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  • 【いわき市鹿島】エブリアを〝取得〟したつばめグループ

    【いわき市鹿島】エブリアを「取得」したつばめグループ

    (2022年10月号)  いわき市鹿島地区の大型ショッピングセンター(SC)「鹿島ショッピングセンター エブリア」の動向が注目されている。建物を所有する会社の吸収合併や子会社化が相次ぎ、巨額の根抵当権が設定されていることが分かったからだ。 「根抵当権38億円設定」で広まる憶測  「鹿島ショッピングセンター エブリア」は1995年10月開業。いわき市の中心部である平地区と、観光エリアである小名浜地区の中間地点である鹿島地区に立地している。 鉄骨造2階建て、延べ床面積3万7455平方㍍。複数の地権者の借地に建てられている。当初は、キーテナントであるダイエーいわき店が半分を占め、残り半分が地元小売店・飲食店などによる専門店街「エブリア」という構成だった。2005年にダイエーが撤退した後は、ヨークベニマルエブリア店やスーパースポーツゼビオいわき店が入居。専門店街では現在も約70のテナントが営業している。 主要幹線で交通量の多い県道26号小名浜平線(通称鹿島街道)沿いに面していることもあり、週末には多くの買い物客が訪れる。 そんな同SCの動向が市内の経済人の間で注目されている。建物の所有者をめぐる動きがにわかに活発化しているからだ。 同SCの建物を所有していたのは、建設時から計画に携わっていた市内の不動産会社・平南開発㈱(園部嘉男社長=元いわき商工会議所副会頭、2018年に死去)だ。 その後は〝SC担当のディベロッパー部門〟として分割された平南ディベロップメント㈱(園部嘉門社長=嘉男氏の孫)が所有者となっていた。だが2021年8月、社長が園部嘉門氏から岩手県盛岡市在住の小西徹氏に変更。同10月には東京都品川区の平南ホールディングス合同会社に吸収合併された。 関係者によると、平南ホールディングスは外資系投資会社フィンテックグローバル㈱(東京都品川区)などの出資により設立され、もともとは「麻布十番ホールディングス」という全く違う会社名だったが、平南ディベロップメントを吸収合併するのに合わせて名称変更した。要するに、同SCの大家だった会社が、投資会社に丸ごと身売りしたわけ。 2022年5月には、その平南ホールディングスの株式をさらに別の会社が取得し、子会社化した。それが、福島県などを中心にパチンコホールを展開する「つばめグループ」の運営会社・中原商事(登記上の本店=東京都、本部=郡山市)だ。 1968年設立。資本金2300万円。代表取締役は禹竜太社長、禹泰浩専務(いずれも名字は中原を名乗っている)。民間信用調査機関によると、2021年12月期の売上高373億5100万円、当期純利益2億6700万円。 法人登記簿によると、主な事業は➀遊技場の経営、➁飲食店、喫茶店及びキャバレーの経営、③有価証券の売買、④自動販売機の管理、⑤パチンコ店の懸賞品及び景品等各種商品の仕入れ、販売、⑥タバコの仕入れ、販売、⑦経理事務の代行、⑧経営コンサルタント業務など。 平南ホールディングスの法人登記簿を確認すると、業務執行社員、代表社員ともに中原商事となっていた。市内の事務所には、同社の物件管理業務を受託している企業の担当者が常駐し、同SCの契約・施設関係の窓口を務めている。中原商事が実質的に同SCを取得した格好だ。 エブリアの建物の不動産登記簿を確認したところ、三井住友銀行により極度額26億4000万円の根抵当権、東邦銀行により極度額8億4000万円の根抵当権、福島銀行により極度額3億6000万円の根抵当権が設定されていた(いずれも設定日は2022年6月23日、債務者は中原商事)。合計38億4000万円もの融資枠が設定されたことになる。 そのため、「エブリアにそれだけの価値があるということなのか、それとも新たな商業施設建設などの狙いがあるのか」、「中原商事はどういう考えで平南ホールディングスを傘下に入れたのか。まさか巨大なパチンコ店をつくるわけではないだろうが……」など、さまざまな憶測を呼んでいるわけ。 中原商事はノーコメント  中原商事に子会社化の狙いを問い合わせたが、「現時点では取材に対応できない。ノーコメント」(担当者)との回答だった。ただ、中原商事のルーツはもともといわき市植田のパチンコ店であり、禹竜太社長も同市出身であることから、「東京の投資会社より〝地元企業〟が所有者になるべきと判断し、子会社化したのではないか」との見方がもっぱらだ。 ちなみに、同地は第二種住居地域でパチンコ店設置が可能とのことだが、「1㌔も離れていないところに鹿島小学校やかしま病院がある。立地規制には引っかからないかもしれないが、周辺住民との関係を考慮してさすがにパチンコ店の出店は控えるのではないか」(関係者)との見立てが聞かれる。 パチンコ業界は折からのユーザー数減少に加え、新型コロナウイルスの感染拡大やパチンコ機の規制強化などの影響で、大きく売り上げが落ち込んでいる。そうした中で、本業以外に不動産事業を展開するパチンコ店も増えている。本誌でも関連記事の中で複数の事例に触れており、直近では、ニラク(郡山市)が福島市の複合施設「コマレオプラザ」跡地を所有者であるコマレオ(山形県米沢市)から賃借し、同所にディスカウントストア「ドン・キホーテ」を誘致すべく動いていた件を報じた(2019年9月号参照)。 いわき市におけるつばめグループの店舗では、ビックつばめ岡小名店が6月に閉店している。シビアな経営判断が迫られる中で、中原商事が同SCをどのように〝活用〟していくか考えなのか、注目される。 ヨークベニマル、ゼビオを除くテナントの賃貸を行っている㈱鹿島ショッピングセンターに問い合わせたところ、担当者は次のように話した。 【いわき市】鹿島ショッピングセンター エブリア  「今の段階で方針変更などは聞いていません。建物の大家の代表者(親会社)が変わったということで、あらためて意思共有する機会はあるかもしれませんが、当社としては変わらずに運営を続けていきます。コロナ禍の影響が大きいうえ、テナント維持に苦戦している面もありましたが、集客が図れる催しものを企画し、既成概念にとらわれない自動車展示のテナントを誘致するなど、さまざまな取り組みを進めています。今後とも多くの方に利用していただければと思います」 2019年6月に開店したイオンモールいわき小名浜は強力な競合相手だが、エブリアの固定客は離れておらず、売り上げも安定している。安定した賃料が入るのは、建物所有者にとってもありがたいはず。一方で9月中旬には、エブリアの前年にオープンしたショッピングモールフェスタ(郡山市)が、老朽化などを理由に一時閉店し、県内最大規模の店舗とする方向で検討していることが分かった。同SCも今後、同様の問題を抱える可能性がある。 そうした意味合いでも同SCの今後の動向から目が離せない。 鹿島ショッピングセンター「エブリア」ホームページ あわせて読みたい 【いわきFCを勝手に評価】レノファ山口戦(2023/3/5) 【いわき市】内田広之市長インタビュー 【アクアマリンふくしま】施設をリニューアルオープン

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    (2022年10月号)  いわき市鹿島地区の大型ショッピングセンター(SC)「鹿島ショッピングセンター エブリア」の動向が注目されている。建物を所有する会社の吸収合併や子会社化が相次ぎ、巨額の根抵当権が設定されていることが分かったからだ。 「根抵当権38億円設定」で広まる憶測  「鹿島ショッピングセンター エブリア」は1995年10月開業。いわき市の中心部である平地区と、観光エリアである小名浜地区の中間地点である鹿島地区に立地している。 鉄骨造2階建て、延べ床面積3万7455平方㍍。複数の地権者の借地に建てられている。当初は、キーテナントであるダイエーいわき店が半分を占め、残り半分が地元小売店・飲食店などによる専門店街「エブリア」という構成だった。2005年にダイエーが撤退した後は、ヨークベニマルエブリア店やスーパースポーツゼビオいわき店が入居。専門店街では現在も約70のテナントが営業している。 主要幹線で交通量の多い県道26号小名浜平線(通称鹿島街道)沿いに面していることもあり、週末には多くの買い物客が訪れる。 そんな同SCの動向が市内の経済人の間で注目されている。建物の所有者をめぐる動きがにわかに活発化しているからだ。 同SCの建物を所有していたのは、建設時から計画に携わっていた市内の不動産会社・平南開発㈱(園部嘉男社長=元いわき商工会議所副会頭、2018年に死去)だ。 その後は〝SC担当のディベロッパー部門〟として分割された平南ディベロップメント㈱(園部嘉門社長=嘉男氏の孫)が所有者となっていた。だが2021年8月、社長が園部嘉門氏から岩手県盛岡市在住の小西徹氏に変更。同10月には東京都品川区の平南ホールディングス合同会社に吸収合併された。 関係者によると、平南ホールディングスは外資系投資会社フィンテックグローバル㈱(東京都品川区)などの出資により設立され、もともとは「麻布十番ホールディングス」という全く違う会社名だったが、平南ディベロップメントを吸収合併するのに合わせて名称変更した。要するに、同SCの大家だった会社が、投資会社に丸ごと身売りしたわけ。 2022年5月には、その平南ホールディングスの株式をさらに別の会社が取得し、子会社化した。それが、福島県などを中心にパチンコホールを展開する「つばめグループ」の運営会社・中原商事(登記上の本店=東京都、本部=郡山市)だ。 1968年設立。資本金2300万円。代表取締役は禹竜太社長、禹泰浩専務(いずれも名字は中原を名乗っている)。民間信用調査機関によると、2021年12月期の売上高373億5100万円、当期純利益2億6700万円。 法人登記簿によると、主な事業は➀遊技場の経営、➁飲食店、喫茶店及びキャバレーの経営、③有価証券の売買、④自動販売機の管理、⑤パチンコ店の懸賞品及び景品等各種商品の仕入れ、販売、⑥タバコの仕入れ、販売、⑦経理事務の代行、⑧経営コンサルタント業務など。 平南ホールディングスの法人登記簿を確認すると、業務執行社員、代表社員ともに中原商事となっていた。市内の事務所には、同社の物件管理業務を受託している企業の担当者が常駐し、同SCの契約・施設関係の窓口を務めている。中原商事が実質的に同SCを取得した格好だ。 エブリアの建物の不動産登記簿を確認したところ、三井住友銀行により極度額26億4000万円の根抵当権、東邦銀行により極度額8億4000万円の根抵当権、福島銀行により極度額3億6000万円の根抵当権が設定されていた(いずれも設定日は2022年6月23日、債務者は中原商事)。合計38億4000万円もの融資枠が設定されたことになる。 そのため、「エブリアにそれだけの価値があるということなのか、それとも新たな商業施設建設などの狙いがあるのか」、「中原商事はどういう考えで平南ホールディングスを傘下に入れたのか。まさか巨大なパチンコ店をつくるわけではないだろうが……」など、さまざまな憶測を呼んでいるわけ。 中原商事はノーコメント  中原商事に子会社化の狙いを問い合わせたが、「現時点では取材に対応できない。ノーコメント」(担当者)との回答だった。ただ、中原商事のルーツはもともといわき市植田のパチンコ店であり、禹竜太社長も同市出身であることから、「東京の投資会社より〝地元企業〟が所有者になるべきと判断し、子会社化したのではないか」との見方がもっぱらだ。 ちなみに、同地は第二種住居地域でパチンコ店設置が可能とのことだが、「1㌔も離れていないところに鹿島小学校やかしま病院がある。立地規制には引っかからないかもしれないが、周辺住民との関係を考慮してさすがにパチンコ店の出店は控えるのではないか」(関係者)との見立てが聞かれる。 パチンコ業界は折からのユーザー数減少に加え、新型コロナウイルスの感染拡大やパチンコ機の規制強化などの影響で、大きく売り上げが落ち込んでいる。そうした中で、本業以外に不動産事業を展開するパチンコ店も増えている。本誌でも関連記事の中で複数の事例に触れており、直近では、ニラク(郡山市)が福島市の複合施設「コマレオプラザ」跡地を所有者であるコマレオ(山形県米沢市)から賃借し、同所にディスカウントストア「ドン・キホーテ」を誘致すべく動いていた件を報じた(2019年9月号参照)。 いわき市におけるつばめグループの店舗では、ビックつばめ岡小名店が6月に閉店している。シビアな経営判断が迫られる中で、中原商事が同SCをどのように〝活用〟していくか考えなのか、注目される。 ヨークベニマル、ゼビオを除くテナントの賃貸を行っている㈱鹿島ショッピングセンターに問い合わせたところ、担当者は次のように話した。 【いわき市】鹿島ショッピングセンター エブリア  「今の段階で方針変更などは聞いていません。建物の大家の代表者(親会社)が変わったということで、あらためて意思共有する機会はあるかもしれませんが、当社としては変わらずに運営を続けていきます。コロナ禍の影響が大きいうえ、テナント維持に苦戦している面もありましたが、集客が図れる催しものを企画し、既成概念にとらわれない自動車展示のテナントを誘致するなど、さまざまな取り組みを進めています。今後とも多くの方に利用していただければと思います」 2019年6月に開店したイオンモールいわき小名浜は強力な競合相手だが、エブリアの固定客は離れておらず、売り上げも安定している。安定した賃料が入るのは、建物所有者にとってもありがたいはず。一方で9月中旬には、エブリアの前年にオープンしたショッピングモールフェスタ(郡山市)が、老朽化などを理由に一時閉店し、県内最大規模の店舗とする方向で検討していることが分かった。同SCも今後、同様の問題を抱える可能性がある。 そうした意味合いでも同SCの今後の動向から目が離せない。 鹿島ショッピングセンター「エブリア」ホームページ あわせて読みたい 【いわきFCを勝手に評価】レノファ山口戦(2023/3/5) 【いわき市】内田広之市長インタビュー 【アクアマリンふくしま】施設をリニューアルオープン