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  • 丸峰観光ホテル社長の呆れた経営感覚【会津若松市】

    芦ノ牧温泉【丸峰観光ホテル】民事再生を阻む諸課題【会津若松市】

     会津若松市・芦ノ牧温泉の丸峰観光ホテルと関連会社の丸峰庵は2月28日、福島地裁会津若松支部に民事再生法の適用を申請した。債権者説明会では営業体制を見直し、自主再建を目指す方針が示されたが、取引先や同業者は「スポンサーからの支援を受けずに再建できるのか」と先行きを懸念する。 スポンサー不在を懸念する債権者  民間信用調査機関によると負債総額は2022年3月期末時点で、丸峰観光ホテルが20億7700万円、丸峰庵が4億7900万円、計25億5600万円。 《1994(平成6)年3月期にはバブル景気が追い風となり、売上高25億円とピークを迎えた。1995年3月期以降は景気後退で利用者数が減少。債務超過額も拡大していた》《2020(令和2)年に入ると新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた。2022年3月期は売上高が5億円台まで後退し、2億円超の最終赤字を計上した。その後も業況は好転せず、資金繰りが限界に達した。丸峰庵はホテルに連鎖する形で民事再生法の適用を申請した》(福島民報3月1日付より) 申請代理人はDEPT弁護士法人(大阪市)の秦周平弁護士ほか2名が務めている。 債権者の顔ぶれや各自の債権額は判明していないが、主な仕入れ先は地元の水産卸売会社、食肉会社、冷凍食品会社、土産物卸商社など。そのほかリネン、アメニティー、旅行代理店、広告代理店、リース、コンパニオン派遣、組合など取引先は多岐に渡るとみられる。 最大の債権者である金融機関については、同ホテルの不動産登記簿に基づき権利関係を別掲しておく。 根抵当権極度額1250万円1972年設定会津商工信組根抵当権極度額2400万円1974年設定会津商工信組根抵当権極度額3600万円1976年設定会津商工信組根抵当権極度額4000万円1976年設定福島銀行根抵当権極度額3億円1979年設定商工中金根抵当権極度額2億4000万円1981年設定常陽銀行根抵当権極度額4億5000万円2011年設定会津商工信組抵当権債権額7500万円2018年設定会津商工信組抵当権債権額7500万円2018年設定商工中金根抵当権極度額3億円2018年設定商工中金  ㈱丸峰観光ホテル(1965年設立、資本金3000万円)は客室数65室の「丸峰本館」、同49室の「丸峰別館川音」、同6室の「離れ山翠」を運営する芦ノ牧温泉では最大規模の温泉観光ホテル。役員は代表取締役=星保洋、取締役=星啓子、田中博志、監査役=川井茂夫の各氏。 同ホテルでは「丸峰黒糖まんじゅう」などの菓子製造・販売も営み、ピーク時には郡山市の駅構内や駅前などで飲食店も経営していたが、業績が振るわず、2014年に関連会社の㈱丸峰庵(2006年設立、資本金300万円)に旅館経営以外の事業を移した。役員は代表取締役=星保洋、取締役=星啓子の各氏。 同ホテルの関係者によると「まんじゅうはともかく、飲食店は本業との相乗効果を生まないばかりか、ホテルで稼いだ利益を注ぎ込んだこともあったはずで、経営が傾く要因になったのは間違いない」。実際、丸峰庵は都内2カ所にも支店を構えるなど、身の丈に合わない経営が常態化していた様子がうかがえる。 同ホテルはホームページで、今後も事業を継続すること、引き続き予約を受け付けること、監督委員の指導のもと一日も早い再建を目指すことを告知している。 「再建に向け、メーンバンクの会津商工信組も尽力したが『思うようにいかない』と嘆いていた。もっとも同信組に、大規模な温泉観光ホテルを立て直すコンサル能力があるとは思えませんが」(同) 同ホテルは2019年に亡くなった先代で女将の星弘子氏が辣腕を振るっていた時代は上り調子だった。 「女将は茨城方面の営業に長け、そこを切り口に関東から多くの大型観光バスを呼び込んでいた。平日や冬季の稼働率を上げるため料金を下げ、それでいて利益を確保する商品を開発したり、歌手を呼ぶなどの企画を練ったり、常に経営のことを考えている人だった」(同) 1980~90年代にかけてはテレビCMを流したり、2時間ドラマの舞台になったり、高級車やクルーザーを所有するなど、成功者の威光を放っていた。 しかし、次第に団体客が減り、観光地間の競争が激化。そのタイミングで経営のかじ取りが星弘子氏の息子・保洋氏に代わると、以降は浮上のきっかけをつかめずにいた。 民事再生の申請後、本誌が耳にした同ホテルや星社長の評判は次のようなものだった。 ▽取引先との間で支払いの遅延が起きていた。 ▽星社長は経営合理化を進めるため、外部の管理職経験者を招き入れたが、強引な進め方が社内で反発を招き、ベテランや士気の高かった社員が相次いで退職した。 ▽その一方で、星社長は高級車レクサスに乗っていたため、ひんしゅくを買っていた。 ▽地元建設会社に改修工事を依頼するも、前回工事の未払い金が残っていることを理由に断られた。 丸峰庵をめぐっても、こんな話が聞かれた。 ▽顧客ごとの特注包装紙や新商品のパッケージングなど工夫を凝らしていたが、ロット発注になってしまうため、経費増が囁かれていた。 ▽道の駅などに通常の委託販売ではなく買い取り販売を依頼するも、在庫ロスへの懸念から断られた。 ▽賞味期限の短い商品を社員が直接納品するのではなく、宅配便で送るなど、商品管理体制が疑問視されていた。 ▽飲食店の家賃を滞納していた。 ちなみに1987年には、法人税法違反で法人としての同ホテルに罰金1600万円、当時の代表取締役である星弘子氏に懲役1年執行猶予3年の有罪判決が福島地裁で言い渡されている。 難しい自主再建 臨時休業中の丸峰庵  ある債権者によると、社員たちは民事再生の申請を外部から知らされたという。 「ウチは当日(2月28日)の昼にファクスで通知が届いた。その日はちょうど仕入れ業者への支払日で、各業者が付き合いのある社員に『支払いはどうなるんだ』と個別に問い合わせたことで社員たちに知れ渡った。社員たちが星社長から話をされたのはその後だったそうです」 債権者説明会は同ホテルが3月3日、丸峰庵が同8日に開いたが、出席者は淡々としていたという。 「仕入れ業者からは『未払い分は払ってもらえるのか』『この先の支払い方法はどうなるのか』などの質問が出ていた。会津商工信組から発言はなかったが、商工中金が今後の経営体制を尋ねると、星社長は『ある程度目処がついたら経営から退く』と答えていた」(同) しかし、それを聞いた出席者たちは首を傾げた。 「理由は二つある。一つは既に決まっていると思われたスポンサーがおらず『今後の状況によってはスポンサーから支援を受けることも検討する』と星社長が述べたことです。物心両面で支援してくれるところがなければ、経営者の交代はもちろん再建もままならない。もう一つは星社長には子どもがいないため、後継者の見当がつかないことです」(同) スポンサー不在については、ホテル再建に携わった経験を持つ会社社長も「正直驚いた」と話す。 「民事再生はあらかじめ綿密な計画を立て、これでいけるとなったら申請―公表するが、その際、重要になるのがスポンサーの存在です。申請すれば新たな融資を受けられないので、スポンサー探しは必須。もちろん、スポンサー不在でも再建はできるだろうが、星社長はこの間、あらゆる手立てを尽くし、それでもダメだったのだから、尚のこと緻密な自主再建策を用意する必要がある。そうでなければ今後、同ホテルが再生計画案を示しても債権者から同意を得られるかは微妙だと思います」 なぜスポンサー不在をここまで嘆くのかというと、自主再建するには本業の将来収益から再生債権を弁済しなければならないからだ。そうした中でこの社長が注目したのは、冒頭の新聞記事中にある「売上高5億円、赤字2億円」という金額だ。 「単純に売り上げが7億円以上ないと黒字にならない。じゃあ7億円以上を売り上げるため、料金を何万円と設定し、1部屋に何人入れて何日稼働させると計算していくと相当ハードルが高いことが見えてくるんです。しかも、丸峰は規模が大きいので固定資産税がかかり、人件費も光熱費もかさむ。年月が経てばリニューアルも必要。挙げ句、お客さんは少ないので、お金は出ていくばかりだと思います」(同) この社長によると温泉観光ホテルは近年、客の見込めない平日を連休にすることが増えているが、丸峰観光ホテルは不定休だったという。 「1年中オープンするのが当たり前の温泉観光ホテルにとって連休はあり得ないことだったが、いざ休んでみると経費が抑えられ、少ない社員を効率良く配置できるなど経営にメリハリが出てくる。丸峰も連休を導入しつつ、3棟ある建物のどれかを臨時休館して経営資源を集中させる必要があるのではないか」(同) 聞けば聞くほど、スポンサー不在では再建は難しく感じる。実際、会津地方のスキー場に中国系企業が参入していることを受け「丸峰も外資が関心を示すといいのだが」との声があるが、芦ノ牧温泉の事情に詳しい人物によると、外資が登場する可能性は低いという。 「芦ノ牧温泉は地元の人たちが土地を所有し、経営者は地主らでつくる芦ノ牧温泉開発事業所に地代を払い、旅館・ホテルを建てている。経営をやめる場合は建物を壊し、土地を原状回復して地主に返さなければならない。同温泉街に廃旅館・廃ホテルが多いのは、解体費を捻出できない経営者が夜逃げしたためです」 要するに、外資にとって芦ノ牧温泉は魅力的な投資先ではない、と。 実際、同ホテルの不動産登記簿を確認すると、土地は芦ノ牧地区をはじめ市内の人たちの名義になっており、そこに同ホテルが地上権を設定し、建物を建てていた。 激減する入り込み数 自主再建を目指す丸峰観光ホテル  民事再生の申請から2週間後、星社長に話を聞けないか同ホテルを訪ねたが、 「社長は連日、取引先を回っており不在です。私たち社員は何も分からないので、それ以上のことはお答えできません」(フロント社員) 申請代理人のDEPT弁護士法人にも問い合わせてみた。 「債権者がスポンサー不在を心配しているのであれば真摯に受け止めなければならないが、私共が今やるべきことは債権者に納得していただける再生計画案を示すことなので、債権者以外の第三者にあれこれ話すのは控えたい」(田尾賢太弁護士) 同ホテルは今後、再生計画案を作成し裁判所に提出。その後、債権者集会に同案を諮り①議決権者の過半数の同意(頭数要件)、②議決権の総額の2分の1以上の議決権を有する者の同意(議決権数要件)を満たす必要がある。民事再生の申請から再生計画の認可までは通常5カ月程度。 前出・債権者は「同ホテルから示される再生計画案に債権者たちが納得するかは分からないが、これまで芦ノ牧温泉を引っ張ってきたホテルなので復活してほしい」と話した。 芦ノ牧温泉はピーク時、30軒近い旅館・ホテルがあったが、現在は8軒。一方、会津若松市の公表資料によると、同温泉の入り込み数は2001年約39万4000人、コロナ禍前の19年約23万1000人、コロナ禍の21年約10万3000人。入り込み数が激減する中、今日まで営業を続けてきた丸峰観光ホテルは善戦した方なのかもしれない。 丸峰観光ホテルのホームページ あわせて読みたい 【芦ノ牧温泉】丸峰観光ホテル社長の呆れた経営感覚

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     会津若松市・芦ノ牧温泉の丸峰観光ホテルと関連会社の丸峰庵は2月28日、福島地裁会津若松支部に民事再生法の適用を申請した。債権者説明会では営業体制を見直し、自主再建を目指す方針が示されたが、取引先や同業者は「スポンサーからの支援を受けずに再建できるのか」と先行きを懸念する。 スポンサー不在を懸念する債権者  民間信用調査機関によると負債総額は2022年3月期末時点で、丸峰観光ホテルが20億7700万円、丸峰庵が4億7900万円、計25億5600万円。 《1994(平成6)年3月期にはバブル景気が追い風となり、売上高25億円とピークを迎えた。1995年3月期以降は景気後退で利用者数が減少。債務超過額も拡大していた》《2020(令和2)年に入ると新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた。2022年3月期は売上高が5億円台まで後退し、2億円超の最終赤字を計上した。その後も業況は好転せず、資金繰りが限界に達した。丸峰庵はホテルに連鎖する形で民事再生法の適用を申請した》(福島民報3月1日付より) 申請代理人はDEPT弁護士法人(大阪市)の秦周平弁護士ほか2名が務めている。 債権者の顔ぶれや各自の債権額は判明していないが、主な仕入れ先は地元の水産卸売会社、食肉会社、冷凍食品会社、土産物卸商社など。そのほかリネン、アメニティー、旅行代理店、広告代理店、リース、コンパニオン派遣、組合など取引先は多岐に渡るとみられる。 最大の債権者である金融機関については、同ホテルの不動産登記簿に基づき権利関係を別掲しておく。 根抵当権極度額1250万円1972年設定会津商工信組根抵当権極度額2400万円1974年設定会津商工信組根抵当権極度額3600万円1976年設定会津商工信組根抵当権極度額4000万円1976年設定福島銀行根抵当権極度額3億円1979年設定商工中金根抵当権極度額2億4000万円1981年設定常陽銀行根抵当権極度額4億5000万円2011年設定会津商工信組抵当権債権額7500万円2018年設定会津商工信組抵当権債権額7500万円2018年設定商工中金根抵当権極度額3億円2018年設定商工中金  ㈱丸峰観光ホテル(1965年設立、資本金3000万円)は客室数65室の「丸峰本館」、同49室の「丸峰別館川音」、同6室の「離れ山翠」を運営する芦ノ牧温泉では最大規模の温泉観光ホテル。役員は代表取締役=星保洋、取締役=星啓子、田中博志、監査役=川井茂夫の各氏。 同ホテルでは「丸峰黒糖まんじゅう」などの菓子製造・販売も営み、ピーク時には郡山市の駅構内や駅前などで飲食店も経営していたが、業績が振るわず、2014年に関連会社の㈱丸峰庵(2006年設立、資本金300万円)に旅館経営以外の事業を移した。役員は代表取締役=星保洋、取締役=星啓子の各氏。 同ホテルの関係者によると「まんじゅうはともかく、飲食店は本業との相乗効果を生まないばかりか、ホテルで稼いだ利益を注ぎ込んだこともあったはずで、経営が傾く要因になったのは間違いない」。実際、丸峰庵は都内2カ所にも支店を構えるなど、身の丈に合わない経営が常態化していた様子がうかがえる。 同ホテルはホームページで、今後も事業を継続すること、引き続き予約を受け付けること、監督委員の指導のもと一日も早い再建を目指すことを告知している。 「再建に向け、メーンバンクの会津商工信組も尽力したが『思うようにいかない』と嘆いていた。もっとも同信組に、大規模な温泉観光ホテルを立て直すコンサル能力があるとは思えませんが」(同) 同ホテルは2019年に亡くなった先代で女将の星弘子氏が辣腕を振るっていた時代は上り調子だった。 「女将は茨城方面の営業に長け、そこを切り口に関東から多くの大型観光バスを呼び込んでいた。平日や冬季の稼働率を上げるため料金を下げ、それでいて利益を確保する商品を開発したり、歌手を呼ぶなどの企画を練ったり、常に経営のことを考えている人だった」(同) 1980~90年代にかけてはテレビCMを流したり、2時間ドラマの舞台になったり、高級車やクルーザーを所有するなど、成功者の威光を放っていた。 しかし、次第に団体客が減り、観光地間の競争が激化。そのタイミングで経営のかじ取りが星弘子氏の息子・保洋氏に代わると、以降は浮上のきっかけをつかめずにいた。 民事再生の申請後、本誌が耳にした同ホテルや星社長の評判は次のようなものだった。 ▽取引先との間で支払いの遅延が起きていた。 ▽星社長は経営合理化を進めるため、外部の管理職経験者を招き入れたが、強引な進め方が社内で反発を招き、ベテランや士気の高かった社員が相次いで退職した。 ▽その一方で、星社長は高級車レクサスに乗っていたため、ひんしゅくを買っていた。 ▽地元建設会社に改修工事を依頼するも、前回工事の未払い金が残っていることを理由に断られた。 丸峰庵をめぐっても、こんな話が聞かれた。 ▽顧客ごとの特注包装紙や新商品のパッケージングなど工夫を凝らしていたが、ロット発注になってしまうため、経費増が囁かれていた。 ▽道の駅などに通常の委託販売ではなく買い取り販売を依頼するも、在庫ロスへの懸念から断られた。 ▽賞味期限の短い商品を社員が直接納品するのではなく、宅配便で送るなど、商品管理体制が疑問視されていた。 ▽飲食店の家賃を滞納していた。 ちなみに1987年には、法人税法違反で法人としての同ホテルに罰金1600万円、当時の代表取締役である星弘子氏に懲役1年執行猶予3年の有罪判決が福島地裁で言い渡されている。 難しい自主再建 臨時休業中の丸峰庵  ある債権者によると、社員たちは民事再生の申請を外部から知らされたという。 「ウチは当日(2月28日)の昼にファクスで通知が届いた。その日はちょうど仕入れ業者への支払日で、各業者が付き合いのある社員に『支払いはどうなるんだ』と個別に問い合わせたことで社員たちに知れ渡った。社員たちが星社長から話をされたのはその後だったそうです」 債権者説明会は同ホテルが3月3日、丸峰庵が同8日に開いたが、出席者は淡々としていたという。 「仕入れ業者からは『未払い分は払ってもらえるのか』『この先の支払い方法はどうなるのか』などの質問が出ていた。会津商工信組から発言はなかったが、商工中金が今後の経営体制を尋ねると、星社長は『ある程度目処がついたら経営から退く』と答えていた」(同) しかし、それを聞いた出席者たちは首を傾げた。 「理由は二つある。一つは既に決まっていると思われたスポンサーがおらず『今後の状況によってはスポンサーから支援を受けることも検討する』と星社長が述べたことです。物心両面で支援してくれるところがなければ、経営者の交代はもちろん再建もままならない。もう一つは星社長には子どもがいないため、後継者の見当がつかないことです」(同) スポンサー不在については、ホテル再建に携わった経験を持つ会社社長も「正直驚いた」と話す。 「民事再生はあらかじめ綿密な計画を立て、これでいけるとなったら申請―公表するが、その際、重要になるのがスポンサーの存在です。申請すれば新たな融資を受けられないので、スポンサー探しは必須。もちろん、スポンサー不在でも再建はできるだろうが、星社長はこの間、あらゆる手立てを尽くし、それでもダメだったのだから、尚のこと緻密な自主再建策を用意する必要がある。そうでなければ今後、同ホテルが再生計画案を示しても債権者から同意を得られるかは微妙だと思います」 なぜスポンサー不在をここまで嘆くのかというと、自主再建するには本業の将来収益から再生債権を弁済しなければならないからだ。そうした中でこの社長が注目したのは、冒頭の新聞記事中にある「売上高5億円、赤字2億円」という金額だ。 「単純に売り上げが7億円以上ないと黒字にならない。じゃあ7億円以上を売り上げるため、料金を何万円と設定し、1部屋に何人入れて何日稼働させると計算していくと相当ハードルが高いことが見えてくるんです。しかも、丸峰は規模が大きいので固定資産税がかかり、人件費も光熱費もかさむ。年月が経てばリニューアルも必要。挙げ句、お客さんは少ないので、お金は出ていくばかりだと思います」(同) この社長によると温泉観光ホテルは近年、客の見込めない平日を連休にすることが増えているが、丸峰観光ホテルは不定休だったという。 「1年中オープンするのが当たり前の温泉観光ホテルにとって連休はあり得ないことだったが、いざ休んでみると経費が抑えられ、少ない社員を効率良く配置できるなど経営にメリハリが出てくる。丸峰も連休を導入しつつ、3棟ある建物のどれかを臨時休館して経営資源を集中させる必要があるのではないか」(同) 聞けば聞くほど、スポンサー不在では再建は難しく感じる。実際、会津地方のスキー場に中国系企業が参入していることを受け「丸峰も外資が関心を示すといいのだが」との声があるが、芦ノ牧温泉の事情に詳しい人物によると、外資が登場する可能性は低いという。 「芦ノ牧温泉は地元の人たちが土地を所有し、経営者は地主らでつくる芦ノ牧温泉開発事業所に地代を払い、旅館・ホテルを建てている。経営をやめる場合は建物を壊し、土地を原状回復して地主に返さなければならない。同温泉街に廃旅館・廃ホテルが多いのは、解体費を捻出できない経営者が夜逃げしたためです」 要するに、外資にとって芦ノ牧温泉は魅力的な投資先ではない、と。 実際、同ホテルの不動産登記簿を確認すると、土地は芦ノ牧地区をはじめ市内の人たちの名義になっており、そこに同ホテルが地上権を設定し、建物を建てていた。 激減する入り込み数 自主再建を目指す丸峰観光ホテル  民事再生の申請から2週間後、星社長に話を聞けないか同ホテルを訪ねたが、 「社長は連日、取引先を回っており不在です。私たち社員は何も分からないので、それ以上のことはお答えできません」(フロント社員) 申請代理人のDEPT弁護士法人にも問い合わせてみた。 「債権者がスポンサー不在を心配しているのであれば真摯に受け止めなければならないが、私共が今やるべきことは債権者に納得していただける再生計画案を示すことなので、債権者以外の第三者にあれこれ話すのは控えたい」(田尾賢太弁護士) 同ホテルは今後、再生計画案を作成し裁判所に提出。その後、債権者集会に同案を諮り①議決権者の過半数の同意(頭数要件)、②議決権の総額の2分の1以上の議決権を有する者の同意(議決権数要件)を満たす必要がある。民事再生の申請から再生計画の認可までは通常5カ月程度。 前出・債権者は「同ホテルから示される再生計画案に債権者たちが納得するかは分からないが、これまで芦ノ牧温泉を引っ張ってきたホテルなので復活してほしい」と話した。 芦ノ牧温泉はピーク時、30軒近い旅館・ホテルがあったが、現在は8軒。一方、会津若松市の公表資料によると、同温泉の入り込み数は2001年約39万4000人、コロナ禍前の19年約23万1000人、コロナ禍の21年約10万3000人。入り込み数が激減する中、今日まで営業を続けてきた丸峰観光ホテルは善戦した方なのかもしれない。 丸峰観光ホテルのホームページ あわせて読みたい 【芦ノ牧温泉】丸峰観光ホテル社長の呆れた経営感覚