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鹿島建設

  • 【田村市】新病院施工者を独断で覆した白石市長

    〝本田派議員〟が疑惑追及の百条委設置    田村市が建設を計画している新病院の施工予定者が〝鶴の一声〟で変更された。市幹部などでつくる選定委員会は、公募型プロポーザルに参加した3社の中から鹿島建設を最優秀提案者に選んだが、白石高司市長の指示で次点者の安藤ハザマに覆ったのである。 「新病院の施工予定者が白石市長の指示で変更されたらしい」 そんなウワサを田村市内の自民党関係者から聞いたのは、2022年7月に行われた参院選の前だった。  新病院とは、田村地方の医療を支えるたむら市民病院(病床数32)の後継施設を指す。公には6月30日に市のホームページで「新病院の施工予定者選定に係る公募型プロポーザルの最優秀提案者に安藤ハザマ、次点者は鹿島建設」と発表され、7月4日付の福島建設工業新聞にも「新病院の施工予定者に安藤ハザマ」という記事が掲載された。 造成工事を終えた新病院予定地  ところが実際の審査では、最優秀提案者に鹿島、次点者に安藤ハザマが選ばれていたというのだ。  「2022年6月、市幹部などでつくる選定委員会が白石市長に『審査の結果、鹿島に決まった』と報告した。しかし白石市長が納得せず、次点の安藤ハザマに変更するよう指示したというのです。選定委員会は『何のために審査したか分からない』と不満に思ったが、上から言われれば従うしかない」(市内の自民党関係者)  一度聞いただけではまさかとしか思えない話。だが、それはウワサでもまさかでもなく、事実だった。  市長の指示で施工予定者が突然覆される――そんなかつての〝天の声〟を彷彿とさせる出来事はなぜ起きたのか。  たむら市民病院は、同市船引町の国道288号沿いで診療を行っている。もともとは医療法人社団真仁会が大方病院という名称で運営していたが、院長が急死したため2019年7月に市が事業継承、公的医療機関として生まれ変わった。診療科目は内科、人工透析内科、外科など10科。運営は指定管理者制度で公益財団法人星総合病院(郡山市)に委託している。  市立病院の設置は、2005年に旧5町村が合併した田村市にとって悲願だった。しかし、事業継承した時点で建物の老朽化、必要な病床数の確保、救急受け入れなどの課題を抱えていた。そこで市は2020年3月に新病院建設基本計画を策定、現在地から北東1・3㌔の場所(船引町船引字屋頭清水地内)に新病院を建設する方針を打ち出した。  2020~21年度にかけて予定地の造成を行い、その後は22年度着工、24年度開院というスケジュールが組まれたが、21年4月の市長選で状況が変化した。当時現職の本田仁一氏を破り初当選した白石高司市長が、公約に本田市政のもとで始まった公共工事の見直し(事業検証)を掲げたことから、新病院建設も一時中断を余儀なくされたのである。  その後、関係部局の職員たちが4カ月にわたり事業検証を行い、最終的に「新病院は市民にとって必要」と判断されたため、計画は予定より1年遅れて再始動した。2022年3月には建設基本設計概要書が公表され、新病院の具体像が示された。  問題の公募型プロポーザルはこの後に行われるが、ここからは、本誌が情報開示請求で市から入手した公文書に基づいて書いていく。  新病院の概要は病床50床、鉄筋コンクリート造地上4階建て、建築面積2790平方㍍、延べ面積6420平方㍍。このほか厨房施設と付属棟、250台分の駐車場を整備し、工期は2023年7月から25年1月。想定事業費は36億円程度となっている。  市は建設コスト縮減と工期短縮を図るため、施工者が設計段階から技術協力を行うECI方式の採用を決定。4月19日にプロポーザルの公告を行い、清水建設、鹿島、安藤ハザマから参加申し込みがあった。同28日には一次審査が行われ、3社とも通過した。  続く二次審査は6月25日に行われ、各社のプレゼンテーションと選定委員会によるヒアリング、さらには各委員による採点で最優秀提案者と次点者が選定された。 最高評価を受けていた鹿島  まずは評価が一目で分かる採点から見ていく。別表は選定委員7人による評価シートの合計だ。  選定委員会は、委員長を石井孝道氏(市総務部長)が務め、委員には渡辺春信氏(市保健福祉部長)、佐藤健志氏(市建設部長)のほか4人が就いた。市は部長以外の名前を公表していないが、そのうちの3人は南相馬市立総合病院の及川友好院長、たむら市民病院の指定管理者である星総合病院の担当者、日大工学部教授だったことが判明している。残り1人は不明。  その7人による採点の合計を見ると(各自の採点結果は開示された公文書が黒塗りで不明)、A社は505点、B社は480点、C社は405点となっている(満点は700点)。アルファベット表記になっているが、公文書を読み進めるとA社は鹿島、B社は安藤ハザマ、C社は清水建設であることが分かり「評価シートに基づく順位は委員間で異なった」と書かれている。  では、各委員の評価ポイントはどうだったのか。公文書には当時の発言順に次のように記されていた。  「A社は丁寧な技術提案や書類のつくり込みで好感が持てた。ヒアリングでのやり取りからもネガティブな要素は感じられず、安心して任せられると感じた。C社にはA社と全く逆の印象を持った。書類のつくり込みが粗いばかりか、ヒアリングでも発注者・審査員に対し礼を失する発言が多く、誠実さが感じられなかった。B社は様々な提案を盛り込んでいるが、果たしてそれがうまく収まるのか不安を感じた。工期に余裕がない点もネガティブ要素だった」(黒塗りで発言者不明)  「地域貢献に関して、書類上の金額と現実性が乖離している提案が目立った。特にB社の発注予定額は経験的に実現不可能と受け止めている。技術力に関しては提案者ごとにかなり差があると感じた。順位付けをするならA社<B社<C社の順だが、メンテナンス体制も含めるとA社の有意性がより際立つと感じた」(同)  「技術面では3社とも特に問題ないだろうと感じた。その中でも、A社は一番丁寧に提案書がつくられていた。地域貢献に関しては、その是非や実現性を判断するための情報が不足している」(佐藤委員)  「技術的な優劣は判断できない。市の姿勢として地域貢献を前面に出していただく必要がある」(渡辺委員)  「ここまでの委員の発言に同意。地域貢献に関しては、B社提案はリップサービスが過ぎたように感じる」(黒塗りで発言者不明)  「技術的な優劣は判断できないが、A社の提案は書類・説明ともに好印象だった。しっかりとした病院を確実に建てることが第一で、地域貢献はその次に考えること。地域貢献の配点が大きいため、個人的な評価と点数が一致していない。B社が提示した五つの課題は市の感覚とずれているように感じた」(石井委員長)  総体的に、A社(鹿島)の評価が高く、C社(清水建設)は厳しい意見が多く聞かれた。B社(安藤ハザマ)の提案も各委員が半信半疑に捉えている様子がうかがえる。  ただ、採点結果と評価ポイントのすり合わせを行っても順位の一致に至らなかったため、規程に基づき多数決を行った結果、A社4人、B社1人、C社0人となり、最優秀提案者に鹿島、次点者に安藤ハザマが選定された。  この結果を選定委員会事務局が白石市長に報告し、決裁後、速やかに各社に通知、市のホームページでも公表する手筈だったが、公文書(6月30日付の発議書)には次のような驚きの記述があった。  《6月28日及び同30日に実施した市長報告において、市長から本件プロポーザルにおいては地域貢献と見積額が重要な判断基準であるため、当該提案において最も有利な条件を提示している㈱安藤・間東北支店が次点者という審査結果は妥当性を欠くため、該社を最優秀提案者として決定するよう指示がありました》  白石市長から安藤ハザマに変更するよう指示があったと明記されていたのだ。  最終的にこの変更は6月30日に了承され、安藤ハザマには《厳正に審査した結果、御社の提案が最も評価が高く、本事業の最優秀提案者として選定されましたので通知いたします》、鹿島には《御社の提案が2番目に評価が高く、本事業の次点者として選定されました》という通知が白石市長名で送られた。市のホームページでも同日中に公表された。「厳正に審査」が白々しく聞こえるのは本誌だけだろうか。 百条委設置の経緯  前述した建設工業新聞の記事はこの直後に書かれたが、当時は最優秀提案者が覆された事実は公になっていなかった。ただ市議会では、安藤ハザマを最優秀提案者に選定したことに「別の視点」から疑問の声が上がっていた。  「6月に市役所ホールの吹き抜けの窓から雨漏りしている個所が見つかったが、市役所を施工したのが安藤ハザマと地元業者によるJVだったため、議員から『そんな業者に新病院建設を任せて大丈夫か』という懸念が出たのです」(市内の事情通)  市役所は2014年12月に竣工したが、事情通によると落札金額は安く抑えられたものの、その後、追加工事が相次ぎ、結局、事業費が膨らんだ苦い経験があるため、  「議員の間には『今回も安藤ハザマは同様の手口で事業費を増やしていくのではないか』という疑いが根強くある」(同)  これ以外にも、安藤ハザマは「過去に指名停止を受けている」「市に除染費用を水増し請求した」などの不信感が持たれている。ただ同様のトラブルは、鹿島や清水建設など他のゼネコンでも見られるので、安藤ハザマだけを殊更問題視するのはバランスを欠く。  「そうこうしているうちに『最優秀提案者は、本当は鹿島だったらしい』という話が議員にも伝わり、9月定例会で選定経過に関する質問が行われたが、白石市長は『地域貢献度も含め適正に審査した』と曖昧な答弁に終始したため、過半数の議員が反発する事態となった」(同)  ウワサは次第に尾鰭をまとい「〇〇社が白石市長に頼んで安藤ハザマに変わったらしい」「実際の工事は白石市長と同級生の××社が請け負うようだ」「白石市長は安藤ハザマからいくらもらったんだ」等々、真偽不明の話まで囁かれるようになった。白石市長が明確な答弁を避けたことが「何か隠している」という印象を与えたわけ。  9月定例会が終わりに近付くころには、一部議員の間で「真相を究明するには地方自治法100条に基づく調査特別委員会(百条委員会)を設置するしかない」という話が持ち上がり、10月27日に開かれた臨時議会で議員発議による設置が正式決定された。  《市は安藤ハザマを最優秀提案者にした理由の説明を避けてきたため、一部議員が反発していた。白石市長は臨時議会開会前の議員全員協議会で鹿島が選定委員会で最も点数が高かったと認め、「積算工事費や地域貢献計画などを比較し、安藤ハザマにした」と説明したが、採決の結果、賛成9、反対8で百条委設置が決まった》(福島民報10月28日付)  田村市議会は定数18。採決に加わらなかった大橋幹一議長(4期)を除く賛成・反対の内訳は別掲の通りだが、賛成した9人のうち、半谷理孝議員を除く8人は2021年4月の市長選で白石市長に敗れた本田仁一氏を支援していた。  ちなみに百条委の委員も、賛成した9人から大和田議員を除いた8人全員が就き、反対した8人からは誰も就かなかった。そのため「市長選の私怨が絡んだ面々で正しい調査ができるのか」と言われているが、委員に就いた議員からは「反対した議員には『調査の公平・公正を担保するため、そちら(反対)の議員も百条委に加わるべきだ』と申し入れたが断わられた」という不満が漏れている。  反対した8人は白石市長と距離が近いが、話を聞くと「百条委設置に反対したのに委員に就くのは筋が通らないと思った」と言う。しかし筆者は、本気で真相を究明するなら設置の賛否にこだわらず、議会全体で疑惑の有無を探るべきと考える。そうでなければ、せっかくつくった百条委が「反白石派の腹いせに利用されている」とねじ曲がった見方をされかねないからだ。  市保健福祉部の担当者はこう話す。  「百条委が設置されたことは承知しているが、具体的な動きがない限り市側はアクションを起こせないので、今後どうなるかは全く想像がつかない」  最後に、白石市長が安藤ハザマに変更した際に重視したとされる工事費や地域貢献度については市から入手した公文書にこんな記述がある。  例えば安藤ハザマは▽直接工事費の60%相当・工事費18億円以上を市内業者に発注、▽事務用品その他も4000万円以上を市内企業から購入、▽市内における関係者個人消費は3000万円以上。さらに概算工事費は45億8700万円と提示している。  一方、鹿島については市内業者への発注額、市内企業からの建設資機材購入額、概算工事費とも黒塗りされ詳細は不明だが、白石市長に次点者に追いやられたということは、いずれの金額も安藤ハザマより劣っていたことが推察される。 開院遅れで市民に不利益  だが、プロポーザルへの参加者を公募した際の公文書(4月19日付)にはこのように書かれている。  《選定委員会において技術提案及びプレゼンテーション等を総合的に審査し、最も評価の高い提案者を最優秀提案者に選定する》  選定委員会が最も高く評価した提案者を、市長の〝鶴の一声〟で変更していいとは書かれていない。白石市長は「工事費や地元貢献度の観点から安藤ハザマの方が優れており、やましい理由で変更したわけではない」と言いたいのだろうが、ルールに無い変更を独断で行った結果、疑惑を招き、市政を混乱させたことは事実であり、真摯に反省しなければならない。  何より新病院建設は前述した事業見直しで一時中断しており、今回の百条委でさらに遅れる可能性が出ている。高齢者や持病のある人にとって新病院は待望の施設なのに、開院がどんどん後ろ倒しになるのは不利益以外の何ものでもない。白石市長はたとえやましいことが無かったとしても、安藤ハザマに変更した理由を明確に示さない限り、市議会(百条委)は納得しないし、市民からも理解を得られないだろう。  白石市長は百条委設置を受け「プロポーザルに参加した業者の技術に差はなく、市民の利益を十分検討し最終決定した。調査には真摯に対応したい」とコメントしたが、今後の百条委で何を語るのか、それを聞いて百条委がどのように判断するのか注目される。

  • 【田村市】新病院施工者を独断で覆した白石市長

    〝本田派議員〟が疑惑追及の百条委設置    田村市が建設を計画している新病院の施工予定者が〝鶴の一声〟で変更された。市幹部などでつくる選定委員会は、公募型プロポーザルに参加した3社の中から鹿島建設を最優秀提案者に選んだが、白石高司市長の指示で次点者の安藤ハザマに覆ったのである。 「新病院の施工予定者が白石市長の指示で変更されたらしい」 そんなウワサを田村市内の自民党関係者から聞いたのは、2022年7月に行われた参院選の前だった。  新病院とは、田村地方の医療を支えるたむら市民病院(病床数32)の後継施設を指す。公には6月30日に市のホームページで「新病院の施工予定者選定に係る公募型プロポーザルの最優秀提案者に安藤ハザマ、次点者は鹿島建設」と発表され、7月4日付の福島建設工業新聞にも「新病院の施工予定者に安藤ハザマ」という記事が掲載された。 造成工事を終えた新病院予定地  ところが実際の審査では、最優秀提案者に鹿島、次点者に安藤ハザマが選ばれていたというのだ。  「2022年6月、市幹部などでつくる選定委員会が白石市長に『審査の結果、鹿島に決まった』と報告した。しかし白石市長が納得せず、次点の安藤ハザマに変更するよう指示したというのです。選定委員会は『何のために審査したか分からない』と不満に思ったが、上から言われれば従うしかない」(市内の自民党関係者)  一度聞いただけではまさかとしか思えない話。だが、それはウワサでもまさかでもなく、事実だった。  市長の指示で施工予定者が突然覆される――そんなかつての〝天の声〟を彷彿とさせる出来事はなぜ起きたのか。  たむら市民病院は、同市船引町の国道288号沿いで診療を行っている。もともとは医療法人社団真仁会が大方病院という名称で運営していたが、院長が急死したため2019年7月に市が事業継承、公的医療機関として生まれ変わった。診療科目は内科、人工透析内科、外科など10科。運営は指定管理者制度で公益財団法人星総合病院(郡山市)に委託している。  市立病院の設置は、2005年に旧5町村が合併した田村市にとって悲願だった。しかし、事業継承した時点で建物の老朽化、必要な病床数の確保、救急受け入れなどの課題を抱えていた。そこで市は2020年3月に新病院建設基本計画を策定、現在地から北東1・3㌔の場所(船引町船引字屋頭清水地内)に新病院を建設する方針を打ち出した。  2020~21年度にかけて予定地の造成を行い、その後は22年度着工、24年度開院というスケジュールが組まれたが、21年4月の市長選で状況が変化した。当時現職の本田仁一氏を破り初当選した白石高司市長が、公約に本田市政のもとで始まった公共工事の見直し(事業検証)を掲げたことから、新病院建設も一時中断を余儀なくされたのである。  その後、関係部局の職員たちが4カ月にわたり事業検証を行い、最終的に「新病院は市民にとって必要」と判断されたため、計画は予定より1年遅れて再始動した。2022年3月には建設基本設計概要書が公表され、新病院の具体像が示された。  問題の公募型プロポーザルはこの後に行われるが、ここからは、本誌が情報開示請求で市から入手した公文書に基づいて書いていく。  新病院の概要は病床50床、鉄筋コンクリート造地上4階建て、建築面積2790平方㍍、延べ面積6420平方㍍。このほか厨房施設と付属棟、250台分の駐車場を整備し、工期は2023年7月から25年1月。想定事業費は36億円程度となっている。  市は建設コスト縮減と工期短縮を図るため、施工者が設計段階から技術協力を行うECI方式の採用を決定。4月19日にプロポーザルの公告を行い、清水建設、鹿島、安藤ハザマから参加申し込みがあった。同28日には一次審査が行われ、3社とも通過した。  続く二次審査は6月25日に行われ、各社のプレゼンテーションと選定委員会によるヒアリング、さらには各委員による採点で最優秀提案者と次点者が選定された。 最高評価を受けていた鹿島  まずは評価が一目で分かる採点から見ていく。別表は選定委員7人による評価シートの合計だ。  選定委員会は、委員長を石井孝道氏(市総務部長)が務め、委員には渡辺春信氏(市保健福祉部長)、佐藤健志氏(市建設部長)のほか4人が就いた。市は部長以外の名前を公表していないが、そのうちの3人は南相馬市立総合病院の及川友好院長、たむら市民病院の指定管理者である星総合病院の担当者、日大工学部教授だったことが判明している。残り1人は不明。  その7人による採点の合計を見ると(各自の採点結果は開示された公文書が黒塗りで不明)、A社は505点、B社は480点、C社は405点となっている(満点は700点)。アルファベット表記になっているが、公文書を読み進めるとA社は鹿島、B社は安藤ハザマ、C社は清水建設であることが分かり「評価シートに基づく順位は委員間で異なった」と書かれている。  では、各委員の評価ポイントはどうだったのか。公文書には当時の発言順に次のように記されていた。  「A社は丁寧な技術提案や書類のつくり込みで好感が持てた。ヒアリングでのやり取りからもネガティブな要素は感じられず、安心して任せられると感じた。C社にはA社と全く逆の印象を持った。書類のつくり込みが粗いばかりか、ヒアリングでも発注者・審査員に対し礼を失する発言が多く、誠実さが感じられなかった。B社は様々な提案を盛り込んでいるが、果たしてそれがうまく収まるのか不安を感じた。工期に余裕がない点もネガティブ要素だった」(黒塗りで発言者不明)  「地域貢献に関して、書類上の金額と現実性が乖離している提案が目立った。特にB社の発注予定額は経験的に実現不可能と受け止めている。技術力に関しては提案者ごとにかなり差があると感じた。順位付けをするならA社<B社<C社の順だが、メンテナンス体制も含めるとA社の有意性がより際立つと感じた」(同)  「技術面では3社とも特に問題ないだろうと感じた。その中でも、A社は一番丁寧に提案書がつくられていた。地域貢献に関しては、その是非や実現性を判断するための情報が不足している」(佐藤委員)  「技術的な優劣は判断できない。市の姿勢として地域貢献を前面に出していただく必要がある」(渡辺委員)  「ここまでの委員の発言に同意。地域貢献に関しては、B社提案はリップサービスが過ぎたように感じる」(黒塗りで発言者不明)  「技術的な優劣は判断できないが、A社の提案は書類・説明ともに好印象だった。しっかりとした病院を確実に建てることが第一で、地域貢献はその次に考えること。地域貢献の配点が大きいため、個人的な評価と点数が一致していない。B社が提示した五つの課題は市の感覚とずれているように感じた」(石井委員長)  総体的に、A社(鹿島)の評価が高く、C社(清水建設)は厳しい意見が多く聞かれた。B社(安藤ハザマ)の提案も各委員が半信半疑に捉えている様子がうかがえる。  ただ、採点結果と評価ポイントのすり合わせを行っても順位の一致に至らなかったため、規程に基づき多数決を行った結果、A社4人、B社1人、C社0人となり、最優秀提案者に鹿島、次点者に安藤ハザマが選定された。  この結果を選定委員会事務局が白石市長に報告し、決裁後、速やかに各社に通知、市のホームページでも公表する手筈だったが、公文書(6月30日付の発議書)には次のような驚きの記述があった。  《6月28日及び同30日に実施した市長報告において、市長から本件プロポーザルにおいては地域貢献と見積額が重要な判断基準であるため、当該提案において最も有利な条件を提示している㈱安藤・間東北支店が次点者という審査結果は妥当性を欠くため、該社を最優秀提案者として決定するよう指示がありました》  白石市長から安藤ハザマに変更するよう指示があったと明記されていたのだ。  最終的にこの変更は6月30日に了承され、安藤ハザマには《厳正に審査した結果、御社の提案が最も評価が高く、本事業の最優秀提案者として選定されましたので通知いたします》、鹿島には《御社の提案が2番目に評価が高く、本事業の次点者として選定されました》という通知が白石市長名で送られた。市のホームページでも同日中に公表された。「厳正に審査」が白々しく聞こえるのは本誌だけだろうか。 百条委設置の経緯  前述した建設工業新聞の記事はこの直後に書かれたが、当時は最優秀提案者が覆された事実は公になっていなかった。ただ市議会では、安藤ハザマを最優秀提案者に選定したことに「別の視点」から疑問の声が上がっていた。  「6月に市役所ホールの吹き抜けの窓から雨漏りしている個所が見つかったが、市役所を施工したのが安藤ハザマと地元業者によるJVだったため、議員から『そんな業者に新病院建設を任せて大丈夫か』という懸念が出たのです」(市内の事情通)  市役所は2014年12月に竣工したが、事情通によると落札金額は安く抑えられたものの、その後、追加工事が相次ぎ、結局、事業費が膨らんだ苦い経験があるため、  「議員の間には『今回も安藤ハザマは同様の手口で事業費を増やしていくのではないか』という疑いが根強くある」(同)  これ以外にも、安藤ハザマは「過去に指名停止を受けている」「市に除染費用を水増し請求した」などの不信感が持たれている。ただ同様のトラブルは、鹿島や清水建設など他のゼネコンでも見られるので、安藤ハザマだけを殊更問題視するのはバランスを欠く。  「そうこうしているうちに『最優秀提案者は、本当は鹿島だったらしい』という話が議員にも伝わり、9月定例会で選定経過に関する質問が行われたが、白石市長は『地域貢献度も含め適正に審査した』と曖昧な答弁に終始したため、過半数の議員が反発する事態となった」(同)  ウワサは次第に尾鰭をまとい「〇〇社が白石市長に頼んで安藤ハザマに変わったらしい」「実際の工事は白石市長と同級生の××社が請け負うようだ」「白石市長は安藤ハザマからいくらもらったんだ」等々、真偽不明の話まで囁かれるようになった。白石市長が明確な答弁を避けたことが「何か隠している」という印象を与えたわけ。  9月定例会が終わりに近付くころには、一部議員の間で「真相を究明するには地方自治法100条に基づく調査特別委員会(百条委員会)を設置するしかない」という話が持ち上がり、10月27日に開かれた臨時議会で議員発議による設置が正式決定された。  《市は安藤ハザマを最優秀提案者にした理由の説明を避けてきたため、一部議員が反発していた。白石市長は臨時議会開会前の議員全員協議会で鹿島が選定委員会で最も点数が高かったと認め、「積算工事費や地域貢献計画などを比較し、安藤ハザマにした」と説明したが、採決の結果、賛成9、反対8で百条委設置が決まった》(福島民報10月28日付)  田村市議会は定数18。採決に加わらなかった大橋幹一議長(4期)を除く賛成・反対の内訳は別掲の通りだが、賛成した9人のうち、半谷理孝議員を除く8人は2021年4月の市長選で白石市長に敗れた本田仁一氏を支援していた。  ちなみに百条委の委員も、賛成した9人から大和田議員を除いた8人全員が就き、反対した8人からは誰も就かなかった。そのため「市長選の私怨が絡んだ面々で正しい調査ができるのか」と言われているが、委員に就いた議員からは「反対した議員には『調査の公平・公正を担保するため、そちら(反対)の議員も百条委に加わるべきだ』と申し入れたが断わられた」という不満が漏れている。  反対した8人は白石市長と距離が近いが、話を聞くと「百条委設置に反対したのに委員に就くのは筋が通らないと思った」と言う。しかし筆者は、本気で真相を究明するなら設置の賛否にこだわらず、議会全体で疑惑の有無を探るべきと考える。そうでなければ、せっかくつくった百条委が「反白石派の腹いせに利用されている」とねじ曲がった見方をされかねないからだ。  市保健福祉部の担当者はこう話す。  「百条委が設置されたことは承知しているが、具体的な動きがない限り市側はアクションを起こせないので、今後どうなるかは全く想像がつかない」  最後に、白石市長が安藤ハザマに変更した際に重視したとされる工事費や地域貢献度については市から入手した公文書にこんな記述がある。  例えば安藤ハザマは▽直接工事費の60%相当・工事費18億円以上を市内業者に発注、▽事務用品その他も4000万円以上を市内企業から購入、▽市内における関係者個人消費は3000万円以上。さらに概算工事費は45億8700万円と提示している。  一方、鹿島については市内業者への発注額、市内企業からの建設資機材購入額、概算工事費とも黒塗りされ詳細は不明だが、白石市長に次点者に追いやられたということは、いずれの金額も安藤ハザマより劣っていたことが推察される。 開院遅れで市民に不利益  だが、プロポーザルへの参加者を公募した際の公文書(4月19日付)にはこのように書かれている。  《選定委員会において技術提案及びプレゼンテーション等を総合的に審査し、最も評価の高い提案者を最優秀提案者に選定する》  選定委員会が最も高く評価した提案者を、市長の〝鶴の一声〟で変更していいとは書かれていない。白石市長は「工事費や地元貢献度の観点から安藤ハザマの方が優れており、やましい理由で変更したわけではない」と言いたいのだろうが、ルールに無い変更を独断で行った結果、疑惑を招き、市政を混乱させたことは事実であり、真摯に反省しなければならない。  何より新病院建設は前述した事業見直しで一時中断しており、今回の百条委でさらに遅れる可能性が出ている。高齢者や持病のある人にとって新病院は待望の施設なのに、開院がどんどん後ろ倒しになるのは不利益以外の何ものでもない。白石市長はたとえやましいことが無かったとしても、安藤ハザマに変更した理由を明確に示さない限り、市議会(百条委)は納得しないし、市民からも理解を得られないだろう。  白石市長は百条委設置を受け「プロポーザルに参加した業者の技術に差はなく、市民の利益を十分検討し最終決定した。調査には真摯に対応したい」とコメントしたが、今後の百条委で何を語るのか、それを聞いて百条委がどのように判断するのか注目される。