4期16年間の実績についてどのように評価していただいたか、住民の皆さんの声に耳を傾け、今後4年間、どのような取り組みをしていきたいか、自分の考えを訴えました。今回の結果は『16年間の経験を、これからの対応に生かすことが大切だ』と受け取っていただいたのだと捉えています。村議12人中8人から支援をいただき、今後の事業進捗にも心強さを感じています」  ――公約に掲げた「高齢者がいきいきと暮らせる地域社会の実現」と「観光・交流事業の更なる強化」について。  「高齢化というと、少子化と並べられ『高齢者が増えることは問題』のように受け取られがちですが、大切なのは高齢者が『元気で毎日過ごせる』ことだと思います。そのために必要なことは、適切な運動や音楽などの趣味を楽しみ、健康でいることです。4月にオープンした複合施設『ハレスコ』では、まさに健康づくりのメニューを取りそろえており、趣味活動ができるスペースもあります。今後はもっと大勢の皆さんに参加していただけるように支援していきます。高齢者からの長年の要望だった入浴施設については、コロナ禍などで延びておりましたが、ようやく来年度に設計予算を組めるところまで目途が立ちました。若者も利用できるようサウナも併設したいと考えています。  観光については、ジュピアランドにイベント利用の促進のため、『野外ステージ』を設けます。また、あじさい園側に『天の川プロジェクト』として、2㌶規模のあじさいエリアづくりをスタートします。展望デッキや遊歩道の設置も検討しています」  ――その他、今年度の重点事業は。  「造成中のパークゴルフ場について、今夏の猛暑で芝生の生育に遅れが出ていましたが、手入れをし直し、秋には仮オープンにこぎつけたいと考えています」  ――5期目は集大成となるのでしょうか。今後の抱負を。  「集大成というと仕上げや終わりをイメージしますが、村長や役場の仕事は将来のために種をまく事業や取り組みが多く、終わりはありません。時限立法である『過疎指定』の恩恵をチャンスと捉え、積極的に『元気で長生きし、人生を楽しめる笑顔あふれる村づくり』に取り組みます。日進月歩のこの社会で『今やらなくてはいけないことをしっかり全力で尽くすだけ』と考えています」

  • 【古殿町】岡部光徳町長インタビュー(2023.10)

     おかべ・みつのり 1959年生まれ。学校法人中央工学校卒。株式会社トーホク・オカベ取締役を経て、2003年4月の町長選で初当選。現在6期目。  ――4月の町長選で6選を果たしました。  「自分なりの選挙を展開でき、それに町民の皆様が応えてくださったのは非常に身に余る思いです。当選させていただいた以上は新たな気持ちで行政運営に当たっていきます」  ――6月には4年ぶりに流鏑馬大会が開催され、秋の例大祭も開催されます。  「町内に流鏑馬保存会という組織があり、これは射手の育成を目的としていますが、その成果発表として例年、春と秋に流鏑馬大会を実施しています。春の陣が4年ぶりに開催され、この間、練習の成果を披露する場に恵まれなかったので、そうした意味でも開催できたことには大きな意義があり、秋の例大祭の前段としても弾みがついたと考えています。ただ、5類に移行したとはいえ、新型コロナウイルスの影響はまだまだ考慮しなければなりませんし、この4年間様々な事情で中止してきた経緯もあるので、再開というよりは新たなスタートを切る気持ちで取り組むべきだと考えています。その一環として例大祭の行列のスタート地点を郵便局から公民館に変更し、今後も様々な変更点やポイントを見直し、次年度の開催に向けて関係各所との協議・検討を進めていきます」  ――林業活性化に向け、町内業者と協力して持続可能な林業を目指す取り組みが進められています。  「まだ具体的な内容は完全に定まっていませんが、国・県の制度を踏まえた中で、間伐を中心に森林整備を実施しているところです。また、県と町と地元事業体で団体を組織し、経営収支をプラスに転換させる経営モデル構築の実証事業を行っています。この取り組みは林業事業体のレベル向上にもつながり、現在、町の森林経営計画は森林組合が森林所有者の代理で構築していますが、ゆくゆくは事業体自身で経営計画を構築することも可能になると考えています」  ――今後の重点事業について。  「以前から道の駅拡張について取り組んでおり、地権者の皆様のご理解が得られそうなところまで来ましたので、これを重点事業の一つに据えて取り組んでいきたいと考えています」  ――6期目の抱負について。  「基礎自治体は厳しい状況にありますが、町民の皆様が、笑顔で住んで良かった、ふるどので良かったと思えるようなまちづくりに邁進していかなければなりません。そのためには町民の皆様のご理解とご協力が不可欠です。『今後ともよろしくお願いいたします』という思いで町政運営に取り組んでいきたいと思います」

  • 【会津若松市】室井照平市長インタビュー

     むろい・しょうへい 1955年生まれ。東北大卒。会津若松市議2期。県議1期を経て2011年8月の会津若松市長選で初当選。今年7月に4選を果たす。  ――7月に行われた市長選で4選を果たしました。  「厳しい選挙戦の中、4選を果たすことができたのは市民の皆様のご支援があってこそで、あらためて御礼申し上げます。  4期目の抱負は、市民の皆様それぞれに夢を持っていただくことです。東洋経済新報社が全国812市区を対象に実施している『住みよさランキング』によると、2022年は全国66位で県内自治体では1位、2023年版では全国119位で県内自治体では3位の結果となりました。こうした結果の要因として、子育て支援をはじめとした施策が評価されたものと受け止めています。今後も子育て支援をはじめとしたさまざまな施策に注力し、市民の皆様に住みやすい町に住んでいるという実感を持っていただけるように取り組まなければなりません。住み続けたい、訪れたい、選ばれるまちの実現に向けて今後も全力で取り組みます。  1期目から掲げている『子どもたちには夢と希望を、若者には仕事・雇用を、お年寄りや障がいのある方には安心できるまちづくりを』というテーマを変わらず根幹に据えて、市民の皆様一人ひとりの思いを受け止めながら、市政運営にあたっていきます。また、様々な施策を通して、市民の皆様が郷土に愛着を持ち、地域に対する誇り『シビックプライド』を醸成し、誰もがこのまちで暮らし続けられるように、市民の皆様と共にまちづくりを着実に進めていきます」  ――新型コロナウイルスの5類移行が実施されましたが、観光業をはじめ市内経済への影響はいかがでしょうか。  「観光入込は、コロナ禍前の2019年度には及ばないものの、回復傾向にあります。具体的には、コロナ禍前が300万人だったのがコロナ禍では83万人にまで落ち込み、昨年は146万人にまで回復しました。5類移行後の5月以降はコロナ禍前の水準にさらに近づき、お盆時期を中心に家族旅行での来訪が目立っており、今年は250万人を越える入込が見込まれます。当面はコロナ禍以前の300万人に戻すことが目標です。また、インバウンドはコロナ禍前が2・5万人、コロナ禍には800人にまで減少しましたが、順調に回復しています。今後はコロナ禍前の10倍の25万人まで増加させることを目標としています。教育旅行については、コロナ禍でも好調を維持しており、5類移行後においても平日の観光需要を底上げしています。観光業以外でも、市内の経済状況は回復基調となっており、飲食業界や酒造業界への聞き取りでも、観光客の増加によって売り上げも堅調となっています。一方、原材料や電気代等の高騰は市内事業者に広く影響が出ており、今後も景況感は注視していく必要があります」  ――市役所新庁舎整備事業の進捗状況についてうかがいます。  「昨年10月に設計が完了し、今年3月に建設工事が始まりました。9月上旬時点で基礎工事が行われています。来年には庁舎周辺の道路拡幅工事や駐車場・駐輪場の工事を予定しており、順調に進めば2025年3月に新庁舎が完成し、同年度からの供用開始を予定しています。  新庁舎は、1937年から市の歴史を見続けてきた旧館を引き続き庁舎として保存・活用し、その隣に旧館のデザインを取り入れた地上7階建て、高さ30㍍の庁舎となります。全体の面積は約1万3700平方㍍で、免震構造を採用しているほか、高い省エネ性能を持ち、環境にも配慮しています。また、多くの部局が新庁舎に集約され、窓口利用が多い部局を低階層に配置するなど、市民の皆様の利便性の向上を図っています。この新庁舎が市民の皆様の安全・安心な暮らしを支え、災害時には被災対応の活動拠点となり、さらにはまちの要として、人が集い賑わいを作り出す会津のランドマークとなるよう、引き続き整備を進めていきます」  ――「スマートシティ会津若松」の取り組みが加速しています。  「スマートシティとは、〝便利で住みやすいまち〟を意味しており、本市では2013年3月より『スマートシティ会津若松』を掲げ、生活を取り巻く様々な分野でICTを活用することで、将来に向けて持続力と回復力のある力強い地域社会、安心して快適に暮らすことのできるまちづくりを目指してきました。  昨年度、本市は『国のデジタル田園都市国家構想推進交付金デジタル実装タイプ タイプ3』に東北地方で唯一採択され、食・農業、決済、観光、ヘルスケア、防災、行政という6つのデジタルサービスを実装しました。この間、市、会津大学、AiCTコンソーシアムの三者で『スマートシティ会津若松』に関する基本協定を締結したほか、市民の皆様を対象とするスマートシティサポーター制度や、地域の業界団体の方々を構成員とするスマートシティ会津若松共創会議を創設するなど、地域が一体となった推進体制を構築し、取り組みのさらなる深化・発展を目指してきました。  次なる取り組みとして、今秋以降、デジタル地域通貨『会津コイン』を使ったプレミアムポイント事業を開始するほか、今後は国の支援策等も活用しながら、引き続き会津大学およびAiCTコンソーシアムとの連携のもと、市民の皆様や企業の方々が『スマートシティ会津若松』の取り組みの成果を実感していただけるようなサービスを実装し、市民の皆様が生き甲斐と幸せを感じ、〝住み続けたい〟と思えるまちづくり、進学等で本市を離れる若者が、〝いずれ戻ってきたい〟と思えるまちづくりを目指し取り組んでいきます」  ――今後の重点事業について。  「少子化・人口減少対策は市の最重要課題であり、想定以上に出生数が減り、死亡者が増えているのが現状です。こうした現状を打破するためにも、Uターンや県外のお孫さんが祖父母の住む本市に移住する孫ターンの給付金制度、住宅取得支援や賃貸家賃補助、移住婚祝い金といった形で移住・定住支援に注力していきます。また、昨年実施した『ベビーファースト宣言』のもと、安心して子どもを産み育てる環境づくり、子どもたちがふるさとに誇りを持ちながら多様な学力を身に着ける環境づくりを進めていきます。  ほかにも新規就農者支援、新たな雇用に繋がる工業団地の整備も重要ですので、今後4年間でさらに内容を深化させていきたいと考えています。また、観光庁の『国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業』において、本市と磐梯町、北塩原村でのスキーと観光を軸にする計画が県内で唯一採択されました。今後は他自治体や関係団体との連携を図りながら、冬季間のインバウンド強化に向けて取り組んでいきます」

  • 【福島県浄化槽協会】紺野正雄会長インタビュー

     こんの・まさお 1951年生まれ。福島商業高卒。㈱A水技研代表取締役。今年6月、県浄化槽協会会長に就任した。  ――新会長に就任しました。  「就任にあたり3つの目標を掲げました。  1つは合併浄化槽の普及促進です。県内は単独浄化槽とくみ取り式トイレが多く存在しており、汚水処理未普及の解消を図るうえでも、合併浄化槽の普及は必要不可欠です。国や県・市町村と連携し普及を促進していきたいと思っています。  2つはデジタル化の推進です。他業界と比べ協会内のデジタル化は極めて遅れています。IT技術で業務効率化を図り、人手不足などの諸問題を解決できるように意識改革を促したいと思います。  3つは後継者育成と浄化槽のイメージアップです。残念ながら『きれいな仕事ではない』というイメージがあるようで、会員企業からは『求人を出しても応募がない』などの声を多く耳にします。また、各企業が世代交代の時期を迎えている中で、『施工・保守点検・清掃の3業種の相互理解の醸成』の必要性も感じています。3業種の連携強化と次世代を見据えた取り組みを進めます」  ――県内の現状について。  「県内には約28万基の浄化槽が設置されており、そのうちトイレの汚水だけを処理する単独処理浄化槽が約15万基あります。単独処理浄化槽を合併処理浄化槽に転換することは全国的な課題となっています。転換する場合の各種補助制度は拡充しており、個人負担は軽減されます」  ――国・県に望むことは。  「当協会は浄化槽ユーザーである一般住民の負担軽減を最優先にしています。残念ながら県内では毎年のように大きな災害に見舞われていますが、浄化槽はインフラ設備でありながらその復旧費用は個人負担となっています。被災浄化槽へのフォロー対策やスピード感のある復旧対応の在り方を明確に示し、対応する市町村担当局や一般住民が困ることのないよう、リードしてほしいと思います。また、合併処理浄化槽が老朽化したり、度重なる地震などで破損するケースも増えています。最新型の浄化槽はコンパクト化・省エネ化が進み、ランニングコストの低減効果があります。更新に対する助成制度の創設、下水道と比較してやや高額となる維持管理費用の助成制度創設など、住民負担の軽減対策を積極的に進めてほしいです」  ――今後の抱負を。  「恒久的で重要な汚水処理インフラである『浄化槽』への認知度が極めて低いことに強い危機意識を持っています。まずは業界体質の変革が必要です。現代社会の変化スピードに対応できているとは言えず、相当遅れていると感じます。人手不足解消策としてIT技術の導入はもとより、施工から維持管理まで浄化槽に関わる関係者の人材育成や待遇の在り方も抜本的な見直しが急務です。これからの時代に即した企業体系にシフトできるよう意識改革を行いながら永続性を確保し、安定的な業界となるよう進化していきます」 福島県浄化槽協会のホームページ

  • 【福島県産業資源循環協会】佐藤俊彦会長インタビュー

     さとう・としひこ 1951年2月生まれ。佐藤産業㈱代表取締役。2007年5月から県産業廃棄物協会長を務め、2019年4月から現職。  ――燃料費・光熱費の高騰が続いています。  「高騰分は処理費用の中に反映させますが、なかなか排出事業所に認めていただけないのが実情で、理解をいただくのに時間もかかり、現段階では会員企業の多くが経営的に非常に厳しい状況が続いています。今年8月に全国産業資源循環協会が景況動向調査を行ったところ、全国的にも大変厳しい状況が続いています」  ――労働安全衛生運動に取り組んでいます。  「我々の業界は労働災害が他産業に比べて非常に高い水準にあります。一時期は建設業の4倍だった時期もあり、2010年度に労働災害防止計画を策定しましたが、昨年は残念ながら休業4日以上の死傷者数は22名でした。特に墜落・転落事故や挟まれたり巻き込まれたりと転倒事故が多いのが実情です。そこで5月に全国産業資源循環連合会との連携のもと第3次労働災害防止計画を策定しました。次の事項について重点事項をまとめて会員の皆様と実施しました。まずは経営者の意識改革。経営者のリーダーシップの下で労使が一体となって労働安全衛生対策に取り組みました。二つ目が労働災害防止活動の推進です。安全衛生規程を作成し、それに基づき労働安全衛生活動に従業員として的確に対処できるようにしていきたい。今年は会員企業の代表者を対象としたトップセミナーをビッグパレットふくしまで開催しましましたが、100名ほどが集まり関心の高さを実感しました。9月からは各方部に分かれて労働安全衛生についての講習会も行っていますが、会員企業のみならず非会員企業にも意識を高めてもらいたいと思っています。ただ残念ながら5月の段階で11名の死傷者数が確認されているのが現状です。もう一度協会全体で真摯に取り組み労働災害発生の減少に向けて会員企業はもちろん非会員企業にも安全衛生の意識を高めてもらいたいと考えています」  ――今年度の重点事業について。  「1つは先ほど言った労働安全衛生活動の推進です。2つはカーボンニュートラルの推進。2050年に向けて取り組んでいきたいと思います。3つは会員の処理技術の向上です。処理技術向上のための講習会に対する補助等を行い、技術向上と人材育成を図っていきます。4つは県内では自然災害が頻発しており、協会と県で大規模災害時における災害廃棄物処理等の協定を結んでいます。それに基づき、災害が発生した際は、できるだけ早く対処したいと思っています」  ――今後の抱負。  「昨今、我々の業界は求められることが多く、カーボンニュートラルはもちろん、サーキュラーエコノミー社会の関心も高まっています。サーキュラーエコノミーは日本語に訳すと循環経済ということですが、協会一丸となって取り組んでいきたいと思っています」

  • 【福島県保健福祉部】國分守部長インタビュー

     こくぶん・まもる 1966年9月生まれ。郡山市出身。東北学院大卒。89年に福島県庁入庁。総務部政策監、観光交流局長などを経て、昨年4月から現職。  新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5月8日から季節性インフルエンザなどと同じ5類に移行された。とはいえ、コロナがなくなったわけではなく、まだまだ注意が必要だ。そんな中、県ではどのような対応をしているのか。健康・福祉などのその他の課題と合わせ、県保健福祉部の國分守部長に話を聞いた。(取材日9月12日) 県民が健康で幸福を実感できる県づくり  ――5月から新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に引き下げられました。  「5類移行により、法律に基づき行政が様々な要請や関与をしていく仕組みから、個人の選択を尊重し、県民の皆様の自主的な取り組みを基本とする対応に変わりました。  県では5類移行後も迅速な対応を図るため、知事をトップとした福島県新型コロナウイルス感染症対策連絡調整会議を設置し、関係課長による会議を毎月開催するなど、感染状況の把握と情報共有に努め、基本的な感染対策について注意喚起を図ってきました。また、医療提供体制については、法律に基づく入院措置による行政の関与を前提とした限られた医療機関による特別な対応から、幅広い医療機関による自律的な対応への移行を段階的に進めています。  新型コロナウイルス感染症の波は、今後も繰り返されることが予想されています。感染が拡大すると医療機関への負荷が高まるとともに、高齢者や基礎疾患のある方などの重症化も懸念されます。県では、引き続き、感染状況や医療負荷の状況に注視しながら、感染拡大防止のための情報発信や医療提供体制の確保に努めていく考えです」  ――8月20日までの1週間に県内82の定点医療機関で確認された感染者は増加傾向にあります。  「新型コロナウイルス感染症の新規患者数の定点あたりの報告数は、6月中旬以降増加しています。特に、8月14日から20日までの1週間は、25・27人と前週から2倍近い増加となり、全国平均の17・84人を大きく上回りました。その後は緩やかになったものの増加傾向は続いており、8月28日から9月3日までの1週間では27・62人となっています。昨年夏もお盆期間の前後にかけて新規陽性者が増加していたことから、夏休みやお盆期間中に人の流れが活発化したことが影響しているものと考えています。  県民の皆様には、換気や場面に応じたマスクの着用、手洗い・手指消毒などの基本的な感染症対策を徹底いただくとともに、発熱やのどの痛みがあるなど普段の体調と異なる場合には外出に留意し、検査キットによる自主検査を行うなど『うつさない』行動を心掛けていただくようお願いします」健康長寿県を目指す  ――県では2035年度までを期間とする「第三次健康ふくしま21計画」の策定を進めています。  「県では、総合計画で『全国に誇れる健康長寿県へ』を重要な施策に位置付け、県民の健康づくりに力を入れています。本年3月に『第二次健康ふくしま21計画』の最終評価を公表しましたが、健康寿命の延伸や要介護高齢者の抑制等は目標を達成した一方で、メタボリックシンドロームの該当者やがん検診の受診者など、健康指標の多くは依然として低迷していることが明らかとなりました。特に本県はメタボリックシンドローム該当者の割合が全国ワースト4位、食塩摂取量がワースト2位など、震災以降の生活習慣の変化等により全国の中でも下位にあり、その改善のためには、県民一人ひとりが自身の健康の大切さに気づき、自分に合った健康づくりを実践していただくことが重要です。そのため、幅広い年代に楽しみながら健康づくりに取り組んでもらえるよう、健民アプリを活用して日々の体重を記録し適正体重を目指す『ふくしま測って体重チャレンジ』の実施、野菜から食べ始めるベジ・ファーストの推進、惣菜を段階的に減塩しスーパーで販売する食環境づくり事業などに取り組んでいます」  ――介護・障害福祉施設では人材不足が顕著です。  「県では、県内各地で開催する合同就職説明会をはじめ、優秀な介護職員や労働環境・処遇改善等に優れた施設を表彰する『キラリふくしま介護賞』、新たに職員となった方を知事が激励する『福祉・介護職員のつどい』、県立高校の生徒に介護の専門性や意義を伝える出前講座、介護福祉士養成施設の入学生を対象とした修学資金の貸与のほか、介護職員の負担を軽減する介護助手の配置やワーク・ライフ・バランスの推進につながる週休3日制を導入する施設に対する支援など様々な事業に取り組んでいます。  また、若い世代の介護への関心を高め、理解を促す取り組みとして、今年度は新たに、親子を対象に介護の魅力とやりがいを伝える参加型イベントを開催するとともに、若手介護職員や全国で介護の魅力発信を行っている方を高校に派遣し交流会等を開催するなど、イメージアップを強化しています」  ――今年度の重点事業について。  「今年度は重点事業として、避難地域の医療機関等の再開を支援し、医療提供体制の再構築を推進する『避難地域等医療復興事業』、県民の健康指標を改善するため健康行動の実践を促す『ふくしまメタボ改善チャレンジ事業』、介護支援ロボットやICTを導入することで介護職員の離職防止と定着促進を図るとともに人材不足を補う『ICT等を活用した介護現場生産性向上支援事業』などに取り組んでいます。  震災・原子力災害からの復興・再生を成し遂げ、急激な人口減少や社会情勢の変化に対応できるよう、職員一丸となって効果的な施策を展開していきます」  ――地方の立場から国に要望したいことはありますか。  「新型コロナウイルスは5類感染症に移行しましたが、新たな感染症等の発生にも留意しながら、持続可能な医療提供体制の確保に向け、平時から準備を整えておくことが必要です。このため、国には感染症対策や災害時医療を提供する医療機関の平時からの人的・財政的負担について支援いただくとともに、地域偏在や診療科偏在の解消等も含めた医療人材の確保に向けた対応を要望しています。 また、コロナ禍において健康づくりの重要性が再認識されたことから、国民の健康を守る取り組みを一層強化していく必要があります。健康づくりの推進に向け、社会全体での意識醸成に国が率先して取り組むとともに、自治体や医療関係者等の連携強化、市町村による格差を防止するための財政的な支援等の拡充を要望しているところです」  ――今後の抱負。  「県保健福祉部の基本理念である『全ての県民が心身ともに健康で、幸福を実感できる県づくり』に向けて、関係する全ての方々と連携しながら、全力で取り組んでいきます」

  • 【学校法人昌平黌】緑川明美常務理事インタビュー

     みどりかわ・あけみ 東日本国際大学卒。東日本国際大学・いわき短期大学キャリアセンター勤務を経て現職。東日本国際大学・いわき短期大学東京事務所長、キャリアセンター顧問も兼務している。  今年創立120周年の節目を迎えた学校法人昌平黌(いわき市、緑川浩司理事長)。いわき市で、いわき短期大学附属幼稚園、東日本国際大学附属中学・高校、いわき短期大学、東日本国際大学を運営しており、各施設で「人間力」を重視した教育を展開している。具体的な教育内容や今後の展望について、緑川明美常務理事に話を聞いた。 「人間力」重視の教育を展開し、地域とともに歩んでいく。  ――学校法人昌平黌では、東日本国際大学をはじめ、さまざまな教育機関を運営しています。教育の特色を教えてください。  「当法人の教育理念の根幹に位置づけられるのが、建学の精神である孔子哲学(論語)です。孔子哲学を土台にした〝人間教育〟を一貫して大事にしており、幼児教育・学問との融合・融和を図り、『人間力』の育成に努めています。  一例を挙げますと、同短大幼児教育科では未来を担う子どもたちを教育する人財を育てています。孔子の論語を踏まえ、思いやりの心である『仁』、人間社会の規範に立って礼儀を重んずる『礼』を体現できる、自分は元より相手を思いやれる人間教育に傾注しています。また、人間尊重の精神はすべての学校に共通している点を付言したいと思います」  ――「人間力」を重視した教育について具体的に教えてください。  「当法人が打ち出す『人間力』は、開学からの『義を以て行い其の道に達す』、創立120周年を機に森田実名誉学長より贈られた『克己復礼為仁(己に克ちて礼に復するを、仁と為す)』に集約され、教育方針の確固たる軸となっています。『義』とは自分自身と真剣に向き合い、内面の部分から成長を促すことです。自信が持てない、引っ込み思案な生徒・学生でも、己と向き合い長所や素晴らしい個性に気づくことで、自信に満ちた朗らかな性格に変化していく姿を数多く見てきました。  また、最初から目的意識を持っている生徒・学生でも、実習やボランティアなど他人とのかかわり合いや異なる環境に身を置くことで、あらためて自分自身を見つめ直しながら成長していきます。  『克己復礼為仁』とは、究極の人間性である『仁』の実践について、孔子が説いた言葉です。ここでの『礼』とは単に儀礼作法にとどまるものではなく、人と人とのつながりの尊さを説く『和を以て尊しとなす』の精神そのものです。これも人間力の育成にとても重要な教えであり、社会活動では、目標に向かって知恵を絞り一緒に頑張れるかどうかが問われる局面があります。『和』を重んずる団結力こそが社会を前進させる原動力と認識しています」  ――今年で創立120周年を迎え、6月22日に記念式典が執り行われました。率直なご感想と今後の抱負についてうかがいます。  「創立120周年のスローガンは『夢をはじめよう』としました。10年前の創立110周年を迎えた際のスローガンは『踏み出す 次代への挑戦』でした。その2年前に東日本大震災が発生したのを受けて、〝ピンチ=チャンス〟という強い思いが込められています。非常事態の中、教職員とともに園児、生徒、学生のために何ができるのか、皆で知恵を絞って、さまざまな苦難を乗り越えることができました。あらためて振り返ると、他者への思いやり、つまりは『建学の精神』が息づいていたからこそ実現できたと痛感しています。創立120周年を迎えるに当たり、これまでの困難を克服したうえで、夢に向かって歩んでいこうとの強い思いを込めて新スローガンを決定しました。  創立120周年記念事業の一環として、8月に竣工したいわき短大附属幼稚園新園舎の整備が挙げられます。旧園舎の老朽化が課題となっていましたが、さらなる幼児教育の充実を図るべく、節目の年に新園舎建設に踏み切りました。開放感があり、木の温もりや自然との共生を肌で感じられる素晴らしい園舎です。  当法人には小学校がありませんが、幼稚園から始まる人間教育を中学・高校への架け橋とすべく、同幼稚園の卒園生を対象とした『昌平塾』の開設に向け鋭意整備を進めています。  また、創立120周年を迎えるにあたり盤石な未来を拓く『三つのビジョン』として、①『人間教育』こそ教育の原点、②地域貢献の人材を輩出、③地域に開かれた大学――の3点を掲げ、地域とともに歩み、地域に根差した揺るぎない発展を目指したいと考えます」  ――大学・短大の学生の自己実現について、どのようにサポートしていますか。  「自己実現の根源は夢や目標です。当法人では学生の目的意識の醸成と主体性を尊重したサポートに注力するとともに、学問や就活を問わず一人ひとりに真摯に向き合ったきめ細やかな指導ができる点が大きな強みと考えます。アットホームな環境も魅力の一つですし、教職員も学生一人ひとりに真剣に寄り添う意識がとても高いと実感します。  中・高、短大、大学を問わず、生徒・学生に共通しているのは、人間として『素直な心』を備えていることです。素直な人ほど社会人となってから明らかに成長する、また、『和』を重視する協調性も豊かだと言います。あらためて『素直な心』は人間力・成長力の源泉だと思います。今後も一人ひとりの『素直な心』を大切にする人間教育に一層注力していきます」 台風被災地区で支援活動  ――地域社会への貢献にも尽力していますが、今後の展開について。  「当法人が運営する学校の規模は決して大きくはありません。しかし、福島復興創世研究所をはじめとする11の研究所・研究センターを擁しており、所轄分野は多岐にわたります。  その多くは地域との深い関わりを持っています。少子高齢化など切実な課題を抱える地域社会の中で、無関係でいるということはあり得ません。むしろ地域の活性化と発展を担うという重要な使命を持つのが教育機関だと考えます。  地域貢献と言えば、去る9月8日の台風13号では、東日本大震災と令和元年東日本台風で被災・支援活動の両方を経験している職員が、本学ボランティアセンターを率いて連日に渡り支援活動を行っています。ボランティア隊メンバーは本学強化指定部の柔道部と野球部の学生で、本学バスから大きな体格の若者たちが現れたことで、地域の方々から『姿を見てとても心強く安心した』『いわきに東日本国際大学があって良かった』等々、たくさんの感謝とともに励ましの言葉もいただきました。  地域の未来をどう創造し、開いていくか、が問われている社会情勢です。当法人は時代の最先端を走る教育・研究の『知の拠点』としての責任を自覚し、地域社会の抱えるさまざまな問題を解決するため力を尽くしていきます」

  • 【福島県建設業協会】長谷川浩一会長インタビュー【2023年9月号】

    はせがわ・こういち 1962年生まれ。法政大卒。堀江工業(いわき市)社長。2019年5月に県建設業協会会長に就き、現在3期目。  一般社団法人・福島県建設業協会は5月に総会を開き、長谷川浩一会長(堀江工業社長)を再任した。新たな任期に入った長谷川会長に、大規模化・頻発化する災害復旧などへの対応や、働き方改革・担い手不足への対応、公共工事の入札で不祥事が相次いでいる問題への対策、業界の課題などについてインタビューした。 県土発展に貢献できるように課題克服に取り組む。  ――役員改選を経て会長職続投となりました。この間を振り返って。  「会長就任時の令和元年から新型コロナウイルスの感染が拡大し、まさにコロナに翻弄された2期4年間でした。また、この間は、東日本大震災の復旧・復興事業が総仕上げを迎える一方で、史上最大級の台風被害となった令和元年東日本台風や、2年連続で発生した福島県沖地震などの大規模自然災害も頻発しました。建設業協会は地域の守り手として、昼夜を問わない応急業務対策への従事により、県民の安全・安心を確保しながら、復旧・復興工事の着実な進捗を担うなど、地域建設業の役割を全うできたと考えています」  ――来年4月から建設業でも時間外労働時間の罰則付上限規制が適用となり、働き方改革の重要性がより高まっています。  「働き方改革については、ICT活用や現場技術者に対する支援などにより、時間外労働時間の短縮を図った具体的かつ先駆的な事例を紹介するとともに、当協会の働き方改革等検討ワーキンググループで作成したQ&A集を活用した会員への助言など、本会の『働き方改革行動指針』に基づき、会員企業の労働環境の改善を支援していきます。また、公的発注機関に対して、実態に見合った現場経費の積算、熱中症対策や書類作成に要する時間を加味した適正な工期設定、週休2日に対応した設計労務単価の引き上げなど、働き方改革を進めるために不可欠な対応を引き続き求めていきます。  一方、民間工事では依然として厳しい工期設定による工事契約が散見され、働き方改革が進まない一因となっています。今後は労働局の協力を得て、経済団体や大手企業に対し長時間労働削減への協力要請を行うなど、民間発注者に対しても建設業の働き方改革に対する理解と協力を求めていく考えです」 入札絡みの不祥事に遺憾  ――昨年、「第二次ふくしま建設業振興プラン」が策定されました。  「このプランでは①『経営力の強化、生産性の向上』、②『担い手の確保・育成』、③『地域の守り手としての役割を持続的に担うことのできる環境づくり』の3つを根幹に据え、その達成に向けた取り組みを進めていきます。  具体的には①『経営力の強化、生産性の向上』の実現に向け、国や県と連携し、ICT技術の活用や建設DXの推進に向けた研修会の実施、各種情報提供を行うとともに、関係機関に対しては会員企業のICT機器の導入促進に向けた補助制度の充実などの支援を求めていきます。  ②『担い手の確保・育成』に向けては、これまで高校生を対象とした現場実習やインターンシップの開催、小・中学生を対象とした職業体験や現場見学会の開催、SNSを活用した建設業の魅力発信など、若年層を対象としたさまざまな広報活動を実施してきました。今年度は協会ホームページの全面リニューアルや道の駅での建設業のPRといった新たな取り組みを通じて、より広い年齢層に建設業の役割や魅力を発信していきます。技術者育成については、令和3年から開講した『土木初任者研修(前期)』に加え、令和4年からは後期講習も開講し、経験が浅い若手技術者の育成に注力しています。また、産学官連携による技術者育成である『ふくしまМE(メンテナンスエキスパート)』は、昨年度までの育成講座開催による認定者が700人を超えており、今後とも地域インフラの維持管理を担う技術者育成制度の充実に努めていきます。  ③『地域の守り手としての役割を持続的に担うことのできる環境づくり』の実現に向けては、大規模化・頻発化する災害に加え、昨年発生した鳥インフルエンザの対応などを踏まえ、協会としての防災対応力を高め、『地域の守り手』としての社会的役割を果たしていきたいと考えています。現在はラインワークスを活用した災害時の連絡網の強化や、大規模災害時の広域的支援に備えた資材備蓄の充実など、災害対応への強化を進めています。今年5月には、県より災害対策基本法に基づく『指定地方公共機関』の指定を受け、当協会が災害支援を担う公的な団体に位置付けられました。災害時の我々の役割が一層高まっているので、今後も大規模災害に備えた組織強化に努めます」  ――最近は公共工事の入札における設計金額の情報漏洩や贈収賄などの不祥事が相次いでいます。  「県内建設業界は、平成18年の公共工事に絡む不祥事によって社会的信用が大きく失墜した経緯から、猛省して不断に法令順守の徹底に努めてきました。その後、東日本大震災や豪雨災害等での初動対応やインフラの復旧・復興への貢献、様々な社会貢献活動を通じ、徐々に県民の信頼回復への手応えを感じていたところです。しかし残念ながら、近年公共工事に絡む不祥事が続いております。これは公正で透明性の高いものであるべき入札制度を貶め、建設業に対する県民の信頼を著しく失墜させる重大な犯罪行為であり、誠に遺憾なことと受け止めています。これらの事件を一会員企業の問題ではなく、協会全体の問題と捉え、会員に対してさらなる法令順守の徹底と、企業倫理の確立についてあらためて要請しました。今年度も引き続き、関係法令への理解を深め、コンプライアンス順守の機運を醸成する研修などを継続的に実施し、再発防止に努めていきます」  ――今年度の重点事業について。  「少子高齢化の進展に伴う就業人口の減少は、全産業共通の課題ですが、県内建設業界はより深刻な状況で、この中で若年者の入職・定着を促進するためには、建設業に将来を託すことができ、安心して働き続けられる新4K(給料・休日・希望・かっこいい)の魅力ある業界にすることが不可欠です。そのために協会として、働き方改革と担い手確保という相互に関連する2大課題について重点的に対応していく考えです」  ――今後の抱負。  「建設業界では、今後も担い手不足や事業継承問題などが懸念される中、建設DXを活用した生産性の向上や、SDGs・カーボンニュートラルへの対応といった新たな課題も山積しています。協会としては、建設業が地域の基幹産業として引き続き県土の発展に貢献していけるよう、『協会として何ができるか』を常に自問自答しながら、会員各社の知恵や経験を結集し、組織力を発揮することで課題の克服に取り組んでいきます」

  • 【JA福島五連】管野啓二会長インタビュー【2023年9月号】

    かんの・けいじ 1952年生まれ。福島県農業短期大学校卒。JAたむら代表理事組合長、JA福島さくら代表理事専務、代表理事組合長を務め、昨年6月の総会でJA福島五連会長に選任された。 原発事故に伴う風評被害や、自然災害、コロナ禍での米価下落、さらには燃料高騰など、農業を取り巻く環境は厳しさを増している。昨年6月にJA福島五連会長に就任した管野啓二会長に、それら課題への対応や、「第41回JA福島大会」で決議された3カ年基本方針の進捗状況などについて話を聞いた。 生産者の所得が確保される形を早期に実現したい。  ――昨年6月の総会で会長に選任されてから1年超が経過しました。この間を振り返っての感想をお聞かせください。  「昨年2月にロシアによるウクライナ侵攻が始まり、県内では2021年2月、2022年3月に2年連続で福島県沖地震が発生し、新型コロナ感染症の拡大等、課題が山積する中、昨年6月に会長に就任しました。  肥料や燃料・飼料等、様々なものが高騰し農家経営は厳しさを増していきました。国や県へ要請活動を行ったことにより、飼料購入助成等が認められたことは、農家の窮状が理解されたとともに我々の活動が認知されたのかなと思っていますが、その一方で廃業に追い込まれた酪農家・畜産農家の方もいます。そのすべてが飼料高騰に起因するものとは言い切れませんが、もっとできることがあったのではないか、との思いも抱いています」  ――2021年11月に開かれた「第41回JA福島大会」では、2022年から2024年までの中期計画が策定されました。そのうち、農業産出額を震災・原発事故前の水準である2330億円まで回復させる目標を設定しましたが、その見通しについて。  「2330億円の早期実現を目標に取り組んできましたが、2021年度の農業産出額は1913億円となりました。大きな要因の1つに、復興すべき地域の復興が遅れている現実があります。もう1つは、想定していた以上に米価が下落してしまったことがあり、厳しい状況にあると思っています。  そうした中、水田(コメ)から国内需要の多い野菜等に作物転換していただく取り組みをスタートして2年目に入っています。そういった意味では新しい動きが出てきた年になったと思います」  ――「第41回JA福島大会」では、米の生産過剰基調により、生産品目の見直しが必要なことから、国産需要が見込まれる園芸品目への生産シフトを進めるため、「ふくしま園芸ギガ団地構想」を進める、ということも決議されました。その内容と進捗状況について。  「『ふくしま園芸ギガ団地構想』は既存産地のさらなる生産振興を図るとともに、基盤整備地区における高収益作物の大規模振興、園芸振興の取り組みを加速化させていくことを目的としています。  各JAが、これまで栽培した品目等を検討しながら、地域に合ったもの、あるいは新規で需要がありそうなものを検討してもらっています。5JA12地区で、きゅうり、ピーマン、アスパラガス、ねぎ、いちご、トマト、カスミソウなどの栽培に取り組んでいます」  ――中期計画では「組織基盤強化戦略」も大きな目標の1つに設定され、その中で組合員の維持・拡大、とりわけ、「女性組合員拡大」が目標に設定されましたが、その狙いと見通しはいかがでしょう。  「『第41回JA福島大会』で決議された中期計画の柱の1つに『組織基盤の強化』があります。いままで中心となって活動をしてきた人が高齢になり、新規就農者が定着しない中、組合員の維持・拡大は容易でない状況です。そんな中、正組合員の拡大と意思反映の強化のため、女性組合員の拡大、女性の経営への参画を進めています。2022年度末で、正組合員における女性の比率は20・4%で、前年度より増えていますが、さらなる拡大を目指します。  やはり、女性部ではどういうことをしているのか等々を理解していただくことが仲間を増やす第一歩になると思います。女性部の中には『フレッシュミズ』という組織があり、それが定着できずにいる地区もありますから、県内全体でフレッシュミズが構成されるように進めていきたいと思っています。女性部組織が楽しく、自らの経営や暮らしに役立つ組織であるということをいかにしてPRできるかが重要になると思います」 就農支援センターの実績  ――今年4月に、県、JAグループ福島、福島県農業会議、福島県農業振興公社がワンフロアに常駐する総合相談窓口「福島県農業経営・就農支援センター」が開所しました。同センターの意義、これまでの実績等について。  「県に対し『新しく農業を始めたい人や規模拡大などを考えている生産者からの相談にワンストップ・ワンフロアで対応できるような仕組みづくりをしてほしい』と要請し続け、念願叶い、今年4月に、県、JAグループ、農業会議、農業振興公社が集う支援センターが自治会館の1階に開所しました。このような体制は福島県が最初だったこともあり、他県からの視察などもあります。中身については、電話相談、支援センターへの来訪、あるいはこちらから出向くなどの方法で対応しています。相談者も親から受け継いでの就農、全くの新規就農者、あるいは県外からの移住者など多種多様で、法人の新規参入相談もあります。  相談件数は4月から6月の3カ月間で298件に上り、内訳は就農相談が186件、経営相談が103件、企業等の参入相談が9件となっており、昨年同期と比較すると約2倍になっています」  ――東日本大震災・原発事故から12年超が経過しました。この間、福島県農畜産物は、いわゆる風評被害に苦しめられ、品目によっては未だに影響が出ているものもあると聞きますが、今後予定されているALPS処理水の海洋放出に伴うさらなる影響・懸念等について。  「処理水の問題は、農業分野においては、風評が懸念され、それらが最小限度で収まってほしいと思っています。我々が求めるのは、科学的な知見による安心感の伝達と、もし風評が発生した場合は、この12年間で賠償フレームができていますから、それらに基づいて対応をしてもらうことです。協議会員、生産者の方々が不安に思うことがないよう、対応していきたいと思います」  ――今後の抱負。  「毎年のように自然災害が発生し、しかも大規模化していくような気象環境になっていますので、まずは災害に強い生産基盤づくりを進め、従事する人々が生産意欲を持って取り組むことができ、所得が確保されるような姿を早く実現したいと思っています。そのためにも、先ほどお話しした『ふくしま園芸ギガ団地構想』の早期実現や就農支援センターが担う役割は大きいと思います」

  • 【玉川村】須釡泰一村長インタビュー

    すがま・やすいち 1959年生まれ。福島大中退。福島県総務部政策監、福島県観光物産交流協会常務理事、玉川村副村長などを歴任し、今年4月の玉川村長選で初当選。    ――玉川村長選では新人3人による三つどもえの激戦を制して初当選を果たしました。  「副村長を3年間務めていたものの知名度不足は否めず、苦戦を覚悟していました。ただ、支持者の皆さまに『顔と名前』の浸透に注力していただいた結果、日を追うごとに村長選への関心が高まり、村民の皆さまの政策への理解が深まっていくのを実感しました。あらためて村民の皆さま方に当選させていただいたと痛感するとともに、身が引き締まる思いです。選挙戦で寄せられた期待に応えるためにも、公約を着実に実現していかなければならないとの思いを強くしております」  ――1期目の重点施策について。  「『生まれて良かった、住んで良かった、選んで良かった玉川村』を基本コンセプトに掲げています。時代や社会の変化とともに進化しながら、村民の皆さまが安心・安全を実感し快適に暮らせる生活環境、質の高い行政サービスを提供していくことが何より肝要です。  喫緊の課題としては、人口減少対策が挙げられます。人口流出を阻止し、移住者等を増やす政策が必要となります。仕事・住居・教育・医療・子育て支援の充実と生活インフラの整備に加え、移住支援金をはじめ、移住者への手厚い支援など『総合政策』として取り組む必要があります。関係人口の創出と都市部からの移住・定住や二地域居住などを積極的に推進し、地域の活性化、振興策を講じていきます。  次いで、阿武隈川遊水地群整備計画です。村内で収穫量が最も多い優良な農地が買収されるなど、今後の村づくりに大きな影響を及ぼしかねない国家プロジェクトです。住居などの移転を迫られる方々が、これまでの生活の質を確保しながら安心・安全に暮らしていける環境を整えるのが本村の重要な役割と認識しています。対象者一人ひとりに寄り添った対策の実現に向け、国としっかり協議調整していきます。  そのほか、①複合型水辺施設を中心とした『かわまちづくり事業』、②旧須釜中学校校庭を活用した宅地造成事業、③泉郷駅前の活性化などのプロジェクトの推進、④基幹産業である農林業や商工業の振興、⑤いわゆる交通弱者対策としての『高齢者等QOL向上サービス実証事業』の展開と来年度以降の事業化、⑥地域のデジタル化推進を踏まえたプレミアム率30%の『デジタル商品券』の発行〝手ぶらキャッシュレス〟事業、⑦高齢の方々が末永く幸せに暮らしていけるための健康寿命の延伸事業――など、多様なニーズを把握しながら、地域に合ったきめ細かなサービスを提供できる仕組みづくりに鋭意努めます」  ――今後の抱負を。  「4月30日の就任から約4カ月が経過しました。この間、村民の皆さまをはじめ、職員、議会のご理解とご協力に深く感謝致します。『だれもが誇りを持てる魅力ある活力ある元気で豊かな玉川村』の実現に向け、皆さまのご意見やご要望に真摯に向き合いながら、本村における課題解決にしっかりコミットする『玉川モデル』としての施策の展開に邁進していく考えです」

  • 【西会津町】薄友喜町長インタビュー

    うすき・ともき 1948年4月生まれ。喜多方商業高(現・喜多方桐桜高)卒。西会津町総務課長、副町長などを歴任。2017年7月の町長選で初当選。現在2期目。  ――昨年8月の大雨被害の復旧状況は。  「本町は未曾有の大雨による被害を受けました。発災後は、現地調査、測量設計を迅速に進め、施工可能箇所のうち、農地・農業用施設を含めたすべての被災箇所の工事を昨年度中に発注し、早期完成を図ってきたところです。特に水田については、今年の作付けに間に合うように工事を進めてきました。残る町道久良谷線については、難易度の関係から2024(令和6)年度の再開通を目指しています」  ――新型コロナウイルス感染症が5月8日から感染症法上5類に引き下げられました。  「この間、『なつかしcarショー』をはじめ、祭礼、各種総会、盆踊り、ビアガーデンが通常開催となりました。また、飲食を伴う会合なども再開され、飲食店も活気が戻りつつあります。今後もこれまで中止・規模縮小を余儀なくされた各種スポーツ大会などの行事が従来通り再開する運びとなります。一方、『Withコロナ』の観点から、引き続き感染防止対策にも努めていく考えです」  ――物価高の地域経済への影響について。  「ガソリン代、電気代、生活必需品に至るまで値上げとなり、町民生活に影響が及んでいます。冬季の暖房費の負担増を懸念しています。本町では、家計負担の軽減を図るべく、給食費の一部補助を実施しているほか、9月には商品券第6弾として、町民一人当たり5000円の消費再生商品券の発行を予定しています。また、町内事業所も収益が圧迫されている現状もあることから、100万円を上限に『中小企業等エネルギー価格高騰対策支援補助金』を創設し、支援策を講じています。そのほか、公共サービス事業者や町内商店向けの支援にも努めています」  ――その他の重点事業について。  「移住・定住の促進、空き家対策、結婚・出産祝い金の継続といった人口減少対策・子育て支援策の推進はもちろん、『西会津町デジタル戦略』に基づきDXをさらに加速させていきます。基幹産業である農業の振興を図るため、町農業公社を設立するほか、最新デジタル技術を駆使して生産者と消費者との〝絆〟を結び、西会津産米の販路開拓や農業所得向上につなげる『石高プロジェクト』を展開します。このほか、人手不足解消を図る仕組みづくりとしての『特定地域づくり協同組合』設立、人生100年時代を見据えた健康長寿・健康寿命延伸事業、西会津診療所の医療体制の強化、『日本の田舎、西会津町。』による町のブランド力強化、ふるさと応援寄付金の取り組み強化による自主財源のさらなる増額などにスピード感をもって取り組みます」

  • 【白河市】鈴木和夫市長インタビュー

    すずき・かずお 1949年生まれ。早稲田大法学部卒。県相双地方振興局長、県企業局長などを経て、2007年の白河市長選で初当選。今年7月に5選を果たす。  ――7月に行われた市長選挙で5選を果たしました。  「多くの市民の皆様の信任を賜り、5期目となる市政の舵取りを担わせていただくこととなりました。その重責に、あらためて身の引き締まる思いです。市民の声に耳を傾け、対話を重ね、信頼関係を築き、市政運営を進めるという初心を忘れず、子どもたちの明るい未来を築くため、直面する課題に一つひとつ丁寧に取り組んでいく考えです。  特に、想定をはるかに上回るスピードで進む人口減少への対応はまったなしの状況です。『少子化』が最大の要因であり、この状況を反転させるには、子育て環境の充実、経済的負担の軽減、さらには急増する未婚の解消など、様々な政策を組み合わせ、総合的に進めていかなければなりません。  中でも、未婚者の増加は大きな課題と考えています。わが国の婚姻の件数は、令和3年は50万組と約50年前の半分となり、戦後最少を更新しました。また、50歳時の未婚割合を示す『生涯未婚率』も令和2年には男性が28・3%、女性が17・8%と、女性より男性の方が高い傾向が続いており、40年で10倍に急上昇しています。こうした中、個人の価値観を尊重しつつ、結婚を希望する人には縁談のお世話をするような機運を社会全体で醸成していく必要があると考えています。市では、新たに『良縁めぐりあわせ応援窓口』を設置し、サポーターが悩み相談や相手の紹介など、かつての仲人のように婚活を支援する事業をスタートしました。  将来を担う若者の流出も、地方都市共通の悩みです。それを解決するには、安定した収入が見込め、将来の生活設計を描ける雇用の場が必要です。このため、地域に根を張る企業を支援することに加え、成長が見込める企業の誘致にも取り組み、地域の産業力を高めていく考えです。また、若者の中でも、特に女性の転出が多いことが大きな課題です。福島県は、昨年の転出超過が約6700人と全国ワースト3位でしたが、そのうち女性が約3900人でワースト2位でした。  県南地域は、県内の他地域と比較して製造業が非常に強い地域ですが、IT関連や研究開発型の成長産業の企業誘致を図るなど、進学等で一度白河を離れた若者が戻ってこられるような多彩な職場環境を整えることが重要になってくると考えています。加えて、女性が働きやすい環境づくりも大切です。日本はジェンダーギャップ指数が146カ国中125位と大変低く、特に地方では、『男は働き、女性は家を守る』という暗黙の役割分担が未だに根強く残っているように感じます。これが『女性の目に見えない障壁』として、女性の社会活躍を妨げる要因となっていると考えられるため、男女雇用機会均等法をはじめ諸制度を社会全体が理解し、機運を高め、その障壁を取り払っていくことが求められています。  そのためには、男女共同参画社会に対する認識を深め、定着させていく必要があり、市では、子育て時期の男性などを対象としたセミナーを実施するなど、ジェンダーギャップの解消に向けた取り組みを推進する考えです」観光ステーションの効果  ――国道294号白河バイパスが2月に全線開通しました。  「本市を南北に縦断する国道294号白河バイパスの開通により、白河中央スマートインターチェンジ、国道4号、国道289号が一直線に結ばれました。多くの市民の皆様から通勤・通学時間が短くなった、スーパーへ行きやすくなったなど、バイパス開通を喜ぶ声が寄せられており、市民生活の利便性は格段に向上したと感じています。  また、物流や救急医療、観光誘客など各方面にわたり大きな効果が生まれており、白河のみならず県南地域の広域的な社会経済活動を支えています。特に、本市のシンボルである小峰城、南湖公園へのアクセスが良くなったことで、今後より一層多くの観光客が訪れるものと期待しています。このため、小峰城、南湖公園の持つ歴史的価値やポテンシャルをより一層引き出し、賑わいを創出していきたいと考えています」  ――観光面では4月、JR白河駅近くにしらかわ観光ステーションがオープンしました。  「本市には、南湖公園、白河関跡、関山や権太倉山、里山のすそ野に広がる田園風景など、四季折々の情緒漂う豊かな自然、さらには美肌の湯として有名なきつねうち温泉など、魅力あふれる観光資源が数多くあります。また、JR白河駅の周辺には、小峰城、旧城下町の街並みを残す中心市街地、明治天皇が宿泊された旧脇本陣柳家旅館蔵座敷など、歴史を感じさせる観光スポットが点在しています。こうした白河の魅力を伝え、リピーターになっていただけるよう、新たな観光拠点として、JR白河駅隣に『しらかわ観光ステーション』をゴールデンウイークの初めに開所しました。オープン以来、多くの観光客の皆様にお越しいただいていますが、白河ならではのおもてなしを提供できるよう日々努めています。  中でも、味や麺の種類など自分好みの白河ラーメンの店舗とその道筋にある観光資源を組み合わせた周遊プランを提案する『ラーメンデータベース』は、テレビなどでも取り上げられ、大変好評です。また、市内の事業者や店舗と連携し、様々な地元産品や地酒などを展示・販売しており、来場者にお買い求めいただいています。  今後は、『旅の始まりは観光ステーションから』をキーワードに、白河市から県南地域、さらには県境を越えて栃木県北地域の観光スポットを広域的に訪れていただけるよう、近隣の自治体などと連携を図りながら新たな仕掛けを講じていく考えです」  ――今後の抱負。  「少子高齢化・人口減少が急速に進む中、激動する世界情勢、食料の安全保障、エネルギー問題、情報通信技術の発達など、目まぐるしく時代は変化しています。さらに、コロナ禍により、首都圏に集中する人や企業の地方分散に向けた機運が生まれ、政府は『デジタル田園都市構想』を推進するなど、従来の東京一極集中から地方が主役となる時代への大きな転換期でもあります。だからこそ、首都圏からの近接性や交通の利便性、豊かな歴史や文化、自然環境など、足元にある恵まれた条件を生かし、さらには、DXやGXも推進しながら、産業、教育、子育て、医療に加え、文化芸術・スポーツなどバランスのとれた『誰もが身近な幸せ(Well-being)を実感し、〝自分らしく、いきいきと〟暮らしていけるまちづくり』を着実に進め、市民の皆様とともに、確かな未来を築いていきたいと考えています」

  • 【塙町】宮田秀利町長インタビュー

    みやた・ひでとし 1950年2月生まれ。東北工業大工学部卒。2000年から塙町議3期。2016年の町長選で初当選し、現在2期目。  ――役場新庁舎の工事が進んでいます。 「建築費高騰を心配していましたが、影響は少なく、現在の進捗状況は30%弱で、順調に進んでいます。来年4月には完成し、5月中の開庁を目指しています。その後、現庁舎を解体し、駐車場と書類等を保管する書庫棟を建設する予定となっています」 ――「子ども第3の居場所b&gはなわ はなまるはうす」が開所しました。 「はなまるはうすは、日本財団とB&G財団が連携する『子ども第3の居場所』プロジェクトの一環として、家庭や学校だけではなく、子どもたちがのびのびと過ごせる第3の居場所を提供しています。 5月に開所し、まだ数カ月ですが、おかげ様で23名が利用登録をしています。利用する子どもたちも楽しそうで、教育施設ではありませんが、個別学習室もあって宿題をしたり本を読んだりして自由に過ごしています。また、同施設では地域の食材を使用したバランスの良い食事を提供しており、子どもたちが美味しそうに食べていました。町内の方々からお米や野菜の寄付をいただき、大変助かっています。最近は兄弟姉妹のいない家庭も多く、学校ではない場所で様々な世代の子ども同士がコミュニケーションをとるのは、とても良い機会だと思います。夜8時まで預けることができ、保護者の評判も上々です。 今後は、子どもだけでなく高齢者が子どもたちと料理をつくったり、高齢者が子どもたちに習字や将棋を教えたり、さらには子どもたちが学校の時間は高齢者の集会施設としての利用や一人暮らしの高齢者が食事をするといった、高齢者にとっても『第3の居場所』になるような施設のモデルを目指していきたいと考えています」 ――自転車での地域振興を進めています。 「東白川郡4町村で組織する『東白川地方自転車活用推進協議会』を中心に、自転車を活用した地域活性化を目指しています。それが県にも認められ、県で自転車道の整備を積極的に進めていただいています。また、自転車をそのまま列車に持ち込める水郡線サイクルトレインは、JR東日本管内では水郡線だけで、これまでは有人駅だけ利用可能でした。そこで協議会で要望活動を行い、無人駅である磐城塙駅と棚倉駅でも利用可能となりました。利用者からの評判も良く、今後も4町村が連携して進めていきたいと思っています」 ――今後の抱負。 「この町を次の世代にしっかり繋いでいき、持続させていくという使命があります。そのためにも今後も様々な施策を行っていきたいと思います」