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交通事故

  • いわき市職員と会社役員が交通事故トラブル

    いわき市職員と会社役員が交通事故トラブル

     交通事故では、過失割合や示談金をめぐって加害者と被害者の間で意見が食い違うことがある。昨年12月7日、いわき市常磐関船町の丁字路信号で起きた交通事故もそうした事例の一つだ。  右折レーンで2台の車が信号待ちしていたところ、後ろの車を運転していた市内の会社役員Aさんが不注意でブレーキから足を離し、クリープ現象で前の車に接触してしまった。  双方ともほとんど損傷はなかったが、警察による現場検証の結果、前の車の後部バンパーにナンバープレートの跡が確認できたため、追突事故と扱われた。警察の調書には「時速約5㌔で追突」と記された。  だが、追突された車のドライバーBさんはAさんにすごい剣幕で迫ったという。この間Aさんから相談を受けてきた知人はこう明かす。  「『俺は海外旅行に行くことになっていたのにどうするんだ!』、『明日はタイヤ交換も予約したんだぞ!』、『こんなところでぶつけるって何考えてんだおめー!』とまくしたてられ、Aさんは恐怖を抱いたそうです」  Aさんが運転していたのは社有車。当初「保険会社に対応を任せる」と話していたBさんだったが、8万円でバンパーを修理後、整形外科に行って全治2週間の診断(症状は頸椎捻挫=むち打ち損傷と思われる)を受け、警察に提出した。そのため事故は人身事故扱いとなり、Aさんには違反点数5点が加算された。  そればかりかBさんはAさんが勤める会社の保険会社に対し、海外旅行のキャンセル料、旅先での宴会キャンセル料の支払いを求めたという。判例では結婚式直前の事故による新婚旅行キャンセル料などが損害として認められているが、Bさんの場合、損害とは認められなかったようだ。  交通事故対応に振り回されたAさんは精神的苦痛で吐き気や頭痛を催すようになり、しばらく塞ぎがちになった。一時期はメンタルクリニックに通うほどだったが、一連の手続きの中でBさんがいわき市職員であることを知って、その対応に疑問を抱くようになったという。  「交通事故の被害者になったからと言って、市民である加害者を罵倒し、過剰とも言える損害賠償を求めるのか。地方公務員法第33条に定められている『信用失墜行為』に当たるのではないか」(同)  Aさんらは、いわき市役所職員課に連絡し、Bさんが市職員であることを確認した。だが、情報提供に対する礼と「職員課人事係で共有を図る」という報告があっただけで、その後のアクションはないという。  当事者であるBさんは事故をどう受け止めているのか。自宅を訪ねたところ、次のように話した。  「後ろからドーン!と突っ込まれて『むち打ち』になり、いまも通院していますよ。海外旅行は韓国の友人を訪ねる予定が控えていました。結局キャンセル料を支払ってもらえないというので、旅行には行きましたよ。……あの、これ以上は話す義務もないので取材はお断りします」  時速5㌔での追突を「ドーン!と突っ込まれた」と表現しているほか、けがした状態で韓国旅行に行っても問題はなかったのかなど気になる点はいくつもあったが、曖昧な返答のまま取材を断られてしまった。  いわき市職員課人事係では「事故の件は把握しているが、公務外での事故なので当事者間での話し合いに任せている。言葉遣いが乱暴になった面はあったかもしれないが、事故直後ということもあり、信用失墜行為には当たらないと考えている」とコメントした。  Aさんらは事故を起こしたことを反省しつつも、モヤモヤが続いている様子。こうしたトラブルを避けるためにも、運転には気を付けなければならないということだ。

  • 他人事じゃない【郡山市】一家4人死亡事故【郡山市大平町の事故現場】

    【専門家が指摘】他人事じゃない【郡山市】一家4人死亡事故

    専門家が指摘する危険地点の特徴  1月2日夜、郡山市大平町の交差点で軽乗用車と乗用車が出合い頭に衝突し、軽乗用車が横転・炎上。家族4人が死亡する事故が発生した。悲惨な事故の背景を探る。(志賀)  報道によると、事故は1月2日20時10分ごろ、郡山市大平町の信号・標識がない交差点で発生した。東進する軽乗用車と南進する乗用車が衝突し、軽乗用車は衝撃で走行車線の反対側に横転、縁石に乗り上げた。そのまま炎上し、乗っていた4人は全員死亡。横転した衝撃で火花が発生し、損傷した車体から漏れ出たガソリンに引火したためとみられる。  軽乗用車に乗っていたのは、所有者である橋本美和さん(39)と夫の貢さん(41)、長男の啓吾さん(20)、長女の華奈さん(16)。事故現場に近い大平町簓田地区に自宅があり、市内の飲食店から帰宅途中だった。 乗用車を運転していた福島市在住の高橋俊容疑者(25)は自動車運転処罰法違反(過失致死)の疑いで同4日に送検された。現行犯逮捕時は同法違反(過失運転致傷)だったが、容疑を切り替えた。 この間の捜査で高橋容疑者は「知人の所に向かっていた」、「交差点ではなく単線道路と思った」、「暗い道で初めて通った。目の前を物体が横切り、その後衝撃を感じた」、「ブレーキをかけたが間に合わなかった」などと供述している。 軽乗用車が走っていたのは、郡山東部ニュータウン西側と県道297号斎藤下行合線をつなぐ「市道緑ヶ丘西三丁目前田線」。「JR郡山駅へと向かう際の〝抜け道〟」(地元住民)として使われている。 乗用車が走っていたのは、東部ニュータウン北側から坂道を降りて同市道と交差する「市道川端緑ヶ丘西四丁目線」。交差点では軽乗用者側が優先道路だった。  もっとも、そのことを示す白線はほとんど消えて見えなくなっていた。1月6日に行われた市や地元町内会などによる緊急現場点検では、参加者から「坂道カーブや田んぼの法面で対向車を確認しづらい」、「標識が何もないので夜だと一時停止しない車もあるのでは」などの意見が出た。大平町第1町内会の伊藤好弘会長は「交通量が少なく下り坂もあるのでスピードを出す車をよく見かける」とコメントしている(朝日新聞1月7日付)。 1月上旬の夜、乗用車と同じルートを実際に走ってみた。すると軽乗用車のルートを走る車が坂道カーブや田んぼの法面に遮られて見えなくなり、どこを走っているのか距離感を掴みづらかった。交差点もどれぐらい先にあるのか分かりづらく、減速しながら降りていくと、突然目の前に交差点が現れる印象を受けた。 地域交通政策に詳しい福島大教育研究院の吉田樹准教授は事故の背景を次のように分析する。 「乗用車の運転手は初めて通る道ということで、真っすぐ走ることに気を取られ、横から来る車に気付くのが遅れたのだと思います。さらに軽自動車が転倒し、発火してしまうという不運が重なった。車高が高い軽自動車が横から突っ込まれると、転倒しやすくなります」 地元住民の声を聞いていると、「あの場所がそんなに危険な場所かな」と首を傾げる人もいた。 「事故現場は見通しのいい交差点で、交通量も少ない。夜間でライトも点灯しているのならば、どうしたって目に入るはず。普通に運転していれば事故にはならないはずで、道路環境が原因の〝起こるべくして起きた事故〟とは感じません」 こうした声に対し、吉田准教授は「地元住民と初めて通る人で危険認識度にギャップがある場所が最も危ない。地元住民が『慣れた道だから大丈夫だろう』と〝だろう運転〟しがちな場所を、変則的な動きをする人が通行すれば、事故につながる可能性がぐっと上がるからです」と警鐘を鳴らす。 今回の事故に関しては、軽乗用車、乗用車が具体的にどう判断して動いたか明らかになっていないが、そうした面からも検証する必要があろう。 なお、高橋容疑者は「知人の所に向かっていた」と供述したとのことだが、乗用車側の道路の先は、墓地や旧集落への入り口があるだけの袋小路のような場所。その先に知人の家があったのか、それとも道に迷っていたのか、はたまたまだ表に出ていない〝特別な事情〟があったのか。こちらも真相解明が待たれる。 道路管理の重要性  今回の事故を受けて、地元の大平第1町内会は道路管理者の市に対し対策強化を要望し、早速カーブミラーが設置された。さらに県警とも連携し、交差点の南北に一時停止標識が取り付けられ、優先道路の白線、車道と路肩を分ける外側線も引き直した。 1月17日付の福島民報によると、市が市道の総点検を実施したところ、同16日までに県市道合わせて約200カ所が危険個所とされた。交差点でどちらが優先道路か分かりにくい、出会い頭に衝突する可能性がある、速度が出やすい個所が該当する。市は国土交通省郡山国道事務所と県県中建設事務所にも交差点の点検を要望している。  県道路管理課では方部ごとに県道・3桁国道の道路パトロールを日常的に実施し、白線などが消えかかっている個所は毎年春にまとめて引き直している。ただし、「大型車がよく通る道路や冬季に除雪が行われる路線は劣化が早く、平均7、8年は持つと言われるところが4、5年目で消えかかったりする」(吉田准教授)事情もある。日常的にチェックする仕組みが必要だろう。 県警本部交通規制課が公表している報告書では「人口減少による税収減少などで財政不足が見込まれる中、信号機をはじめとした交通安全施設等の整備事業予算も減少すると想定される」と述べており、交通安全対策を実施するうえで財源確保がポイントになるとしている。 吉田准教授はこう語る。 「道路予算というと新しい道路の整備費用ばかり注目されがちだが、道路管理費用も重要であり、今後どうするか今回の事故をきっかけに考える必要があります」 県警交通規制課によると、昨年の交通事故死者数は47人で現行の統計になった1948(昭和23)年以降で最少だった。車の性能向上や道路状況の改善、人口減少、安全意識の徹底が背景にあるが、そのうち交差点で亡くなったのは19人で、前年から増えている。 「基本的に交差点は事故が起こりやすい場所。ドライバーは注意しながら走る必要があるし、県警としても広報活動などを通して、交通安全意識を高めていきます」(平子誠調査官・次席) 県内には今回の事故現場と似たような道路環境の場所も多く、他人事ではないと感じた人も多いだろう。予算や優先順位もあるので、すべての交差点に要望通り信号・標識・カーブミラーが設置されるわけではない。ただ、住民を交えて「危険個所マップ」を作るなど、安全意識を高める方法はある。悲惨な事故を教訓に再発防止策を講じるべきだ。 吉田 樹YOSHIDA Itsuki 福島大学経済経営学類准教授・博士(都市科学) http://gakujyutu.net.fukushima-u.ac.jp/015_seeds/seeds_028.html あわせて読みたい 日本損害保険協会「交通事故多発交差点マップ」を検証

  • 日本損害保険協会「交通事故多発交差点マップ」を検証【福島県内ワーストは会津若松市「北柳原交差点」】

    日本損害保険協会「交通事故多発交差点マップ」を検証

     一般社団法人・日本損害保険協会は昨年10月26日、最新の「全国交通事故多発交差点マップ」を公表した。同マップには都道府県別に人身事故が多い交差点ワースト5が掲載されている。それを基に、県内ワーストとなった交差点での人身事故のケースなどを検証すると同時に、あらためて事故防止のためにどういったことを心がければいいか考えていきたい。 福島県内ワーストは会津若松市「北柳原交差点」  一般社団法人・日本損害保険協会の広報担当者によると、「全国交通事故多発交差点マップ」は、交差点・交差点付近での交通事故防止・軽減を目的に、各都道府県の地方紙(記者)の協力を得て作成したという。データは2021年のもので、毎年、同時期に更新されている。同マップでは、都道府県別に人身事故が多い交差点ワースト5が掲載され、人身事故のケースや交差点の特徴、予防策などが紹介されている。  マップとともに掲載されたリポートによると、福島県全体の過去5年の人身事故件数、死傷者数の推移は別表の通り。人身事故の発生件数、死傷者数ともに年々減少傾向にあることが分かる。  一方で、2021年の人身事故2997件のうち、1653件(55・2%)が交差点とその付近で発生している。こうして見ても、やはり交差点とその付近はより注意が必要であることが分かっていただけよう。  では、実際にどこの交差点での人身事故が多かったのか。  ワースト1は、会津若松市一箕町の「北柳原交差点」だった。国道49号と国道118号が交差するところだ。さらに、そこから600㍍ほど東側に行ったところにある「郷之原交差点」がワースト2タイになっている(地図参照)。  もっとも、ワースト1の「北柳原交差点」とその付近で起きた人身事故は5件、ワースト2タイの「郷之原交差点」とその付近は4件だったから、びっくりするほど多いというわけではない。 「北柳原交差点」 郷之原交差点  ちなみに、そのほかのワースト2タイは、いわき市常磐の「下船尾交差点」、同市小名浜の「御代坂交差点」、郡山市横塚の「横塚三丁目交差点」喜多方市一本木上の「塗物町交差点」、福島市渡利の「渡利弁天山交差点」、同市仲間町の「仲間町交差点」の計6カ所。 その中から、今回はワースト1の会津若松市一箕町の「北柳原交差点」と、そのすぐ近くにある「郷之原交差点」について検証してみる。 まず「北柳原交差点」だが、国道49号と国道118号が交差する地点で、朝夕を中心に交通量が多い。国道49号の会津坂下方面から猪苗代方面に向かうと交差点付近が下り坂になっており、右折レーンが2車線ある、といった特徴がある。 「全国交通事故多発交差点マップ」のリポートにも、交差点の特徴として、「国道同士が交わる交差点であり、東西に延びる国道は東側に向け下り坂、南北に延びる国道は交差点を頂上にそれぞれ下り坂になっている」、交差点の通行状況として、「恒常的に渋滞している」と記されている。 実際の事故事例  事故の種別は重傷事故が1件、軽傷事故が4件、事故類型は右折直進が2件、追突、右折時、出会い頭がそれぞれ1件となっている。  実際の事故のケースは「信号無視により、右折車両と衝突した」、「対向車が来るのをよく確認せずに右折したことにより、対向車と衝突した」と書かれており、予防方策としては「交通法規を遵守し、信号をよく確認して運転する」、「交差点を通行する際は、対向車がいないかよく確認し、速度を控えて運転する」と指摘している。  そこから東(国道49号の猪苗代方面)に600㍍ほど行ったところにあるのがワースト2タイの「郷之原交差点」。国道49号と県道会津若松裏磐梯線(通称・千石バイパス)が交わるT字路となっている。  マップのリポートには、交差点の特徴として、「東西に国道49号、南側に主要地方道会津若松裏磐梯線がそれぞれ交わる交差点であり、国道49号がカーブとなっている」、交差点の通行状況として、「恒常的に渋滞している」とある。  事故の種別は軽傷事故が4件、事故類型は追突が2件、右折時、左折時がそれぞれ1件となっている。  実際の事故のケースは「脇見等の動静不注視により、前車に追突した」、予防方策としては「運転に集中し、前車の動きや渋滞の発生を早めに見つけられるようにする」と書かれている。 ドライバーの声  普段、両交差点(付近)をよく走行するドライバーに話を聞いた。  「正直、『北柳原交差点や郷之原交差点とその付近で事故が多い』と言われても、ピンと来ない。そんなに〝危険個所〟といった認識はありませんね。ただ、いつも混んでいる印象で、当然、交通量が多ければそれだけ事故の確率も上がるでしょうから、そういうことなのかな、と思いますけどね」(仕事で同市によく行く会津地方の住民)  「両交差点に限ったことではないが、会津若松市内では県外ナンバー(観光客)をよく見る。普段、走り慣れていない人が多いことも要因ではないか」(ある市民)  「北柳原交差点は、国道49号を会津坂下方面から猪苗代方面に走行すると、下り坂になっていて見通しはあまり良くないですね。加えて、その方向に走ると、右折レーンが2つあり、本当は直進したいのに間違って右折レーンに入ってしまい、直進レーンに無理に戻ろうとしたクルマに出くわし、ビックリしたことがありました。郷之原交差点はT字路のため、左折信号があり、ちょっと気を抜いていると、それ(左折信号が点いたこと)に気づかないことがあります。その場合、後方から追いついてきたクルマに衝突される可能性が考えられます。そういったケースが事故につながっているのではないかと思います。もう1つは、両交差点に限ったことではありませんが、(積雪・凍結等の恐れがあるため)会津地方での冬季の運転はやっぱり怖いですよね」(同市をよく訪れる営業マン)  いずれの証言も、「なるほど」と思わされる内容。両交差点を通行する際はそういった点での注意が必要になろう。 「交通白書」記載の事例  ここからは、会津若松地区交通安全協会、会津若松地区安全運転管理者協会、会津若松地区交通安全事業主会、会津若松市交通対策協議会、会津若松警察署が発行している「令和3年 交通白書」を基に、さらに深掘りしてみたい。  2021年に同市内で起きた人身事故は167件で、死者1人、傷者186人となっている。2012年は633件、死者5人、傷者764人だったから、この10年でかなり改善されていることが分かる。人身事故発生件数が200件を下回ったのは1962年以来59年ぶりという。  同市内の人身事故の特徴は、「交差点・交差点付近の事故が全体の6割を占める」、「8時〜9時、17時〜18時の発生割合が高い」、「追突・出会い頭事故が全体の約6割を占める」、「国道49号での発生割合が高い」、「高齢運転者の事故が増加している」と書かれている。  実際に事故が多い交差点の状況についても記されており、当然、前述した「北柳原交差点」と「郷之原交差点」がワースト地点に挙げられている。ただ、同白書によると、両交差点での事故件数はともに6件となっており、日本損害保険協会の「全国交通事故多発交差点マップ」に記された件数と開きが生じている。  会津若松署によると、その理由は「物件事故を含んでいることと、どこまでを交差点(交差点付近)と捉えるか、の違いによるもの」という。  同白書によると、「北柳原交差点(同付近)」の事故ケースは、右折時に歩行者・自転車と接触、右折時に対向車と衝突、出会い頭など、「郷之原交差点(同付近)」の事故ケースは追突、左折時に歩行者・自転車と接触、私有地から交差点に進入した際の歩行者・自転車との接触などが挙げられている。  このほか、日本損害保険協会の「全国交通事故多発交差点マップ」には入っていなかったが、「北柳原交差点」から国道49号を西(会津坂下方面)に600㍍ほど行ったところにある「荒久田交差点」も両交差点に次いで事故が多い地点として挙げられている(2021年の事故発生件数は5件)。  同交差点(付近)では、左折時に歩行者・自転車と接触、右折時に対向車と衝突、追突といった事故事例が紹介されている。  会津若松署では、「やはり、単路より交差点での事故が多く、交差点付近では一層の注意が必要。心に余裕を持った運転を心がけてほしい」と呼びかける。  さらに、同署では、これら交差点に限らず、酒気帯び等の悪質なケースの取り締まり、事故被害を軽減するシートベルト着用の強化、行政・関係団体と連携した講習会の開催、道路管理者と連携した立て看板・電光掲示板での呼びかけなど、事故防止に努めている。  一方で、日本損害保険協会の「全国交通事故多発交差点マップ」のリポートでは、「地元警察本部の取り組み」として、以下の点が挙げられている。  ○モデル横断歩道  各署・各分庁舎管内における信号機のない横断歩道で、過去に横断歩行者被害の交通事故が発生した場所や学校が近くにある場所、または、車両および横断歩行者が多いため、対策を必要とする場所を「モデル横断歩道」と指定し、横断歩行者の保護を図るもの。  ○参加・体験型交通安全講習会(運転者、高齢歩行者、自転車)  運転者、高齢歩行者、自転車の交通事故防止のため、警察職員が県内各地に出向き、「危険予測トレーニング装置(KYT装置)」等を使用して、参加・体験型の交通安全講習会を実施するもの。  ○家庭の交通安全推進員による高齢者への反射キーホルダーの配布  県内の全小学校6年生(約1万5000人)を「家庭の交通安全推進員」として各署・分庁舎で委嘱しており、その家庭の安全推進員の活動を通じて、祖父母など身近な高齢者に対して、交通安全のアドバイスをしながらお守り型の反射キーホルダーを手渡してもらうもの。  ○自転車指導啓発重点地区・路線の設定、公表による自転車交通事故防止対策の推進  警察署ごとに自転車事故の発生状況等を基に自転車指導啓発重点地区・路線を設定し、同地区・路線において自転車事故防止、交通事故防止の広報啓発を実施。 福島市で暴走事故  今回は、日本損害保険協会の「全国交通事故多発交差点マップ」を基に、事故が多い交差点の紹介、その形状と特徴、事故発生時の事例、注意点などをリポートしてきたが、県内では昨年秋、高齢の男がクルマで暴走するというショッキングな事故があった。  この事故は11月19日午後4時45分ごろ、福島市南矢野目の市道で起きた。97歳の男が運転するクルマ(軽自動車)が歩道に突っ込み、42歳の女性がはねられて死亡。その後、信号待ちで前方に停止していたクルマ3台にも衝突し、街路樹2本をなぎ倒しながら数十㍍にわたって走行した。衝突されたクルマのうち、2台に乗っていた女性4人が軽傷を負った。  軽自動車を運転していた97歳の男は、自動車運転処罰法違反(過失運転致死)の疑いで逮捕された。男は2020年夏に、免許を更新した際の認知機能検査では問題がなかったという。  地元紙報道には、事故に巻き込まれたドライバーの「こんな人が運転していいのかと感じた」という憤りの声が紹介されていた。  その後の警察の調べでは、現場にブレーキ痕はなかったことから、ブレーキとアクセルを踏み間違えた可能性が高いという。  この事故を受け、警察庁の露木康浩長官は記者会見で、「(高齢運転者対策の)制度については不断の見直しが必要」との見解を示した。警察庁長官がそうしたことに言及をするのは異例と言える。  このほか、週刊誌(オンライン版)などでも、この事故が取り上げられ、逮捕された男の人物像に迫るような記事もいくつか見られた。  そのくらい、ショッキングな事故だったということである。  地方では、クルマを運転する人は多いが、ハンドルを握るということは、それ相応の責任が生じる。そのことを自覚し、各ドライバーが無理のない運転を心がけ、より注意を払い、事故防止のきっかけになれば幸いだ。 あわせて読みたい 郡山4人死亡事故で加害者に禁錮3年 【専門家が指摘】他人事じゃない【郡山市】一家4人死亡事故 【福島市歩道暴走事故の真相】死亡事故を誘発した97歳独居男の外食事情

  • いわき市職員と会社役員が交通事故トラブル

     交通事故では、過失割合や示談金をめぐって加害者と被害者の間で意見が食い違うことがある。昨年12月7日、いわき市常磐関船町の丁字路信号で起きた交通事故もそうした事例の一つだ。  右折レーンで2台の車が信号待ちしていたところ、後ろの車を運転していた市内の会社役員Aさんが不注意でブレーキから足を離し、クリープ現象で前の車に接触してしまった。  双方ともほとんど損傷はなかったが、警察による現場検証の結果、前の車の後部バンパーにナンバープレートの跡が確認できたため、追突事故と扱われた。警察の調書には「時速約5㌔で追突」と記された。  だが、追突された車のドライバーBさんはAさんにすごい剣幕で迫ったという。この間Aさんから相談を受けてきた知人はこう明かす。  「『俺は海外旅行に行くことになっていたのにどうするんだ!』、『明日はタイヤ交換も予約したんだぞ!』、『こんなところでぶつけるって何考えてんだおめー!』とまくしたてられ、Aさんは恐怖を抱いたそうです」  Aさんが運転していたのは社有車。当初「保険会社に対応を任せる」と話していたBさんだったが、8万円でバンパーを修理後、整形外科に行って全治2週間の診断(症状は頸椎捻挫=むち打ち損傷と思われる)を受け、警察に提出した。そのため事故は人身事故扱いとなり、Aさんには違反点数5点が加算された。  そればかりかBさんはAさんが勤める会社の保険会社に対し、海外旅行のキャンセル料、旅先での宴会キャンセル料の支払いを求めたという。判例では結婚式直前の事故による新婚旅行キャンセル料などが損害として認められているが、Bさんの場合、損害とは認められなかったようだ。  交通事故対応に振り回されたAさんは精神的苦痛で吐き気や頭痛を催すようになり、しばらく塞ぎがちになった。一時期はメンタルクリニックに通うほどだったが、一連の手続きの中でBさんがいわき市職員であることを知って、その対応に疑問を抱くようになったという。  「交通事故の被害者になったからと言って、市民である加害者を罵倒し、過剰とも言える損害賠償を求めるのか。地方公務員法第33条に定められている『信用失墜行為』に当たるのではないか」(同)  Aさんらは、いわき市役所職員課に連絡し、Bさんが市職員であることを確認した。だが、情報提供に対する礼と「職員課人事係で共有を図る」という報告があっただけで、その後のアクションはないという。  当事者であるBさんは事故をどう受け止めているのか。自宅を訪ねたところ、次のように話した。  「後ろからドーン!と突っ込まれて『むち打ち』になり、いまも通院していますよ。海外旅行は韓国の友人を訪ねる予定が控えていました。結局キャンセル料を支払ってもらえないというので、旅行には行きましたよ。……あの、これ以上は話す義務もないので取材はお断りします」  時速5㌔での追突を「ドーン!と突っ込まれた」と表現しているほか、けがした状態で韓国旅行に行っても問題はなかったのかなど気になる点はいくつもあったが、曖昧な返答のまま取材を断られてしまった。  いわき市職員課人事係では「事故の件は把握しているが、公務外での事故なので当事者間での話し合いに任せている。言葉遣いが乱暴になった面はあったかもしれないが、事故直後ということもあり、信用失墜行為には当たらないと考えている」とコメントした。  Aさんらは事故を起こしたことを反省しつつも、モヤモヤが続いている様子。こうしたトラブルを避けるためにも、運転には気を付けなければならないということだ。

  • 【専門家が指摘】他人事じゃない【郡山市】一家4人死亡事故

    専門家が指摘する危険地点の特徴  1月2日夜、郡山市大平町の交差点で軽乗用車と乗用車が出合い頭に衝突し、軽乗用車が横転・炎上。家族4人が死亡する事故が発生した。悲惨な事故の背景を探る。(志賀)  報道によると、事故は1月2日20時10分ごろ、郡山市大平町の信号・標識がない交差点で発生した。東進する軽乗用車と南進する乗用車が衝突し、軽乗用車は衝撃で走行車線の反対側に横転、縁石に乗り上げた。そのまま炎上し、乗っていた4人は全員死亡。横転した衝撃で火花が発生し、損傷した車体から漏れ出たガソリンに引火したためとみられる。  軽乗用車に乗っていたのは、所有者である橋本美和さん(39)と夫の貢さん(41)、長男の啓吾さん(20)、長女の華奈さん(16)。事故現場に近い大平町簓田地区に自宅があり、市内の飲食店から帰宅途中だった。 乗用車を運転していた福島市在住の高橋俊容疑者(25)は自動車運転処罰法違反(過失致死)の疑いで同4日に送検された。現行犯逮捕時は同法違反(過失運転致傷)だったが、容疑を切り替えた。 この間の捜査で高橋容疑者は「知人の所に向かっていた」、「交差点ではなく単線道路と思った」、「暗い道で初めて通った。目の前を物体が横切り、その後衝撃を感じた」、「ブレーキをかけたが間に合わなかった」などと供述している。 軽乗用車が走っていたのは、郡山東部ニュータウン西側と県道297号斎藤下行合線をつなぐ「市道緑ヶ丘西三丁目前田線」。「JR郡山駅へと向かう際の〝抜け道〟」(地元住民)として使われている。 乗用車が走っていたのは、東部ニュータウン北側から坂道を降りて同市道と交差する「市道川端緑ヶ丘西四丁目線」。交差点では軽乗用者側が優先道路だった。  もっとも、そのことを示す白線はほとんど消えて見えなくなっていた。1月6日に行われた市や地元町内会などによる緊急現場点検では、参加者から「坂道カーブや田んぼの法面で対向車を確認しづらい」、「標識が何もないので夜だと一時停止しない車もあるのでは」などの意見が出た。大平町第1町内会の伊藤好弘会長は「交通量が少なく下り坂もあるのでスピードを出す車をよく見かける」とコメントしている(朝日新聞1月7日付)。 1月上旬の夜、乗用車と同じルートを実際に走ってみた。すると軽乗用車のルートを走る車が坂道カーブや田んぼの法面に遮られて見えなくなり、どこを走っているのか距離感を掴みづらかった。交差点もどれぐらい先にあるのか分かりづらく、減速しながら降りていくと、突然目の前に交差点が現れる印象を受けた。 地域交通政策に詳しい福島大教育研究院の吉田樹准教授は事故の背景を次のように分析する。 「乗用車の運転手は初めて通る道ということで、真っすぐ走ることに気を取られ、横から来る車に気付くのが遅れたのだと思います。さらに軽自動車が転倒し、発火してしまうという不運が重なった。車高が高い軽自動車が横から突っ込まれると、転倒しやすくなります」 地元住民の声を聞いていると、「あの場所がそんなに危険な場所かな」と首を傾げる人もいた。 「事故現場は見通しのいい交差点で、交通量も少ない。夜間でライトも点灯しているのならば、どうしたって目に入るはず。普通に運転していれば事故にはならないはずで、道路環境が原因の〝起こるべくして起きた事故〟とは感じません」 こうした声に対し、吉田准教授は「地元住民と初めて通る人で危険認識度にギャップがある場所が最も危ない。地元住民が『慣れた道だから大丈夫だろう』と〝だろう運転〟しがちな場所を、変則的な動きをする人が通行すれば、事故につながる可能性がぐっと上がるからです」と警鐘を鳴らす。 今回の事故に関しては、軽乗用車、乗用車が具体的にどう判断して動いたか明らかになっていないが、そうした面からも検証する必要があろう。 なお、高橋容疑者は「知人の所に向かっていた」と供述したとのことだが、乗用車側の道路の先は、墓地や旧集落への入り口があるだけの袋小路のような場所。その先に知人の家があったのか、それとも道に迷っていたのか、はたまたまだ表に出ていない〝特別な事情〟があったのか。こちらも真相解明が待たれる。 道路管理の重要性  今回の事故を受けて、地元の大平第1町内会は道路管理者の市に対し対策強化を要望し、早速カーブミラーが設置された。さらに県警とも連携し、交差点の南北に一時停止標識が取り付けられ、優先道路の白線、車道と路肩を分ける外側線も引き直した。 1月17日付の福島民報によると、市が市道の総点検を実施したところ、同16日までに県市道合わせて約200カ所が危険個所とされた。交差点でどちらが優先道路か分かりにくい、出会い頭に衝突する可能性がある、速度が出やすい個所が該当する。市は国土交通省郡山国道事務所と県県中建設事務所にも交差点の点検を要望している。  県道路管理課では方部ごとに県道・3桁国道の道路パトロールを日常的に実施し、白線などが消えかかっている個所は毎年春にまとめて引き直している。ただし、「大型車がよく通る道路や冬季に除雪が行われる路線は劣化が早く、平均7、8年は持つと言われるところが4、5年目で消えかかったりする」(吉田准教授)事情もある。日常的にチェックする仕組みが必要だろう。 県警本部交通規制課が公表している報告書では「人口減少による税収減少などで財政不足が見込まれる中、信号機をはじめとした交通安全施設等の整備事業予算も減少すると想定される」と述べており、交通安全対策を実施するうえで財源確保がポイントになるとしている。 吉田准教授はこう語る。 「道路予算というと新しい道路の整備費用ばかり注目されがちだが、道路管理費用も重要であり、今後どうするか今回の事故をきっかけに考える必要があります」 県警交通規制課によると、昨年の交通事故死者数は47人で現行の統計になった1948(昭和23)年以降で最少だった。車の性能向上や道路状況の改善、人口減少、安全意識の徹底が背景にあるが、そのうち交差点で亡くなったのは19人で、前年から増えている。 「基本的に交差点は事故が起こりやすい場所。ドライバーは注意しながら走る必要があるし、県警としても広報活動などを通して、交通安全意識を高めていきます」(平子誠調査官・次席) 県内には今回の事故現場と似たような道路環境の場所も多く、他人事ではないと感じた人も多いだろう。予算や優先順位もあるので、すべての交差点に要望通り信号・標識・カーブミラーが設置されるわけではない。ただ、住民を交えて「危険個所マップ」を作るなど、安全意識を高める方法はある。悲惨な事故を教訓に再発防止策を講じるべきだ。 吉田 樹YOSHIDA Itsuki 福島大学経済経営学類准教授・博士(都市科学) http://gakujyutu.net.fukushima-u.ac.jp/015_seeds/seeds_028.html あわせて読みたい 日本損害保険協会「交通事故多発交差点マップ」を検証

  • 日本損害保険協会「交通事故多発交差点マップ」を検証

     一般社団法人・日本損害保険協会は昨年10月26日、最新の「全国交通事故多発交差点マップ」を公表した。同マップには都道府県別に人身事故が多い交差点ワースト5が掲載されている。それを基に、県内ワーストとなった交差点での人身事故のケースなどを検証すると同時に、あらためて事故防止のためにどういったことを心がければいいか考えていきたい。 福島県内ワーストは会津若松市「北柳原交差点」  一般社団法人・日本損害保険協会の広報担当者によると、「全国交通事故多発交差点マップ」は、交差点・交差点付近での交通事故防止・軽減を目的に、各都道府県の地方紙(記者)の協力を得て作成したという。データは2021年のもので、毎年、同時期に更新されている。同マップでは、都道府県別に人身事故が多い交差点ワースト5が掲載され、人身事故のケースや交差点の特徴、予防策などが紹介されている。  マップとともに掲載されたリポートによると、福島県全体の過去5年の人身事故件数、死傷者数の推移は別表の通り。人身事故の発生件数、死傷者数ともに年々減少傾向にあることが分かる。  一方で、2021年の人身事故2997件のうち、1653件(55・2%)が交差点とその付近で発生している。こうして見ても、やはり交差点とその付近はより注意が必要であることが分かっていただけよう。  では、実際にどこの交差点での人身事故が多かったのか。  ワースト1は、会津若松市一箕町の「北柳原交差点」だった。国道49号と国道118号が交差するところだ。さらに、そこから600㍍ほど東側に行ったところにある「郷之原交差点」がワースト2タイになっている(地図参照)。  もっとも、ワースト1の「北柳原交差点」とその付近で起きた人身事故は5件、ワースト2タイの「郷之原交差点」とその付近は4件だったから、びっくりするほど多いというわけではない。 「北柳原交差点」 郷之原交差点  ちなみに、そのほかのワースト2タイは、いわき市常磐の「下船尾交差点」、同市小名浜の「御代坂交差点」、郡山市横塚の「横塚三丁目交差点」喜多方市一本木上の「塗物町交差点」、福島市渡利の「渡利弁天山交差点」、同市仲間町の「仲間町交差点」の計6カ所。 その中から、今回はワースト1の会津若松市一箕町の「北柳原交差点」と、そのすぐ近くにある「郷之原交差点」について検証してみる。 まず「北柳原交差点」だが、国道49号と国道118号が交差する地点で、朝夕を中心に交通量が多い。国道49号の会津坂下方面から猪苗代方面に向かうと交差点付近が下り坂になっており、右折レーンが2車線ある、といった特徴がある。 「全国交通事故多発交差点マップ」のリポートにも、交差点の特徴として、「国道同士が交わる交差点であり、東西に延びる国道は東側に向け下り坂、南北に延びる国道は交差点を頂上にそれぞれ下り坂になっている」、交差点の通行状況として、「恒常的に渋滞している」と記されている。 実際の事故事例  事故の種別は重傷事故が1件、軽傷事故が4件、事故類型は右折直進が2件、追突、右折時、出会い頭がそれぞれ1件となっている。  実際の事故のケースは「信号無視により、右折車両と衝突した」、「対向車が来るのをよく確認せずに右折したことにより、対向車と衝突した」と書かれており、予防方策としては「交通法規を遵守し、信号をよく確認して運転する」、「交差点を通行する際は、対向車がいないかよく確認し、速度を控えて運転する」と指摘している。  そこから東(国道49号の猪苗代方面)に600㍍ほど行ったところにあるのがワースト2タイの「郷之原交差点」。国道49号と県道会津若松裏磐梯線(通称・千石バイパス)が交わるT字路となっている。  マップのリポートには、交差点の特徴として、「東西に国道49号、南側に主要地方道会津若松裏磐梯線がそれぞれ交わる交差点であり、国道49号がカーブとなっている」、交差点の通行状況として、「恒常的に渋滞している」とある。  事故の種別は軽傷事故が4件、事故類型は追突が2件、右折時、左折時がそれぞれ1件となっている。  実際の事故のケースは「脇見等の動静不注視により、前車に追突した」、予防方策としては「運転に集中し、前車の動きや渋滞の発生を早めに見つけられるようにする」と書かれている。 ドライバーの声  普段、両交差点(付近)をよく走行するドライバーに話を聞いた。  「正直、『北柳原交差点や郷之原交差点とその付近で事故が多い』と言われても、ピンと来ない。そんなに〝危険個所〟といった認識はありませんね。ただ、いつも混んでいる印象で、当然、交通量が多ければそれだけ事故の確率も上がるでしょうから、そういうことなのかな、と思いますけどね」(仕事で同市によく行く会津地方の住民)  「両交差点に限ったことではないが、会津若松市内では県外ナンバー(観光客)をよく見る。普段、走り慣れていない人が多いことも要因ではないか」(ある市民)  「北柳原交差点は、国道49号を会津坂下方面から猪苗代方面に走行すると、下り坂になっていて見通しはあまり良くないですね。加えて、その方向に走ると、右折レーンが2つあり、本当は直進したいのに間違って右折レーンに入ってしまい、直進レーンに無理に戻ろうとしたクルマに出くわし、ビックリしたことがありました。郷之原交差点はT字路のため、左折信号があり、ちょっと気を抜いていると、それ(左折信号が点いたこと)に気づかないことがあります。その場合、後方から追いついてきたクルマに衝突される可能性が考えられます。そういったケースが事故につながっているのではないかと思います。もう1つは、両交差点に限ったことではありませんが、(積雪・凍結等の恐れがあるため)会津地方での冬季の運転はやっぱり怖いですよね」(同市をよく訪れる営業マン)  いずれの証言も、「なるほど」と思わされる内容。両交差点を通行する際はそういった点での注意が必要になろう。 「交通白書」記載の事例  ここからは、会津若松地区交通安全協会、会津若松地区安全運転管理者協会、会津若松地区交通安全事業主会、会津若松市交通対策協議会、会津若松警察署が発行している「令和3年 交通白書」を基に、さらに深掘りしてみたい。  2021年に同市内で起きた人身事故は167件で、死者1人、傷者186人となっている。2012年は633件、死者5人、傷者764人だったから、この10年でかなり改善されていることが分かる。人身事故発生件数が200件を下回ったのは1962年以来59年ぶりという。  同市内の人身事故の特徴は、「交差点・交差点付近の事故が全体の6割を占める」、「8時〜9時、17時〜18時の発生割合が高い」、「追突・出会い頭事故が全体の約6割を占める」、「国道49号での発生割合が高い」、「高齢運転者の事故が増加している」と書かれている。  実際に事故が多い交差点の状況についても記されており、当然、前述した「北柳原交差点」と「郷之原交差点」がワースト地点に挙げられている。ただ、同白書によると、両交差点での事故件数はともに6件となっており、日本損害保険協会の「全国交通事故多発交差点マップ」に記された件数と開きが生じている。  会津若松署によると、その理由は「物件事故を含んでいることと、どこまでを交差点(交差点付近)と捉えるか、の違いによるもの」という。  同白書によると、「北柳原交差点(同付近)」の事故ケースは、右折時に歩行者・自転車と接触、右折時に対向車と衝突、出会い頭など、「郷之原交差点(同付近)」の事故ケースは追突、左折時に歩行者・自転車と接触、私有地から交差点に進入した際の歩行者・自転車との接触などが挙げられている。  このほか、日本損害保険協会の「全国交通事故多発交差点マップ」には入っていなかったが、「北柳原交差点」から国道49号を西(会津坂下方面)に600㍍ほど行ったところにある「荒久田交差点」も両交差点に次いで事故が多い地点として挙げられている(2021年の事故発生件数は5件)。  同交差点(付近)では、左折時に歩行者・自転車と接触、右折時に対向車と衝突、追突といった事故事例が紹介されている。  会津若松署では、「やはり、単路より交差点での事故が多く、交差点付近では一層の注意が必要。心に余裕を持った運転を心がけてほしい」と呼びかける。  さらに、同署では、これら交差点に限らず、酒気帯び等の悪質なケースの取り締まり、事故被害を軽減するシートベルト着用の強化、行政・関係団体と連携した講習会の開催、道路管理者と連携した立て看板・電光掲示板での呼びかけなど、事故防止に努めている。  一方で、日本損害保険協会の「全国交通事故多発交差点マップ」のリポートでは、「地元警察本部の取り組み」として、以下の点が挙げられている。  ○モデル横断歩道  各署・各分庁舎管内における信号機のない横断歩道で、過去に横断歩行者被害の交通事故が発生した場所や学校が近くにある場所、または、車両および横断歩行者が多いため、対策を必要とする場所を「モデル横断歩道」と指定し、横断歩行者の保護を図るもの。  ○参加・体験型交通安全講習会(運転者、高齢歩行者、自転車)  運転者、高齢歩行者、自転車の交通事故防止のため、警察職員が県内各地に出向き、「危険予測トレーニング装置(KYT装置)」等を使用して、参加・体験型の交通安全講習会を実施するもの。  ○家庭の交通安全推進員による高齢者への反射キーホルダーの配布  県内の全小学校6年生(約1万5000人)を「家庭の交通安全推進員」として各署・分庁舎で委嘱しており、その家庭の安全推進員の活動を通じて、祖父母など身近な高齢者に対して、交通安全のアドバイスをしながらお守り型の反射キーホルダーを手渡してもらうもの。  ○自転車指導啓発重点地区・路線の設定、公表による自転車交通事故防止対策の推進  警察署ごとに自転車事故の発生状況等を基に自転車指導啓発重点地区・路線を設定し、同地区・路線において自転車事故防止、交通事故防止の広報啓発を実施。 福島市で暴走事故  今回は、日本損害保険協会の「全国交通事故多発交差点マップ」を基に、事故が多い交差点の紹介、その形状と特徴、事故発生時の事例、注意点などをリポートしてきたが、県内では昨年秋、高齢の男がクルマで暴走するというショッキングな事故があった。  この事故は11月19日午後4時45分ごろ、福島市南矢野目の市道で起きた。97歳の男が運転するクルマ(軽自動車)が歩道に突っ込み、42歳の女性がはねられて死亡。その後、信号待ちで前方に停止していたクルマ3台にも衝突し、街路樹2本をなぎ倒しながら数十㍍にわたって走行した。衝突されたクルマのうち、2台に乗っていた女性4人が軽傷を負った。  軽自動車を運転していた97歳の男は、自動車運転処罰法違反(過失運転致死)の疑いで逮捕された。男は2020年夏に、免許を更新した際の認知機能検査では問題がなかったという。  地元紙報道には、事故に巻き込まれたドライバーの「こんな人が運転していいのかと感じた」という憤りの声が紹介されていた。  その後の警察の調べでは、現場にブレーキ痕はなかったことから、ブレーキとアクセルを踏み間違えた可能性が高いという。  この事故を受け、警察庁の露木康浩長官は記者会見で、「(高齢運転者対策の)制度については不断の見直しが必要」との見解を示した。警察庁長官がそうしたことに言及をするのは異例と言える。  このほか、週刊誌(オンライン版)などでも、この事故が取り上げられ、逮捕された男の人物像に迫るような記事もいくつか見られた。  そのくらい、ショッキングな事故だったということである。  地方では、クルマを運転する人は多いが、ハンドルを握るということは、それ相応の責任が生じる。そのことを自覚し、各ドライバーが無理のない運転を心がけ、より注意を払い、事故防止のきっかけになれば幸いだ。 あわせて読みたい 郡山4人死亡事故で加害者に禁錮3年 【専門家が指摘】他人事じゃない【郡山市】一家4人死亡事故 【福島市歩道暴走事故の真相】死亡事故を誘発した97歳独居男の外食事情