南相馬・復興団体代表「不同意性交事件」を追う

 東日本大震災・原発事故後に復興活動に携わる団体「福興浜団」の代表・上野敬幸氏(52)=南相馬市=が、活動を支援していた知人女性に性的暴行を加えたとして不同意性交等罪に問われている。事件の現場となった群馬県の前橋地裁で、これまでに6回の公判が開かれた(6月号10月号で詳報)。10月16日に行われた被告人質問では、上野氏が事件後に思い出した記憶を基に証言。知人女性とは性的な同意があったと振り返り、あらためて無罪を主張した。(小池航)

無罪主張の被告人が語った事件の記憶

事件は群馬県で起き前橋地裁で審理中
事件は群馬県で起き前橋地裁で審理中

 福興浜団は南相馬市を拠点に活動するボランティア団体。代表の上野敬幸氏は東日本大震災の津波で子ども2人と両親を亡くした。東京電力福島第一原発事故の影響で捜索が進まなかった沿岸部に地元消防団の仲間と共に戻り、家族を探し続けた。消防団を母体に福興浜団を立ち上げ、菜の花を植えた迷路や追悼の花火大会を企画し地域を盛り上げてきた。

 上野氏の人生はニュースやドキュメンタリー映画で取り上げられ、2021年の東京五輪では聖火ランナーを務めた。福島の復興に携わる人の間では象徴的な存在だった。

 今年1月に開かれた初公判で検察官が読み上げた起訴状によると、上野氏は昨年7月18日の午前3時28分ごろから同9時42分ごろの間に同県太田市内のビジネスホテルで知人女性Aさん(当時25歳)と飲酒中、性的行為が予想しえない状況で「触らせろ」「見せろ」などと言って恐怖を与えて性交に及んだという。

 Aさんは福興浜団の活動に携わるボランティアだった。事件の前日から、福島県内から群馬県内に避難した人たちを上野氏と訪ね、夜には懇親会が開かれた。宿泊部屋は別々に取っていた。

 上野氏は起訴内容を否認し、無罪を主張する。「性交しようとしたが、自分の年齢や飲酒の影響で行為ができなかった」と挿入自体を否定した。また、「Aさんに口頭で『いいですか』と確認はしなかったが、Aさんに嫌がる様子はなく応じてくれたので同意はあると思っている」と、被害女性とは性的同意があったと主張。女性が拒絶する意思を示すのが困難な状況ではなかったと反論した。

 被害者であるAさんの証人尋問は既に終わっている(6月号参照)。証言と起訴状によると、群馬県太田市で開かれた十数人での懇親会の後、2次会、3次会を経てAさんは上野氏に誘われ、上野氏の部屋で酒を飲んだ。2人の関係が復興団体の代表とその支援者に留まることや、上野氏に妻子がいる点などからAさんは性的行為を迫られる状況を想定していなかったとした。

 Aさんの証言によると、雑談する中で上野氏は急にAさんの胸に言及しだし、胸を見せろ、触らせろと繰り返し迫ってきて、最終的には2回の性交に及んだという。ただ、Aさんは自身が服を脱がされた、或いは脱いだタイミングについては「覚えていない」と記憶が曖昧な点があった。

 9月16日に行われた被告人質問で、上野氏は、Aさんが覚えていないとする部分を埋めるように、事件後に思い出したという記憶に基づき当時の状況を鮮明に語った。法廷でのやり取りを抜粋する。

「性交の流れがあった」

 まずは弁護人からの質問。

 ――性交類似行為を行ったことは認めている。同意を得ずにしたのか。

 「違う」

 ――2人で酒を飲み、下ネタで盛り上がった時に、Aさんが胸を見せた。第三者の視点で見た時、男女2人がこのような場にいたらどのような運命に至ると思うか。

 「流れで性交に至ると思う」

 ――Aさんは性行為は予想できない状況だったと述べている。予想できないような事情があったのか。

 「全くない。2次会、3次会と下ネタで盛り上がる中で性行為に至るような流れがあった」

 ――あなたとしては男女の営みに年齢は関係あると思うか。

 「全く関係ないと思う」

 ――3次会の後、どういうつもりでAさんを部屋飲みに誘ったのか。

 「まだ飲めるような様子だった。私も飲みたいと思い誘った」

 上野氏は酒を飲んでいる際の位置関係や2人の服装を詳細に語った。性的同意を得たと理解した理由は、下ネタの延長で胸の大きさについてのやり取りがあったり、求めに応じてAさんが胸を見せてくれた点にあるとした。ただ、それ以外の意思確認については明確ではなく、上野氏は「Aさんが受け入れ、性交に至る流れがあった」と説明した。Aさん自身は、上野氏が突如胸を話題にし、「見せろ」「触らせろ」と繰り返し迫ったので恐怖から胸を見せたと証言している。

 弁護人の質問は続く。

 ――どの段階で性行為をしようと思ったのか。

 「胸を見せてくれた段階だ。冗談半分で『見せて』と軽く言うと、『いいですよ』と応じてくれた。予想しない返事だったのでびっくりしたことを覚えている」

 ――Aさんは「服を脱いだ記憶はない」と言っている。あなたがAさんの服を脱がしたのか。

 「脱がしていない。自分の服を脱ぐのに集中していた。私は尋常性乾癬という疾患を抱えており、人に肌を見せるのにコンプレックスがある。電気を消して暗くした上で自分の服を脱ぐのに精いっぱいだった」

 ――Aさんの下着を無理やり脱がせたことはあったか。

 「ない。脱がせたが無理やりではなく、拒否する様子もなかった」

 上野氏は事件後には、Aさんに謝罪の意を示していた。

 ――事件後にLINEメッセージを送っている。何についての謝罪か。

 「不貞行為についてだ。妻子ある私と関係を持ったことをAさんは後悔したのだと思う」

 ――Aさんはなぜ被害届を出したと考えるか。

 「今になって考えると、Aさんが相談した会社の上司とのやり取りが影響したのだと思う」

 ――当時はどう考えていたか。

 「不貞行為を後悔したので被害届を出したのだと思った」

 昨年10月に逮捕、勾留された後に上野氏は示談を考えた。容疑を否認すると身柄の拘束が長引く日本の人質司法の問題と自身の境遇を重ね合わせたという。

 「面会した妻から震災後に生まれた子どもが泣いていると聞いて早く出たいと思った。迷路のために菜の花の種を植える時季でもあった。小麦も育てなければならず、早く出たい一心だった」

 ――示談はAさんに迷惑を掛けたと認めることを意味する。

 「不貞行為は事実。Aさんが後悔しているなら謝りたかった」

 ――不同意性交等罪に問われていることについてはどうか。

 「同意のない性交はしていないので謝るつもりはない」

 次は検察からの質問。女性の検察官が主に質問した。

 ――Aさんがどのような気持ちで福興浜団のイベントに参加していたか聞いたことがあるか。

 「2年前に話していた。私が主人公になった映画の話が多かった」

 ――ドキュメンタリー映画「Life 生きてゆく」のことか。

 「そうだ。映画を見て活動に携わりたいと思ったと話していた」

 ――Aさんは被告人を信頼していたと証言していた。信頼の気持ちは感じていたか。

 「Aさんとは5、6回しか会っていない。信頼関係とはどういうことか」

 ――深い関係ではなかったのか。

 「そこまで親密ではなかった」

 ――Aさんは「被告人が津波で亡くした娘さんと自分を重ね合わせるような発言があった」と述べている。

 「『年齢が亡くした娘と近い』とは話した。Aさんの方が歳は上だが」

 ――実際、Aさんと亡き娘を重ね合わせていたのか。

 「それはない」

 ――Aさんを性的な対象に見ていたことはあったか。

 「いやらしい目でということならさほどなかった。そもそも2人きりの機会がない。昨年5月ごろに地元の食堂での会食に誘われたのが2人で会った初めての機会。2人きりだからと言って性的に見ることはなかった」

 ――部屋飲みに誘った時は初めから性的な行為をしようと思ったのか。

 「思っていなかった」

 ――最初の目的は?

 「飲んで話そうかなと思った」

 ――先ほどは「下ネタが中心でおっぱいの話を何度もした」と述べた。終始下ネタだったのか。

 「違う。下ネタもあったということだ。震災の話もあった。酔っていたので胸の話を何度も繰り返した」

記憶が蘇ったきっかけ

 ――確認したいのだが、あなたは記憶の通り話しているのか、それとも起きた出来事から逆算して想像を述べているのか。

 「想像ではない。記憶の通りだ」

 ――下ネタの流れでAさんに「おっぱい見せて」と言ったのか。

 「そうだ。『見せて』と言うと『いいですよ』と言ってきた」

 ――どのような流れで「おっぱい見せて」と言ったのか。

 「胸の話をする中でAさんが『上野さんはおっぱい好きなんですね』と言い、私が『好きです』とのやり取りがあった後に軽いノリで『見せて』と言ったと思う」

 ――軽い口調で1回「おっぱい見せて」と言った後にAさんは「いいですよ」と即答したのか。

 「即答したと思う」

 ――繰り返し「おっぱい見せて」とは言っていないということか。

 「繰り返しは言っていない」

 ――1回「見せて」と言ったら見せてくれたということでよいか。

 「そうだ」

 ――突如、下ネタの延長で胸を見せるように言ったのか。

 「その前の3次会でも言っていた」

 ――捜査段階では宿泊先の場面をどのように話していたか覚えているか。

 「当時は思い出せなかった。私が『おっぱい見せて』と言い、Aさんが胸を見せたことは覚えていたが、流れは細かくは覚えていなかった」

 ――取り調べでの供述調書には、あなたは「どのようにAさんが胸を見せてくれたかは覚えていない」とある。法廷ではとても具体的に話しているがなぜか。

 「照明の記憶をきっかけに思い出した。私は尋常性乾癬を患っているので、他人に肌を見られたくなく、部屋を暗くしないと安心して眠れない。取り調べの後、照明を自分で消したと思い出したのをきっかけに、一連の流れも思い出した」

 ――胸を見せてくれたので性行為の同意があると思ったのか。

 「それが全てではない。流れの中で隣に座ってキスしても胸を触っても嫌がる様子は見えなかった。首を横に振る動作もなかったので自分の中では大丈夫だと思った」

 ――「胸を見せてくれた」=「性行為についての同意があった」ではないということか。

 「全てではない。流れの中で拒む様子がなかったので大丈夫と思った」

 ――避妊具なしで性交しようとした際、Aさんは避妊具を着けないのか尋ねてきた。あなたが「ない」と答えた後、Aさんは「えっ」と口にしたがなぜか。

 「拒んでいるような『えっ』ではなかった。『持っていないんだ』『持っているなら着けてほしい』と捉えた」

 検察官からの質問は続く。

 ――供述調書では、「少なくとも挿入行為においては被害者の意思を確認することなく行った」とある。

 「流れの中での同意があったとは取り調べできちんと答えている」

 ――あなたは事件から3日後、AさんにLINEのメッセージで「傷つけてしまったよな。ごめんなさい。反省しています」と送った。弁護人からの質問では、「Aさんを後悔させたため送った」と述べたが、思い当たる事情はあったのか。

 「しばらく返信がなかったのでAさんが後悔したのだと思った」

 ――「後悔させた」と実際のメッセージの「傷つけた」とではニュアンスが大分違う。

 「嫌な思いをさせた点では一緒だ」

 ――謝罪に対し、Aさんは「上野さんは私が何に傷ついたと思っていますか。性行為を強要したことですか。避妊具なしの挿入をされ、病院にアフターピルをもらいに行きました」とメッセージを送った。あなたは、それに対して「思っていますよ」などと返し、性行為を強要されたと主張するAさんに反論していない。

 「このような状況で反論できますか? 彼女が嫌な思いをして後悔しているのは確かなので謝罪しなければと思った。ここで相手に『何言ってんの』と反論すれば、これまでの関係も壊れると思った。不貞行為で嫌な思いをさせたので、後悔させたならば謝ろうと考えた」

 ――性行為の強要は犯罪で、不貞行為とは重さが違う。なぜ反論せずに受け入れたのか。

 「受け入れたわけではない。言葉は適切ではないかもしれないが、彼女の怒りを鎮めようと思った」

 ――示談しようとしたが断られた。なぜ断られたか知っているか。

 「なぜかと言われても断られただけだ。私としては示談を拒んでもらって結果的にはよかった」

 ここで男性の検察官が質問を代わった。声には怒気がこもっていた。

 ――これまでのあなたの発言をまとめて振り返るので肯定か否定で答えてほしい。Aさんはあなたに妻子がいることを元々知っていたのか。

 「はい」

 ――あなたにとってAさんはボランティアの1人に過ぎなかった。

 「はい」

 ――事件の夜は、Aさんは求められるがままに体を許した。

 「そうだ」

 ――ほどなくしてAさんはあなたと関係を持ったことを後悔した。

 「そうだ」

 ――なぜかAさんは会社の上司にあなたと関係を持ったことを打ち明け、上司に言われるがままに警察に嘘の被害届を出した。

 「はい」

 ――Aさんは度重なる警察や検察の取り調べに嘘をつき、法廷での長時間の尋問でも嘘をつき通した。

 「そういうことになる」

 ――このAさんは一体何をしたかったんでしょうね? 以上です。

 検察官は答えを聞く間もなく質問を終えた。真意は「Aさんが多くの人を巻き込み、法廷にまで出てきて嘘をつくはずがない」と反語的に示したかったのだろう。

裁判官の着目点

 最後に裁判官が質問した。

 ――Aさんがあなたに妻子がいることを気にする言動をしていたのはいつからか。

 「3次会で飲んでいる時だ。2人きりで深夜に飲んでいることを気にしていた」

 ――浮気と疑われないか気にしていたということか。

 「それも気にしていたと思うが、私は酒が入っていたせいもあり『大丈夫』と言っていた」

 ――宿泊先の部屋で酒を飲んでいる時にはAさんはあなたとの関係を浮気に当たると気にしていたか。

 「その時は気にしていなかった。朝になると気にする発言をした」

 ――2人で飲んでいる時にあなたは胸の大きさを何度も聞いていた。Aさんはすぐに答えてくれたのか。

 「3次会では答えてくれた」

 ――恥ずかしさから答えをはぐらかすようなことはなかったか。

 「それはなかった」

 関係者への尋問・質問は終わった。次回は12月2日午前10時から開かれる。検察側が求刑を述べ、弁護側があらためて無罪を求める。判決は今年度中に言い渡される見込みだ。

小池 航

こいけ・わたる

1994(平成6)年生まれ。二本松市出身。
長野県の信濃毎日新聞で勤務後、東邦出版に入社。

【最近担当した主な記事】
福島県内4都市スナック調査(4回シリーズ)
地元紙がもてはやした双葉町移住劇作家の「裏の顔」(2023年2月号)

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