Category

いわき市

  • いわき市職員と会社役員が交通事故トラブル

    いわき市職員と会社役員が交通事故トラブル

     交通事故では、過失割合や示談金をめぐって加害者と被害者の間で意見が食い違うことがある。昨年12月7日、いわき市常磐関船町の丁字路信号で起きた交通事故もそうした事例の一つだ。  右折レーンで2台の車が信号待ちしていたところ、後ろの車を運転していた市内の会社役員Aさんが不注意でブレーキから足を離し、クリープ現象で前の車に接触してしまった。  双方ともほとんど損傷はなかったが、警察による現場検証の結果、前の車の後部バンパーにナンバープレートの跡が確認できたため、追突事故と扱われた。警察の調書には「時速約5㌔で追突」と記された。  だが、追突された車のドライバーBさんはAさんにすごい剣幕で迫ったという。この間Aさんから相談を受けてきた知人はこう明かす。  「『俺は海外旅行に行くことになっていたのにどうするんだ!』、『明日はタイヤ交換も予約したんだぞ!』、『こんなところでぶつけるって何考えてんだおめー!』とまくしたてられ、Aさんは恐怖を抱いたそうです」  Aさんが運転していたのは社有車。当初「保険会社に対応を任せる」と話していたBさんだったが、8万円でバンパーを修理後、整形外科に行って全治2週間の診断(症状は頸椎捻挫=むち打ち損傷と思われる)を受け、警察に提出した。そのため事故は人身事故扱いとなり、Aさんには違反点数5点が加算された。  そればかりかBさんはAさんが勤める会社の保険会社に対し、海外旅行のキャンセル料、旅先での宴会キャンセル料の支払いを求めたという。判例では結婚式直前の事故による新婚旅行キャンセル料などが損害として認められているが、Bさんの場合、損害とは認められなかったようだ。  交通事故対応に振り回されたAさんは精神的苦痛で吐き気や頭痛を催すようになり、しばらく塞ぎがちになった。一時期はメンタルクリニックに通うほどだったが、一連の手続きの中でBさんがいわき市職員であることを知って、その対応に疑問を抱くようになったという。  「交通事故の被害者になったからと言って、市民である加害者を罵倒し、過剰とも言える損害賠償を求めるのか。地方公務員法第33条に定められている『信用失墜行為』に当たるのではないか」(同)  Aさんらは、いわき市役所職員課に連絡し、Bさんが市職員であることを確認した。だが、情報提供に対する礼と「職員課人事係で共有を図る」という報告があっただけで、その後のアクションはないという。  当事者であるBさんは事故をどう受け止めているのか。自宅を訪ねたところ、次のように話した。  「後ろからドーン!と突っ込まれて『むち打ち』になり、いまも通院していますよ。海外旅行は韓国の友人を訪ねる予定が控えていました。結局キャンセル料を支払ってもらえないというので、旅行には行きましたよ。……あの、これ以上は話す義務もないので取材はお断りします」  時速5㌔での追突を「ドーン!と突っ込まれた」と表現しているほか、けがした状態で韓国旅行に行っても問題はなかったのかなど気になる点はいくつもあったが、曖昧な返答のまま取材を断られてしまった。  いわき市職員課人事係では「事故の件は把握しているが、公務外での事故なので当事者間での話し合いに任せている。言葉遣いが乱暴になった面はあったかもしれないが、事故直後ということもあり、信用失墜行為には当たらないと考えている」とコメントした。  Aさんらは事故を起こしたことを反省しつつも、モヤモヤが続いている様子。こうしたトラブルを避けるためにも、運転には気を付けなければならないということだ。

  • 「広報誌の私物化」を批判された内田いわき市長

     10月20日付の読売新聞県版に「台風被害の広報臨時号のはずが…『まるで選挙ビラ』、市長の視察写真8枚に『写真集』の声も」という記事が掲載された。福島民友も翌21日付で同じ趣旨の記事を載せた。  9月8日夜から9日早朝にかけて、台風13号による記録的豪雨に見舞われたいわき市。10月1日には、被害状況の写真や支援制度の案内を掲載した「広報いわき臨時号」が発行され、通常の広報紙とともに各世帯に配られた。  全4頁の広報紙に掲載された19枚の写真のうち、市長・内田広之氏の視察写真は8枚も使用されており、まるで写真集のような作りになっていた。そのことに対し、市民や市議から疑問の声が上がっていることを報じたもの。  両紙の記事では「被災特集なのに市長の写真ばかりなのは違和感がある」という市民の声、「選挙広報のようだ」、「広報の私物化だ」という市議の意見が紹介されていた。  災害時に首長がどう対応したかは、選挙の際の大きな評価ポイントになる。震災・原発事故後の2013年には、郡山市、いわき市、福島市、二本松市などの市長選で、現職首長が軒並み落選し、〝現職落選ドミノ〟現象と呼ばれた。  2011年には、当時いわき市長だった渡辺敬夫氏について「公務を投げ出して空港から逃げようとしていた」などのデマが流れた。災害対応に追われて姿が見えなかったためだと思われるが、選挙戦でそのマイナスイメージを利用して、「私は逃げない」と訴えた清水敏男氏が当選を果たした。  しかし、その清水氏に関しても、2019年10月の台風19号の際には対応の遅さが目立ち、被災者をはじめとした市民の信頼を失った。本誌が被災地域を取材した際には、避難の事前周知や断水対策の不備を指摘する声が多く、「市は一番苦しい時期に何もしてくれなかった」と断言する被災者もいたほどだ。その後、新型コロナウイルスへの対応の遅さも批判され、2021年の市長選で内田氏に敗れた。  こうした経緯もあってか、内田氏は豪雨発生後、連日被災地域を視察し、報道やSNSを通してボランティアの参加を呼びかけるなど、積極的に動いていた。過去の「失敗」を教訓としてうまく動いていたように見えたが、目立ちすぎて、一部では逆効果となっていたようだ。  いわき市広報広聴課に問い合わせたところ、「令和元年東日本台風のとき、『市長(清水敏男氏)の姿が見えない』という意見を多くいただいたので、それを教訓に、今回は市長の被災地視察の姿を多く掲載しました。直接市役所に寄せられた批判の声はありません。問題はなかったと考えています」とコメントした。  内田氏については、イベントなどに積極的に参加し、PR活動に努めていることに対し「軽い面が目立ってきた」という苦言が出ているほか、「今回の件は周囲にいる市議や幹部職員が一言助言すれば回避できた。ブレーン不在ではないか」との指摘も聞かれる。そういう意味では、市長就任から2年経過した内田氏の課題が露呈した一件だったとも言える。

  • 【いわき市】豪雨災害の爪痕

    【いわき市】豪雨災害の爪痕

     9月8日夜から9日早朝にかけて、浜通りは台風13号による記録的豪雨に見舞われた。  被害が集中したいわき市では死者1人、負傷者(軽傷)5人の人的被害が発生した。住宅被害は全壊1棟、一部損壊3棟、床上浸水1261棟、床下浸水481棟に及ぶ(いずれも9月20日現在)。  9月10日、特に被害が激しかった内郷地区を訪れると、住民が住宅内の泥のかき出し、浸水した家具・家電・畳の運び出しに追われていた。  令和元年東日本台風で多大な被害を出した同市では、検証委員会を設置して防災対策の在り方を話し合っていた。災害ごみ置き場が早急に設置されたり、内田広之市長がSNSで積極的に発信していたのはその成果と言えよう。事前に高台に車を移動していた住民も多かった。  一方で、被災住民からは災害ごみ置き場の管理体制や支援物資などについて不満の声も聞かれた。同19日にも大雨による被害が発生するなど、あらためて水害リスクの高さが顕在化した同市。さらなる防災・減災対策が求められる。 流された車が積み重なる場所も(内郷白水町) 川沿いの住宅は軒並み浸水しており、庭に積もった泥をスコップですくう姿も見られた(常磐湯本町) 国宝建造物・白水阿弥陀堂(常磐湯本町)。近くを流れる新川が氾濫して境内に水が流れ込み、全体が浸水した。仏像に被害はなかった 内郷二中に設けられた災害ごみ置き場(内郷宮町)。住民からは「対象地区外からも運び込まれている。これではすぐ満杯になる」と憤る声も聞かれた 橋に絡まる大量の草(内郷内町) 水没車両を搬送する業者(内郷内町)。事前に高台に車を移した人も多かったようだ 被災した親族・知人、ボランティアなどが協力して復旧作業を行っていた(内郷内町)

  • テレビで異彩を放つ【いわき出身】のお笑い人材

    テレビで異彩を放つ【いわき出身】のお笑い人材

     近年、いわき市出身のお笑い芸人・関係者をテレビ番組で見かける機会が増えた。その活躍ぶりについて、お笑い・芸能関連の著作を多数出版しており、いわき市に暮らしていたこともある戸部田誠氏(ペンネーム=てれびのスキマ)に執筆してもらった。(文中敬称略) ライター 戸部田誠(てれびのスキマ) とべた・まこと 1978年生まれ。テレビっ子。「読売新聞」「福島民友」「日刊ゲンダイ」『週刊文春』『月刊テレビジョン』などで連載。主な著書に『タモリ学』『1989年のテレビっ子』『全部やれ。』『芸能界誕生』『史上最大の木曜日』など。  テレビにおける福島県のイメージは、ほとんどが会津や郡山など内陸部のものだった。福島に10年近く住んでいたというと大抵「冬は雪で大変でしょう?」と聞かれる。  それに対し、「いや、僕が住んでいたのはいわき市の海沿いで、そっちでは雪がほとんど降らないんですよ。なんなら東京よりも降らないくらい」と答えて驚かれるまでが1セットだ。  実際、福島の“訛り”も武器にしている有名人で思いつくのは、西田敏行や加藤茶、佐藤B作といった、いずれも内陸出身の人たちだ。 『水曜日のダウンタウン』に愛される【あかつ】 水曜日のダウンタウン』に愛されるあかつ(赤津部屋提供)  そんな中でここ数年、いわき訛り丸出しでテレビでよく見かける芸人がいる。いわきの市議会議員を父に持つ相撲芸人・あかつ(42)だ。  相撲とエクササイズを融合した「すもササイズ」のネタでプチブレイクしたが、多くのキャラ芸人同様、その人気が長く続くことはなかった。しかし、彼は土俵際で執念を見せ、今では『水曜日のダウンタウン』(TBS)に寵愛された芸人のひとりにまでなっている。  「国道1号線に落ちてる服を拾いながら歩いたら、名古屋くらいで全身揃う説」(2015年9月16日)を皮切りに、「大人が本気出せば影だけ踏んで帰れる説」(17年7月19日)、「大人が本気出せば本州最北端から雪だけ踏んで東京まで帰れる説」(18年4月18日)、「国道1号線に落ちてるポイ捨てタバコのフィルターを拾いながら歩いたら名古屋くらいでそばがら的なマクラ完成する説」(18年7月25日)、「花見のごみを集めて桜前線と共に北上すればそのごみで作った舟で津軽海峡渡れる説」(20年6月24日)、「この夏、セミの抜け殻を集めながら国道1号線沿いを歩いたら名古屋くらいで“セミダブルベッド”完成する説」(20年10月7日)、「花見のごみを集めて桜前線と共に北上すれば日本本土最北端へ着く頃にはそのリサイクル額で新たな桜植樹できる説」(特別編、23年5月20日)などと、長距離を歩く過酷な検証ロケが定番になっている。  この番組のいわゆる総集編は、ただVTRをつなげたものでなく、ひとつ何らかの企画が乗っかったものばかりだが、19年3月20日の総集編企画は「しあわせあかつ計画」。それを聞いて「好きやなぁ、あかつが」と浜田雅功が吹き出してしまうほど、愛されているのがわかる。松本人志も「なんかあかつに弱み握られてる?」と笑っていた。  あかつにとって『水曜日のダウンタウン』での挑戦は「失敗」の歴史だ。多くの説で立証することができず途中断念という結果に終わっている。  今年7月26日の「相撲 負ける方の決まり手なら自在にコントロール出来る説」でも、「決まり手ビンゴ」に挑戦し、なんとか達成したものの、「疑惑な部分もあったけどね」と浜田から“物言い”がついた。  にもかかわらず重用されるのは、挑戦中、口汚く悪態をつきながらも、いわき訛りがどこか愛らしさを醸し出しているからかもしれない。 いち早く“売れた”【ゴー☆ジャス】 ゴー☆ジャス(サンミュージックプロダクション提供)  いわき市出身の芸人で近年いち早く“売れた”のは、「君のハートに、レボ☆リューション」を決めゼリフに、地球儀片手にダジャレネタを繰り出すゴー☆ジャス(44)だ。  磐城高等学校出身の彼は、代々木アニメーション学院声優タレントコースを経てお笑い芸人の道へと進んだ。そして09年頃、『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ)などの出演がきっかけとなりブレイク。さらに様々なゲームアプリを紹介するYouTubeチャンネルをいち早く立ち上げ、多くの登録者を獲得していった。 【アルコ&ピース平子祐希】ラジオで熱烈支持を獲得 アルコ&ピース平子祐希(太田プロダクション提供)  それに続いたのは、アルコ&ピース平子祐希(44)。ちなみに平子とゴー☆ジャスは実は下積み時代から、先輩芸人モダンタイムスを慕い、その“一門”として苦楽を共にした仲だ。  平子は勿来工業高等学校出身で日本映画学校に進学し、芸人の道に入った。「セクシーチョコレート」というコンビで活動した後、酒井健太とアルコ&ピースを結成。『THE MANZAI』(フジテレビ)の認定漫才師となり12年には決勝に進出し3位に輝いた。  翌年、『アルコ&ピースのオールナイトニッポン0』(ニッポン放送)のレギュラー放送が開始され、リスナーを巻き込みながら展開していく即興性の高い放送で熱烈な支持を獲得していく。さらには、『爆笑キャラパレード』(フジテレビ)などで扮した意識高い系IT社長・瀬良明正のキャラや愛妻家キャラなどで世間的な知名度も上げていった。いまでは、バラエティ番組の第一線で活躍している。 番組制作・出演の両面で活躍する【佐久間宣行】 番組制作・出演の両面で活躍する佐久間宣行(佐久間宣行事務所提供)  テレビの中で異彩を放ついわき市のお笑い人材たち。そんな3人を「いわき市お笑い三銃士」と冗談めかして呼び、ガハハハッと豪快に笑うのがテレビプロデューサーの佐久間宣行(47、ゴー☆ジャスと同じ磐城高校出身)だ。  いまもっとも勢いのあるいわき市出身の人物のひとりだろう。平子に言わせれば、3人に佐久間を加え「お笑い四天王(笑)」ということになる。  元々は、福島にはネット局がないテレビ東京の社員だったため、福島県民にとっては馴染みが薄いかも知れない。前述の平子とともに21年から始まった福島ローカルの番組『サクマ&ピース』(福島中央テレビ)に出演しているから、それで知った方もいるだろう。  佐久間はテレビ東京で現在も続く『ゴッドタン』や『あちこちオードリー』をはじめとする数多くの人気お笑い番組を制作。それと並行してテレビ東京社員でありながら、ニッポン放送で『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』のパーソナリティを務めるようになった。  そして21年3月31日付で同社を円満退社すると、これまでのテレ東レギュラー番組もそのまま継続しつつ、他局にも活躍の場を広げ、Netflixでも『トークサバイバー!』や『LIGHTHOUSE』といった番組も立ち上げた。  加えて、自身のYouTubeチャンネル「佐久間宣行のNOBROCK TV」も登録者数が100万人を超えている。さらに前述の通り『サクマ&ピース』など演者としても活躍。NHKのゴールデンタイムでの大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の特番や、フジテレビの港浩一社長肝いりで始まった『オールナイトフジコ』のMCも務めている。  佐久間が知名度を飛躍的に上げるきっかけとなった『オールナイトニッポン』パーソナリティ抜擢には、実は同郷の平子が大きな役割を果たしている。  元々はラジオ局に入ることを目指していたほどラジオ好きな佐久間は、Twitterなどで『アルコ&ピースのオールナイトニッポン』リスナーでもあることを公言していた。そこに目をつけたハガキ職人たちが番組で佐久間イジりを開始。  それが最高潮に達した14年10月17日、ついに佐久間は、それまで仕事上ではほとんど接点がなかったにもかかわらず、“乱入”という形でゲスト出演を果たす。  これが好評だったことを受けて15年8月29日、『佐久間宣行のオールナイトニッポンR』という単発特番の形で、ラジオパーソナリティになりたいという夢を叶えたのだ。  エンディングでは「ホントに人生ってわからないですよね。だって、普通に福島県いわき市の田舎の学生が、夢だなあと思って聴いていたラジオ。ニッポン放送を落ちたわけですよ、就職活動で。なのにバラエティのディレクターやって15年後、オールナイトニッポン2部のパーソナリティをやっているんだから」と語った。  しかし、夢はそこで終わらない。  リスナーの強い支持と秋元康らの後押しで番組は 19年4月3日から『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』としてレギュラー化したのだ。 「近くて遠い」憧れの東京 https://www.youtube.com/watch?v=RP7yT7INjAc&t=1089s 「佐久間宣行のNOBROCK TV」【下ネタ我慢】どぶろっくが本気ネタ8連発!下ネタで笑いたくない二瓶有加 & 松本優は我慢できるのか…?  佐久間自身のエンディングの言葉にあるように、中学生の頃からラジオを聴き始めた。そこにはいわき市という土地が大きく関与することになる。海沿いの街のため、東京のキー局の電波をギリギリ受信することができたのだ。  最初に聴いたのは、ニッポン放送の『三宅裕司のヤングパラダイス』だった。その流れで『オールナイトニッポン』も聴き始め、とんねるず、伊集院光、川村かおり(当時)、そして電気グルーヴの放送に夢中になった。自然とそこで流れるナゴム系の音楽も聴くようになり、サブカルにどっぷりと浸かった。  それはテレビからもそうだった。やはり海沿いのいわき市の一部は、関東圏のテレビを観ることができる地域がある。佐久間の家もそうだった。当時はフジテレビの深夜番組全盛期。『冗談画報』や『夢で逢えたら』を始めとする番組を観て新しいカルチャーを吸収していく。しかし、テレビやラジオは見聞きできても、学生にとって東京は遠い。  「当時はネットなんてないし、いわき市に届くものはほとんど何もない。必死にちょっとずつかき集める感じだったので東京のおじいちゃんに伝えて送ってもらったり、お金をためて東京へ行ってまとめ買いをしたり、単館の映画を観に行ったり。中高生の頃はいつも思ってましたよ。ああ、東京に住んでいればなあって。東京にいれば第三舞台(鴻上尚史主宰の劇団) も、東京サンシャインボーイズ(三谷幸喜主宰の劇団)も観られるのにって。第三舞台はギリギリ観ることができたけど、サンシャインボーイズは1回も観られないまま休止してしまったんです」(『GINZA』 21年6月号)  学校にもそういったカルチャーの話ができる友達はほとんどいなかった。何しろ学校内でも関東圏の放送を見ることができる家と見られない家が混在するのがいわき市の複雑なところ。共通言語がどメジャーなものしかなかった。  「僕らの学生時代は、三谷幸喜さんがテレビドラマを書き始めたくらいの時期だったんだけど、そういう話をすると『調子乗ってんじゃねえよ』ってなってた(笑)。ダウンタウンの話はできるけど、電気グルーヴや伊集院(光)さんの話はできない」(「CINRA」21年6月23日)  しかも、当時の小名浜はヤンキー文化が色濃かった。アニメ好きでもあった佐久間は『アニメージュ』をエロ本のようにコソコソ隠れて読んでいた。「二重人格」に近かったという。情報だけは入ってくるが、誰とも共有できない。近くて遠い存在の東京のカルチャーへの憧れがいわき市という少し特殊な街で醸成されていったのだ。 お笑い人材が育つ風土 https://www.youtube.com/watch?v=ITpfvyrWS4Y&t=3s ふたば未来学園で佐久間宣行さん・日向坂46 齊藤京子さんらが特別授業!【福島県】 (2023年8月8日)  「だから自分の作風もそうだと思うけど、東京に長年いても『東京者じゃないな』っていう感覚がずーっとあったから、純粋に都会のポップカルチャーに憧れてる目線はいまだになくならない。だから斜に構えた感じでポップカルチャーを見ることがあんまりないですよね。テレビ業界のど真ん中でテレビに染まってるって思えたことが一度もなくて」(同)  この感覚こそが、独特な立ち位置を可能にし、逆に大きな支持を集める理由に違いない。つまりは佐久間こそ「いわき市」という土地が生んだスターなのだ。  その佐久間は福島県のふたば未来学園で開催された「サマースクール」に講師として呼ばれ、中高生たちを相手にワークショップを行っている。19年に一度行き、23年に再び訪れた。  今回は「100人規模のホールで、『人気者になる方法』というテーマで、日向坂46の齊藤京子さんとやってもらいたい」というオファーだったという。  前回のように40~50人規模なら一人ひとりに振ることもできるが100人規模だと難しい。思案した佐久間は、事前にアンケートを実施し、そこから1人ずつ呼んでラジオ形式で発表していくという方法を思いつく。  100人を前にしてトークショーをやると「1対100」になるが、ラジオ形式ならたとえみんなの前で喋っても「1対1」のように感じることができる。それなら生徒たちの心の負担は軽いだろうと考えたからだ。果たして、この目論見は当たり大成功に終わった。  なぜ、佐久間がこの形式を考えだしたかというと、佐久間は福島の中高生の特性がよくわかっていたからだ。それはシャイさ。それも「人数が増えれば増えるほど周りの目を気にしてシャイになる」というものだ。逆に「人数が少ない方が元気になる」(『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』23年8月9日)。ラジオ形式はまさにその特性を活かしたものだった。  翻ってみると、あかつ、ゴー☆ジャス、平子もまた、バラエティの主流であるひな壇のような場では力を発揮できにくく、逆に少人数の場では爆発的に魅力が溢れ出すタイプだ。いわき市の風土が、テレビなどで異彩を放つ独特なお笑い人材を生んだのだ。

  • 【いわき市】選挙漫遊(県議選)

    【いわき市】選挙漫遊(県議選)

       「勝手に連動企画『政経東北』でも選挙漫遊をやってみた」。  11月2日告示、12日投開票の福島県議選。福島市、郡山市、いわき市、会津若松市各選挙区の立候補者39人を本誌スタッフ総出で取材し、選挙漫遊(街頭演説などに足を運んで選挙を積極的に楽しむ)を実践しようというもの。  11月5日(日)、6日(月)の2日間、街頭演説会場に足を運び、その様子を写真と動画で記録。併せてインタビュー取材も実施した。現職には「県政・県土の課題は?」、新人には「立候補した理由は?」などについて質問した。立候補者はどのような選挙活動を展開し、どんな事を話したのか。 担当:志賀 補佐:荻野 福島県議選【いわき市】編 https://youtu.be/H3LrOAB1K0E?t=3730 【福島県議選】投票前日!【選挙漫遊】総括 投票の判断材料に!福島・郡山・いわき・会津若松いわき市の解説は1:02:10~ 定数10 立候補者13 告示日:2023年11月2日 投票日:2023年11月12日 立候補届出状況↓ https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/601557.pdf 選挙公報↓ https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/601653.pdf 届け出順、敬称略。 あわせて読みたい 【福島市】選挙漫遊(県議選) 【会津若松市】選挙漫遊(県議選) 【郡山市】選挙漫遊(県議選) 安田成一 https://www.youtube.com/watch?v=47YD6DvqYVs  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「いわき市に関しては、水害被害が起きたことを考えると、防災対策、災害に強いまちづくりをしっかり進めることが最大の課題と考えています。令和元年東日本台風のときは市議だったが、河川改修を早く進めてもらいたいという要望を受けても、市としてなかなか対応できない面があった。その時のもどかしい思いから県議会への立候補を決意した。  3年経って二級河川の改修工事が進められたが、支流の方が進んでいない。先月には線状降水帯の影響による水害も発生した。いわき市とタッグを組んで予算をつけ、できる限り早く改修工事を進めることで安心して暮らせるまちづくりを実現したいと思っています。  エフレイとの連携も必要だと思っています。福島高専、東日本国際大学と人材育成の面で協定も結んでいるので、新産業をいわき市、福島県に根付かせて、そこで雇用創出につながれば人口減少の予測も変わってくるのではないかと考えています。優秀な人材がいわき市、福島県に留まってもらう取り組み、戻ってきてもらう取り組みを強力に進めて貰えればと考えています」 一言メモ  ロードバイクで駆け付けた支持者がちらほら(趣味仲間?)。演説に耳を傾けていたのは40~50代の子育て世代が中心で、女性もほかの陣営より見受けられた。今回回った中で一番支持者の幅が広いと感じた。新人候補だがもともといわき市議だったこともあって、知名度も高いのだろうか。(荻野) 鳥居作弥 https://www.youtube.com/watch?v=B4cQKb5wLJk  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「僕は今回の選挙では、単純に子育てと教育と福祉というところしか訴えていません。特に子育て支援と高齢者福祉は近いものだと考えていて、2つを組み合わせて対策を講じることが重要だと考えています。例えば特定の地域のみで働ける『地域限定保育士』という制度があるので、それを活用して、高齢者の皆さんが働けるようにしてもいい。その方法を考えるのは政治の役割です」  ――日本維新の会から県議選に立候補した理由について。  「分かりにくい政治にジレンマがあった。例えばALPS処理水についても、反対するのはいいが、その後どうするの?ってなってしまう。そういう意味で、日本維新の会が掲げる政策ははっきりしていて分かりやすい。ALPS処理水について、私は『全国各地で分担して捨てましょう。そうすれば早く放出できて、福島県への負担も最小限で抑えられる』と訴えています。人間関係で選挙をやるのではなく、分かりやすい政策を的確な言葉で伝えられるという点で日本維新の会はいい政党だと感じます」 一言メモ  演説会場のイオンモールいわき小名浜前は、目の前が「ツール・ド・いわき」ゴール地点になっており、イベントの音声がガンガン流れてくるトホホな環境。ただ、車や歩道橋から手を振る人もおり、着実に支持が広まっている様子も感じた。汚染水(ALPS処理水)放出について、「福島から30年以上も海洋放出したら負担が大きくなる。日本全国から放出したら数年で終わるはず」と主張。その是非はともかく、選挙という場で、独自性のある意見を主張していく姿勢は歓迎したい。(志賀) 吉田英策 https://www.youtube.com/watch?v=1scL7EG_A4k  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「福島県の財政力は全国3位だが、復興と称した大型開発や道路整備にばかりお金が使われていると感じています。県民の暮らしを応援するという視点から、教育や子育てなどに予算を割くべきです。特にいわきは医師数が少ないので医療機関の充実に充実させるべきだと思います」  ――今年2月の一般質問で会計年度任用職員の雇い止めについて質問していました。是正はされたでしょうか。  「1年契約ではあるもののボーナスを支給するということだったが、実際は労働時間が短縮されただけだったりして総額が増えているわけではない。一般の職員の待遇に改善することが必要だと思います」 一言メモ  共産党独自のしきたりなのか、本人到着までに支持者が歩道に横並びで〝戦争やめろ!〟などのコールを行っていた場面が印象的。支持者の方々と触れ合う写真を撮ろうとしたが、場所が郵便局の真向かいであまり長居できる場所ではなかったため、演説が終わると即時撤収。ある意味場馴れしているというか、統率が取れている感じを抱いた。(荻野) 真山祐一 https://www.youtube.com/watch?v=qVYED1Pb2Zc  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「課題はたくさんあります。中でも水害対策に関しては、流域治水をしっかり進めていくべきだと訴えています。『防災減災を社会の主流にしていくべきだ』というのは公明党がここ数年来主張していることです」  ――令和5年6月議会の一般質問では、「金属スクラップヤードでの事故を防ぐために許可制にして指導監視を強化しては」と指摘していました。県執行部は質問を受けて何か具体的に動いたでしょうか。  「『不適切な事例があれば県としての指導監視を図っていく』という答弁でしたが、具体的に条例ができたり、変化が起きているというところには至っていません。そういう意味ではまだこれからの課題だと思います」 一言メモ  JRいわき駅前で、山口那津男公明党代表が応援に来る街頭演説会を実施。駅前のペデストリアンデッキ、ラトブ前が多くの公明党支持者で埋めつくされ、お祭り・フェスのような熱気。市外からも応援に来ていた模様。山口代表が繰り返していた「ネットワーク」の強さをあらためて実感した次第。(志賀) 西丸武進 https://www.youtube.com/watch?v=_ssuXAFt_nI  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「1つは震災・原発事故からの復興です。復旧工事は行われていますが〝創生〟には至っていないので、そういう視点で復興を進めるべきです。2つはコロナ対応。まだ安心できない状況なので、いま受け皿対策や公衆衛生の管理の充実を徹底していく必要があります。3つは〝汚染水〟海洋投棄の問題です。投棄が完了するまで30年以上かかるとされることを踏まえ、県民の命を守るというスタンスで、問題が風化することない監視体制を構築する必要があります。環境、教育、福祉の充実・強化にもしっかり努めていきます」  ――昨年12月議会の代表質問で、JRの赤字路線への県の対応について質問していました。人口減少で鉄道維持が容易でなくなる中、県がどのように支援していくべきだと考えますか。  「県内の赤字路線では、まず地域住民の組織を作り、問題意識を共有化してから、行政が住民組織の提言を取りまとめ、財源の作り方を考えていく、という流れになっています。そういう意味では、まず地域ごと、駅ごとにまとまって組織を作っていけるかが重要になると思います。その道筋は行政側が責任を持って提供するべきです」 一言メモ  19時開始の個人演説会だけあって、力が入った長尺の演説。前段の後援会長のあいさつも力が入っていた。7期のベテラン議員だが、今回立候補した新人4人のうち2人は元いわき市議、ほか2人もそれぞれ維新公認、れいわ推薦を受けていることもあって、かなり警戒してる様子が見られた(荻野) 宮川絵美子 https://www.youtube.com/watch?v=467NOJKf-lw  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「県執行部には県民の生の声を聞いてほしい。給料はなかなか上がらないし、世論調査では教育費の負担を軽くしてほしいという声も多い。高校入学時のタブレット購入費を生徒が負担しているのは、東北では福島県だけです。高齢者の足の確保など高齢者支援も問題です。県議会ではその都度質問しています」  ――質問をすることで県執行部の対応は変わっていますか。  「問題提起をすると少し変わってくる。学校給食の無料化を訴えていたら、県内市町村が導入するようになった。子どもの医療費の無料化についても主張していたら、12年前の県議選の後に無料化が実現した。選挙は世論を喚起するチャンスであり、ずっと運動を続けてきたことに焦点が当たって、選挙の節目で変わっていくことも多いので、主張を続けることに意義があると考えています」 一言メモ  イオンモールいわき小名浜前の道路沿いで、施設に向かって演説する宮川候補。買い物客は足を止めることなく施設に入っていった。定数10に対し13人が立候補する激戦区だが、有権者の盛り上がりは今ひとつ……という状況を象徴する光景だった。(志賀) 矢吹貢一 動画撮れず。 取材に応じず。 一言メモ  事前に事務所に確認したところ、「事務所の方針で街角演説をする考えはありません。市内で一日選挙カーを走らせて、20時ごろ事務所に戻る予定です」とのこと。やむなく20時前に事務所に訪れ、スタッフとともに戻ってきた選挙カーを出迎えた。降りてきた矢吹候補に「政経東北です。ちょっとお話しお聞かせいただけないですか」と話しかけると、あからさまに苦笑いを浮かべ、無言で手を横に振りながら事務所内に入っていった。  しばらく外で待っていると、スタッフが出てきて「すみません、これから打ち合わせなので……。明日も街頭演説の予定はなく、戻ってきた後も時間が取れません。せっかく来ていただいたのにすみません」と謝られた。街頭演説もせずマスコミ取材にも応じないということは、自分の意見を広く知ってもらえる機会を放棄しているようなもの。矢吹陣営としては、新たな票の開拓は必要なく、既存の支持者を対象とした演説会で余裕で当選できるという判断なのだろう。  翌朝8時過ぎ、宿泊したいわき駅前のホテルで仕事をしていたら、矢吹候補の選挙カーの声が聞こえてきた。急いで窓から外を眺めたが見つけられず、そのまま声は小さくなっていった。(志賀) 安部泰男 https://www.youtube.com/watch?v=lhjMYDQJjt0  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「これまで信念として取り組んできたのは、住民が安全に暮らせる環境を作るということであり、防災・減災に対する思いは強いです」  ――9月議会の一般質問ではパートナーシップ・ファミリーシップ制度の導入について質問していました。県執行部は質問を受けて何か具体的に動きましたか。  「LGBT当事者の方から直接相談を受けて質問したものです。男女共同参画社会を築くために差別のない社会を築く、という県の方針を示したうえで、総括質疑では導入に向けてやっていくと答弁していました。県内市町村で導入の動きが加速しているのに県が何もやらないわけにはいかないと思います」 一言メモ  山口那津男公明党代表が応援に来ることもあって、エブリア北側駐車場の一角に公明党支持者100~200人が集結。SP・警察も多数。そのにぎわいに圧倒される。「いわき市に免許センターがないので、免許証がすぐにもらえない。県内で最も人口が多いのに。改善すべきだ」という主張はこの地域に住んでいなければ分からない視点で、ハッとさせられた。これこそ選挙漫遊の魅力。(志賀) 古市三久 https://www.youtube.com/watch?v=YV0IrOHy6O0  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「人口減少、少子高齢化で地域が衰退していることです。中山間地では草刈りをする人も減っており、自分で買い物に行くのも難しいという人が現実にいる。もし当選できたら総括質疑という形でなく、一般質問で問題提起したい」  ――ALPS処理水の海洋放出反対のスタンスを取っており、県議会でも陸上保管すべきと主張していたが、県は国の海洋放出方針に追随する形になりました。   「内堀雅雄知事が県民を代表して反対の声明を出すべきだったと考えています。これは新聞社などのアンケートにも書いている点です」 一言メモ  処理水海洋放出、原発事故収束作業に正面から疑問を呈するスタンス。海に面するいわき市選挙区でも意外とこういう演説は少ない。平日ということもあってか聴衆は2、3人だった。(志賀) 鈴木智 https://www.youtube.com/watch?v=CCwk0J33tMs  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「いわきにおいては水害対応だと考えています。自民党県連の動きと連動して、発災翌日から内堀雅雄知事に現地視察に入ってもらい、被害状況や地域の皆さんの声を聞いてもらいました」  ――令和5年9月議会の一般質問で、ドライバー不足が小名浜港の貨物に与える影響について質問していました。  「小名浜港に影響が出るのであれば質問しなければならないと考えた次第です。問題が可視化されるのに加え、県執行部も私も理解も深まるので、こうした質問をするのは意義があることだと考えています」 一言メモ  3連休最終日に予定されていた鹿島公民館での個人演説会。前回選挙では8位当選(定数10)だったこともあってか、応援弁士や陣営幹部からは気を引き締めるよう求める発言が続出。坂本竜太郎氏の県議選立候補見合わせで、逆に混乱している印象だった。(志賀) 青木稔 https://www.youtube.com/watch?v=Y0yiCo0MrsU  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「演説でも触れたが、やっぱり一番のポイントは人口減少。安心して働ける企業を誘致できるかが重要になると思う。そういう意味で注目しているのが福島イノベーション・コースト構想であり、エフレイ(福島国際研究教育機構)です。実現すれば必ず有力企業が来るので、いかにいわきの方につなげられるかが重要になります。そのために私も自民党県連としての立場でできる限りのことに取り組む考えです」  ――現在9期目で、演説では当初立候補を見合わせる方針だったという話もありました。  「年齢も年齢なので家族と相談して立候補を見合わせる決意をして、周囲にも伝えていましたが、さまざまな方から要請を受け、再び立候補することを決意しました」 一言メモ  地元・中央台の公民館で個人演説会を開催。参加者は約30人でほとんどが年配の方々。自民党県連いわき支部の重鎮ということもあって、森雅子参院議員のほか、今後の動向が注目される坂本竜太郎県議、市議らが応援演説に駆けつけた。1945(昭和20)年生まれで、いわき市議時代を含め議員生活は40年以上に上る。最後は10選に向けてガンバロー三唱。パワフルさでは誰にも負けていない。(志賀) 木村謙一郎 https://www.youtube.com/watch?v=ZVBagsrdRFQ    ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「河川整備を進めて水害の減災・防災に努めるのも必要だし、一次産業の後継者不足も深刻です。一番大きいのは人口減少ですね。都市部、山間部、それぞれ事情が異なるので、しっかり議論して解決していかなければならないと思います」  ――立候補を決意した理由は。  「11年にわたり市議会議員として活動してきましたが、市議会議員では解決できない問題にたびたび直面してきました。たとえば医療問題などは県にイニシアチブを発揮してもらわなければ改善は難しい。加えて現役世代として声を聞いてほしいという思いや、いわき市の中心部から外れた久之浜地域を代表する立場から県議会で意見を述べていきたいと思いがあり、立候補を決意しました」 一言メモ  昼前の時間帯にしては人の集まりがまばらだった。支持者は子育て世代と高齢者の人が中心の印象。演説でも触れていたように「久之浜地区から県議を!」という気概が非常に強く、地元での遊説の様子も気になるところ。(荻野) 山口洋太 https://www.youtube.com/watch?v=fX1X0UkWfaM  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「演説でお話しした通り、現役医師としていわき市で働くようになって医療体制に課題を感じ、そこを改善すべきだと考えたので立候補を決意しました」  ――れいわ新選組の推薦を受けていますが、無所属で立候補した理由は。 「基本的には特定の政党に属さず、市民から聞いた話を基に政策を打ち出していきたいと考えています。これまで1万8000軒を超えるお宅にお邪魔して話を聞いてきました」 一言メモ  演説予定場所の商業施設前に、ピンク色の選挙カーがさっそうと登場。聴衆は支持者と思われる高齢者が数人。車内から手を振るドライバーも。「この間1万8000軒以上を訪問した」という言葉は伊達じゃないということか。33歳という若さ、現役医師が医師不足解消を訴える点も支持拡大につながっている様子。(志賀)

  • いわき市で再起を図る2人の政治家【鳥居作弥】【清水敏男】

    いわき市で再起を図る2人の政治家【鳥居作弥】【清水敏男】

     元県議の鳥居作弥氏(49)が昨年末で立憲民主党を離党し、日本維新の会からの立候補を模索している。本人に会ってその狙いを聞いた。 失意の衆院選出馬断念から1年半 立憲から維新に移った鳥居作弥氏 鳥居作弥氏  鳥居作弥氏は1974年3月生まれ。磐城高校、獨協大学経済学部卒。吉田泉衆院議員の秘書を務め、2011年、県議選いわき市選挙区に民主党から立候補して落選。15年の県議選で約7500票を獲得し、初当選を果たしたが、19年の県議選で国民民主党から立候補して再び落選した。 その後、立憲民主党入りし、21年には県連副代表に就任。同年10月の衆院選に立候補するための準備を着々と進めていた。ところが、野党共闘で候補者を一本化することになり、共産党の新人候補に譲る形で直前に小選挙区での立候補を断念し、比例代表で立候補したが落選した。 その後、政治的に目立った動きはなかった鳥居氏。今年に入ってからは「立憲民主党を離党し、周囲に『日本維新の会(以下、維新と表記)から県議選に出たい』と相談している」(いわき市で活動するジャーナリスト)とウワサされていた。 維新と言えば、大阪府を中心に支持を集める政党で、4月の統一地方選では神奈川、福岡両県議選でも初めて議席を獲得。その躍進ぶりに注目が集まった。 そうした中で5月11日に報じられたのが、維新が福島県総支部を設立したというニュースだ。 県内には党所属の地方議員がいないため、次期衆院選や県議選での党勢拡大を目指して設立されたもので、今後は積極的に候補者を擁立する方針だ。設立は2月23日付で、3月8日に県選管に届け出た。維新が東北地方で県総支部を立ち上げたのは、宮城、秋田に続き3県目。  衆院議員の井上英孝氏(4期、大阪1区)が総支部長、元参院議員の山口和之氏(同党参院全国比例区支部長、郡山市在住)が幹事長に就いた。同党はいわき市を「重点地区」に位置付けており、同市平地区(みさきホテル&ラウンジ内)に事務所を設置した。 同日の記者会見で井上氏は、当面県議選への準備に重点的に取り組む方針を示し、「福島県に縁がある人を優先したい」とも話した。 こうした動きを見ていると、鳥居氏の「維新入り」は既定路線のように見えるが、実際はどうなのか。鳥居氏に取材を申し込んだところ、面会場所に指定されたのは同党県総支部事務所があるホテルだった。 「この間、私から情報発信することは控えていたのですが、選挙の動向を取り上げるユーチューブなどでも私の名前が出てきたので驚きました」。鳥居氏は笑いながら、これまでの経緯を振り返った。 「衆院選立候補直前に〝公認取り消し〟となり自暴自棄になったし、支援していただいた方と一緒に思い悩んだ1年でした。直後は立憲民主党に対する怒りが強かったが、しばらくすると『あの時、なぜ無所属で立候補するという決断ができなかったのか』という後悔に変わりました。自分を支えてくれた皆さんへの裏切り行為でもあり、その後悔は現在も続いています」(鳥居氏) 接点は山口元参院議員 山口和之氏(HPより)  21年の衆院選では立候補に向け、家族の理解を得て、私費も投じて準備を進めてきた。ところが、告示10日前というタイミングで立候補を断念せざるを得なくなった。  具体的にどういう経緯・理由で立候補断念・公認取り消しに至ったかについて、鳥居氏は語ろうとしなかったが、ある支持者は「要するに直前ではしごを外された。いまも立憲民主党県連から明確な理由は説明されていない」と憤りながら話す。 昨年夏の参院選後、立憲民主党を離党。しばらくはニュートラルな立場でいようと考えていたが、今年になって、ある人物から連絡が入った。それが前出・山口氏だった。 維新との接点はなかったが、何度か会って議論するうちに教育、福祉を重点施策に掲げる自分と、医療、福祉の充実に注力する山口氏とは共通点が多いと感じた。そこから維新に関心を抱くようになり、今回の県総支部設立に全面協力した。 同党県総支部の事務所がいわき市に設置されたのは、「福島県の再生を左右するのは浜通りの再生。拠点を設けるなら福島市の県庁近くではなく、復興の最前線である浜通りに作るべきだ」という鳥居氏の助言を受けたものだという。 維新の政策について尋ねると「教育完全無償化などの政策を打ち出し、大阪府で実績を残しているのが大きい。個々の政策について賛否はあるかもしれませんが、地方行政では不可能だと思い込んでいたことを実現していく姿に、『強い思いと行動力があればできるんだ』と衝撃を受けました」と熱っぽく語った。 実質的に同党入りを果たしているような状況だが、同党から選挙に立候補する予定はあるのか。記者がこう問いかけると、鳥居氏は「この間、同党県総支部の組織作りを最優先に活動してきました。〝受け皿〟がしっかりしていないと立候補者は不安になるものです」としたうえで、次のように述べた。 「ようやく組織がまとまりつつあるので、後援会の皆さんなどさまざまな方に相談したうえで、近いうちに私自身の方針に関しても決断させていただきたいと思います。現実的に考えて、立候補を表明するとしたら県議選だと思います」 5月27日にはいわき市で県総支部設立記念講演会が開かれ、維新の馬場伸幸代表が講演する。原稿執筆段階(同25日)ではどうなるか分からないが、調整がうまく進めば、この場で鳥居氏の「決断」が発表される見通しだ。 ※鳥居作弥氏は5月27日、11月12日投開票の県議選に、日本維新の会公認で立候補することを表明した。  なお鳥居氏に関しては、衆院選への立候補が有力とみる向きもある。広島で開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)が終了し、衆院の早期解散論もささやかれているだけに、本誌が店頭に並ぶころには、鳥居氏が話していたのと全く違う情勢になっているかもしれない。 県総支部設立時の記者会見で、県内の党員数は110人と明かされた。鳥居氏によると、民主党時代からの支持者も一連の行動に理解を示し、そのほとんどが維新に流れているという。本県における支持基盤がほとんどない同党にとって、鳥居氏の存在は頼もしいはずで、そういう面も含めて山口氏も鳥居氏にコンタクトを取ったのだろう。 現在、県議選いわき市選挙区(定数10)では現職10人、新人3人が立候補を表明しており、鳥居氏が〝参戦〟すればさらに激戦になる。いわき政界において、今後もその動向が注目される存在となりそうだ。  いわき市長を2期8年務め、3選を目指す選挙で落選した清水敏男氏(60)。現在〝充電中〟だが、リベンジへの意欲は潰えていないようだ。 落選後も後援会解散せず市政監視 清水敏男氏が見据える「最終目標」 清水敏男氏(2021年4月撮影)  清水敏男氏は1963年8月生まれ。磐城高校、日本大学法学部卒。鴻池祥肇衆院議員の秘書を経て、いわき市議2期、福島県議4期。党派は自民党。 そこから2013年9月のいわき市長選に立候補して初当選。21年9月、3選をかけて立候補したが、4候補者中3位の得票数で落選した。 本誌21年2月号の記事では選挙前の時点での状況を次のようにリポートしていた。 《2期目の公約として掲げた平城復元やスタジアム建設については「平地区ばかり意識した〝打ち上げ花火〟的な政策はいらない」と冷ややかな意見が多く、「台風やコロナへの対応が遅い」、「2期目は目立った事業がなかった」という批判の声も聞こえてくる。ただし、「2期8年で目立った失敗はなかった。他候補は経済・教育など得意分野があるが決め手に欠ける。政治に詳しくない多くの市民は、名前を知る現職に投票するのではないか」(前出・同市の事情通)という見立てもある》 実際には当選した内田広之氏と1万9000票差が付いたので、想像以上に現職批判の声が大きかったということだろう。 20代から30年以上にわたり政治の道を歩み続けてきた清水氏。市内の経済人によると、「知人が経営する東京の会社に籍を置いている」とのことだが、その一方で「年賀状に捲土重来を期す言葉が記されていた。再起の道を虎視眈々と狙っているのではないか」(清水氏の支持者)ともささやかれている。 3月に行われた自民党県連定期大会では県議会OBとして出席し、その場で立ち上がってアピールした。 清水敏男後援会名義のフェイスブックには、地元のお祭りに参加したり、学生時代の先輩の選挙事務所を激励した様子などがアップされており、積極的に出歩いている様子がうかがえる。 実際のところ、清水氏本人はどのように考えているのか。同市常磐関船町の自宅を訪ねたところ、清水氏本人が対応し、そのまま話を聞くことができた。 「東京の知り合いの会社で社外取締役を務めており、月に1度の取締役会には必ず出席しています。いまも東京から戻って来たばかり。市長選落選後、妻は以前やっていた幼稚園教諭の仕事を再開し、昼間は不在にしているので、一人で昼食を取っていたところです」(清水氏) 2年後の市長選を意識?  〝進路〟について注目が集まっていることを伝えると、「私は何も話していないのに『秋の県議選に出るのではないか』とウワサされているのが聞こえてくる」と苦笑したうえで、次のように話した。 「県議は4期務めたので立候補しようとは考えません。来年秋にはいわき市議選が控えていますが、自分の選挙でお世話になった市議を支えることはあっても、自分が出ることは間違ってもない。衆院選に関しては、新4区に吉野正芳先生(74、8期)がおり、交流させていただいているので、そこから立候補しようという考えはありません」 一方で、2年後に市長選があることを振ると、「一市民として内田市政をウオッチングしており、そつなくこなしていると思うが、疑問に感じる部分もある。いずれにしてもまだ先の話だし、私に関しては〝充電中〟ということですよ」と述べた。少なからず意識はしているようだ。 取材の中で、後援会は休眠状態のまま残してあり、現在も岩城光英元参院議員、市議らと交流があることを明かした清水氏。一方で、前回市長選では清水氏の有力支持者が別の候補者の応援に回った経緯があり、仮に市長選立候補を考えるなら体制の建て直しが急務となる。〝充電期間中〟に再起のきっかけを見いだすことができるか。

  • 【いわき駅前】22時に消える賑わい

    【いわき駅前】22時に消える賑わい

     新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが、5月8日から季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げられた。かつての日常に戻りつつある中、店での飲食は動向が大きく変わった。客の重視は「飲む」から「食べる」に変化。職場の宴会は減り、あっても1次会のみ。酒の提供がメインで接待を伴うスナックは2次会以降を当てにしているため、客数減による淘汰が進む。第3弾となる夜の街調査は、いわき市を巡った。 客足戻ってもスナックに波及せず  本誌はこれまで郡山市と福島市にあるスナックの数を、電話帳を基にコロナ前と後で比較してきた。電話や訪問で営業状況を確認し、ママやマスターに聞き取り調査を重ねた。 第3回となる今回は、経済規模が県内2番目のいわき市(表1参照)の夜の街を調べた。新型コロナが5類に引き下げとなって初めての土曜日(5月13日)夜に、本誌記者2人がJRいわき駅前(平地区)の店を訪問し、店主から聞き取った。 表1 県内の経済規模上位5市 市町村内総生産県全体の構成比郡山市1兆3635億円17.10%いわき市1兆3577億円17.00%福島市1兆1466億円14.40%会津若松市4553億円5.70%南相馬市3307億円4.10%出典:2019年度『福島県市町村民経済計算』 一1000万円以下切り捨て  現地調査の前に店の増減を電話帳から把握する。新型コロナ感染拡大前の2019年11月時点と感染拡大後の21年10月時点の電話帳(NTT発行『タウンページいわき市版』)で掲載数を比較した。 2021年時点で20軒以上ある業種を挙げる。業種は店からの申告に基づき重複がある。多い順に次の通り(カッコ内は減少率)。 スナック 273店→221店(19・0%) 飲食店 201店→180店(10・4%) 居酒屋 168店→148店(11・9%) 食堂 83店→68店(18・0%) すし店(回転ずし除く) 69店→64店(7・2%) レストラン(ファミレス除く) 72店→62店(13・8%) ラーメン店 67店→62店(7・4%) 喫茶店 61店→54店(11・4%) 焼肉・ホルモン料理店 38店→37店(2・6%) 中華料理店 38店→37店(2・6%) バー・クラブ 48店→36店(25・0%) 焼鳥店 34店→33店(2・9%) うどん・そば店 30店→28店(6・6%) 日本料理店 28店→25店(10・7%) ファミレス 25店→24店(4・0%) カフェ 23店→21店(8・6%) 減少数・率ともに大きいのはスナックだった。53店が電話帳から消え、1店が新規掲載。差し引き52店減少した。もともとの店舗数はスナックや居酒屋に比べれば少ないが、減少率が最も大きかったのはバー・クラブの25・0%。12店が電話帳から消え、新規掲載はなかった。 酒と接待の場を提供するスナックやバー・クラブの減少が著しいのは郡山・福島両市も同じだ。 郡山市 スナック 202店→159店(減少率21・2%)。消滅48店、新規掲載5店 バー・クラブ 45店→42店(減少率6・6%)。消滅5店、新規掲載2店 福島市 スナック 194店→145店(減少率25・2%)。消滅50店、新規掲載1店 バー・クラブ 42店→35店(減少率16・6%)。消滅7店、新規掲載なし スナックの数はコロナ前も後も3市の中でいわき市が最も多い。にもかかわらず減少率は19%と他2市と比べて2~5㌽低い。理由は飲食店街が分散していることが考えられる。スナックが10店舗以上ある地区は表2の通り。市内最大規模の飲食店街は平・田町でスナック約120店舗がひしめく。平地区のスナックの減少率は21%で、郡山・福島とあまり変わらない。減少幅の小さい小名浜や植田など周辺地区が平の減少率を緩和している形だ。 表2 いわき市のスナックの店数 2019年2021年減少率平地区15212021%小名浜地区453717%植田地区423419%常磐地区151220%出典:NTT『タウンページ』の掲載数より 「回復とは言えない」  平・白銀町でバー「QUEEN」を経営するマスター加藤功さん(65)=平飲食業会・社交部会部会長=は、叔母から店を引き継いで計63年続けている。 「客の入りは回復しているとは言い難いですね。土曜日でも空席がある。ライブを開催し、大物ミュージシャンを呼んでもチケットは完売になりませんでした。みんな出不精になったのかな」(加藤さん) コロナ禍で閉店する店が増えたことについては、 「跡継ぎがいないというかねてからの問題があります。コロナ禍が閉店に踏み切るきっかけになった。私の店も後継者はいません。酒を提供する店でも料理がメインのところは回復力が強い。純粋にお酒を愉しんだり、女性が接待する店はまだまだ厳しい」(同) 別のバーの男性オーナーAさんは 「うちは仲間内で楽しむ雰囲気の店です。美味しいものを味わってもらうというより、1人3000円くらいでサンドイッチなど軽食を用意し、腹いっぱいになって帰ってもらう。昔は公務員が多く来ていたが、コロナ以降は全然ですね」    平競輪場が近いこともあり、店内には競輪のグッズが飾ってあった。 「今は送別会をやる選手もいません。余裕がないんでしょうね。お客さんも店も一緒です。やめちゃった店は多分、コロナ禍の間に運営資金を4、500万円くらい借りてあっぷあっぷになったんじゃないか。俺もいつやめてもおかしくない。あと1年、あと1年とマイナスの状況で続けてきた。貯金はみんな食いつぶしたよ」(同) ただ、公務員や地域行事の打ち上げが戻ってきたことで、感染の収束を感じるとも話す。 「ようやく4月から警察関係の人たちが飲み歩き始めた。いい兆しです。だが、うちはPTAや保護者会などの団体さんが動き出さないと経営は厳しい。コロナ前は野球、サッカー、学校行事などが終わった後は打ち上げがお決まりでした。消防団もお得意さんですね。年間行事が決まっているので、安定した集客が見込めます」(同) パートで本業を支える  筆者は別の店主から「昼間にパートに出て本業(スナック)を支えている店もあった」と聞いた。 あるスナックのベテランママBさんも「他人事ではない」と話す。 「店を閉めるには借金を清算しなくてはなりません。でも、この年になったら働き口がないので店を続けるしかない。お客さんの数はコロナ前の水準には戻らないけど、常連さんが来てくれるのでかろうじてやっていけます」 前出のマスター加藤さんは、コロナ後の客の飲み方に明らかな変化を感じているという。 「大型連休中はお客さんがコロナ前の7割程度まで戻った。ただし、1次会だけで終わるケースが多い。帰りの運転代行のピークは20~21時の間です」 5月13日の土曜日、本誌記者2人は19時を待ち、電話帳から消えたスナックやバー・クラブを訪ね開店状況を調べた(結果は別表参照)。20~21時の間は平・田町の路地を団体客が通り、客引きが2次会の場所を紹介しようと賑わっていた。だが21時を過ぎると客足は減り、客引きの方が多くなった。女性従業員がペアになり、いわき駅方面に向かう男性客を呼び止めるが、人の流れが止まる気配はなかった。 電話帳から消えたいわき市平のスナック、バー・クラブ ○…5月13日(土)に営業確認 ×…営業未確認 地区店名最後の所在地または移転先営業状況田町スナックMajo新田町ビル〇桐子×cantina×COOL田町MKビル×Sweethomeミヨンビル〇LOVERINGミヨンビル→泉に移転集約〇スナック・汐第2紫ビル×スナック美穂志賀ビル×チェンマイ×歩楽里×スナック僕×Boroルネサンスビル×サムライサンスマイルビル2〇ラソ(Lazo)アマーレビル→田町鈴建ビル〇ビージェイオセーボ(BJOSEBO)サンスマイルビル1×スナックむげん梅の湯ビル×DREAM移転の情報×WITH二葉館ビル〇くおん田町ビル〇夕凪×きなこ寺田ビル×スナック・杏第3紫ビル×Materia×スナックパルティール2×パブスナックキャットハウス×ROAD鳥海ビル〇カマ騒ぎ×BAR BLUE〇Berry・Berryタマチビレッジ×二町目上海新天地紅小路ビル×スナックきよみ×スナック北京城ひかりビル×スナック戀(れん)×白銀アジエンス×クイーン〇酒処さかもと×五町目プラス・ワン移転の情報×パークサイド××…所在地が空欄の店は移転先の情報を得られなかった。  22時を過ぎると「お兄さん、マッサージいかがですか」と片言で誘ってくる女性が増えてきた。前出のベテランママBさんによると、中国人グループが組織的に行っているという。 土曜の夜でも22時には客が引けてしまう。スナックやバー・クラブにとっては本来、この時間帯からが勝負だが、そもそも2次会の客が減っているので、賑わう店とそうでない店の二極化が進んでいる。 期待が薄い駅前再開発 いわき駅並木通りの再開発事業  業界として打つ手はあるのか。 「徐々に暑くなり、街中でのイベントが再開されれば人通りは多くなります。それを飲食店街にどう呼び込むか。今夏、いわき駅前では七夕まつり、小名浜では花火大会がコロナ前の規模で開催されます。昨年末には、いわきFCのJ3優勝とJ2昇格を祝うパレードも同駅前でありました。いわきFCに関してはイベントが始まったばかりということもあり、飲食店街の賑わいにどうつなげるか手探りです」(前出・加藤さん) いわき駅前は再開発でホテルやマンションの建設が進む。今後、宿泊しながら飲食する人は増えることが予想され、飲食店街にとっては好材料になるのではないか。 ただ、各店主に話を向けると「そうなればいいですね」「そんなに関係ないな」と、あまり期待していない様子だった。 田町で店の営業状況を調べていると、客引きの女性従業員から「どの店もいつ潰れてもおかしくない。もっといいように書いてくださいよ」と注文を受けた。 正直、プラスの材料を探すのは難しい。早く調査を終わらせようと、女性従業員にリストに載っている店が今もやっているか尋ねた。 「その店は昨年9、10月ころにはなくなったよ。ママが『売り上げがないから疲れちゃった』って。ママが亡くなって閉めた店もあります」 本誌がリストに載せた店は、消えた店の方が多かった。 「私らは最後までやるつもりですよ。それこそ死ぬまでね」 と女性従業員。覚悟を決めた人の言葉だった。 あわせて読みたい 客足回復が鈍い福島市「夜の街」|スナック営業調査 コロナで3割減った郡山のスナック

  • 【いわき市】内田広之市長インタビュー

    【いわき市】内田広之市長インタビュー

    うちだ・ひろゆき 1972年3月生まれ。東北大教育学部卒。東大大学院教育学研究科修了。文部科学省教育改革推進室長、福島大理事兼事務局長などを歴任し、2021年9月の市長選で初当選。  ――市長就任から1年半が経過しました。この間を振り返って。 「就任当時、市が抱えているさまざまな課題について、『見える化』が図られておらず、青写真も示されていない現状にありました。そのため、昨年1年かけて議論を重ねながら『いわき版骨太の方針』を策定し、今後のビジョンをお示ししました。 教育・子育て、農林水産業の担い手不足、医師不足、産業振興、若者の雇用確保、公共交通整備などについて、骨格をつくり見通しを示しました。さらに各地区の区長を中心とした話し合いの場に足を運び、課題や取り組み状況を共有しました」 ――優先的に取り組みたい課題は。 「特に重視しているのが、若者の人口流出です。高校卒業後、進学・就職で約6割が首都圏などに流出します。人口減少につなげないためには、地元に帰りたいと思ってもらえる環境づくりが大事であり、産業振興や若者の雇用確保を生み出すことが大事です。本市は製造品出荷額等が東北で1位の都市であり、ものづくりや素材産業の分野で、いかに若者にとって魅力的な雇用を生み出せるかがポイントになると思います。 4月1日、浪江町に福島国際研究教育機構(エフレイ)が開設されました。これらを見据えて、本市では課長級のエフレイ連携企画官を2人配置しました。また、4月15日には市役所内郷支所にエフレイの出張所が開設され、市内で設立記念シンポジウムが開催されました。世界トップレベルの研究者が集まる同機構と連携し、市内の既存産業と研究が融合していくことで、専門性が高い分野の若者に市内で働いていただけることを期待しています。若い力が活発になることが真の復興であり、今年はスタートの年だと思っています」 ――新型コロナウイルスの5類移行に伴い、観光振興をはじめコロナ禍で制限されてきた事業に着手できることと思います。 「コロナ禍前の市内入り込み客数は約800万人でしたが、2022年は約540万人でした。今後はウィズコロナの時代になり、一時的に感染者が増加しても、行動制限・イベント自粛を呼び掛けるのではなく、各自が対策しながら開催していくことになると思います。 本市では昨年から花火大会、いわき七夕まつり、いわきサンシャインマラソンなどのイベントを順次復活しており、海水浴場もオープンしました。今年はそのほかのイベントも本格的に再開する予定で、市外から訪れる人をしっかりおもてなししていきたいと考えています。 入り込み客数増加という意味では、サッカー・いわきFCのJ2昇格により、同チームや対戦チームのサポーターが多く足を運ぶようになったことも大きいです。先日、JR磐越東線のいわき―小野新町駅間が赤字になっているという発表がありましたが、いわきFCの試合などと連携し利用を促すのも一つの方法だと思います。沿岸部にサイクリングロード『いわき七浜街道』を整備しているので、自転車関連の合宿なども積極的に誘致したいですね」  ――市では健康ポータルサイトを設立し、健康指標改善に取り組んでいますが、今後の展望は。 「65歳の人が元気で自立して暮らせる年数を算出した『お達者度』を県内13市で比較すると、本市は男女とも県内最下位です。特定健康診断の受診率もワーストで心臓・脳血管疾患による死亡割合は他市と比べて高い。健診を怠り、病気が悪化して治療が遅れる傾向が読み取れます。塩分摂取率は全国平均より高く、生活習慣も健康指標の低さに影響していると思われます。 子どものうちからの啓発が必要だと考え、現在、市内のモデル校の中学2年生を対象とした事業を実施しています。実際に早期指導は改善効果があることが分かったので、今後対象校を拡大し、学校を通して家庭に健康意識が広まることを期待しています。また、高齢者向けにフレイル(加齢により心身が衰えた状態)の疑いがないか検査を実施したり、スポーツイベントで血液検査や血圧測定を行ったり、シルバーリハビリ体操を普及させることで、介護予防の取り組みも広めています。加えていわき市医師会、いわき市病院協議会と連携協定を締結し、健康寿命を延ばす取り組みも進めています」 ――近年、激甚化する自然災害への対策が不可欠となっています。 「さまざまな対策を講じていますが、その中から2つ紹介します。 1つは要支援者の把握です。東日本大震災や令和元年東日本台風では、思うように動けない要支援者が逃げ遅れて亡くなったケースが確認されました。そこで個別に避難計画を策定することを決め、特に、災害リスクが高い地域の要支援者からヒアリング調査を実施し、災害時の避難体制の整備を進めています。次の災害時は『逃げ遅れゼロ』を実現したいと思います。 もう一つは防災士の活用です。本市には防災士の資格を持つ人が県内最多となる900人以上います。市内には町内会が529団体あり、403団体の自主防災組織が立ち上げられていますが、人口減少や高齢化の進展の中、訓練などの活動状況に差が生じてきているようです。そこで、防災士に災害時における地域のリーダーとして活躍してもらおうと考え、昨年、全国初となる『登録防災士』制度を作りました。 令和元年東日本台風で越水した夏井川や好間川は川底の掘削がだいぶ進んでおり、同じ規模の雨が降っても水害は防げそうですが、自然災害の甚大化が進んでいるので、防災対策が重要になると考えています」 ――国・東京電力は福島第一原発敷地内に溜まるALPS処理水の海洋放出を春から夏にかけて実施する方針です。沿岸部の自治体としてどのように受け止めていますか。 「国・東電は住民向けの説明会を開いたり、福島県産品のPRイベントを開催しており、アンケートなどを見る限り、国民への理解も少しずつ広まっているように思います。ただ、まだ合意が整う途上にあります。国・東電は漁業関係者の皆さんに対し『関係者の理解なしにいかなる処分も行わない』と約束しているので、まずは理解醸成をしっかりやってほしい。そのためには、対話を重ねるしかないのではないでしょうか」 ――今年度の重点事業について。 「特に強調しておきたいのが、子育て関係の施策です。国の方で異次元の子育て支援策を掲げているので、本市でも連動して手厚くしていきたい。子育て世帯の支援としては、部活動などで全国大会などに出場する選手への支援メニューを充実したり、インフルエンザの予防接種費用の助成を実施しました。学校給食の無償化についても全国で議論になっているので、市長会を通じて国へ伝えていきたいと思います」 いわき市のホームページ 掲載号:政経東北【2023年5月号】

  • 【アクアマリンふくしま】施設をリニューアルオープン

    【アクアマリンふくしま】施設をリニューアルオープン

     環境水族館「アクアマリンふくしま」(いわき市)の子ども体験館「アクアマリンえっぐ」が3月20日にリニューアルオープンし、多くの観光客が訪れている。  施設をリニューアルオープン  同施設は釣り場がある子ども向けの体験型施設で、楽しみながら自然の大切さや生物の多様性、命の尊さなどを学ぶことができる。今回のリニューアルでは、はく製タッチやものづくりワークショップ、生き物調査、オリジナルのぬり絵など、いろいろな体験ができるエリアへと生まれ変わった。新たに誕生した体験プログラムは次の通り。 「いろいろミュージアム」――いろいろなはく製にさわって生物の多様性を学ぶことができる。参加料100円ではく製クイズにもチャレンジできる。 「いろいろ工房」――水族館の生き物、海や森にある素材を使ったものづくりワークショップを随時開催。つくるものは時期によって変わる。 「いろいろアーティスト」――アクアマリンふくしまの展示をイメージした、個性豊かな生き物たちのぬり絵が楽しめる。 「すくすくキッズ」――絵本を読んだり、おもちゃで遊んだりすることができる親子のくつろぎスペース。 これらリニューアルオープンと同じ3月20日には、館内の生き物解説を専門とする解説員「こんべえズ」がデビューした。ごんべえズはアクアマリンふくしまをより楽しんでもらうため「ごんべえズトーク」と題したさまざまな解説を行っている。 「ごんべえズ」のメンバー  例えば、潮目の海の大水槽の展示を解説してくれる「黒潮水槽の生き物たち編」は土日、「黒潮水槽のえさのじかん編」は毎日開催している(火曜は給餌がないため、解説内容は前記の生き物たち編になる)。所要時間は15分、参加費無料。また不定期開催の「さわって学ぶはく製編」では、さまざまな生き物のはく製について解説してくれる。開催時はアクアマリンえっぐ内に掲示される。 大水槽展示の解説の様子  ごんべえズの活動は裏側の解説だけにとどまらない。「ごんべえズガイド」と題して施設のバックヤードを紹介しており、特別ツアー「バックヤード水槽大公開コース」では魚を繁殖している水槽やデビュー前の生き物を飼育する水槽が並ぶ水生生物保全センターを中心に案内してくれる。どんな生き物に出会えるかは、その時のお楽しみだ。ちなみにアクアマリンボランティアが水族館の裏側を紹介してくれるバックヤードツアーも3月25日から復活した。各ツアーの開催日時は公式サイト等で確認していただきたい。 ごんべえズの皆川裕斗さんはこのように話している。 「さまざまな体験を通して生き物や海の魅力に気付いていただければうれしいです」 生き物を通じてさまざまな体験が楽しめるアクアマリンふくしまに足を運んでみてはいかがだろうか。問い合わせは☎0246ー73ー2525まで。 前売り券を購入する 電子チケット 【アソビュー】 コンビニチケット 【セブンチケット】 あわせて読みたい 【いわき市】サラブレッドの再起支える〝聖地〟【JRA競走馬リハビリテーションセンター】

  • 【いわき市常磐白鳥町】サラブレッドの再起支える〝聖地〟【JRA競走馬リハビリテーションセンター】

    【いわき市】サラブレッドの再起支える〝聖地〟【JRA競走馬リハビリテーションセンター】

    (2022年10月号)  オグリキャップ、トウカイテイオー、テイエムオペラオーなど、競馬史に残る名馬が、現役時代に入所していた競走馬用の温浴・リハビリ施設がいわき市にある。〝競馬ファンの聖地〟ともなっている同施設に足を運んだ。 【いわき市常磐白鳥町】JRA競走馬リハビリテーションセンター  いわき湯本温泉は古くから湯治の名所として栄えてきた温泉地で、有馬温泉(兵庫県神戸市)、道後温泉(愛媛県松山市)と並ぶ日本三大古泉だ。全国的に珍しい泉質で、その効能から「美人の湯」、「心臓の湯」、「熱の湯」とも呼ばれる。 そんな同温泉の温泉街の西側に、競走馬専用の温泉を備えたリハビリ施設があることをご存じだろうか。 1963(昭和38)年にJRA競走馬保健研究所常磐支所として開所した「競走馬リハビリテーションセンター」(小平和道所長)だ。屈腱炎・骨折など脚部に疾患を抱える現役競走馬を受け入れ、レース復帰に向けたリハビリの支援を行っている。 広大な敷地の中には、ダートコースの調教馬場(1周400㍍)をはじめ、脚部に負担をかけず心肺機能を高められるスイミングプール(1周40㍍、深さ3㍍)やウオータートレッドミルなどの設備が設けられている。 馬場では脚の具合を見ながら徐々に速度を上げる  療養馬の回復状況に合わせてメニューが組まれ、朝8時から獣医師立ち合いのもと、各施設でリハビリが行われる。取材時の7月中旬現在、16頭の馬が入厩していた。馬房は40馬分あるものの、「人手不足で所属している厩務員に限りがあるので、現在はフルでは受け入れていない。そのため、順番待ちになることもある」(広報担当者)という。  13時30分からスイミングプールでの調教が始まると、フェンス越しに見学に訪れた競馬ファンや子ども連れが集まってきた。楽し気に泳ぐ姿をイメージしていたが、近くで見ると、「ブルルッ」と鼻を鳴らしながら必死の表情で泳いでいた。厩務員は手綱を引いているほか、さまざまな道具を駆使して歩みを止めないようにしている。療養馬にとってはハードなリハビリの一環なのだろう。 プールで泳ぐ療養馬 フェンス外から見守る競馬ファン  初めてプールに入るという馬に至っては、厩務員が押しても引いても10分以上その場から動こうとしなかった(もっとも、厩務員にとってこの行動は想定の範囲内で、この日は、水に慣れさせるのが目的だったようだ)。写真やほのぼのニュースの映像で抱いていた涼やかなイメージとのギャップに驚かされた。  リハビリ終了後には、38~40度の足湯と打たせ湯で疲労を解消する。リハビリにより溜まったストレスを解消する効果もあるという。温泉でリラックスできるのは馬も人間も同じということだろう。 足湯と打たせ湯の温泉でリラックス  慣れた手付きで馬を連れて回る厩務員はいずれも若く、女性の姿が目立った。競馬業界への就職を目指してここで勤めている人が多いという。 リハビリ支えるスタッフ 馬の懐に入り蹄鉄を打ち付ける兒玉さん  スタッフの一人に声をかけたところ、同センターに常駐する装蹄師・兒玉聡太さん(32)だった。 装蹄師とは馬の蹄(ひづめ)に蹄鉄を打つ技術者のこと。体重400~500㌔の体で走るサラブレッドの脚には大きな負荷がかかっている。蹄が摩耗したり割れて変形すれば、パフォーマンスが下がるばかりか、ケガのリスクも高まる。そのため、その馬の蹄の形に合わせた蹄鉄を打ち、保護する必要がある。 蹄鉄はアルミニウム合金製で、摩耗するため、3週間に1度のペースで打ち変えているという。 兒玉さんは胴体の下に潜り込み、脚を上げさせて蹄を削る。蹄の形に合わせて蹄鉄を叩いて微調整し、釘で打ち付ける。テンポ良く進めているが、確かな技術と経験がないとできない仕事だ。こうした関係者のサポートにより競馬は成り立っているということだ。 2021年、競走馬を擬人化したキャラクターを育ててレースで競わせるスマホゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」が大ヒット。ゲームから競馬に関心を持つ新規ファンが増え、競馬ブームにつながった。「競馬への注目度が高まるのはうれしい。当センターにもぜひ多くの人に見学に来てほしい」と広報担当者は語る。 震災・原発事故、令和元年東日本台風など、災害により大きな被害を受けながら、復興を遂げているいわき市。そんな同市に同センターが設けられ、療養馬が再起を目指してリハビリに励んでいるのも運命的なものを感じる。 秋になると中央競馬が盛り上がるシーズンが到来する。福島市の福島競馬場では、第3回福島競馬が11月5日から20日まで延べ6日間の日程で行われる。 同センターは朝8時から17時まで見学を受け付けている(日曜日は休み、プール見学は夏季平日のみ、改修工事のため、完全閉鎖の時期あり)。秋の福島競馬に合わせて聖地を〝巡礼〟するのも、競馬文化の楽しみ方の一つと言える。 あわせて読みたい 【アクアマリンふくしま】施設をリニューアルオープン

  • 【いわき市鹿島】エブリアを〝取得〟したつばめグループ

    【いわき市鹿島】エブリアを「取得」したつばめグループ

    (2022年10月号)  いわき市鹿島地区の大型ショッピングセンター(SC)「鹿島ショッピングセンター エブリア」の動向が注目されている。建物を所有する会社の吸収合併や子会社化が相次ぎ、巨額の根抵当権が設定されていることが分かったからだ。 「根抵当権38億円設定」で広まる憶測  「鹿島ショッピングセンター エブリア」は1995年10月開業。いわき市の中心部である平地区と、観光エリアである小名浜地区の中間地点である鹿島地区に立地している。 鉄骨造2階建て、延べ床面積3万7455平方㍍。複数の地権者の借地に建てられている。当初は、キーテナントであるダイエーいわき店が半分を占め、残り半分が地元小売店・飲食店などによる専門店街「エブリア」という構成だった。2005年にダイエーが撤退した後は、ヨークベニマルエブリア店やスーパースポーツゼビオいわき店が入居。専門店街では現在も約70のテナントが営業している。 主要幹線で交通量の多い県道26号小名浜平線(通称鹿島街道)沿いに面していることもあり、週末には多くの買い物客が訪れる。 そんな同SCの動向が市内の経済人の間で注目されている。建物の所有者をめぐる動きがにわかに活発化しているからだ。 同SCの建物を所有していたのは、建設時から計画に携わっていた市内の不動産会社・平南開発㈱(園部嘉男社長=元いわき商工会議所副会頭、2018年に死去)だ。 その後は〝SC担当のディベロッパー部門〟として分割された平南ディベロップメント㈱(園部嘉門社長=嘉男氏の孫)が所有者となっていた。だが2021年8月、社長が園部嘉門氏から岩手県盛岡市在住の小西徹氏に変更。同10月には東京都品川区の平南ホールディングス合同会社に吸収合併された。 関係者によると、平南ホールディングスは外資系投資会社フィンテックグローバル㈱(東京都品川区)などの出資により設立され、もともとは「麻布十番ホールディングス」という全く違う会社名だったが、平南ディベロップメントを吸収合併するのに合わせて名称変更した。要するに、同SCの大家だった会社が、投資会社に丸ごと身売りしたわけ。 2022年5月には、その平南ホールディングスの株式をさらに別の会社が取得し、子会社化した。それが、福島県などを中心にパチンコホールを展開する「つばめグループ」の運営会社・中原商事(登記上の本店=東京都、本部=郡山市)だ。 1968年設立。資本金2300万円。代表取締役は禹竜太社長、禹泰浩専務(いずれも名字は中原を名乗っている)。民間信用調査機関によると、2021年12月期の売上高373億5100万円、当期純利益2億6700万円。 法人登記簿によると、主な事業は➀遊技場の経営、➁飲食店、喫茶店及びキャバレーの経営、③有価証券の売買、④自動販売機の管理、⑤パチンコ店の懸賞品及び景品等各種商品の仕入れ、販売、⑥タバコの仕入れ、販売、⑦経理事務の代行、⑧経営コンサルタント業務など。 平南ホールディングスの法人登記簿を確認すると、業務執行社員、代表社員ともに中原商事となっていた。市内の事務所には、同社の物件管理業務を受託している企業の担当者が常駐し、同SCの契約・施設関係の窓口を務めている。中原商事が実質的に同SCを取得した格好だ。 エブリアの建物の不動産登記簿を確認したところ、三井住友銀行により極度額26億4000万円の根抵当権、東邦銀行により極度額8億4000万円の根抵当権、福島銀行により極度額3億6000万円の根抵当権が設定されていた(いずれも設定日は2022年6月23日、債務者は中原商事)。合計38億4000万円もの融資枠が設定されたことになる。 そのため、「エブリアにそれだけの価値があるということなのか、それとも新たな商業施設建設などの狙いがあるのか」、「中原商事はどういう考えで平南ホールディングスを傘下に入れたのか。まさか巨大なパチンコ店をつくるわけではないだろうが……」など、さまざまな憶測を呼んでいるわけ。 中原商事はノーコメント  中原商事に子会社化の狙いを問い合わせたが、「現時点では取材に対応できない。ノーコメント」(担当者)との回答だった。ただ、中原商事のルーツはもともといわき市植田のパチンコ店であり、禹竜太社長も同市出身であることから、「東京の投資会社より〝地元企業〟が所有者になるべきと判断し、子会社化したのではないか」との見方がもっぱらだ。 ちなみに、同地は第二種住居地域でパチンコ店設置が可能とのことだが、「1㌔も離れていないところに鹿島小学校やかしま病院がある。立地規制には引っかからないかもしれないが、周辺住民との関係を考慮してさすがにパチンコ店の出店は控えるのではないか」(関係者)との見立てが聞かれる。 パチンコ業界は折からのユーザー数減少に加え、新型コロナウイルスの感染拡大やパチンコ機の規制強化などの影響で、大きく売り上げが落ち込んでいる。そうした中で、本業以外に不動産事業を展開するパチンコ店も増えている。本誌でも関連記事の中で複数の事例に触れており、直近では、ニラク(郡山市)が福島市の複合施設「コマレオプラザ」跡地を所有者であるコマレオ(山形県米沢市)から賃借し、同所にディスカウントストア「ドン・キホーテ」を誘致すべく動いていた件を報じた(2019年9月号参照)。 いわき市におけるつばめグループの店舗では、ビックつばめ岡小名店が6月に閉店している。シビアな経営判断が迫られる中で、中原商事が同SCをどのように〝活用〟していくか考えなのか、注目される。 ヨークベニマル、ゼビオを除くテナントの賃貸を行っている㈱鹿島ショッピングセンターに問い合わせたところ、担当者は次のように話した。 【いわき市】鹿島ショッピングセンター エブリア  「今の段階で方針変更などは聞いていません。建物の大家の代表者(親会社)が変わったということで、あらためて意思共有する機会はあるかもしれませんが、当社としては変わらずに運営を続けていきます。コロナ禍の影響が大きいうえ、テナント維持に苦戦している面もありましたが、集客が図れる催しものを企画し、既成概念にとらわれない自動車展示のテナントを誘致するなど、さまざまな取り組みを進めています。今後とも多くの方に利用していただければと思います」 2019年6月に開店したイオンモールいわき小名浜は強力な競合相手だが、エブリアの固定客は離れておらず、売り上げも安定している。安定した賃料が入るのは、建物所有者にとってもありがたいはず。一方で9月中旬には、エブリアの前年にオープンしたショッピングモールフェスタ(郡山市)が、老朽化などを理由に一時閉店し、県内最大規模の店舗とする方向で検討していることが分かった。同SCも今後、同様の問題を抱える可能性がある。 そうした意味合いでも同SCの今後の動向から目が離せない。 鹿島ショッピングセンター「エブリア」ホームページ あわせて読みたい 【いわきFCを勝手に評価】レノファ山口戦(2023/3/5) 【いわき市】内田広之市長インタビュー 【アクアマリンふくしま】施設をリニューアルオープン

  • いわきFCマスコットキャラクターハーマー&ドリー

    【いわきFCを勝手に評価】レノファ山口戦(2023/3/5)

    サッカーを見ることが好きな筆者が、勝手にいわきFCを評価するWEB限定企画。 いわきFCを生観戦するのは今回で2回目だ。 初めて「いわきグリーンスタジアム」に行ったので、サッカー専用スタジアムだということを初めて知った。 サッカー専用スタジアムの素晴らしいところは、なんといっても「選手との距離」が近いこと。J2は有名な選手がたくさんいるので、選手を間近に見れるのは嬉しい! 【いわきFCを勝手に評価】レノファ山口戦(2023/3/5) 【結果】 いわきFC 0ー1 レノファ山口 フォーメーションは4-4-2。割と4-3-3が主流な現代サッカーにおいては珍しいのかもしれない。 筆者が最近見ている4-4-2と言えば、久保建英選手がいるレアルソシエダ。前線でしっかりポストプレーしてくれるセルロートとテクニックのある久保選手のツートップが魅力だ。つまりトップの2人がかなり重要だということだ。 ソシエダは最近オヤルサバルが復帰して、4-3-3になって勝てなくなった。(ダビドシウバがいなかったのも大きいのかもしれないが、、、) 【いわきFCを勝手に評価】選手別 https://www.tiktok.com/@seikeitohoku/video/7206906900082855169 GK 31 鹿野 修平 選手 6.0特に印象にないということは無難だったということだろう。DF 35 江川 慶城 選手 6.5声掛けを積極的に行っていたので、チームの中ではモチベーターの役割を担っているのかもしれない。ガッツが感じられて好印象だった。DF 4 家泉 怜依 選手 6.0両センターバックは無難だった。特に減点なし。失点シーンは誰の責任もない。DF 3 遠藤 凌 選手 6.0両センターバックは無難だった。特に減点なし。DF 2 石田 侑資 選手 6.5右サイドからの攻撃で、効果的なオーバーラップ、正確なクロス、縦へのドリブル、すべてよかった。嵯峨選手とのコンビネーションも素晴らしい。ケガで前半のみで交代。後半も見たかった。 一緒に観戦したサッカーオタク曰く、徳島から市立船橋高校に進学した際、外がうるさくて眠れなかったという逸話を持っている。出身の徳島県吉野川市はそんなに田舎なのだろうか。MF 8 嵯峨 理久 選手 7.0いわきFCで一番よかった。縦への推進力があり、いわきFCの要なのは間違いない。ドリブルできる、トラップも一級品。クロスの精度も高く、多くのチャンスを演出していた。28分の谷村選手へのパス、56分のアーリークロス、ともにアシスト級だった。おそらくJ1でも通じる。 さすが青森山田高校出身。MF 6 宮本 英治 選手 6.0無難にゲームコントロールできていた。こぼれ球への対応もできていた。75分のシュートチャンスは決めたいところだが、いいところに顔を出していた。MF 24 山下 優人 選手 6.0無難にゲームコントロールできていたが、あまり印象にない。MF 14 山口 大輝 選手 6.011分、神トラップからのシュートは決めたいところ。ただあのトラップを観れるだけでも金を払う価値はある。FW 17 谷村 海那 選手 5.016分の決定機は、給料をもらっている以上、絶対にはずしてはいけない。相手ディフェンスがゴールに向かってきていたので、シュートが簡単ではないことは理解しているが、、、28分のチャンスも決めたいところ。J2では少ないチャンスをどれだけものにするかが勝敗を分ける。FW 11 有田 稜 選手 5.516分の谷村選手の決定機は、有田選手のプレスから生まれたチャンス。他のチャンスにも顔を出していた。ただ前線でのポストプレーはもう少し改善が必要な印象。谷村選手、有田選手、ともに前半はリヴァプールを思わせるゲーゲンプレスを敢行して相手ディフェンスを困らせていたが、さすがに後半になるとプレスの強度が落ちた。90分走り切るのは無理がある。 杉山 伶央 選手 6.0左足の精度があったように感じる。あまり印象にない。 永井 颯太 選手 6.5先発で使ってもいい出来だった。トラップもうまいし、足も速い。75分の突破は素晴らしかった。ただ、先発で使われないのには何か理由があるのだろう。 近藤 慶一 選手 採点なし 加瀬 直輝 選手 採点なし レノファ山口を勝手に総評 タレント力が違いすぎた。 アギーレジャパンに召集された皆川佑介選手、説明不要の山瀬 功治選手、リオデジャネイロオリンピックで日本代表だった矢島慎也選手、J1にいたときの横浜FCで活躍した佐藤謙介選手、あと身長が10センチ大きければ代表レベルの関憲太郎選手などなど。 得点シーンは皆川選手のごっつぁんゴールだったが、「あの位置にいる」という能力こそが、長年サッカーで飯を食ってきた証だ。 そんなレノファ山口でもJ2では中堅クラブ。おそらく順位も真ん中あたりに落ち着くはず。 いわきFCは、J3降格候補の藤枝に負け、中堅の水戸に引き分け、中堅の山口に負けた。 この結果が何を意味するか。これからJ1級の清水エスパルスやジュビロ磐田と戦うとどうなるのか。楽しみに見てみたい。 【いわきFCを勝手に評価】総評 ダゾーンでハイライトを見たが、改めて思ったのは前線の迫力がJ2では大事なのではないかということ。予算が限られているのでガンガン点を取れる外国人選手を雇うのは容易なことではないが、FC町田ゼルビアがおそらく上位常連になる理由は前線に迫力差があるかどうか。 ミニ情報 スタジアムグルメ「スタグル」はかなり充実していた。何も食べなかったが美味しそうだった。かなりレベル高い方。 いわきFCマスコットキャラクター「ハーマー&ドリー」 フルコーラスの踊りを披露。かなりファンになった。

  • いわき市職員と会社役員が交通事故トラブル

     交通事故では、過失割合や示談金をめぐって加害者と被害者の間で意見が食い違うことがある。昨年12月7日、いわき市常磐関船町の丁字路信号で起きた交通事故もそうした事例の一つだ。  右折レーンで2台の車が信号待ちしていたところ、後ろの車を運転していた市内の会社役員Aさんが不注意でブレーキから足を離し、クリープ現象で前の車に接触してしまった。  双方ともほとんど損傷はなかったが、警察による現場検証の結果、前の車の後部バンパーにナンバープレートの跡が確認できたため、追突事故と扱われた。警察の調書には「時速約5㌔で追突」と記された。  だが、追突された車のドライバーBさんはAさんにすごい剣幕で迫ったという。この間Aさんから相談を受けてきた知人はこう明かす。  「『俺は海外旅行に行くことになっていたのにどうするんだ!』、『明日はタイヤ交換も予約したんだぞ!』、『こんなところでぶつけるって何考えてんだおめー!』とまくしたてられ、Aさんは恐怖を抱いたそうです」  Aさんが運転していたのは社有車。当初「保険会社に対応を任せる」と話していたBさんだったが、8万円でバンパーを修理後、整形外科に行って全治2週間の診断(症状は頸椎捻挫=むち打ち損傷と思われる)を受け、警察に提出した。そのため事故は人身事故扱いとなり、Aさんには違反点数5点が加算された。  そればかりかBさんはAさんが勤める会社の保険会社に対し、海外旅行のキャンセル料、旅先での宴会キャンセル料の支払いを求めたという。判例では結婚式直前の事故による新婚旅行キャンセル料などが損害として認められているが、Bさんの場合、損害とは認められなかったようだ。  交通事故対応に振り回されたAさんは精神的苦痛で吐き気や頭痛を催すようになり、しばらく塞ぎがちになった。一時期はメンタルクリニックに通うほどだったが、一連の手続きの中でBさんがいわき市職員であることを知って、その対応に疑問を抱くようになったという。  「交通事故の被害者になったからと言って、市民である加害者を罵倒し、過剰とも言える損害賠償を求めるのか。地方公務員法第33条に定められている『信用失墜行為』に当たるのではないか」(同)  Aさんらは、いわき市役所職員課に連絡し、Bさんが市職員であることを確認した。だが、情報提供に対する礼と「職員課人事係で共有を図る」という報告があっただけで、その後のアクションはないという。  当事者であるBさんは事故をどう受け止めているのか。自宅を訪ねたところ、次のように話した。  「後ろからドーン!と突っ込まれて『むち打ち』になり、いまも通院していますよ。海外旅行は韓国の友人を訪ねる予定が控えていました。結局キャンセル料を支払ってもらえないというので、旅行には行きましたよ。……あの、これ以上は話す義務もないので取材はお断りします」  時速5㌔での追突を「ドーン!と突っ込まれた」と表現しているほか、けがした状態で韓国旅行に行っても問題はなかったのかなど気になる点はいくつもあったが、曖昧な返答のまま取材を断られてしまった。  いわき市職員課人事係では「事故の件は把握しているが、公務外での事故なので当事者間での話し合いに任せている。言葉遣いが乱暴になった面はあったかもしれないが、事故直後ということもあり、信用失墜行為には当たらないと考えている」とコメントした。  Aさんらは事故を起こしたことを反省しつつも、モヤモヤが続いている様子。こうしたトラブルを避けるためにも、運転には気を付けなければならないということだ。

  • 「広報誌の私物化」を批判された内田いわき市長

     10月20日付の読売新聞県版に「台風被害の広報臨時号のはずが…『まるで選挙ビラ』、市長の視察写真8枚に『写真集』の声も」という記事が掲載された。福島民友も翌21日付で同じ趣旨の記事を載せた。  9月8日夜から9日早朝にかけて、台風13号による記録的豪雨に見舞われたいわき市。10月1日には、被害状況の写真や支援制度の案内を掲載した「広報いわき臨時号」が発行され、通常の広報紙とともに各世帯に配られた。  全4頁の広報紙に掲載された19枚の写真のうち、市長・内田広之氏の視察写真は8枚も使用されており、まるで写真集のような作りになっていた。そのことに対し、市民や市議から疑問の声が上がっていることを報じたもの。  両紙の記事では「被災特集なのに市長の写真ばかりなのは違和感がある」という市民の声、「選挙広報のようだ」、「広報の私物化だ」という市議の意見が紹介されていた。  災害時に首長がどう対応したかは、選挙の際の大きな評価ポイントになる。震災・原発事故後の2013年には、郡山市、いわき市、福島市、二本松市などの市長選で、現職首長が軒並み落選し、〝現職落選ドミノ〟現象と呼ばれた。  2011年には、当時いわき市長だった渡辺敬夫氏について「公務を投げ出して空港から逃げようとしていた」などのデマが流れた。災害対応に追われて姿が見えなかったためだと思われるが、選挙戦でそのマイナスイメージを利用して、「私は逃げない」と訴えた清水敏男氏が当選を果たした。  しかし、その清水氏に関しても、2019年10月の台風19号の際には対応の遅さが目立ち、被災者をはじめとした市民の信頼を失った。本誌が被災地域を取材した際には、避難の事前周知や断水対策の不備を指摘する声が多く、「市は一番苦しい時期に何もしてくれなかった」と断言する被災者もいたほどだ。その後、新型コロナウイルスへの対応の遅さも批判され、2021年の市長選で内田氏に敗れた。  こうした経緯もあってか、内田氏は豪雨発生後、連日被災地域を視察し、報道やSNSを通してボランティアの参加を呼びかけるなど、積極的に動いていた。過去の「失敗」を教訓としてうまく動いていたように見えたが、目立ちすぎて、一部では逆効果となっていたようだ。  いわき市広報広聴課に問い合わせたところ、「令和元年東日本台風のとき、『市長(清水敏男氏)の姿が見えない』という意見を多くいただいたので、それを教訓に、今回は市長の被災地視察の姿を多く掲載しました。直接市役所に寄せられた批判の声はありません。問題はなかったと考えています」とコメントした。  内田氏については、イベントなどに積極的に参加し、PR活動に努めていることに対し「軽い面が目立ってきた」という苦言が出ているほか、「今回の件は周囲にいる市議や幹部職員が一言助言すれば回避できた。ブレーン不在ではないか」との指摘も聞かれる。そういう意味では、市長就任から2年経過した内田氏の課題が露呈した一件だったとも言える。

  • 【いわき市】豪雨災害の爪痕

     9月8日夜から9日早朝にかけて、浜通りは台風13号による記録的豪雨に見舞われた。  被害が集中したいわき市では死者1人、負傷者(軽傷)5人の人的被害が発生した。住宅被害は全壊1棟、一部損壊3棟、床上浸水1261棟、床下浸水481棟に及ぶ(いずれも9月20日現在)。  9月10日、特に被害が激しかった内郷地区を訪れると、住民が住宅内の泥のかき出し、浸水した家具・家電・畳の運び出しに追われていた。  令和元年東日本台風で多大な被害を出した同市では、検証委員会を設置して防災対策の在り方を話し合っていた。災害ごみ置き場が早急に設置されたり、内田広之市長がSNSで積極的に発信していたのはその成果と言えよう。事前に高台に車を移動していた住民も多かった。  一方で、被災住民からは災害ごみ置き場の管理体制や支援物資などについて不満の声も聞かれた。同19日にも大雨による被害が発生するなど、あらためて水害リスクの高さが顕在化した同市。さらなる防災・減災対策が求められる。 流された車が積み重なる場所も(内郷白水町) 川沿いの住宅は軒並み浸水しており、庭に積もった泥をスコップですくう姿も見られた(常磐湯本町) 国宝建造物・白水阿弥陀堂(常磐湯本町)。近くを流れる新川が氾濫して境内に水が流れ込み、全体が浸水した。仏像に被害はなかった 内郷二中に設けられた災害ごみ置き場(内郷宮町)。住民からは「対象地区外からも運び込まれている。これではすぐ満杯になる」と憤る声も聞かれた 橋に絡まる大量の草(内郷内町) 水没車両を搬送する業者(内郷内町)。事前に高台に車を移した人も多かったようだ 被災した親族・知人、ボランティアなどが協力して復旧作業を行っていた(内郷内町)

  • テレビで異彩を放つ【いわき出身】のお笑い人材

     近年、いわき市出身のお笑い芸人・関係者をテレビ番組で見かける機会が増えた。その活躍ぶりについて、お笑い・芸能関連の著作を多数出版しており、いわき市に暮らしていたこともある戸部田誠氏(ペンネーム=てれびのスキマ)に執筆してもらった。(文中敬称略) ライター 戸部田誠(てれびのスキマ) とべた・まこと 1978年生まれ。テレビっ子。「読売新聞」「福島民友」「日刊ゲンダイ」『週刊文春』『月刊テレビジョン』などで連載。主な著書に『タモリ学』『1989年のテレビっ子』『全部やれ。』『芸能界誕生』『史上最大の木曜日』など。  テレビにおける福島県のイメージは、ほとんどが会津や郡山など内陸部のものだった。福島に10年近く住んでいたというと大抵「冬は雪で大変でしょう?」と聞かれる。  それに対し、「いや、僕が住んでいたのはいわき市の海沿いで、そっちでは雪がほとんど降らないんですよ。なんなら東京よりも降らないくらい」と答えて驚かれるまでが1セットだ。  実際、福島の“訛り”も武器にしている有名人で思いつくのは、西田敏行や加藤茶、佐藤B作といった、いずれも内陸出身の人たちだ。 『水曜日のダウンタウン』に愛される【あかつ】 水曜日のダウンタウン』に愛されるあかつ(赤津部屋提供)  そんな中でここ数年、いわき訛り丸出しでテレビでよく見かける芸人がいる。いわきの市議会議員を父に持つ相撲芸人・あかつ(42)だ。  相撲とエクササイズを融合した「すもササイズ」のネタでプチブレイクしたが、多くのキャラ芸人同様、その人気が長く続くことはなかった。しかし、彼は土俵際で執念を見せ、今では『水曜日のダウンタウン』(TBS)に寵愛された芸人のひとりにまでなっている。  「国道1号線に落ちてる服を拾いながら歩いたら、名古屋くらいで全身揃う説」(2015年9月16日)を皮切りに、「大人が本気出せば影だけ踏んで帰れる説」(17年7月19日)、「大人が本気出せば本州最北端から雪だけ踏んで東京まで帰れる説」(18年4月18日)、「国道1号線に落ちてるポイ捨てタバコのフィルターを拾いながら歩いたら名古屋くらいでそばがら的なマクラ完成する説」(18年7月25日)、「花見のごみを集めて桜前線と共に北上すればそのごみで作った舟で津軽海峡渡れる説」(20年6月24日)、「この夏、セミの抜け殻を集めながら国道1号線沿いを歩いたら名古屋くらいで“セミダブルベッド”完成する説」(20年10月7日)、「花見のごみを集めて桜前線と共に北上すれば日本本土最北端へ着く頃にはそのリサイクル額で新たな桜植樹できる説」(特別編、23年5月20日)などと、長距離を歩く過酷な検証ロケが定番になっている。  この番組のいわゆる総集編は、ただVTRをつなげたものでなく、ひとつ何らかの企画が乗っかったものばかりだが、19年3月20日の総集編企画は「しあわせあかつ計画」。それを聞いて「好きやなぁ、あかつが」と浜田雅功が吹き出してしまうほど、愛されているのがわかる。松本人志も「なんかあかつに弱み握られてる?」と笑っていた。  あかつにとって『水曜日のダウンタウン』での挑戦は「失敗」の歴史だ。多くの説で立証することができず途中断念という結果に終わっている。  今年7月26日の「相撲 負ける方の決まり手なら自在にコントロール出来る説」でも、「決まり手ビンゴ」に挑戦し、なんとか達成したものの、「疑惑な部分もあったけどね」と浜田から“物言い”がついた。  にもかかわらず重用されるのは、挑戦中、口汚く悪態をつきながらも、いわき訛りがどこか愛らしさを醸し出しているからかもしれない。 いち早く“売れた”【ゴー☆ジャス】 ゴー☆ジャス(サンミュージックプロダクション提供)  いわき市出身の芸人で近年いち早く“売れた”のは、「君のハートに、レボ☆リューション」を決めゼリフに、地球儀片手にダジャレネタを繰り出すゴー☆ジャス(44)だ。  磐城高等学校出身の彼は、代々木アニメーション学院声優タレントコースを経てお笑い芸人の道へと進んだ。そして09年頃、『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ)などの出演がきっかけとなりブレイク。さらに様々なゲームアプリを紹介するYouTubeチャンネルをいち早く立ち上げ、多くの登録者を獲得していった。 【アルコ&ピース平子祐希】ラジオで熱烈支持を獲得 アルコ&ピース平子祐希(太田プロダクション提供)  それに続いたのは、アルコ&ピース平子祐希(44)。ちなみに平子とゴー☆ジャスは実は下積み時代から、先輩芸人モダンタイムスを慕い、その“一門”として苦楽を共にした仲だ。  平子は勿来工業高等学校出身で日本映画学校に進学し、芸人の道に入った。「セクシーチョコレート」というコンビで活動した後、酒井健太とアルコ&ピースを結成。『THE MANZAI』(フジテレビ)の認定漫才師となり12年には決勝に進出し3位に輝いた。  翌年、『アルコ&ピースのオールナイトニッポン0』(ニッポン放送)のレギュラー放送が開始され、リスナーを巻き込みながら展開していく即興性の高い放送で熱烈な支持を獲得していく。さらには、『爆笑キャラパレード』(フジテレビ)などで扮した意識高い系IT社長・瀬良明正のキャラや愛妻家キャラなどで世間的な知名度も上げていった。いまでは、バラエティ番組の第一線で活躍している。 番組制作・出演の両面で活躍する【佐久間宣行】 番組制作・出演の両面で活躍する佐久間宣行(佐久間宣行事務所提供)  テレビの中で異彩を放ついわき市のお笑い人材たち。そんな3人を「いわき市お笑い三銃士」と冗談めかして呼び、ガハハハッと豪快に笑うのがテレビプロデューサーの佐久間宣行(47、ゴー☆ジャスと同じ磐城高校出身)だ。  いまもっとも勢いのあるいわき市出身の人物のひとりだろう。平子に言わせれば、3人に佐久間を加え「お笑い四天王(笑)」ということになる。  元々は、福島にはネット局がないテレビ東京の社員だったため、福島県民にとっては馴染みが薄いかも知れない。前述の平子とともに21年から始まった福島ローカルの番組『サクマ&ピース』(福島中央テレビ)に出演しているから、それで知った方もいるだろう。  佐久間はテレビ東京で現在も続く『ゴッドタン』や『あちこちオードリー』をはじめとする数多くの人気お笑い番組を制作。それと並行してテレビ東京社員でありながら、ニッポン放送で『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』のパーソナリティを務めるようになった。  そして21年3月31日付で同社を円満退社すると、これまでのテレ東レギュラー番組もそのまま継続しつつ、他局にも活躍の場を広げ、Netflixでも『トークサバイバー!』や『LIGHTHOUSE』といった番組も立ち上げた。  加えて、自身のYouTubeチャンネル「佐久間宣行のNOBROCK TV」も登録者数が100万人を超えている。さらに前述の通り『サクマ&ピース』など演者としても活躍。NHKのゴールデンタイムでの大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の特番や、フジテレビの港浩一社長肝いりで始まった『オールナイトフジコ』のMCも務めている。  佐久間が知名度を飛躍的に上げるきっかけとなった『オールナイトニッポン』パーソナリティ抜擢には、実は同郷の平子が大きな役割を果たしている。  元々はラジオ局に入ることを目指していたほどラジオ好きな佐久間は、Twitterなどで『アルコ&ピースのオールナイトニッポン』リスナーでもあることを公言していた。そこに目をつけたハガキ職人たちが番組で佐久間イジりを開始。  それが最高潮に達した14年10月17日、ついに佐久間は、それまで仕事上ではほとんど接点がなかったにもかかわらず、“乱入”という形でゲスト出演を果たす。  これが好評だったことを受けて15年8月29日、『佐久間宣行のオールナイトニッポンR』という単発特番の形で、ラジオパーソナリティになりたいという夢を叶えたのだ。  エンディングでは「ホントに人生ってわからないですよね。だって、普通に福島県いわき市の田舎の学生が、夢だなあと思って聴いていたラジオ。ニッポン放送を落ちたわけですよ、就職活動で。なのにバラエティのディレクターやって15年後、オールナイトニッポン2部のパーソナリティをやっているんだから」と語った。  しかし、夢はそこで終わらない。  リスナーの強い支持と秋元康らの後押しで番組は 19年4月3日から『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』としてレギュラー化したのだ。 「近くて遠い」憧れの東京 https://www.youtube.com/watch?v=RP7yT7INjAc&t=1089s 「佐久間宣行のNOBROCK TV」【下ネタ我慢】どぶろっくが本気ネタ8連発!下ネタで笑いたくない二瓶有加 & 松本優は我慢できるのか…?  佐久間自身のエンディングの言葉にあるように、中学生の頃からラジオを聴き始めた。そこにはいわき市という土地が大きく関与することになる。海沿いの街のため、東京のキー局の電波をギリギリ受信することができたのだ。  最初に聴いたのは、ニッポン放送の『三宅裕司のヤングパラダイス』だった。その流れで『オールナイトニッポン』も聴き始め、とんねるず、伊集院光、川村かおり(当時)、そして電気グルーヴの放送に夢中になった。自然とそこで流れるナゴム系の音楽も聴くようになり、サブカルにどっぷりと浸かった。  それはテレビからもそうだった。やはり海沿いのいわき市の一部は、関東圏のテレビを観ることができる地域がある。佐久間の家もそうだった。当時はフジテレビの深夜番組全盛期。『冗談画報』や『夢で逢えたら』を始めとする番組を観て新しいカルチャーを吸収していく。しかし、テレビやラジオは見聞きできても、学生にとって東京は遠い。  「当時はネットなんてないし、いわき市に届くものはほとんど何もない。必死にちょっとずつかき集める感じだったので東京のおじいちゃんに伝えて送ってもらったり、お金をためて東京へ行ってまとめ買いをしたり、単館の映画を観に行ったり。中高生の頃はいつも思ってましたよ。ああ、東京に住んでいればなあって。東京にいれば第三舞台(鴻上尚史主宰の劇団) も、東京サンシャインボーイズ(三谷幸喜主宰の劇団)も観られるのにって。第三舞台はギリギリ観ることができたけど、サンシャインボーイズは1回も観られないまま休止してしまったんです」(『GINZA』 21年6月号)  学校にもそういったカルチャーの話ができる友達はほとんどいなかった。何しろ学校内でも関東圏の放送を見ることができる家と見られない家が混在するのがいわき市の複雑なところ。共通言語がどメジャーなものしかなかった。  「僕らの学生時代は、三谷幸喜さんがテレビドラマを書き始めたくらいの時期だったんだけど、そういう話をすると『調子乗ってんじゃねえよ』ってなってた(笑)。ダウンタウンの話はできるけど、電気グルーヴや伊集院(光)さんの話はできない」(「CINRA」21年6月23日)  しかも、当時の小名浜はヤンキー文化が色濃かった。アニメ好きでもあった佐久間は『アニメージュ』をエロ本のようにコソコソ隠れて読んでいた。「二重人格」に近かったという。情報だけは入ってくるが、誰とも共有できない。近くて遠い存在の東京のカルチャーへの憧れがいわき市という少し特殊な街で醸成されていったのだ。 お笑い人材が育つ風土 https://www.youtube.com/watch?v=ITpfvyrWS4Y&t=3s ふたば未来学園で佐久間宣行さん・日向坂46 齊藤京子さんらが特別授業!【福島県】 (2023年8月8日)  「だから自分の作風もそうだと思うけど、東京に長年いても『東京者じゃないな』っていう感覚がずーっとあったから、純粋に都会のポップカルチャーに憧れてる目線はいまだになくならない。だから斜に構えた感じでポップカルチャーを見ることがあんまりないですよね。テレビ業界のど真ん中でテレビに染まってるって思えたことが一度もなくて」(同)  この感覚こそが、独特な立ち位置を可能にし、逆に大きな支持を集める理由に違いない。つまりは佐久間こそ「いわき市」という土地が生んだスターなのだ。  その佐久間は福島県のふたば未来学園で開催された「サマースクール」に講師として呼ばれ、中高生たちを相手にワークショップを行っている。19年に一度行き、23年に再び訪れた。  今回は「100人規模のホールで、『人気者になる方法』というテーマで、日向坂46の齊藤京子さんとやってもらいたい」というオファーだったという。  前回のように40~50人規模なら一人ひとりに振ることもできるが100人規模だと難しい。思案した佐久間は、事前にアンケートを実施し、そこから1人ずつ呼んでラジオ形式で発表していくという方法を思いつく。  100人を前にしてトークショーをやると「1対100」になるが、ラジオ形式ならたとえみんなの前で喋っても「1対1」のように感じることができる。それなら生徒たちの心の負担は軽いだろうと考えたからだ。果たして、この目論見は当たり大成功に終わった。  なぜ、佐久間がこの形式を考えだしたかというと、佐久間は福島の中高生の特性がよくわかっていたからだ。それはシャイさ。それも「人数が増えれば増えるほど周りの目を気にしてシャイになる」というものだ。逆に「人数が少ない方が元気になる」(『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』23年8月9日)。ラジオ形式はまさにその特性を活かしたものだった。  翻ってみると、あかつ、ゴー☆ジャス、平子もまた、バラエティの主流であるひな壇のような場では力を発揮できにくく、逆に少人数の場では爆発的に魅力が溢れ出すタイプだ。いわき市の風土が、テレビなどで異彩を放つ独特なお笑い人材を生んだのだ。

  • 【いわき市】選挙漫遊(県議選)

       「勝手に連動企画『政経東北』でも選挙漫遊をやってみた」。  11月2日告示、12日投開票の福島県議選。福島市、郡山市、いわき市、会津若松市各選挙区の立候補者39人を本誌スタッフ総出で取材し、選挙漫遊(街頭演説などに足を運んで選挙を積極的に楽しむ)を実践しようというもの。  11月5日(日)、6日(月)の2日間、街頭演説会場に足を運び、その様子を写真と動画で記録。併せてインタビュー取材も実施した。現職には「県政・県土の課題は?」、新人には「立候補した理由は?」などについて質問した。立候補者はどのような選挙活動を展開し、どんな事を話したのか。 担当:志賀 補佐:荻野 福島県議選【いわき市】編 https://youtu.be/H3LrOAB1K0E?t=3730 【福島県議選】投票前日!【選挙漫遊】総括 投票の判断材料に!福島・郡山・いわき・会津若松いわき市の解説は1:02:10~ 定数10 立候補者13 告示日:2023年11月2日 投票日:2023年11月12日 立候補届出状況↓ https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/601557.pdf 選挙公報↓ https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/601653.pdf 届け出順、敬称略。 あわせて読みたい 【福島市】選挙漫遊(県議選) 【会津若松市】選挙漫遊(県議選) 【郡山市】選挙漫遊(県議選) 安田成一 https://www.youtube.com/watch?v=47YD6DvqYVs  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「いわき市に関しては、水害被害が起きたことを考えると、防災対策、災害に強いまちづくりをしっかり進めることが最大の課題と考えています。令和元年東日本台風のときは市議だったが、河川改修を早く進めてもらいたいという要望を受けても、市としてなかなか対応できない面があった。その時のもどかしい思いから県議会への立候補を決意した。  3年経って二級河川の改修工事が進められたが、支流の方が進んでいない。先月には線状降水帯の影響による水害も発生した。いわき市とタッグを組んで予算をつけ、できる限り早く改修工事を進めることで安心して暮らせるまちづくりを実現したいと思っています。  エフレイとの連携も必要だと思っています。福島高専、東日本国際大学と人材育成の面で協定も結んでいるので、新産業をいわき市、福島県に根付かせて、そこで雇用創出につながれば人口減少の予測も変わってくるのではないかと考えています。優秀な人材がいわき市、福島県に留まってもらう取り組み、戻ってきてもらう取り組みを強力に進めて貰えればと考えています」 一言メモ  ロードバイクで駆け付けた支持者がちらほら(趣味仲間?)。演説に耳を傾けていたのは40~50代の子育て世代が中心で、女性もほかの陣営より見受けられた。今回回った中で一番支持者の幅が広いと感じた。新人候補だがもともといわき市議だったこともあって、知名度も高いのだろうか。(荻野) 鳥居作弥 https://www.youtube.com/watch?v=B4cQKb5wLJk  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「僕は今回の選挙では、単純に子育てと教育と福祉というところしか訴えていません。特に子育て支援と高齢者福祉は近いものだと考えていて、2つを組み合わせて対策を講じることが重要だと考えています。例えば特定の地域のみで働ける『地域限定保育士』という制度があるので、それを活用して、高齢者の皆さんが働けるようにしてもいい。その方法を考えるのは政治の役割です」  ――日本維新の会から県議選に立候補した理由について。  「分かりにくい政治にジレンマがあった。例えばALPS処理水についても、反対するのはいいが、その後どうするの?ってなってしまう。そういう意味で、日本維新の会が掲げる政策ははっきりしていて分かりやすい。ALPS処理水について、私は『全国各地で分担して捨てましょう。そうすれば早く放出できて、福島県への負担も最小限で抑えられる』と訴えています。人間関係で選挙をやるのではなく、分かりやすい政策を的確な言葉で伝えられるという点で日本維新の会はいい政党だと感じます」 一言メモ  演説会場のイオンモールいわき小名浜前は、目の前が「ツール・ド・いわき」ゴール地点になっており、イベントの音声がガンガン流れてくるトホホな環境。ただ、車や歩道橋から手を振る人もおり、着実に支持が広まっている様子も感じた。汚染水(ALPS処理水)放出について、「福島から30年以上も海洋放出したら負担が大きくなる。日本全国から放出したら数年で終わるはず」と主張。その是非はともかく、選挙という場で、独自性のある意見を主張していく姿勢は歓迎したい。(志賀) 吉田英策 https://www.youtube.com/watch?v=1scL7EG_A4k  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「福島県の財政力は全国3位だが、復興と称した大型開発や道路整備にばかりお金が使われていると感じています。県民の暮らしを応援するという視点から、教育や子育てなどに予算を割くべきです。特にいわきは医師数が少ないので医療機関の充実に充実させるべきだと思います」  ――今年2月の一般質問で会計年度任用職員の雇い止めについて質問していました。是正はされたでしょうか。  「1年契約ではあるもののボーナスを支給するということだったが、実際は労働時間が短縮されただけだったりして総額が増えているわけではない。一般の職員の待遇に改善することが必要だと思います」 一言メモ  共産党独自のしきたりなのか、本人到着までに支持者が歩道に横並びで〝戦争やめろ!〟などのコールを行っていた場面が印象的。支持者の方々と触れ合う写真を撮ろうとしたが、場所が郵便局の真向かいであまり長居できる場所ではなかったため、演説が終わると即時撤収。ある意味場馴れしているというか、統率が取れている感じを抱いた。(荻野) 真山祐一 https://www.youtube.com/watch?v=qVYED1Pb2Zc  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「課題はたくさんあります。中でも水害対策に関しては、流域治水をしっかり進めていくべきだと訴えています。『防災減災を社会の主流にしていくべきだ』というのは公明党がここ数年来主張していることです」  ――令和5年6月議会の一般質問では、「金属スクラップヤードでの事故を防ぐために許可制にして指導監視を強化しては」と指摘していました。県執行部は質問を受けて何か具体的に動いたでしょうか。  「『不適切な事例があれば県としての指導監視を図っていく』という答弁でしたが、具体的に条例ができたり、変化が起きているというところには至っていません。そういう意味ではまだこれからの課題だと思います」 一言メモ  JRいわき駅前で、山口那津男公明党代表が応援に来る街頭演説会を実施。駅前のペデストリアンデッキ、ラトブ前が多くの公明党支持者で埋めつくされ、お祭り・フェスのような熱気。市外からも応援に来ていた模様。山口代表が繰り返していた「ネットワーク」の強さをあらためて実感した次第。(志賀) 西丸武進 https://www.youtube.com/watch?v=_ssuXAFt_nI  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「1つは震災・原発事故からの復興です。復旧工事は行われていますが〝創生〟には至っていないので、そういう視点で復興を進めるべきです。2つはコロナ対応。まだ安心できない状況なので、いま受け皿対策や公衆衛生の管理の充実を徹底していく必要があります。3つは〝汚染水〟海洋投棄の問題です。投棄が完了するまで30年以上かかるとされることを踏まえ、県民の命を守るというスタンスで、問題が風化することない監視体制を構築する必要があります。環境、教育、福祉の充実・強化にもしっかり努めていきます」  ――昨年12月議会の代表質問で、JRの赤字路線への県の対応について質問していました。人口減少で鉄道維持が容易でなくなる中、県がどのように支援していくべきだと考えますか。  「県内の赤字路線では、まず地域住民の組織を作り、問題意識を共有化してから、行政が住民組織の提言を取りまとめ、財源の作り方を考えていく、という流れになっています。そういう意味では、まず地域ごと、駅ごとにまとまって組織を作っていけるかが重要になると思います。その道筋は行政側が責任を持って提供するべきです」 一言メモ  19時開始の個人演説会だけあって、力が入った長尺の演説。前段の後援会長のあいさつも力が入っていた。7期のベテラン議員だが、今回立候補した新人4人のうち2人は元いわき市議、ほか2人もそれぞれ維新公認、れいわ推薦を受けていることもあって、かなり警戒してる様子が見られた(荻野) 宮川絵美子 https://www.youtube.com/watch?v=467NOJKf-lw  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「県執行部には県民の生の声を聞いてほしい。給料はなかなか上がらないし、世論調査では教育費の負担を軽くしてほしいという声も多い。高校入学時のタブレット購入費を生徒が負担しているのは、東北では福島県だけです。高齢者の足の確保など高齢者支援も問題です。県議会ではその都度質問しています」  ――質問をすることで県執行部の対応は変わっていますか。  「問題提起をすると少し変わってくる。学校給食の無料化を訴えていたら、県内市町村が導入するようになった。子どもの医療費の無料化についても主張していたら、12年前の県議選の後に無料化が実現した。選挙は世論を喚起するチャンスであり、ずっと運動を続けてきたことに焦点が当たって、選挙の節目で変わっていくことも多いので、主張を続けることに意義があると考えています」 一言メモ  イオンモールいわき小名浜前の道路沿いで、施設に向かって演説する宮川候補。買い物客は足を止めることなく施設に入っていった。定数10に対し13人が立候補する激戦区だが、有権者の盛り上がりは今ひとつ……という状況を象徴する光景だった。(志賀) 矢吹貢一 動画撮れず。 取材に応じず。 一言メモ  事前に事務所に確認したところ、「事務所の方針で街角演説をする考えはありません。市内で一日選挙カーを走らせて、20時ごろ事務所に戻る予定です」とのこと。やむなく20時前に事務所に訪れ、スタッフとともに戻ってきた選挙カーを出迎えた。降りてきた矢吹候補に「政経東北です。ちょっとお話しお聞かせいただけないですか」と話しかけると、あからさまに苦笑いを浮かべ、無言で手を横に振りながら事務所内に入っていった。  しばらく外で待っていると、スタッフが出てきて「すみません、これから打ち合わせなので……。明日も街頭演説の予定はなく、戻ってきた後も時間が取れません。せっかく来ていただいたのにすみません」と謝られた。街頭演説もせずマスコミ取材にも応じないということは、自分の意見を広く知ってもらえる機会を放棄しているようなもの。矢吹陣営としては、新たな票の開拓は必要なく、既存の支持者を対象とした演説会で余裕で当選できるという判断なのだろう。  翌朝8時過ぎ、宿泊したいわき駅前のホテルで仕事をしていたら、矢吹候補の選挙カーの声が聞こえてきた。急いで窓から外を眺めたが見つけられず、そのまま声は小さくなっていった。(志賀) 安部泰男 https://www.youtube.com/watch?v=lhjMYDQJjt0  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「これまで信念として取り組んできたのは、住民が安全に暮らせる環境を作るということであり、防災・減災に対する思いは強いです」  ――9月議会の一般質問ではパートナーシップ・ファミリーシップ制度の導入について質問していました。県執行部は質問を受けて何か具体的に動きましたか。  「LGBT当事者の方から直接相談を受けて質問したものです。男女共同参画社会を築くために差別のない社会を築く、という県の方針を示したうえで、総括質疑では導入に向けてやっていくと答弁していました。県内市町村で導入の動きが加速しているのに県が何もやらないわけにはいかないと思います」 一言メモ  山口那津男公明党代表が応援に来ることもあって、エブリア北側駐車場の一角に公明党支持者100~200人が集結。SP・警察も多数。そのにぎわいに圧倒される。「いわき市に免許センターがないので、免許証がすぐにもらえない。県内で最も人口が多いのに。改善すべきだ」という主張はこの地域に住んでいなければ分からない視点で、ハッとさせられた。これこそ選挙漫遊の魅力。(志賀) 古市三久 https://www.youtube.com/watch?v=YV0IrOHy6O0  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「人口減少、少子高齢化で地域が衰退していることです。中山間地では草刈りをする人も減っており、自分で買い物に行くのも難しいという人が現実にいる。もし当選できたら総括質疑という形でなく、一般質問で問題提起したい」  ――ALPS処理水の海洋放出反対のスタンスを取っており、県議会でも陸上保管すべきと主張していたが、県は国の海洋放出方針に追随する形になりました。   「内堀雅雄知事が県民を代表して反対の声明を出すべきだったと考えています。これは新聞社などのアンケートにも書いている点です」 一言メモ  処理水海洋放出、原発事故収束作業に正面から疑問を呈するスタンス。海に面するいわき市選挙区でも意外とこういう演説は少ない。平日ということもあってか聴衆は2、3人だった。(志賀) 鈴木智 https://www.youtube.com/watch?v=CCwk0J33tMs  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「いわきにおいては水害対応だと考えています。自民党県連の動きと連動して、発災翌日から内堀雅雄知事に現地視察に入ってもらい、被害状況や地域の皆さんの声を聞いてもらいました」  ――令和5年9月議会の一般質問で、ドライバー不足が小名浜港の貨物に与える影響について質問していました。  「小名浜港に影響が出るのであれば質問しなければならないと考えた次第です。問題が可視化されるのに加え、県執行部も私も理解も深まるので、こうした質問をするのは意義があることだと考えています」 一言メモ  3連休最終日に予定されていた鹿島公民館での個人演説会。前回選挙では8位当選(定数10)だったこともあってか、応援弁士や陣営幹部からは気を引き締めるよう求める発言が続出。坂本竜太郎氏の県議選立候補見合わせで、逆に混乱している印象だった。(志賀) 青木稔 https://www.youtube.com/watch?v=Y0yiCo0MrsU  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「演説でも触れたが、やっぱり一番のポイントは人口減少。安心して働ける企業を誘致できるかが重要になると思う。そういう意味で注目しているのが福島イノベーション・コースト構想であり、エフレイ(福島国際研究教育機構)です。実現すれば必ず有力企業が来るので、いかにいわきの方につなげられるかが重要になります。そのために私も自民党県連としての立場でできる限りのことに取り組む考えです」  ――現在9期目で、演説では当初立候補を見合わせる方針だったという話もありました。  「年齢も年齢なので家族と相談して立候補を見合わせる決意をして、周囲にも伝えていましたが、さまざまな方から要請を受け、再び立候補することを決意しました」 一言メモ  地元・中央台の公民館で個人演説会を開催。参加者は約30人でほとんどが年配の方々。自民党県連いわき支部の重鎮ということもあって、森雅子参院議員のほか、今後の動向が注目される坂本竜太郎県議、市議らが応援演説に駆けつけた。1945(昭和20)年生まれで、いわき市議時代を含め議員生活は40年以上に上る。最後は10選に向けてガンバロー三唱。パワフルさでは誰にも負けていない。(志賀) 木村謙一郎 https://www.youtube.com/watch?v=ZVBagsrdRFQ    ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「河川整備を進めて水害の減災・防災に努めるのも必要だし、一次産業の後継者不足も深刻です。一番大きいのは人口減少ですね。都市部、山間部、それぞれ事情が異なるので、しっかり議論して解決していかなければならないと思います」  ――立候補を決意した理由は。  「11年にわたり市議会議員として活動してきましたが、市議会議員では解決できない問題にたびたび直面してきました。たとえば医療問題などは県にイニシアチブを発揮してもらわなければ改善は難しい。加えて現役世代として声を聞いてほしいという思いや、いわき市の中心部から外れた久之浜地域を代表する立場から県議会で意見を述べていきたいと思いがあり、立候補を決意しました」 一言メモ  昼前の時間帯にしては人の集まりがまばらだった。支持者は子育て世代と高齢者の人が中心の印象。演説でも触れていたように「久之浜地区から県議を!」という気概が非常に強く、地元での遊説の様子も気になるところ。(荻野) 山口洋太 https://www.youtube.com/watch?v=fX1X0UkWfaM  ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。  「演説でお話しした通り、現役医師としていわき市で働くようになって医療体制に課題を感じ、そこを改善すべきだと考えたので立候補を決意しました」  ――れいわ新選組の推薦を受けていますが、無所属で立候補した理由は。 「基本的には特定の政党に属さず、市民から聞いた話を基に政策を打ち出していきたいと考えています。これまで1万8000軒を超えるお宅にお邪魔して話を聞いてきました」 一言メモ  演説予定場所の商業施設前に、ピンク色の選挙カーがさっそうと登場。聴衆は支持者と思われる高齢者が数人。車内から手を振るドライバーも。「この間1万8000軒以上を訪問した」という言葉は伊達じゃないということか。33歳という若さ、現役医師が医師不足解消を訴える点も支持拡大につながっている様子。(志賀)

  • いわき市で再起を図る2人の政治家【鳥居作弥】【清水敏男】

     元県議の鳥居作弥氏(49)が昨年末で立憲民主党を離党し、日本維新の会からの立候補を模索している。本人に会ってその狙いを聞いた。 失意の衆院選出馬断念から1年半 立憲から維新に移った鳥居作弥氏 鳥居作弥氏  鳥居作弥氏は1974年3月生まれ。磐城高校、獨協大学経済学部卒。吉田泉衆院議員の秘書を務め、2011年、県議選いわき市選挙区に民主党から立候補して落選。15年の県議選で約7500票を獲得し、初当選を果たしたが、19年の県議選で国民民主党から立候補して再び落選した。 その後、立憲民主党入りし、21年には県連副代表に就任。同年10月の衆院選に立候補するための準備を着々と進めていた。ところが、野党共闘で候補者を一本化することになり、共産党の新人候補に譲る形で直前に小選挙区での立候補を断念し、比例代表で立候補したが落選した。 その後、政治的に目立った動きはなかった鳥居氏。今年に入ってからは「立憲民主党を離党し、周囲に『日本維新の会(以下、維新と表記)から県議選に出たい』と相談している」(いわき市で活動するジャーナリスト)とウワサされていた。 維新と言えば、大阪府を中心に支持を集める政党で、4月の統一地方選では神奈川、福岡両県議選でも初めて議席を獲得。その躍進ぶりに注目が集まった。 そうした中で5月11日に報じられたのが、維新が福島県総支部を設立したというニュースだ。 県内には党所属の地方議員がいないため、次期衆院選や県議選での党勢拡大を目指して設立されたもので、今後は積極的に候補者を擁立する方針だ。設立は2月23日付で、3月8日に県選管に届け出た。維新が東北地方で県総支部を立ち上げたのは、宮城、秋田に続き3県目。  衆院議員の井上英孝氏(4期、大阪1区)が総支部長、元参院議員の山口和之氏(同党参院全国比例区支部長、郡山市在住)が幹事長に就いた。同党はいわき市を「重点地区」に位置付けており、同市平地区(みさきホテル&ラウンジ内)に事務所を設置した。 同日の記者会見で井上氏は、当面県議選への準備に重点的に取り組む方針を示し、「福島県に縁がある人を優先したい」とも話した。 こうした動きを見ていると、鳥居氏の「維新入り」は既定路線のように見えるが、実際はどうなのか。鳥居氏に取材を申し込んだところ、面会場所に指定されたのは同党県総支部事務所があるホテルだった。 「この間、私から情報発信することは控えていたのですが、選挙の動向を取り上げるユーチューブなどでも私の名前が出てきたので驚きました」。鳥居氏は笑いながら、これまでの経緯を振り返った。 「衆院選立候補直前に〝公認取り消し〟となり自暴自棄になったし、支援していただいた方と一緒に思い悩んだ1年でした。直後は立憲民主党に対する怒りが強かったが、しばらくすると『あの時、なぜ無所属で立候補するという決断ができなかったのか』という後悔に変わりました。自分を支えてくれた皆さんへの裏切り行為でもあり、その後悔は現在も続いています」(鳥居氏) 接点は山口元参院議員 山口和之氏(HPより)  21年の衆院選では立候補に向け、家族の理解を得て、私費も投じて準備を進めてきた。ところが、告示10日前というタイミングで立候補を断念せざるを得なくなった。  具体的にどういう経緯・理由で立候補断念・公認取り消しに至ったかについて、鳥居氏は語ろうとしなかったが、ある支持者は「要するに直前ではしごを外された。いまも立憲民主党県連から明確な理由は説明されていない」と憤りながら話す。 昨年夏の参院選後、立憲民主党を離党。しばらくはニュートラルな立場でいようと考えていたが、今年になって、ある人物から連絡が入った。それが前出・山口氏だった。 維新との接点はなかったが、何度か会って議論するうちに教育、福祉を重点施策に掲げる自分と、医療、福祉の充実に注力する山口氏とは共通点が多いと感じた。そこから維新に関心を抱くようになり、今回の県総支部設立に全面協力した。 同党県総支部の事務所がいわき市に設置されたのは、「福島県の再生を左右するのは浜通りの再生。拠点を設けるなら福島市の県庁近くではなく、復興の最前線である浜通りに作るべきだ」という鳥居氏の助言を受けたものだという。 維新の政策について尋ねると「教育完全無償化などの政策を打ち出し、大阪府で実績を残しているのが大きい。個々の政策について賛否はあるかもしれませんが、地方行政では不可能だと思い込んでいたことを実現していく姿に、『強い思いと行動力があればできるんだ』と衝撃を受けました」と熱っぽく語った。 実質的に同党入りを果たしているような状況だが、同党から選挙に立候補する予定はあるのか。記者がこう問いかけると、鳥居氏は「この間、同党県総支部の組織作りを最優先に活動してきました。〝受け皿〟がしっかりしていないと立候補者は不安になるものです」としたうえで、次のように述べた。 「ようやく組織がまとまりつつあるので、後援会の皆さんなどさまざまな方に相談したうえで、近いうちに私自身の方針に関しても決断させていただきたいと思います。現実的に考えて、立候補を表明するとしたら県議選だと思います」 5月27日にはいわき市で県総支部設立記念講演会が開かれ、維新の馬場伸幸代表が講演する。原稿執筆段階(同25日)ではどうなるか分からないが、調整がうまく進めば、この場で鳥居氏の「決断」が発表される見通しだ。 ※鳥居作弥氏は5月27日、11月12日投開票の県議選に、日本維新の会公認で立候補することを表明した。  なお鳥居氏に関しては、衆院選への立候補が有力とみる向きもある。広島で開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)が終了し、衆院の早期解散論もささやかれているだけに、本誌が店頭に並ぶころには、鳥居氏が話していたのと全く違う情勢になっているかもしれない。 県総支部設立時の記者会見で、県内の党員数は110人と明かされた。鳥居氏によると、民主党時代からの支持者も一連の行動に理解を示し、そのほとんどが維新に流れているという。本県における支持基盤がほとんどない同党にとって、鳥居氏の存在は頼もしいはずで、そういう面も含めて山口氏も鳥居氏にコンタクトを取ったのだろう。 現在、県議選いわき市選挙区(定数10)では現職10人、新人3人が立候補を表明しており、鳥居氏が〝参戦〟すればさらに激戦になる。いわき政界において、今後もその動向が注目される存在となりそうだ。  いわき市長を2期8年務め、3選を目指す選挙で落選した清水敏男氏(60)。現在〝充電中〟だが、リベンジへの意欲は潰えていないようだ。 落選後も後援会解散せず市政監視 清水敏男氏が見据える「最終目標」 清水敏男氏(2021年4月撮影)  清水敏男氏は1963年8月生まれ。磐城高校、日本大学法学部卒。鴻池祥肇衆院議員の秘書を経て、いわき市議2期、福島県議4期。党派は自民党。 そこから2013年9月のいわき市長選に立候補して初当選。21年9月、3選をかけて立候補したが、4候補者中3位の得票数で落選した。 本誌21年2月号の記事では選挙前の時点での状況を次のようにリポートしていた。 《2期目の公約として掲げた平城復元やスタジアム建設については「平地区ばかり意識した〝打ち上げ花火〟的な政策はいらない」と冷ややかな意見が多く、「台風やコロナへの対応が遅い」、「2期目は目立った事業がなかった」という批判の声も聞こえてくる。ただし、「2期8年で目立った失敗はなかった。他候補は経済・教育など得意分野があるが決め手に欠ける。政治に詳しくない多くの市民は、名前を知る現職に投票するのではないか」(前出・同市の事情通)という見立てもある》 実際には当選した内田広之氏と1万9000票差が付いたので、想像以上に現職批判の声が大きかったということだろう。 20代から30年以上にわたり政治の道を歩み続けてきた清水氏。市内の経済人によると、「知人が経営する東京の会社に籍を置いている」とのことだが、その一方で「年賀状に捲土重来を期す言葉が記されていた。再起の道を虎視眈々と狙っているのではないか」(清水氏の支持者)ともささやかれている。 3月に行われた自民党県連定期大会では県議会OBとして出席し、その場で立ち上がってアピールした。 清水敏男後援会名義のフェイスブックには、地元のお祭りに参加したり、学生時代の先輩の選挙事務所を激励した様子などがアップされており、積極的に出歩いている様子がうかがえる。 実際のところ、清水氏本人はどのように考えているのか。同市常磐関船町の自宅を訪ねたところ、清水氏本人が対応し、そのまま話を聞くことができた。 「東京の知り合いの会社で社外取締役を務めており、月に1度の取締役会には必ず出席しています。いまも東京から戻って来たばかり。市長選落選後、妻は以前やっていた幼稚園教諭の仕事を再開し、昼間は不在にしているので、一人で昼食を取っていたところです」(清水氏) 2年後の市長選を意識?  〝進路〟について注目が集まっていることを伝えると、「私は何も話していないのに『秋の県議選に出るのではないか』とウワサされているのが聞こえてくる」と苦笑したうえで、次のように話した。 「県議は4期務めたので立候補しようとは考えません。来年秋にはいわき市議選が控えていますが、自分の選挙でお世話になった市議を支えることはあっても、自分が出ることは間違ってもない。衆院選に関しては、新4区に吉野正芳先生(74、8期)がおり、交流させていただいているので、そこから立候補しようという考えはありません」 一方で、2年後に市長選があることを振ると、「一市民として内田市政をウオッチングしており、そつなくこなしていると思うが、疑問に感じる部分もある。いずれにしてもまだ先の話だし、私に関しては〝充電中〟ということですよ」と述べた。少なからず意識はしているようだ。 取材の中で、後援会は休眠状態のまま残してあり、現在も岩城光英元参院議員、市議らと交流があることを明かした清水氏。一方で、前回市長選では清水氏の有力支持者が別の候補者の応援に回った経緯があり、仮に市長選立候補を考えるなら体制の建て直しが急務となる。〝充電期間中〟に再起のきっかけを見いだすことができるか。

  • 【いわき駅前】22時に消える賑わい

     新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが、5月8日から季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げられた。かつての日常に戻りつつある中、店での飲食は動向が大きく変わった。客の重視は「飲む」から「食べる」に変化。職場の宴会は減り、あっても1次会のみ。酒の提供がメインで接待を伴うスナックは2次会以降を当てにしているため、客数減による淘汰が進む。第3弾となる夜の街調査は、いわき市を巡った。 客足戻ってもスナックに波及せず  本誌はこれまで郡山市と福島市にあるスナックの数を、電話帳を基にコロナ前と後で比較してきた。電話や訪問で営業状況を確認し、ママやマスターに聞き取り調査を重ねた。 第3回となる今回は、経済規模が県内2番目のいわき市(表1参照)の夜の街を調べた。新型コロナが5類に引き下げとなって初めての土曜日(5月13日)夜に、本誌記者2人がJRいわき駅前(平地区)の店を訪問し、店主から聞き取った。 表1 県内の経済規模上位5市 市町村内総生産県全体の構成比郡山市1兆3635億円17.10%いわき市1兆3577億円17.00%福島市1兆1466億円14.40%会津若松市4553億円5.70%南相馬市3307億円4.10%出典:2019年度『福島県市町村民経済計算』 一1000万円以下切り捨て  現地調査の前に店の増減を電話帳から把握する。新型コロナ感染拡大前の2019年11月時点と感染拡大後の21年10月時点の電話帳(NTT発行『タウンページいわき市版』)で掲載数を比較した。 2021年時点で20軒以上ある業種を挙げる。業種は店からの申告に基づき重複がある。多い順に次の通り(カッコ内は減少率)。 スナック 273店→221店(19・0%) 飲食店 201店→180店(10・4%) 居酒屋 168店→148店(11・9%) 食堂 83店→68店(18・0%) すし店(回転ずし除く) 69店→64店(7・2%) レストラン(ファミレス除く) 72店→62店(13・8%) ラーメン店 67店→62店(7・4%) 喫茶店 61店→54店(11・4%) 焼肉・ホルモン料理店 38店→37店(2・6%) 中華料理店 38店→37店(2・6%) バー・クラブ 48店→36店(25・0%) 焼鳥店 34店→33店(2・9%) うどん・そば店 30店→28店(6・6%) 日本料理店 28店→25店(10・7%) ファミレス 25店→24店(4・0%) カフェ 23店→21店(8・6%) 減少数・率ともに大きいのはスナックだった。53店が電話帳から消え、1店が新規掲載。差し引き52店減少した。もともとの店舗数はスナックや居酒屋に比べれば少ないが、減少率が最も大きかったのはバー・クラブの25・0%。12店が電話帳から消え、新規掲載はなかった。 酒と接待の場を提供するスナックやバー・クラブの減少が著しいのは郡山・福島両市も同じだ。 郡山市 スナック 202店→159店(減少率21・2%)。消滅48店、新規掲載5店 バー・クラブ 45店→42店(減少率6・6%)。消滅5店、新規掲載2店 福島市 スナック 194店→145店(減少率25・2%)。消滅50店、新規掲載1店 バー・クラブ 42店→35店(減少率16・6%)。消滅7店、新規掲載なし スナックの数はコロナ前も後も3市の中でいわき市が最も多い。にもかかわらず減少率は19%と他2市と比べて2~5㌽低い。理由は飲食店街が分散していることが考えられる。スナックが10店舗以上ある地区は表2の通り。市内最大規模の飲食店街は平・田町でスナック約120店舗がひしめく。平地区のスナックの減少率は21%で、郡山・福島とあまり変わらない。減少幅の小さい小名浜や植田など周辺地区が平の減少率を緩和している形だ。 表2 いわき市のスナックの店数 2019年2021年減少率平地区15212021%小名浜地区453717%植田地区423419%常磐地区151220%出典:NTT『タウンページ』の掲載数より 「回復とは言えない」  平・白銀町でバー「QUEEN」を経営するマスター加藤功さん(65)=平飲食業会・社交部会部会長=は、叔母から店を引き継いで計63年続けている。 「客の入りは回復しているとは言い難いですね。土曜日でも空席がある。ライブを開催し、大物ミュージシャンを呼んでもチケットは完売になりませんでした。みんな出不精になったのかな」(加藤さん) コロナ禍で閉店する店が増えたことについては、 「跡継ぎがいないというかねてからの問題があります。コロナ禍が閉店に踏み切るきっかけになった。私の店も後継者はいません。酒を提供する店でも料理がメインのところは回復力が強い。純粋にお酒を愉しんだり、女性が接待する店はまだまだ厳しい」(同) 別のバーの男性オーナーAさんは 「うちは仲間内で楽しむ雰囲気の店です。美味しいものを味わってもらうというより、1人3000円くらいでサンドイッチなど軽食を用意し、腹いっぱいになって帰ってもらう。昔は公務員が多く来ていたが、コロナ以降は全然ですね」    平競輪場が近いこともあり、店内には競輪のグッズが飾ってあった。 「今は送別会をやる選手もいません。余裕がないんでしょうね。お客さんも店も一緒です。やめちゃった店は多分、コロナ禍の間に運営資金を4、500万円くらい借りてあっぷあっぷになったんじゃないか。俺もいつやめてもおかしくない。あと1年、あと1年とマイナスの状況で続けてきた。貯金はみんな食いつぶしたよ」(同) ただ、公務員や地域行事の打ち上げが戻ってきたことで、感染の収束を感じるとも話す。 「ようやく4月から警察関係の人たちが飲み歩き始めた。いい兆しです。だが、うちはPTAや保護者会などの団体さんが動き出さないと経営は厳しい。コロナ前は野球、サッカー、学校行事などが終わった後は打ち上げがお決まりでした。消防団もお得意さんですね。年間行事が決まっているので、安定した集客が見込めます」(同) パートで本業を支える  筆者は別の店主から「昼間にパートに出て本業(スナック)を支えている店もあった」と聞いた。 あるスナックのベテランママBさんも「他人事ではない」と話す。 「店を閉めるには借金を清算しなくてはなりません。でも、この年になったら働き口がないので店を続けるしかない。お客さんの数はコロナ前の水準には戻らないけど、常連さんが来てくれるのでかろうじてやっていけます」 前出のマスター加藤さんは、コロナ後の客の飲み方に明らかな変化を感じているという。 「大型連休中はお客さんがコロナ前の7割程度まで戻った。ただし、1次会だけで終わるケースが多い。帰りの運転代行のピークは20~21時の間です」 5月13日の土曜日、本誌記者2人は19時を待ち、電話帳から消えたスナックやバー・クラブを訪ね開店状況を調べた(結果は別表参照)。20~21時の間は平・田町の路地を団体客が通り、客引きが2次会の場所を紹介しようと賑わっていた。だが21時を過ぎると客足は減り、客引きの方が多くなった。女性従業員がペアになり、いわき駅方面に向かう男性客を呼び止めるが、人の流れが止まる気配はなかった。 電話帳から消えたいわき市平のスナック、バー・クラブ ○…5月13日(土)に営業確認 ×…営業未確認 地区店名最後の所在地または移転先営業状況田町スナックMajo新田町ビル〇桐子×cantina×COOL田町MKビル×Sweethomeミヨンビル〇LOVERINGミヨンビル→泉に移転集約〇スナック・汐第2紫ビル×スナック美穂志賀ビル×チェンマイ×歩楽里×スナック僕×Boroルネサンスビル×サムライサンスマイルビル2〇ラソ(Lazo)アマーレビル→田町鈴建ビル〇ビージェイオセーボ(BJOSEBO)サンスマイルビル1×スナックむげん梅の湯ビル×DREAM移転の情報×WITH二葉館ビル〇くおん田町ビル〇夕凪×きなこ寺田ビル×スナック・杏第3紫ビル×Materia×スナックパルティール2×パブスナックキャットハウス×ROAD鳥海ビル〇カマ騒ぎ×BAR BLUE〇Berry・Berryタマチビレッジ×二町目上海新天地紅小路ビル×スナックきよみ×スナック北京城ひかりビル×スナック戀(れん)×白銀アジエンス×クイーン〇酒処さかもと×五町目プラス・ワン移転の情報×パークサイド××…所在地が空欄の店は移転先の情報を得られなかった。  22時を過ぎると「お兄さん、マッサージいかがですか」と片言で誘ってくる女性が増えてきた。前出のベテランママBさんによると、中国人グループが組織的に行っているという。 土曜の夜でも22時には客が引けてしまう。スナックやバー・クラブにとっては本来、この時間帯からが勝負だが、そもそも2次会の客が減っているので、賑わう店とそうでない店の二極化が進んでいる。 期待が薄い駅前再開発 いわき駅並木通りの再開発事業  業界として打つ手はあるのか。 「徐々に暑くなり、街中でのイベントが再開されれば人通りは多くなります。それを飲食店街にどう呼び込むか。今夏、いわき駅前では七夕まつり、小名浜では花火大会がコロナ前の規模で開催されます。昨年末には、いわきFCのJ3優勝とJ2昇格を祝うパレードも同駅前でありました。いわきFCに関してはイベントが始まったばかりということもあり、飲食店街の賑わいにどうつなげるか手探りです」(前出・加藤さん) いわき駅前は再開発でホテルやマンションの建設が進む。今後、宿泊しながら飲食する人は増えることが予想され、飲食店街にとっては好材料になるのではないか。 ただ、各店主に話を向けると「そうなればいいですね」「そんなに関係ないな」と、あまり期待していない様子だった。 田町で店の営業状況を調べていると、客引きの女性従業員から「どの店もいつ潰れてもおかしくない。もっといいように書いてくださいよ」と注文を受けた。 正直、プラスの材料を探すのは難しい。早く調査を終わらせようと、女性従業員にリストに載っている店が今もやっているか尋ねた。 「その店は昨年9、10月ころにはなくなったよ。ママが『売り上げがないから疲れちゃった』って。ママが亡くなって閉めた店もあります」 本誌がリストに載せた店は、消えた店の方が多かった。 「私らは最後までやるつもりですよ。それこそ死ぬまでね」 と女性従業員。覚悟を決めた人の言葉だった。 あわせて読みたい 客足回復が鈍い福島市「夜の街」|スナック営業調査 コロナで3割減った郡山のスナック

  • 【いわき市】内田広之市長インタビュー

    うちだ・ひろゆき 1972年3月生まれ。東北大教育学部卒。東大大学院教育学研究科修了。文部科学省教育改革推進室長、福島大理事兼事務局長などを歴任し、2021年9月の市長選で初当選。  ――市長就任から1年半が経過しました。この間を振り返って。 「就任当時、市が抱えているさまざまな課題について、『見える化』が図られておらず、青写真も示されていない現状にありました。そのため、昨年1年かけて議論を重ねながら『いわき版骨太の方針』を策定し、今後のビジョンをお示ししました。 教育・子育て、農林水産業の担い手不足、医師不足、産業振興、若者の雇用確保、公共交通整備などについて、骨格をつくり見通しを示しました。さらに各地区の区長を中心とした話し合いの場に足を運び、課題や取り組み状況を共有しました」 ――優先的に取り組みたい課題は。 「特に重視しているのが、若者の人口流出です。高校卒業後、進学・就職で約6割が首都圏などに流出します。人口減少につなげないためには、地元に帰りたいと思ってもらえる環境づくりが大事であり、産業振興や若者の雇用確保を生み出すことが大事です。本市は製造品出荷額等が東北で1位の都市であり、ものづくりや素材産業の分野で、いかに若者にとって魅力的な雇用を生み出せるかがポイントになると思います。 4月1日、浪江町に福島国際研究教育機構(エフレイ)が開設されました。これらを見据えて、本市では課長級のエフレイ連携企画官を2人配置しました。また、4月15日には市役所内郷支所にエフレイの出張所が開設され、市内で設立記念シンポジウムが開催されました。世界トップレベルの研究者が集まる同機構と連携し、市内の既存産業と研究が融合していくことで、専門性が高い分野の若者に市内で働いていただけることを期待しています。若い力が活発になることが真の復興であり、今年はスタートの年だと思っています」 ――新型コロナウイルスの5類移行に伴い、観光振興をはじめコロナ禍で制限されてきた事業に着手できることと思います。 「コロナ禍前の市内入り込み客数は約800万人でしたが、2022年は約540万人でした。今後はウィズコロナの時代になり、一時的に感染者が増加しても、行動制限・イベント自粛を呼び掛けるのではなく、各自が対策しながら開催していくことになると思います。 本市では昨年から花火大会、いわき七夕まつり、いわきサンシャインマラソンなどのイベントを順次復活しており、海水浴場もオープンしました。今年はそのほかのイベントも本格的に再開する予定で、市外から訪れる人をしっかりおもてなししていきたいと考えています。 入り込み客数増加という意味では、サッカー・いわきFCのJ2昇格により、同チームや対戦チームのサポーターが多く足を運ぶようになったことも大きいです。先日、JR磐越東線のいわき―小野新町駅間が赤字になっているという発表がありましたが、いわきFCの試合などと連携し利用を促すのも一つの方法だと思います。沿岸部にサイクリングロード『いわき七浜街道』を整備しているので、自転車関連の合宿なども積極的に誘致したいですね」  ――市では健康ポータルサイトを設立し、健康指標改善に取り組んでいますが、今後の展望は。 「65歳の人が元気で自立して暮らせる年数を算出した『お達者度』を県内13市で比較すると、本市は男女とも県内最下位です。特定健康診断の受診率もワーストで心臓・脳血管疾患による死亡割合は他市と比べて高い。健診を怠り、病気が悪化して治療が遅れる傾向が読み取れます。塩分摂取率は全国平均より高く、生活習慣も健康指標の低さに影響していると思われます。 子どものうちからの啓発が必要だと考え、現在、市内のモデル校の中学2年生を対象とした事業を実施しています。実際に早期指導は改善効果があることが分かったので、今後対象校を拡大し、学校を通して家庭に健康意識が広まることを期待しています。また、高齢者向けにフレイル(加齢により心身が衰えた状態)の疑いがないか検査を実施したり、スポーツイベントで血液検査や血圧測定を行ったり、シルバーリハビリ体操を普及させることで、介護予防の取り組みも広めています。加えていわき市医師会、いわき市病院協議会と連携協定を締結し、健康寿命を延ばす取り組みも進めています」 ――近年、激甚化する自然災害への対策が不可欠となっています。 「さまざまな対策を講じていますが、その中から2つ紹介します。 1つは要支援者の把握です。東日本大震災や令和元年東日本台風では、思うように動けない要支援者が逃げ遅れて亡くなったケースが確認されました。そこで個別に避難計画を策定することを決め、特に、災害リスクが高い地域の要支援者からヒアリング調査を実施し、災害時の避難体制の整備を進めています。次の災害時は『逃げ遅れゼロ』を実現したいと思います。 もう一つは防災士の活用です。本市には防災士の資格を持つ人が県内最多となる900人以上います。市内には町内会が529団体あり、403団体の自主防災組織が立ち上げられていますが、人口減少や高齢化の進展の中、訓練などの活動状況に差が生じてきているようです。そこで、防災士に災害時における地域のリーダーとして活躍してもらおうと考え、昨年、全国初となる『登録防災士』制度を作りました。 令和元年東日本台風で越水した夏井川や好間川は川底の掘削がだいぶ進んでおり、同じ規模の雨が降っても水害は防げそうですが、自然災害の甚大化が進んでいるので、防災対策が重要になると考えています」 ――国・東京電力は福島第一原発敷地内に溜まるALPS処理水の海洋放出を春から夏にかけて実施する方針です。沿岸部の自治体としてどのように受け止めていますか。 「国・東電は住民向けの説明会を開いたり、福島県産品のPRイベントを開催しており、アンケートなどを見る限り、国民への理解も少しずつ広まっているように思います。ただ、まだ合意が整う途上にあります。国・東電は漁業関係者の皆さんに対し『関係者の理解なしにいかなる処分も行わない』と約束しているので、まずは理解醸成をしっかりやってほしい。そのためには、対話を重ねるしかないのではないでしょうか」 ――今年度の重点事業について。 「特に強調しておきたいのが、子育て関係の施策です。国の方で異次元の子育て支援策を掲げているので、本市でも連動して手厚くしていきたい。子育て世帯の支援としては、部活動などで全国大会などに出場する選手への支援メニューを充実したり、インフルエンザの予防接種費用の助成を実施しました。学校給食の無償化についても全国で議論になっているので、市長会を通じて国へ伝えていきたいと思います」 いわき市のホームページ 掲載号:政経東北【2023年5月号】

  • 【アクアマリンふくしま】施設をリニューアルオープン

     環境水族館「アクアマリンふくしま」(いわき市)の子ども体験館「アクアマリンえっぐ」が3月20日にリニューアルオープンし、多くの観光客が訪れている。  施設をリニューアルオープン  同施設は釣り場がある子ども向けの体験型施設で、楽しみながら自然の大切さや生物の多様性、命の尊さなどを学ぶことができる。今回のリニューアルでは、はく製タッチやものづくりワークショップ、生き物調査、オリジナルのぬり絵など、いろいろな体験ができるエリアへと生まれ変わった。新たに誕生した体験プログラムは次の通り。 「いろいろミュージアム」――いろいろなはく製にさわって生物の多様性を学ぶことができる。参加料100円ではく製クイズにもチャレンジできる。 「いろいろ工房」――水族館の生き物、海や森にある素材を使ったものづくりワークショップを随時開催。つくるものは時期によって変わる。 「いろいろアーティスト」――アクアマリンふくしまの展示をイメージした、個性豊かな生き物たちのぬり絵が楽しめる。 「すくすくキッズ」――絵本を読んだり、おもちゃで遊んだりすることができる親子のくつろぎスペース。 これらリニューアルオープンと同じ3月20日には、館内の生き物解説を専門とする解説員「こんべえズ」がデビューした。ごんべえズはアクアマリンふくしまをより楽しんでもらうため「ごんべえズトーク」と題したさまざまな解説を行っている。 「ごんべえズ」のメンバー  例えば、潮目の海の大水槽の展示を解説してくれる「黒潮水槽の生き物たち編」は土日、「黒潮水槽のえさのじかん編」は毎日開催している(火曜は給餌がないため、解説内容は前記の生き物たち編になる)。所要時間は15分、参加費無料。また不定期開催の「さわって学ぶはく製編」では、さまざまな生き物のはく製について解説してくれる。開催時はアクアマリンえっぐ内に掲示される。 大水槽展示の解説の様子  ごんべえズの活動は裏側の解説だけにとどまらない。「ごんべえズガイド」と題して施設のバックヤードを紹介しており、特別ツアー「バックヤード水槽大公開コース」では魚を繁殖している水槽やデビュー前の生き物を飼育する水槽が並ぶ水生生物保全センターを中心に案内してくれる。どんな生き物に出会えるかは、その時のお楽しみだ。ちなみにアクアマリンボランティアが水族館の裏側を紹介してくれるバックヤードツアーも3月25日から復活した。各ツアーの開催日時は公式サイト等で確認していただきたい。 ごんべえズの皆川裕斗さんはこのように話している。 「さまざまな体験を通して生き物や海の魅力に気付いていただければうれしいです」 生き物を通じてさまざまな体験が楽しめるアクアマリンふくしまに足を運んでみてはいかがだろうか。問い合わせは☎0246ー73ー2525まで。 前売り券を購入する 電子チケット 【アソビュー】 コンビニチケット 【セブンチケット】 あわせて読みたい 【いわき市】サラブレッドの再起支える〝聖地〟【JRA競走馬リハビリテーションセンター】

  • 【いわき市】サラブレッドの再起支える〝聖地〟【JRA競走馬リハビリテーションセンター】

    (2022年10月号)  オグリキャップ、トウカイテイオー、テイエムオペラオーなど、競馬史に残る名馬が、現役時代に入所していた競走馬用の温浴・リハビリ施設がいわき市にある。〝競馬ファンの聖地〟ともなっている同施設に足を運んだ。 【いわき市常磐白鳥町】JRA競走馬リハビリテーションセンター  いわき湯本温泉は古くから湯治の名所として栄えてきた温泉地で、有馬温泉(兵庫県神戸市)、道後温泉(愛媛県松山市)と並ぶ日本三大古泉だ。全国的に珍しい泉質で、その効能から「美人の湯」、「心臓の湯」、「熱の湯」とも呼ばれる。 そんな同温泉の温泉街の西側に、競走馬専用の温泉を備えたリハビリ施設があることをご存じだろうか。 1963(昭和38)年にJRA競走馬保健研究所常磐支所として開所した「競走馬リハビリテーションセンター」(小平和道所長)だ。屈腱炎・骨折など脚部に疾患を抱える現役競走馬を受け入れ、レース復帰に向けたリハビリの支援を行っている。 広大な敷地の中には、ダートコースの調教馬場(1周400㍍)をはじめ、脚部に負担をかけず心肺機能を高められるスイミングプール(1周40㍍、深さ3㍍)やウオータートレッドミルなどの設備が設けられている。 馬場では脚の具合を見ながら徐々に速度を上げる  療養馬の回復状況に合わせてメニューが組まれ、朝8時から獣医師立ち合いのもと、各施設でリハビリが行われる。取材時の7月中旬現在、16頭の馬が入厩していた。馬房は40馬分あるものの、「人手不足で所属している厩務員に限りがあるので、現在はフルでは受け入れていない。そのため、順番待ちになることもある」(広報担当者)という。  13時30分からスイミングプールでの調教が始まると、フェンス越しに見学に訪れた競馬ファンや子ども連れが集まってきた。楽し気に泳ぐ姿をイメージしていたが、近くで見ると、「ブルルッ」と鼻を鳴らしながら必死の表情で泳いでいた。厩務員は手綱を引いているほか、さまざまな道具を駆使して歩みを止めないようにしている。療養馬にとってはハードなリハビリの一環なのだろう。 プールで泳ぐ療養馬 フェンス外から見守る競馬ファン  初めてプールに入るという馬に至っては、厩務員が押しても引いても10分以上その場から動こうとしなかった(もっとも、厩務員にとってこの行動は想定の範囲内で、この日は、水に慣れさせるのが目的だったようだ)。写真やほのぼのニュースの映像で抱いていた涼やかなイメージとのギャップに驚かされた。  リハビリ終了後には、38~40度の足湯と打たせ湯で疲労を解消する。リハビリにより溜まったストレスを解消する効果もあるという。温泉でリラックスできるのは馬も人間も同じということだろう。 足湯と打たせ湯の温泉でリラックス  慣れた手付きで馬を連れて回る厩務員はいずれも若く、女性の姿が目立った。競馬業界への就職を目指してここで勤めている人が多いという。 リハビリ支えるスタッフ 馬の懐に入り蹄鉄を打ち付ける兒玉さん  スタッフの一人に声をかけたところ、同センターに常駐する装蹄師・兒玉聡太さん(32)だった。 装蹄師とは馬の蹄(ひづめ)に蹄鉄を打つ技術者のこと。体重400~500㌔の体で走るサラブレッドの脚には大きな負荷がかかっている。蹄が摩耗したり割れて変形すれば、パフォーマンスが下がるばかりか、ケガのリスクも高まる。そのため、その馬の蹄の形に合わせた蹄鉄を打ち、保護する必要がある。 蹄鉄はアルミニウム合金製で、摩耗するため、3週間に1度のペースで打ち変えているという。 兒玉さんは胴体の下に潜り込み、脚を上げさせて蹄を削る。蹄の形に合わせて蹄鉄を叩いて微調整し、釘で打ち付ける。テンポ良く進めているが、確かな技術と経験がないとできない仕事だ。こうした関係者のサポートにより競馬は成り立っているということだ。 2021年、競走馬を擬人化したキャラクターを育ててレースで競わせるスマホゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」が大ヒット。ゲームから競馬に関心を持つ新規ファンが増え、競馬ブームにつながった。「競馬への注目度が高まるのはうれしい。当センターにもぜひ多くの人に見学に来てほしい」と広報担当者は語る。 震災・原発事故、令和元年東日本台風など、災害により大きな被害を受けながら、復興を遂げているいわき市。そんな同市に同センターが設けられ、療養馬が再起を目指してリハビリに励んでいるのも運命的なものを感じる。 秋になると中央競馬が盛り上がるシーズンが到来する。福島市の福島競馬場では、第3回福島競馬が11月5日から20日まで延べ6日間の日程で行われる。 同センターは朝8時から17時まで見学を受け付けている(日曜日は休み、プール見学は夏季平日のみ、改修工事のため、完全閉鎖の時期あり)。秋の福島競馬に合わせて聖地を〝巡礼〟するのも、競馬文化の楽しみ方の一つと言える。 あわせて読みたい 【アクアマリンふくしま】施設をリニューアルオープン

  • 【いわき市鹿島】エブリアを「取得」したつばめグループ

    (2022年10月号)  いわき市鹿島地区の大型ショッピングセンター(SC)「鹿島ショッピングセンター エブリア」の動向が注目されている。建物を所有する会社の吸収合併や子会社化が相次ぎ、巨額の根抵当権が設定されていることが分かったからだ。 「根抵当権38億円設定」で広まる憶測  「鹿島ショッピングセンター エブリア」は1995年10月開業。いわき市の中心部である平地区と、観光エリアである小名浜地区の中間地点である鹿島地区に立地している。 鉄骨造2階建て、延べ床面積3万7455平方㍍。複数の地権者の借地に建てられている。当初は、キーテナントであるダイエーいわき店が半分を占め、残り半分が地元小売店・飲食店などによる専門店街「エブリア」という構成だった。2005年にダイエーが撤退した後は、ヨークベニマルエブリア店やスーパースポーツゼビオいわき店が入居。専門店街では現在も約70のテナントが営業している。 主要幹線で交通量の多い県道26号小名浜平線(通称鹿島街道)沿いに面していることもあり、週末には多くの買い物客が訪れる。 そんな同SCの動向が市内の経済人の間で注目されている。建物の所有者をめぐる動きがにわかに活発化しているからだ。 同SCの建物を所有していたのは、建設時から計画に携わっていた市内の不動産会社・平南開発㈱(園部嘉男社長=元いわき商工会議所副会頭、2018年に死去)だ。 その後は〝SC担当のディベロッパー部門〟として分割された平南ディベロップメント㈱(園部嘉門社長=嘉男氏の孫)が所有者となっていた。だが2021年8月、社長が園部嘉門氏から岩手県盛岡市在住の小西徹氏に変更。同10月には東京都品川区の平南ホールディングス合同会社に吸収合併された。 関係者によると、平南ホールディングスは外資系投資会社フィンテックグローバル㈱(東京都品川区)などの出資により設立され、もともとは「麻布十番ホールディングス」という全く違う会社名だったが、平南ディベロップメントを吸収合併するのに合わせて名称変更した。要するに、同SCの大家だった会社が、投資会社に丸ごと身売りしたわけ。 2022年5月には、その平南ホールディングスの株式をさらに別の会社が取得し、子会社化した。それが、福島県などを中心にパチンコホールを展開する「つばめグループ」の運営会社・中原商事(登記上の本店=東京都、本部=郡山市)だ。 1968年設立。資本金2300万円。代表取締役は禹竜太社長、禹泰浩専務(いずれも名字は中原を名乗っている)。民間信用調査機関によると、2021年12月期の売上高373億5100万円、当期純利益2億6700万円。 法人登記簿によると、主な事業は➀遊技場の経営、➁飲食店、喫茶店及びキャバレーの経営、③有価証券の売買、④自動販売機の管理、⑤パチンコ店の懸賞品及び景品等各種商品の仕入れ、販売、⑥タバコの仕入れ、販売、⑦経理事務の代行、⑧経営コンサルタント業務など。 平南ホールディングスの法人登記簿を確認すると、業務執行社員、代表社員ともに中原商事となっていた。市内の事務所には、同社の物件管理業務を受託している企業の担当者が常駐し、同SCの契約・施設関係の窓口を務めている。中原商事が実質的に同SCを取得した格好だ。 エブリアの建物の不動産登記簿を確認したところ、三井住友銀行により極度額26億4000万円の根抵当権、東邦銀行により極度額8億4000万円の根抵当権、福島銀行により極度額3億6000万円の根抵当権が設定されていた(いずれも設定日は2022年6月23日、債務者は中原商事)。合計38億4000万円もの融資枠が設定されたことになる。 そのため、「エブリアにそれだけの価値があるということなのか、それとも新たな商業施設建設などの狙いがあるのか」、「中原商事はどういう考えで平南ホールディングスを傘下に入れたのか。まさか巨大なパチンコ店をつくるわけではないだろうが……」など、さまざまな憶測を呼んでいるわけ。 中原商事はノーコメント  中原商事に子会社化の狙いを問い合わせたが、「現時点では取材に対応できない。ノーコメント」(担当者)との回答だった。ただ、中原商事のルーツはもともといわき市植田のパチンコ店であり、禹竜太社長も同市出身であることから、「東京の投資会社より〝地元企業〟が所有者になるべきと判断し、子会社化したのではないか」との見方がもっぱらだ。 ちなみに、同地は第二種住居地域でパチンコ店設置が可能とのことだが、「1㌔も離れていないところに鹿島小学校やかしま病院がある。立地規制には引っかからないかもしれないが、周辺住民との関係を考慮してさすがにパチンコ店の出店は控えるのではないか」(関係者)との見立てが聞かれる。 パチンコ業界は折からのユーザー数減少に加え、新型コロナウイルスの感染拡大やパチンコ機の規制強化などの影響で、大きく売り上げが落ち込んでいる。そうした中で、本業以外に不動産事業を展開するパチンコ店も増えている。本誌でも関連記事の中で複数の事例に触れており、直近では、ニラク(郡山市)が福島市の複合施設「コマレオプラザ」跡地を所有者であるコマレオ(山形県米沢市)から賃借し、同所にディスカウントストア「ドン・キホーテ」を誘致すべく動いていた件を報じた(2019年9月号参照)。 いわき市におけるつばめグループの店舗では、ビックつばめ岡小名店が6月に閉店している。シビアな経営判断が迫られる中で、中原商事が同SCをどのように〝活用〟していくか考えなのか、注目される。 ヨークベニマル、ゼビオを除くテナントの賃貸を行っている㈱鹿島ショッピングセンターに問い合わせたところ、担当者は次のように話した。 【いわき市】鹿島ショッピングセンター エブリア  「今の段階で方針変更などは聞いていません。建物の大家の代表者(親会社)が変わったということで、あらためて意思共有する機会はあるかもしれませんが、当社としては変わらずに運営を続けていきます。コロナ禍の影響が大きいうえ、テナント維持に苦戦している面もありましたが、集客が図れる催しものを企画し、既成概念にとらわれない自動車展示のテナントを誘致するなど、さまざまな取り組みを進めています。今後とも多くの方に利用していただければと思います」 2019年6月に開店したイオンモールいわき小名浜は強力な競合相手だが、エブリアの固定客は離れておらず、売り上げも安定している。安定した賃料が入るのは、建物所有者にとってもありがたいはず。一方で9月中旬には、エブリアの前年にオープンしたショッピングモールフェスタ(郡山市)が、老朽化などを理由に一時閉店し、県内最大規模の店舗とする方向で検討していることが分かった。同SCも今後、同様の問題を抱える可能性がある。 そうした意味合いでも同SCの今後の動向から目が離せない。 鹿島ショッピングセンター「エブリア」ホームページ あわせて読みたい 【いわきFCを勝手に評価】レノファ山口戦(2023/3/5) 【いわき市】内田広之市長インタビュー 【アクアマリンふくしま】施設をリニューアルオープン

  • 【いわきFCを勝手に評価】レノファ山口戦(2023/3/5)

    サッカーを見ることが好きな筆者が、勝手にいわきFCを評価するWEB限定企画。 いわきFCを生観戦するのは今回で2回目だ。 初めて「いわきグリーンスタジアム」に行ったので、サッカー専用スタジアムだということを初めて知った。 サッカー専用スタジアムの素晴らしいところは、なんといっても「選手との距離」が近いこと。J2は有名な選手がたくさんいるので、選手を間近に見れるのは嬉しい! 【いわきFCを勝手に評価】レノファ山口戦(2023/3/5) 【結果】 いわきFC 0ー1 レノファ山口 フォーメーションは4-4-2。割と4-3-3が主流な現代サッカーにおいては珍しいのかもしれない。 筆者が最近見ている4-4-2と言えば、久保建英選手がいるレアルソシエダ。前線でしっかりポストプレーしてくれるセルロートとテクニックのある久保選手のツートップが魅力だ。つまりトップの2人がかなり重要だということだ。 ソシエダは最近オヤルサバルが復帰して、4-3-3になって勝てなくなった。(ダビドシウバがいなかったのも大きいのかもしれないが、、、) 【いわきFCを勝手に評価】選手別 https://www.tiktok.com/@seikeitohoku/video/7206906900082855169 GK 31 鹿野 修平 選手 6.0特に印象にないということは無難だったということだろう。DF 35 江川 慶城 選手 6.5声掛けを積極的に行っていたので、チームの中ではモチベーターの役割を担っているのかもしれない。ガッツが感じられて好印象だった。DF 4 家泉 怜依 選手 6.0両センターバックは無難だった。特に減点なし。失点シーンは誰の責任もない。DF 3 遠藤 凌 選手 6.0両センターバックは無難だった。特に減点なし。DF 2 石田 侑資 選手 6.5右サイドからの攻撃で、効果的なオーバーラップ、正確なクロス、縦へのドリブル、すべてよかった。嵯峨選手とのコンビネーションも素晴らしい。ケガで前半のみで交代。後半も見たかった。 一緒に観戦したサッカーオタク曰く、徳島から市立船橋高校に進学した際、外がうるさくて眠れなかったという逸話を持っている。出身の徳島県吉野川市はそんなに田舎なのだろうか。MF 8 嵯峨 理久 選手 7.0いわきFCで一番よかった。縦への推進力があり、いわきFCの要なのは間違いない。ドリブルできる、トラップも一級品。クロスの精度も高く、多くのチャンスを演出していた。28分の谷村選手へのパス、56分のアーリークロス、ともにアシスト級だった。おそらくJ1でも通じる。 さすが青森山田高校出身。MF 6 宮本 英治 選手 6.0無難にゲームコントロールできていた。こぼれ球への対応もできていた。75分のシュートチャンスは決めたいところだが、いいところに顔を出していた。MF 24 山下 優人 選手 6.0無難にゲームコントロールできていたが、あまり印象にない。MF 14 山口 大輝 選手 6.011分、神トラップからのシュートは決めたいところ。ただあのトラップを観れるだけでも金を払う価値はある。FW 17 谷村 海那 選手 5.016分の決定機は、給料をもらっている以上、絶対にはずしてはいけない。相手ディフェンスがゴールに向かってきていたので、シュートが簡単ではないことは理解しているが、、、28分のチャンスも決めたいところ。J2では少ないチャンスをどれだけものにするかが勝敗を分ける。FW 11 有田 稜 選手 5.516分の谷村選手の決定機は、有田選手のプレスから生まれたチャンス。他のチャンスにも顔を出していた。ただ前線でのポストプレーはもう少し改善が必要な印象。谷村選手、有田選手、ともに前半はリヴァプールを思わせるゲーゲンプレスを敢行して相手ディフェンスを困らせていたが、さすがに後半になるとプレスの強度が落ちた。90分走り切るのは無理がある。 杉山 伶央 選手 6.0左足の精度があったように感じる。あまり印象にない。 永井 颯太 選手 6.5先発で使ってもいい出来だった。トラップもうまいし、足も速い。75分の突破は素晴らしかった。ただ、先発で使われないのには何か理由があるのだろう。 近藤 慶一 選手 採点なし 加瀬 直輝 選手 採点なし レノファ山口を勝手に総評 タレント力が違いすぎた。 アギーレジャパンに召集された皆川佑介選手、説明不要の山瀬 功治選手、リオデジャネイロオリンピックで日本代表だった矢島慎也選手、J1にいたときの横浜FCで活躍した佐藤謙介選手、あと身長が10センチ大きければ代表レベルの関憲太郎選手などなど。 得点シーンは皆川選手のごっつぁんゴールだったが、「あの位置にいる」という能力こそが、長年サッカーで飯を食ってきた証だ。 そんなレノファ山口でもJ2では中堅クラブ。おそらく順位も真ん中あたりに落ち着くはず。 いわきFCは、J3降格候補の藤枝に負け、中堅の水戸に引き分け、中堅の山口に負けた。 この結果が何を意味するか。これからJ1級の清水エスパルスやジュビロ磐田と戦うとどうなるのか。楽しみに見てみたい。 【いわきFCを勝手に評価】総評 ダゾーンでハイライトを見たが、改めて思ったのは前線の迫力がJ2では大事なのではないかということ。予算が限られているのでガンガン点を取れる外国人選手を雇うのは容易なことではないが、FC町田ゼルビアがおそらく上位常連になる理由は前線に迫力差があるかどうか。 ミニ情報 スタジアムグルメ「スタグル」はかなり充実していた。何も食べなかったが美味しそうだった。かなりレベル高い方。 いわきFCマスコットキャラクター「ハーマー&ドリー」 フルコーラスの踊りを披露。かなりファンになった。