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いわき商工会議所

  • 【いわき商工会議所】小野栄重会頭インタビュー(2023.12)

    【いわき商工会議所】小野栄重会頭インタビュー(2023.12)

     おの・えいじゅう 1954年10月生まれ。慶應義塾大商学部卒。オノエー㈱社長。いわき商工会議所副会頭を経て2011年5月から現職。現在5期目。  いわき商工会議所ではコロナ禍や資材・燃料価格高騰で厳しい経営を迫られる会員事業所の相談に乗り、支援を行っているほか、産業振興、政策提言などの活動に取り組んでいる。コロナ禍がひと段落したいま、いわき市の中小企業はどのような経営状況になっているのか。同商議所会頭の小野栄重会頭(オノエー㈱社長)に話を聞いた。 「復興モデルいわき」の実現に邁進する  ──新型コロナウイルスの5類移行が実施され、管内でもイベント等が通常開催されるなど、従来の活気が戻りつつあります。現状についてどう分析していますか。  「市内の3大まつりであるいわき花火大会、いわき七夕まつり、そしていわきおどりが通常開催され、閉塞感が払拭されて、活気が戻った印象を受けます。  しかし、コロナ禍以前と比較するとライフスタイルが大きく変化し、それに対応できる企業とそうでない企業とで差が出始めています。コロナ禍のころには補助金や支援金、ゼロゼロ融資がありましたが、現在はそうしたものも無くなったうえ、融資の返済期間が始まるなど、経営的に厳しい部分が目立っています。  加えて国際情勢の変化による円安や原料高、燃料高といったコスト高が進み、見合った利潤を出すことができず、それも経営を圧迫する要因の一つとなっています。  また、需要が上向いたとしても、人手不足で事業の拡大ができないという問題があり、そうした部分も踏まえて商工会議所が本腰を入れて支援していく必要があり、寄り添った支援をしなければ廃業・倒産のリスクが増えていくと見ています」  ──円安や原料高、燃料高に加えて人手不足や後継者問題について、会員事業所からはどのような声が上がっていますか。  「業種を問わず、すべての業者から今後に対する不安の声が聞こえています。特に原価が上昇した分を価格に転嫁できない企業は利益が出せないので人件費の支払いにも苦労しています。飲食業では大口の宴会予約や団体の宿泊予約があったとしても、それに対応できず事業規模を縮小せざるを得ない状況もあります。  人手不足が顕著な業種は運輸業で、バスの路線減少や観光バスの運行状況への影響、物流の停滞によるエンドユーザーへのしわ寄せなどが大きな問題です。  会員事業所のほとんどが中小・小規模企業で、事業承継もままならない中、廃業を決断する事業所も出てきており、我々としても間に入りマッチングなども含めて支援しなければならないと考えています。  国の補助金制度や専門家派遣制度など、さまざまな支援がありますが、事業者によって経営課題は異なります。一律の補助制度ではなく、事業者ごとに応じたきめ細やかな支援策を商工会議所が窓口となって国に要望していく所存です」  ──JRいわき駅前の並木通り再開発事業の工期延長の発表がありましたが、いわき駅周辺の開発事業の進捗について。  「資材高騰による工期延長は仕方ない部分がありますが、大きな目で見れば順調に進んでいるものと見ています。並木通り再開発事業や駅周辺の開発事業、イトーヨーカドーの跡地の整備事業は、民間主導で立ち上げた中心市街地活性化協議会で定めた中心市街地活性化基本計画に基づき進められており、行政と一体となって取り組んでいます。強固な官民連携は他市に負けない部分だと思います。事業の進捗を注視し、市民の理解をいただきながら事業が進んでいくよう、当会議所としても、連携協力を図りながら中心市街地の魅力を大いにPRしていきたいと思っています。  再開発の一環として整備されるマンションの成約率は90%を超えているようです。マンションの需要も高まっていますし、平地区の居住人口がさらに増え、街中のにぎわい創出につながると考えています。  もっとも、そこに住む人が生きがいを持って楽しく生活していくためには周りの商店街が頑張らなければいけませんし、整備される商業施設がまちの拠点として機能していけるよう、当会議所としても連携を密に取り組んでいかなければなりません。我々としてもさまざまな施設を盛り上げていきたい所存です。  中心市街地活性化の影響を市内各地区に波及させ、活性化に生かしていきたいと考えています」  ──福島第一原発敷地内に溜まるALPS処理水の海洋放出が行われました。影響はいかがでしょうか。  「当初は海洋放出による風評被害の影響を懸念していました。ただ、一部の国で輸入を禁止するという動きはあったものの、俯瞰的に見れば国内では処理水の安全性が理解され、『常磐もの』を応援しようという動きが広まりました。その大きなバックボーンとなったのが全国515の商工会議所の連携であり、販路開拓にご協力いただきました。今後も全国各地の商工会議所との連携は続いていくと思いますし、当会議所としても積極的に音頭を取り、マーケットの拡大に努めていく考えです。  ある意味、『常磐もの』を世界中に発信できる機会であり、マイナスイメージの払拭にもつながります。ピンチをチャンスに生かし、常磐ものを世界に冠たるブランドに発展させ、いずれは輸出規制の緩和や輸出量の増大につなげていきたいと考えています」  ──その他重点事業について。  「活動の3つの柱の1つは中小企業の振興活動です。企業の経営・存続に寄り添い、国や県とのパイプ役となって支援していくほか、市内企業の新たな販路開拓の牽引者としての役割を果たしていきます。  2つ目が産業振興です。市内のポテンシャルを秘めた企業を支援すべく、産業人財育成を進め、地場産業を守りつつ、新産業の萌芽に努めていく必要があります。  3つ目が政策提言・組織の強化です。さまざまな課題について、現場目線で国や日本商工会議所に訴え、市内企業の地盤の強化につなげて、〝変化への挑戦〟に対応できるいわき経済界を作り上げていきます」  ──今後の抱負を。  「会頭就任以来言い続けてきたのが、〝世界に誇れる復興モデル都市いわき〟の実現です。  5期目のキーワードには〝変化への挑戦〟を掲げています。世界情勢が猛スピードで変化する激動の時代に対応し、挑戦することが非常に重要な課題であると考え、今期のテーマを〝挑戦、シン化。そして未来へ〟に定めました。  会員事業所による新たな事業への挑戦、コスト削減への取り組みを積極的に応援し、共に未来へ向かって歩みを進めていきます。こうした歩みを通し、先ほどお話しした〝世界に誇れる復興モデル都市いわき〟の実現に邁進していきます」 いわき商工会議所ホームページ

  • 【いわき商工会議所】小野栄重会頭インタビュー

    【いわき商工会議所】小野栄重会頭インタビュー

     おの・えいじゅう 1954年10月生まれ。慶應義塾大商学部卒。オノエー㈱社長。いわき商工会議所副会頭を経て2011年5月から現職。現在5期目。  いわき商工会議所会頭にオノエー(株)社長の小野栄重氏が再任され新体制がスタートした。コロナ禍や物価高など様々な課題が経済を覆うが「挑戦」と進化・伸化などあらゆる意味を持たせた「シン化」をテーマに解決に取り組む。JRいわき駅前の再開発や、いわきFCのJ2昇格はその起爆剤となりうるか。小野会頭に今後の見通しを聞いた。  ――5期目の抱負を教えてください。  「現在、いわき地域は、自然災害、原発事故、コロナ禍からの復興に加え、エネルギー・仕入価格の高騰、世界的なインフレの進行、AIやデジタル技術の進展、カーボンニュートラルへの対応、若者流出や長寿社会の到来などさまざまな課題に直面しています。こうした課題を乗り越え、次のステージへ進むためには、事業所も、事業所を支える人財も地域も、大きく変化する環境に果敢に『挑戦』し、新化して行くことが重要です。商工会議所のミッションは、ネットワーク力を生かしながら、こうした挑戦を支援し、地域全体の持続力、革新力、成長力を底上げすることにあると考えます。  今期3年間のテーマを『挑戦、シン化(進化、伸化、深化、新化)。そして未来へ』としました。『世界に誇れる復興モデル都市の実現』に向けて取り組んでまいります」  ――新型コロナの影響について会員事業者からどのような声が寄せられていますか。  「国・県の需要喚起策により、幅広い業種で売り上げは回復傾向にあります。しかし、観光業や飲食業においては、コロナ前の水準にまでは需要が回復しない中、コロナ融資の返済を危ぶむ事業主が多いです。観光旅館は『全国旅行支援のスタートにより、団体客・個人客ともに増えてきているが、コロナ前の7割程度の回復に留まっている』、また飲食店からは『ゼロゼロ融資の返済が始まったが、返済財源の確保が難しい』といった声が上がっています」  ――円安や物価高、燃料高騰の影響を教えてください。  「コスト上昇が収益を圧迫し、資金繰りが悪化している会員事業所からの相談が日を追うごとに増えています。『30%コストアップしたが、取引先との交渉が上手くいかず、価格転嫁は10%しかできない(部品製造業)』、『仕事は好調だが、資材の高騰に苦しんでいる。儲からない(工務店)」、『客離れが怖く、値上げしないで頑張ってきたが、もう限界。値上げに踏み切った(飲食店)』、『SNS広告への移行がどんどん進み、経費削減で紙媒体の広告宣伝費を抑えている。売り上げ減の中での経費増は厳しい(印刷所)』といった声が上がっています。『インボイス導入の影響が痛い(ビジネス旅館)』、『社員を増やしたいが、思うような人材が集まらないので、仕事を受注できない(テレワーク)』といった課題も挙がっています」  ――国、県に要望したいことは何ですか。併せて3選した内堀雅雄知事に何を求めますか。  「20年前に世界2位を誇った国民一人当たりのGDP(国内総生産)は、今や27位にまで後退しています。2020年度に名目GDP600兆円を目標としていましたが、実際は536兆円に留まり、公的債務も1255兆円に膨らんでいます。  政府には原因をしっかりと分析し、日本の国力を取り戻せるよう、10年後、20年後のビジョンを明確に示してほしいですし、達成のために必要な戦略を練り上げてほしいです。日本はいまだにコロナの国産ワクチンが開発できていません。奨学金を返済できない若者がいるし、1日に3食を満足に取れない子どもたちがいます。子や孫の世代にツケを回さないように、いまの国民が痛みを分かち合うことになっても先を見据えた政策をすぐに実行すべきではないでしょうか。  一方で大倒産時代とならないよう、借り換え、追加融資、返済繰り延べ、条件変更などコロナ融資返済への柔軟な措置を取ってほしいです。また、浪江町に立地が決まった『福島国際研究教育機構』が、福島県の復興を後押しし、日本の産業競争力強化につながるよう、十分に機能を発揮できる体制づくりと予算付けをお願いしたいです。  なお、為替動向に一喜一憂しても仕方がありません。インバウンド観光はもちろん、国内に生産拠点を呼び戻す、地域を挙げて輸入に力を入れるなど、円安を逆手に取った戦略も考える必要があります。  偶然にも、知事がスローガンに掲げた『進化、新化、深化』と、商工会議所のテーマ『挑戦、シン化(進化、伸化、深化、新化)』が重なりました。思いは同じであり、ともにシン化を図って行きたいです」  ――JRいわき駅周辺の中心市街地活性化計画の進捗はどうですか。  「いわき市中心市街地活性化基本計画は、2017年4月に国の認定を受け、2022年の3月末をもって5年の計画期間が終了しました。しかし、並木通りの再開発事業や旧イトーヨーカドー平店跡地における都市計画変更などを勘案し、スムーズな開発が進められるよう、基本計画を1年延長しました。  主な整備内容としては、①平城本丸跡地の公園整備(歴史遺構の出土により計画は変更中)、②並木通り再開発(ミッドタワーいわき)、③旧イトーヨーカドー平店の開発があります。また基本計画に記載がないものとしては、④2023年1月に開業するJRいわき駅ビル(S-PAL)やホテル開発(ホテルB4Tいわき)、⑤2025年度を目標に進められている、駅北口の松村総合病院の移転があります。  市と商工会議所、まちづくり会社や商店会連合会などが一体となって事業を推進、支援しているところであり、まちの再生に大きな効果を発揮するものと期待しています」  ――サッカーのいわきFCがJ2に昇格しました。地元経済界として何に期待していますか。  「松本山雅との試合では約800人のサポーターがいわき市に来ました。湯本温泉や平のビジネスホテルが繁盛し、夜は飲食店に繰り出し街が活気づきました。白水阿弥陀堂や小名浜を観光した方も多いでしょう。J2昇格で1試合あたり、今までの2倍の観客動員数を見込んでいます。特に、山形、仙台、秋田、千葉、東京、大宮など、割と近くに対戦チームが多いです。試合の直接的な経済効果を求めつつ、いわきを好きになってくれるファン、リピーターを増やしていきたいです。  また、サッカーのインターハイがJヴィレッジで固定開催されます。いわきをサッカーの聖地にして全国から合宿を呼び込んだり、いわきFCのトレーニングのノウハウを一般にも活用し、メタボリック症候群の解消など市民の健康増進にも役立てていければと考えています」 いわき商工会議所ホームページ 政経東北【2022年12月号】

  • 【いわき商工会議所】小野栄重会頭インタビュー(2023.12)

     おの・えいじゅう 1954年10月生まれ。慶應義塾大商学部卒。オノエー㈱社長。いわき商工会議所副会頭を経て2011年5月から現職。現在5期目。  いわき商工会議所ではコロナ禍や資材・燃料価格高騰で厳しい経営を迫られる会員事業所の相談に乗り、支援を行っているほか、産業振興、政策提言などの活動に取り組んでいる。コロナ禍がひと段落したいま、いわき市の中小企業はどのような経営状況になっているのか。同商議所会頭の小野栄重会頭(オノエー㈱社長)に話を聞いた。 「復興モデルいわき」の実現に邁進する  ──新型コロナウイルスの5類移行が実施され、管内でもイベント等が通常開催されるなど、従来の活気が戻りつつあります。現状についてどう分析していますか。  「市内の3大まつりであるいわき花火大会、いわき七夕まつり、そしていわきおどりが通常開催され、閉塞感が払拭されて、活気が戻った印象を受けます。  しかし、コロナ禍以前と比較するとライフスタイルが大きく変化し、それに対応できる企業とそうでない企業とで差が出始めています。コロナ禍のころには補助金や支援金、ゼロゼロ融資がありましたが、現在はそうしたものも無くなったうえ、融資の返済期間が始まるなど、経営的に厳しい部分が目立っています。  加えて国際情勢の変化による円安や原料高、燃料高といったコスト高が進み、見合った利潤を出すことができず、それも経営を圧迫する要因の一つとなっています。  また、需要が上向いたとしても、人手不足で事業の拡大ができないという問題があり、そうした部分も踏まえて商工会議所が本腰を入れて支援していく必要があり、寄り添った支援をしなければ廃業・倒産のリスクが増えていくと見ています」  ──円安や原料高、燃料高に加えて人手不足や後継者問題について、会員事業所からはどのような声が上がっていますか。  「業種を問わず、すべての業者から今後に対する不安の声が聞こえています。特に原価が上昇した分を価格に転嫁できない企業は利益が出せないので人件費の支払いにも苦労しています。飲食業では大口の宴会予約や団体の宿泊予約があったとしても、それに対応できず事業規模を縮小せざるを得ない状況もあります。  人手不足が顕著な業種は運輸業で、バスの路線減少や観光バスの運行状況への影響、物流の停滞によるエンドユーザーへのしわ寄せなどが大きな問題です。  会員事業所のほとんどが中小・小規模企業で、事業承継もままならない中、廃業を決断する事業所も出てきており、我々としても間に入りマッチングなども含めて支援しなければならないと考えています。  国の補助金制度や専門家派遣制度など、さまざまな支援がありますが、事業者によって経営課題は異なります。一律の補助制度ではなく、事業者ごとに応じたきめ細やかな支援策を商工会議所が窓口となって国に要望していく所存です」  ──JRいわき駅前の並木通り再開発事業の工期延長の発表がありましたが、いわき駅周辺の開発事業の進捗について。  「資材高騰による工期延長は仕方ない部分がありますが、大きな目で見れば順調に進んでいるものと見ています。並木通り再開発事業や駅周辺の開発事業、イトーヨーカドーの跡地の整備事業は、民間主導で立ち上げた中心市街地活性化協議会で定めた中心市街地活性化基本計画に基づき進められており、行政と一体となって取り組んでいます。強固な官民連携は他市に負けない部分だと思います。事業の進捗を注視し、市民の理解をいただきながら事業が進んでいくよう、当会議所としても、連携協力を図りながら中心市街地の魅力を大いにPRしていきたいと思っています。  再開発の一環として整備されるマンションの成約率は90%を超えているようです。マンションの需要も高まっていますし、平地区の居住人口がさらに増え、街中のにぎわい創出につながると考えています。  もっとも、そこに住む人が生きがいを持って楽しく生活していくためには周りの商店街が頑張らなければいけませんし、整備される商業施設がまちの拠点として機能していけるよう、当会議所としても連携を密に取り組んでいかなければなりません。我々としてもさまざまな施設を盛り上げていきたい所存です。  中心市街地活性化の影響を市内各地区に波及させ、活性化に生かしていきたいと考えています」  ──福島第一原発敷地内に溜まるALPS処理水の海洋放出が行われました。影響はいかがでしょうか。  「当初は海洋放出による風評被害の影響を懸念していました。ただ、一部の国で輸入を禁止するという動きはあったものの、俯瞰的に見れば国内では処理水の安全性が理解され、『常磐もの』を応援しようという動きが広まりました。その大きなバックボーンとなったのが全国515の商工会議所の連携であり、販路開拓にご協力いただきました。今後も全国各地の商工会議所との連携は続いていくと思いますし、当会議所としても積極的に音頭を取り、マーケットの拡大に努めていく考えです。  ある意味、『常磐もの』を世界中に発信できる機会であり、マイナスイメージの払拭にもつながります。ピンチをチャンスに生かし、常磐ものを世界に冠たるブランドに発展させ、いずれは輸出規制の緩和や輸出量の増大につなげていきたいと考えています」  ──その他重点事業について。  「活動の3つの柱の1つは中小企業の振興活動です。企業の経営・存続に寄り添い、国や県とのパイプ役となって支援していくほか、市内企業の新たな販路開拓の牽引者としての役割を果たしていきます。  2つ目が産業振興です。市内のポテンシャルを秘めた企業を支援すべく、産業人財育成を進め、地場産業を守りつつ、新産業の萌芽に努めていく必要があります。  3つ目が政策提言・組織の強化です。さまざまな課題について、現場目線で国や日本商工会議所に訴え、市内企業の地盤の強化につなげて、〝変化への挑戦〟に対応できるいわき経済界を作り上げていきます」  ──今後の抱負を。  「会頭就任以来言い続けてきたのが、〝世界に誇れる復興モデル都市いわき〟の実現です。  5期目のキーワードには〝変化への挑戦〟を掲げています。世界情勢が猛スピードで変化する激動の時代に対応し、挑戦することが非常に重要な課題であると考え、今期のテーマを〝挑戦、シン化。そして未来へ〟に定めました。  会員事業所による新たな事業への挑戦、コスト削減への取り組みを積極的に応援し、共に未来へ向かって歩みを進めていきます。こうした歩みを通し、先ほどお話しした〝世界に誇れる復興モデル都市いわき〟の実現に邁進していきます」 いわき商工会議所ホームページ

  • 【いわき商工会議所】小野栄重会頭インタビュー

     おの・えいじゅう 1954年10月生まれ。慶應義塾大商学部卒。オノエー㈱社長。いわき商工会議所副会頭を経て2011年5月から現職。現在5期目。  いわき商工会議所会頭にオノエー(株)社長の小野栄重氏が再任され新体制がスタートした。コロナ禍や物価高など様々な課題が経済を覆うが「挑戦」と進化・伸化などあらゆる意味を持たせた「シン化」をテーマに解決に取り組む。JRいわき駅前の再開発や、いわきFCのJ2昇格はその起爆剤となりうるか。小野会頭に今後の見通しを聞いた。  ――5期目の抱負を教えてください。  「現在、いわき地域は、自然災害、原発事故、コロナ禍からの復興に加え、エネルギー・仕入価格の高騰、世界的なインフレの進行、AIやデジタル技術の進展、カーボンニュートラルへの対応、若者流出や長寿社会の到来などさまざまな課題に直面しています。こうした課題を乗り越え、次のステージへ進むためには、事業所も、事業所を支える人財も地域も、大きく変化する環境に果敢に『挑戦』し、新化して行くことが重要です。商工会議所のミッションは、ネットワーク力を生かしながら、こうした挑戦を支援し、地域全体の持続力、革新力、成長力を底上げすることにあると考えます。  今期3年間のテーマを『挑戦、シン化(進化、伸化、深化、新化)。そして未来へ』としました。『世界に誇れる復興モデル都市の実現』に向けて取り組んでまいります」  ――新型コロナの影響について会員事業者からどのような声が寄せられていますか。  「国・県の需要喚起策により、幅広い業種で売り上げは回復傾向にあります。しかし、観光業や飲食業においては、コロナ前の水準にまでは需要が回復しない中、コロナ融資の返済を危ぶむ事業主が多いです。観光旅館は『全国旅行支援のスタートにより、団体客・個人客ともに増えてきているが、コロナ前の7割程度の回復に留まっている』、また飲食店からは『ゼロゼロ融資の返済が始まったが、返済財源の確保が難しい』といった声が上がっています」  ――円安や物価高、燃料高騰の影響を教えてください。  「コスト上昇が収益を圧迫し、資金繰りが悪化している会員事業所からの相談が日を追うごとに増えています。『30%コストアップしたが、取引先との交渉が上手くいかず、価格転嫁は10%しかできない(部品製造業)』、『仕事は好調だが、資材の高騰に苦しんでいる。儲からない(工務店)」、『客離れが怖く、値上げしないで頑張ってきたが、もう限界。値上げに踏み切った(飲食店)』、『SNS広告への移行がどんどん進み、経費削減で紙媒体の広告宣伝費を抑えている。売り上げ減の中での経費増は厳しい(印刷所)』といった声が上がっています。『インボイス導入の影響が痛い(ビジネス旅館)』、『社員を増やしたいが、思うような人材が集まらないので、仕事を受注できない(テレワーク)』といった課題も挙がっています」  ――国、県に要望したいことは何ですか。併せて3選した内堀雅雄知事に何を求めますか。  「20年前に世界2位を誇った国民一人当たりのGDP(国内総生産)は、今や27位にまで後退しています。2020年度に名目GDP600兆円を目標としていましたが、実際は536兆円に留まり、公的債務も1255兆円に膨らんでいます。  政府には原因をしっかりと分析し、日本の国力を取り戻せるよう、10年後、20年後のビジョンを明確に示してほしいですし、達成のために必要な戦略を練り上げてほしいです。日本はいまだにコロナの国産ワクチンが開発できていません。奨学金を返済できない若者がいるし、1日に3食を満足に取れない子どもたちがいます。子や孫の世代にツケを回さないように、いまの国民が痛みを分かち合うことになっても先を見据えた政策をすぐに実行すべきではないでしょうか。  一方で大倒産時代とならないよう、借り換え、追加融資、返済繰り延べ、条件変更などコロナ融資返済への柔軟な措置を取ってほしいです。また、浪江町に立地が決まった『福島国際研究教育機構』が、福島県の復興を後押しし、日本の産業競争力強化につながるよう、十分に機能を発揮できる体制づくりと予算付けをお願いしたいです。  なお、為替動向に一喜一憂しても仕方がありません。インバウンド観光はもちろん、国内に生産拠点を呼び戻す、地域を挙げて輸入に力を入れるなど、円安を逆手に取った戦略も考える必要があります。  偶然にも、知事がスローガンに掲げた『進化、新化、深化』と、商工会議所のテーマ『挑戦、シン化(進化、伸化、深化、新化)』が重なりました。思いは同じであり、ともにシン化を図って行きたいです」  ――JRいわき駅周辺の中心市街地活性化計画の進捗はどうですか。  「いわき市中心市街地活性化基本計画は、2017年4月に国の認定を受け、2022年の3月末をもって5年の計画期間が終了しました。しかし、並木通りの再開発事業や旧イトーヨーカドー平店跡地における都市計画変更などを勘案し、スムーズな開発が進められるよう、基本計画を1年延長しました。  主な整備内容としては、①平城本丸跡地の公園整備(歴史遺構の出土により計画は変更中)、②並木通り再開発(ミッドタワーいわき)、③旧イトーヨーカドー平店の開発があります。また基本計画に記載がないものとしては、④2023年1月に開業するJRいわき駅ビル(S-PAL)やホテル開発(ホテルB4Tいわき)、⑤2025年度を目標に進められている、駅北口の松村総合病院の移転があります。  市と商工会議所、まちづくり会社や商店会連合会などが一体となって事業を推進、支援しているところであり、まちの再生に大きな効果を発揮するものと期待しています」  ――サッカーのいわきFCがJ2に昇格しました。地元経済界として何に期待していますか。  「松本山雅との試合では約800人のサポーターがいわき市に来ました。湯本温泉や平のビジネスホテルが繁盛し、夜は飲食店に繰り出し街が活気づきました。白水阿弥陀堂や小名浜を観光した方も多いでしょう。J2昇格で1試合あたり、今までの2倍の観客動員数を見込んでいます。特に、山形、仙台、秋田、千葉、東京、大宮など、割と近くに対戦チームが多いです。試合の直接的な経済効果を求めつつ、いわきを好きになってくれるファン、リピーターを増やしていきたいです。  また、サッカーのインターハイがJヴィレッジで固定開催されます。いわきをサッカーの聖地にして全国から合宿を呼び込んだり、いわきFCのトレーニングのノウハウを一般にも活用し、メタボリック症候群の解消など市民の健康増進にも役立てていければと考えています」 いわき商工会議所ホームページ 政経東北【2022年12月号】